TREK RSL Knit ロードシューズ インプレッション ニット素材とOCLVカーボンで軽量204g

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8.3 TOTAL SCORE

TREK KNIT ROAD シューズ

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TREK RSL KNITは編み込み構造(ニット)のシューズだ。ソックスのようにどんな足型にも合い、あえて足の骨が当たる部分を避けてホールドする快適な構造だ。重量も204gと軽量でありながら、軽量シューズにありがちなはき心地の悪さもない。足の出し入れにややコツが必要だが、慣れれば快適なシューズフィットが待っている。価格は6万円オーバーと高額だが、価格に見合った性能と構造を備えたハイエンドシューズだ。


剛性 10
軽さ 10
通気性 9
使い勝手 7
フィット感 9
価格 5
PROS
  • 204g(インソール無)と軽量
  • どんな足型にもフィット
  • 全体にわたり通気性が高い
  • OCLVカーボンソール
  • かかとのホールド性が高い
CONS
  • 価格が高い
  • 汚れやすい
  • 履き方にコツが必要
  • 引っ掛かりで糸がほつれる
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エンジニアードニット生地を採用

エンジニアードニット(編み込み)の1枚物でアッパーが作られている。

Lidl-Trekチームために設計開発されたのがエンジニアードニットだ。

エンジニアードニットといえば、ここ数年様々なスポーツブランドが採用している編み込みの生地だ。ポガチャル選手が愛用しているシューズにもエンジニアードニットが採用されるなど、機能性と快適性をあわせ持つ構造として注目されている。

エンジニアードニットを採用したシューズの特徴は5つある。

  1. フィット感がよい
  2. はき心地がよい
  3. 通気性がよい
  4. 段差がない
  5. 軽い

ソックスと同じような構造。

これまでの素材と大きく異なるのは、シューズのアッパー部分を作り出す方法だ。サイクリングシューズに限らず一般的なシューズの製法といえば、カットされた複数の生地や素材を縫い合わせて立体的なアッパーを作り上げる方法が主流だった。

エンジニアードニットは、シューズのアッパー全体を1枚の編み物で作り上げる。つま先から足をいれる部分まで全て1枚の編み物で構成するのが特徴だ。簡単に言えば、ソックスをカーボンプレートに貼り付けてシューズにしたようなものだ。

ニット素材のしなやかで伸縮性に優れた特徴は、適度な伸びがあるため様々な足型に合うように追従してくれる。この特徴は、これまでのシューズのような”あたり”の問題も低減している。指の付け根などがシューズにあたり、痛みを感じてしまう問題がそもそもなくなった。

ソックスを履いて痛みを感じる人がいないのと一緒だ。

ニット構造は部位によって、通気性を、ホールド性を使い分けている。

ニット構造のシューズは、ソックスのように足に”あちら側から”合わせに来てくれる。そのため、あるポイントだけあたるような局所的な問題が少なくなった。生地と生地をつなぎ合わせる構造の場合、縫い目の境界線で段差がどうしても生じることがあった。構造的に境界線がなくなりシームレスなアッパーを作り出せるメリットが生まれている。

ソールラストは母指球側で4㎜、小指級側で3㎜ワイドになっている。足幅が広い人でも使用することが可能だ。通常の足幅の方も、BOAダイヤルを使ってシューズを履いたあとから締め付けられる仕組みのため、ブカブカになる心配は皆無だ。

アッパーはソールに貼り付けられたベース素材と縫い合わせている。

ニット素材というと耐久性や強度が低いイメージがあるが、耐久性のあるポリエステル素材を用いてニット構造を構成している。そして、シューズの部位によって様々な密度とパターンを使い分けて設計している。そのため、プロの使用にも十分耐える構造に仕上がっている。

締付部分のニットは縮むことを想定して編み込みを変えている。

ニット構造はそのイメージから想像できるとおり通気性が非常に高い。糸を編み上げた構造は、アッパー全体に非常に小さな穴が開いている状態と同様だ。通常のシューズは素材自体に小さな穴をいくつか開けることで通気性を高めているが、ニット構造は穴あけ加工が不要になっている。

素材そのものが高い通気性を備えているため、シューズ内で生じた蒸れや発汗した汗などを外から入ってくる空気に乗せて一気に放出する仕組みだ。ニット構造は意図せずしてシューズ内で足の蒸れ問題を解決してくれるのだ。

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固定と開放を併せ持つMETNET

微妙に伸展するMETNET

TREKが新たに開発したのがMETNETだ。

METNETは足に合わせて自由自在に張り付き、わずかに伸縮するため様々な足の形に合う設計になっている。着用するとすぐにカスタムシューズのような履き心地になるのが特徴だ。はき心地の良さを保ったままパワーを確実にペダルに伝えることができる。

METNETはBOAダイアルと接続されている。シューズを締め付けても、METNETが効率的に延びたり縮んだりするため不快感が少ない。それでいて、しっかりと足を固定しつつも足がシューズ内で程よく動く免震ダンパーのような役割もある。

親指付け根の出っ張り部分をあえて避けてホールドしている。

METNETは高いホールド性を備えつつも、しなやかで柔軟な素材のためシューズで痛みや違和感を生じやすい部分に使用されている。ホールド性を考慮し内側の母指球まわり、外側の小指球からかかとにかけてMETNETが配置されている。足をしっかりとホールドする役割と、圧迫感を和らげるという相反する役割を担っている。

RSL Knit Roadシューズは全体的にニット素材で包み込み、METNETでホールドする。それぞれを組み合わせることによって、優れたはき着心地を実現しているのだ。

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OCLVソール

TREKの代名詞、OCLVカーボンを使用した。

ソールにはTREKの代名詞でもあるOCLVカーボンが使用されている。TREKが特許を持つ独自のカーボン製造技術は、同社のハイエンドバイクにのみ使用を許されている。

新型のRSL Knit Roadシューズのソール部分には、超高剛性の100%OCLVカーボンプレートが配置されており、ライダーのパワーをロスすることなく受け止めることが可能になった。

ソール踏み面は平たくなっており、中心に向かってソールが細くなる形状だ。パワーをソール全体で受け止める設計ながら、無駄な贅肉を減らすことで、重量を減らすことにも成功している。

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ヒールは鮫肌で固定力が向上

シューストラップはやわらかく、ヒールカップは硬い。

ヒールは最も特徴的な部分だ。

ヒールとシューストラップ(足を入れる際に引っ張り上げるかかと部分)は一体成型になっている。かかとが収まる部分は非常に硬い素材で出来ているが、ストラップ相当の部分は比較的柔らかく、ムニムニと弾力に富んだ素材を使っている。

異なる素材を使い分ける理由は、足を入れる際にシューストラップの上部分が後方にしなることで足入れがしやすくなっている。履いたあとは、硬い部分がかかとをしっかりとホールドする役割がある。

洋服のエチケットブラシと同じ仕組みになっている。

ヒールのもうひとつの特徴が鮫肌のような滑り止め素材だ。エチケットブラシと全く同じ構造で、一方向はスムーズに移動できるが、逆方向に移動すると生地が引っかかる仕組みだ。

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エチケットブラシと同じ仕組みのため、足入れ時はスムーズに、かかとが浮き上がる方向にはソックスが引っかかり上方向の無駄な動きをロックしてくれる仕組みになっている。

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Li2 BOA ダイアル

クラゲの形をした新型のLi2 BOAダイヤルを使用している。

BOAダイアルは新型のLi2を使用している。Li2はすばやく精密に容易なフィットを追求した最新モデルだ。軽量で小型のダイヤルは過去のBOA製品よりも耐衝撃性、耐摩耗性、泥や砂塵などへの防汚性能が向上している。

Li2の特徴は3つある。

  1. ロープロファイル設計
  2. 高耐久性
  3. 締めたあと緩められる
  4. 微調整できる

image: BOA

これまでのBOAダイアルと異なり薄型になっている。外からの衝撃を受ける場合、できるだけヒットしないように低めの設計に見直された。形状も大きく変わっており、土台部分を含めて台形になっている。

形状の変化により、ダイアルをつまみやすくなっただけでなく塵や泥といった異物の混入も大幅に減らすことに成功している。

image: BOA

調整機能も大幅に改善した。締めるつける際の粒度がより細かくなっており、微妙なシューズの締め付け圧の調整が可能になっている。Li2は、「締め付ける」「緩める」どちらも細かく調整する事が可能だ。

一旦締め付けていったものの、締付けが強すぎて緩めたい場合などに有効な機能だ。使い方としては、まずは一気に締めていき、あとは好みの締付具合になるように増し締め、緩めるという使い方が合理的だ。Li2の「すばやく精密に容易なフィット」という特徴のとおりだ。

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重量

インソールなしで204g(EU40.0)

重量はインソール無しで204gだ。

1枚物のニット素材のため非常に軽量に仕上がっているのはここまで紹介したとおりだ。他社のシューズと比べても非常に軽い。他社製品のハイエンドロードバイクシューズが250g前後ということを考えると、左右で100g近い重量が削減できることは大きい。

決して軽量シューズとして販売されているわけではないが、軽量性を求めるライダーはRSL Knit Roadシューズの優位性に目を向けてもいいだろう。

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はき方にはコツがいる

タン部分もやわらかい。

RSL Knit Roadシューズの履き方には少々コツが必要だ。実際に箱の中にも注意書きが書かれた説明書が同梱されている。

  1. 靴べらを使用する。
  2. BOAダイアルを全開にする。
  3. 履き口を大きく開く。
  4. かかとを下に押し下げてはく。

これまでのシューズを履く方法ではRSL Knit Roadシューズに足をいれることは難しい。しかし、この4つを丁寧に守ることですんなりと履くことができる。ようは少々のコツが必要なのだ。

幸い、METNETやニット素材を採用しているため、履き口は大きく伸び縮みする。そのため足をいれやすくなっている。

履き口は手で広げられる

履き口は他の部分よりも編み込みが厚くなっているため、何度も足を出し入れしても伸びてしまったりする心配が無い。

ヒール部分はかかとがすんなりと入るように緩やかなカーブを描いているため、かかとを下方向に押し込むようにすると滑るように足がシューズに収まっていく。

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インプレッション

photo: Masato Shiraishi

RSL Knit Roadシューズを実際に試した。インプレッションを始める前にこれまでのシューズ遍歴をまとめておく。10年以上スペシャライズドのS-WORKS ROADシューズを使用、他にもGIRO、フィジーク、LAKE、リンタマン、BONTなどに浮気してここ4年はシマノの902や903を使用している。

参考までに、わたしの足型を3Dスキャンしたデータを掲載する。0.1cm単位の精密なデーターであり参考になると思う。ビジネスシューズは4Eを使用している。これらの理由からS-WORKS ROADシューズや、シマノシューズでもWIDEを使用している。

RSL Knit Roadシューズのサイズは40.0でジャストフィットだった。

RSL Knit Roadシューズを実際にはいてみると、幅広な足型であってもニット素材が適度に伸びてくれるためフィット感はこれまでで最も高かった。S-WORKS ROADシューズやシマノのSH-RC902がそうであったように、素材と素材をつなぎ合わせたシューズは局所的なポイントでアタリが出やすい。

METNETは足の骨の出っ張り部分を避けて固定する。

しかし、ニット構造は足型に沿うようにシューズのほうから足にフィットしてくれるのだ。

「シューズ側が足に合わせに来てくれる」という感覚は、今までに経験したことのない。ソックスで痛みを感じる人がいないのと同じように、ニット素材は足に完全フィットする。締め付けない状態で痛みが出ることはほとんどないだろう。感覚的には、キツめの生地が頑丈なソックスをはいているのと同じような感覚なのだ。

ただし、BOAを締めずに開放状態では、当然ロードバイクに乗るためのシューズとしては不十分だ。そこでMETNETが活躍する。

ニットアッパーで足をつつみこみ、METNETでホールドする。

METNETのつま先側は、足の親指付近と小指付近を避けて足をホールドしてくれる。もう一方のMETNETは足の甲よりも上部分を、斜め方向から足首まわりを押さこむように固定してくれる。BOAダイアルでそれぞれ締め付けていくと、足がしっかりとシューズに固定されていく。

締め付けていっても、ニット素材のアッパーが潰れたり、シワになったりすることはなかった。フィット感だけで言うならば、これまで使用してきたシューズの中で最もフィット感が高い。言い方は変だが、ホールドされていながらも「開放感がある」シューズだ。

はき心地はほぼ満点に近い。そりゃそうだ、だってほとんどソックスなのだから。

問題はペダリングをしたときのブレや足のズレだ。なんせ、アッパー部分のタンもニット素材で作られているためホールド感が心配だった。結論を先にいうと、BOAと接続しているMETNETのホールドだけで十分な固定力がある。

ソールはOCLVカーボン製品で硬さは14と同社の定義上最も硬い。実際に思いっきり踏み込んでみても、正直なところ硬いか柔らかいか判別がつかない。シマノの902や903と比べてみても特別硬いだとか柔らかいという違いも無い。同社のシューズで最も硬いソールなので剛性が不足することは無いだろう。

ただし、実際に長時間使っていくと「もしかしたら足に優しいかも」という感覚があった。というのも、ニット素材という特殊なアッパーのため、固定されつつも開放的なはき着心地がずっと続く。ソールは確かに硬いかもしれないが、何にも邪魔されずにソールをダイレクトにベタ踏みできる感覚がある。

実際のところ、縦方向には他社の高剛性シューズと遜色はない。しかし、ペダリング中の僅かな足の動きに対して、アッパー全体が柔軟に追従し元の位置に戻してくれるためTIMEクリートのセンタリング機能のような動きをしてくれるのだ。脚全体に優しい印象を受けた。

エンジニアードニット(編み込み)の1枚物でアッパーが作られている。

ニット素材のシューズを初めてテストしたが通気性が尋常じゃない。

ニット素材だけあってソックスだけで走っているようなものだ。スピードを上げていくと風が入ってきて抜けることがはっきりと体感できる。夏ならばメリットしかないが冬は相当寒い。ただし、足のムレや放熱に関してはニット素材を超える構造は無いと思う。

テストした時期が3月であったこともあり肌寒かったが、夏本番になるとニット素材の通気性能良さがパフォーマンスに良い効果をもたらす可能性がある。

シューズを履くときは初めは苦労すると思う。しかし、はいたあとのホールド感は非常に高い。特に、かかと部分のズレの少なさ、ほとんど動かないのは素晴らしいと感じた。シマノ系のシューズは、一部分にグリップを施してあるため靴擦れの原因になる場合があった。

RSL Knitはエチケットブラシと同じ原理がヒール全体に施されているため、かかと全体を面でホールドしてくれる。そのため、局所的な負荷がかかりにくく力を分散してホールドするため、より自然な印象を受けた。

その他、ソールにはカントが付いていないためスペシャライズド系のシューズと比べると膝が内側に入りやすいシューズだった。シマノ系シューズを履いている方は気にならないがインソール側で調整するといいだろう。

RSL Knitは、はき心地、剛性、通気性など総じて素晴らしいシューズだ。リンタマンのシューズしかあわないような足型でも特殊なニット素材がうまく足にフィットしてくれると思う。

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まとめ:新構造、高性能、高いフィット感

25.0cmでもシュッ、としたカッコよさがある。

TREK RSL Knitは、はき心地が良いばかりでなく、これまで痛みやアタリに悩まされていた方でも気兼ねなく使用できるレーシングシューズだ。重量も軽く、剛性も十分であるためレースで重宝することだろう。一方で高性能かつ新構造を用いた先見的な製品がゆえデメリットもある。

まず、1度履いてしまえば済む話なのだが、足の出し入れで初めは苦労する可能性がある。アッパー部分が1枚物のニット構造のため、開口部の作りもポッカリと口が空いたような形だ。普段のシューズをはく感覚とは異なるので慣れが必要な部分だ。

ニット素材は通気性のよさ、フィット感の高さがメリットだが、ニットという構造のため泥や砂利が繊維の奥まで入り込んでしまう可能性がある。少しの水の跳ね上げでも汚れやすく、汚れが落ちにくいというデメリットがある。

ニット素材は汚れが入り込みやすい。

そして価格だ。6万円を超える。数年前のS-WORKS EXOSも高価だったが最近のシューズにしてはかなり高額な部類だ。構造や性能を考えると妥当だとおもうが、単純に価格だけをみると高額であり、性能を試す前に諦めてしまう人もいるかもしれない。

それゆえ、一度試し履きをしてみてニット構造と軽量性の良さを実感するほうが良いだろう。

アッパーは1枚モノのニット構造ながら立体的。

完璧なシューズなど存在しないわけだが、これらのデメリットを差し引いてもRSL Knit Roadシューズはメリットのほうが多い。特殊なニット素材でリンタマンしか合わないような特殊な幅広の足にもフィットする。

一般的な足型でもソックスを履くようなフィット感が得られる。これまで素材と素材を縫い合わせてツギハギして作っていたシューズと比べると雲泥の差があった。

しっかりと固定されつつも、開放されたような独特の感覚がある珍しいシューズだ。高額ながらも、ヒルクライマーやロードレースに参加される方で、軽量性や機能が優れたシューズかつ、フィット感や一体感も重視する方に非常に適したシューズに仕上がっている。

Trek RSL Knitロードサイクリングシューズ - Trek Bikes (JP)
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