S-WORKS TARMAC SL8 インプレッション もはや、ターマックではない。

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TARMACの乗り味が好きなら、SL8は乗らない方がいい。

これまで、SL2からSL7まで歴代のTARMACに乗ってきた。「TARMACというバイクはこうだ」というSPECIALIZEDの定義は、SL7まで確実に受け継がれてきたようにおもう。しかし、SL8は歴代のTARMACが積み上げてきた定義をこなごなに破壊し、まったく新しいバイクを創造した。

TARMACを、TARMACたらしめる乗り心地は消え失せていた。これまでのTARMACとは似ても似つかないバイクであるはずなのに、最も好みだった。ここで、大事なことを書き添えておくと、わたしはTARMACというバイクと相性が”とても悪い”。

逆説的にとらえれば、SL8は相性が良い。すなわちSL8はこれまでのTARMACではない。

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TARMAC SL7 インプレッション 機材投資として悩みの多い1台
TARMAC SL6が急に走らなくなった人がいるらしい。SL7が登場したことによってだ。一つだけ言わせてもらうと、TARMAC SL6 DISCはディスクロードとして1から設計し驚異的な軽さを達成したスーパーバイクだ。グランツールで幾度となく勝利し、海外メディアは「最高のディスクロードバイクのひとつ」と評価している。そして、VENGEと同じくらいよく見かけるディスクロードバイクだ。私自身もTARM...

TARMACはいつの時代もロードバイクのベンチマークだった。だから、歴代のTARMACに乗らねばならなかったという理由もある。

しかし、SL7までのTARMACはどうも合わなかった。踏み込んだあとに返ってくる戻りの反応、自分が想定しているタイミングよりもバイクの反応が早すぎて、バイクとの掛け合い、やりとりをしながらリズムを取ることが難しいバイクだった。

SL7は購入後、数ヶ月で手放した。単純に合わなかったからだ。いっぽうで、VENGEは3台買うほど相性がよかった。しつこいようだが、SL7は相性が悪かった。だから、あえて先に言っておきたいことがある。

SL7の乗り心地が気に入っていて、現状の性能に満足しているなら、SL8に乗り換えない方がいい。iphone13をすでに持っていて、14が出たら脊髄反射的に買ってしまうような方は、この続きを読まなくてもいいし、読む必要がない。

対して、iphone13を持っているが、A16とA15プロセッサの間にはどんな違いがあるのか、バッテリー容量がiphone 14は3,279mAhであるのに対し、13は3,227mAでわずか52mAhの違い、対応バンドは一切変わらないし、インカメラのF値も0.1改善されただけか・・・、

と、わずかな差を整理しながら理解し、合理的に物事の判断がデキる方はすこしだけ読み進めてほしい。手がかりになる内容があるはずだ。

SL8はこれまでのTARMACに思い描いていた「TARMAC像」と異なっていた。SL8をひとことに集約してしまえば、「AETHOSのエアロ化」だ。決してSL7のエアロ化でもSL7の軽量化でもない。ましてや、VENGEの軽量化でもない。残念ながら、VENGEの要素はゼロだ。

ここまで読まれた方はTARMAC SL8に対して、どこかモヤモヤとした雲がかかっているようなバイクだと思われたかもしれない。実際のところ、蓋を開けてみればTARMAC SL8の性能はSL7からわずかにしか変化していなかった。

違いか、違いなのか、わからないような”わずかなちがい”を、これからはっきりと見えるように整理しながらみていく。

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乗り心地は、進化?変化?

乗り心地とは、進化するものなのか。

SL7からSL8の乗り心地は、進化というよりも「変化」と表現したほうが適切だ。双方のバイクの特徴をまとめると以下のようになる。

SL7:踏み込んでいる間、あるところまでくると「くるな、くるな」と押し返し、突っぱねるような反応をしつづける。そこからさらに、ねじ伏せるように、パワーを入力して踏み込めたら(れば)、さらに進むような動きもするが、力が及ばなければそれでおしまい。VENGEのように適当に踏んでも進んでくれるバイクとは対照的で、やり取りと意思疎通をすることが難しく感じるバイクだ。マニュアル車のように、クラッチのつなぎ方をスムーズにし、ロスなく加速できれば速い。ライダーの技量に左右される面白みがあると言い換えられるが、私は苦手だ。

SL8:踏み込んでいる間、本来なら推進力に変換されないような見当違いの入力であっても、フレーム側がうまく理解し、そしゃくし、意図をくみ取って「こういう進み方にしたいんだよね」と変換してくれる(感じがする)。SL7のようにライダーの入力に対し、ただただ「反応」するだけではなく、ライダーの入力を受け入れ、ライダーが意図するであろう進み具合をフレーム側が調整し、結果として推進力に変えている(感じがする)。入力する側のライダーと、入力される側のバイク(出力装置としても)との間に、「これぐらい進む感じするよね」というズレがほとんどなく、相性がよく感じる。例えるならば、奈良「中谷堂」の名物“高速もちつき”のような、絶妙なタイミングと相性のよさがある。

SL8は、なぜこのような乗り心地に「変化」したのか。影響していそうなこととしてAETHOSの開発手法や、新しいフレーム設計の技術を踏襲しているからだろう。実際に、SPECIALIZEDが公開した動画の中で開発者のピーター氏は次のように語っている。

「AETHOSのコピペだ」

単純に全てをコピペしたわけではない。主な箇所はBBにつながっている4方向だ。シートチューブ、チェーンステー、ダウンチューブの設計はAETHOSそのものだ。どうりで、踏み込んだときにバイクとのやりとりがしやすく、乗りやすい。

SL8のBBまわり

AETHOSのBBまわり

SL7とSL8で全く異なる乗り味は、根底にある開発アプローチが違っていたことも大きい。SL7のマネージャはキャメロン氏、SL8はピーター氏だ。キャメロン氏がVENGEのローンチのために来日した際にお話を伺ったつながりで、SL7の発表後に連絡して回答をもらったことがある。

TARMAC SL7の当時の開発責任者キャメロン氏との1問1答は以下だ。

TARMAC SL7の開発者キャメロンさんに聞いた 7つの疑問
VENGEのローンチの際に一度お会いしたことがある、Tarmac SL7の開発責任者キャメロンさんから貴重なお話を直接伺った。VENGEの発表から数年が経過した。当時、最新鋭のバイクだったVENGEを自らの手で廃盤に追いやった意図はどこにあるのだろう。そして、改善点や設計の意図とは。今回は、Tamac SL7の「7」にちなんで、7つの質問にTarmac SL7の開発責任者キャメロンさんが直接回答し...

VENGEやSL7の開発では、スペシャライズドのフューチャー部門主任研究員を務めているイングマル氏が開発したCFD(計算流体力学)とFEA(有限要素解析)を実行できるソフトウェアが用いられた。VENGEやSL7などのエアロダイナミクス開発もイングマル氏が仕切っていた。

MIT Sloan Sports Analytics Conference Speaker | Ingmar Jungnickel
Meet Ingmar Jungnickel, Chair of Sports Science Commission, U.S. Speedskating

TARMAC SL7の開発では、目標重量や、サイズの違いによる剛性目標に対して、最適化された形状が見つかるまで計算を繰り返し、最適な形状を探索していった。

しかし、キャメロン氏とピータ氏の開発アプローチは全く異なっていた。ピーター氏の開発アプローチは、BB剛性、フロントエンド剛性、全体的な剛性をテストするために、100,000以上のバーチャルフレームをまず作成する。

AETHOSの開発で明らかになったのは、BBやシートまわりには小径のチューブが最適であること、大径のヘッドチューブにあわせて大径のトップチューブと、ダウンチューブが必要になることだった。SL8の細いシートステーもAETHOSで培われた技術を盛り込んだのだろう。

AETHOSの特徴は、ペダリング時のパワーの受け止め方と、受け止めたパワーの分散方法にあった。ペダリングで生じた負荷は、チューブ形状自体がフレーム全体に分散しながら運ぶため、これまで必要だった剛性を高めるためのカーボン積層がAETHOSでは排除された。

他社メーカーでありがちな、BBまわりだけの剛性アップに頼らず、フレーム全体でパワーを受け止める設計だ。SL8も同様の設計になっている可能性が高く、その結果、AETHOSやSL8は余分な剛性層(贅肉)を取り除くことが可能になり、これまでのバイクでは考えられない軽量化を実現した。

乗り心地の変化は、AETHOSで培った「フレーム全体でパワーを受け止める設計」によるところが大きいと思う。これまでのTARMACに共通していたような”いやな硬さ”は、BBまわりの剛性アップだけでパワーを処理するバイクに共通する特徴だと考えている。

SL8はフレーム全体でおおらかにパワーを受け止めてくれる。乗り心地の良さは、悔しいがTARMAC歴代No.1だ。しかし、一方でTARMACであって、TARMACではない。という解釈もできる危うい性格の変化ともいえよう。

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コンプライアンス6%向上?

「コンプライアンス」という言葉について整理しておく。わたしはカタカナ英語が苦手で、ややこしいから日本語でわかりやすく表現してくれと、いつも思っている。コンプライアンスという言葉の意味でまっさきに思い浮かぶのは「法令遵守」だ。

最近になって、バイクの評価でコンプライアンスという言葉が用いられるようになった。ここでいうコンプライアンスとは、物理学的な意味合いの弾性コンプライアンス、すなわち物体の変形のしやすさをあらわしている。

医学用語でもコンプライアンスという言葉が用いられることがある。肺や血管などに物理的な柔軟さや圧力が加わった際、どれくらい膨らむかを表現する場合だ。

わたしたちサイクリストが、「コンプライアンス」という言葉が書かれたバイクレビューを読むときは、フレームなどの物体がどれくらい変形するのか、という意味におきかえると理解しやすい。

TOUR誌やSILCA研究所が「バーチカルコンプライアンス」という言葉も使っているが、垂直方向の柔軟性、すなわちサドルに対してある力を加えたときに、シートポストからBB付近がどれくらい変形するのか、という意味でとらえればよい。

これらをふまえて、あらためてTARMAC SL8は「コンプライアンスが6%向上」したという。6%だ。硬ければいい、柔らかければいいという単純な話ではないのだが、他のモデルを交え実際の垂直方向の剛性を調べた。

なお、スペシャライズドが言っているコンプライアンスと、同じ意味の値ではないことをあらかじめ補足しておく。

  • VENGE:261N/mm
  • AEROAD CFR:188N/mm
  • TARMAC SL7:156N/mm

エアロ形状は乗り心地が悪いという通説は決して間違えておらず、実際の垂直方向の剛性値にも現れている。VENGEやAEROADは特に数値が高く(≒硬く)コンフォートではない。SL7は156N/mmでVENGEと比較した場合、コンプライアンスが40%も向上していると表現できる。

SL7の156N/mmから6%改善されると、SL8は146.64 N/mmだ。

ただし、値の大小だけで良し悪しの判断ができないのが垂直方向の剛性だ。乗り心地なんて関係なく、高剛性であれば良いと思っているスプリンター目線では、6%コンプライアンスの向上をネガティブにとらえるかもしれない。

突き上げ感を嫌うエンデュランス系のライダー目線では、長時間のライドを考慮してポジティブに考えるかもしれない。物事の切り口によって、良くも悪くもとらえることができる。

また、SPECIALIZEDはプロモーションで「コンプライアンス」をひとくくりで表現しているが、どの方向のコンプライアンスの話をしているのか読み取れなかった。多くの場合、TOUR紙が計測しているライダーがサドルに座った状態の垂直方向に生じるコンプライアンスを示しているように思う。

そして、実際にはフレーム単体ではなく、バイクシステム全体で考える必要がある。別の記事で紹介している通り、乗り心地に関しては「クサリの強さは、一番弱い輪によって決まる」のことばのとおり、タイヤと空気圧が支配的だ。

したがって、フレーム側の柔軟性については、ほとんどプロモーション用途だと思っている。

実際、SL8乗ってもコンプライアンスが改善されているか違いが明確にわからなかった。

踏み込んだときのバイクの特徴と、乗っているときに身体に返ってくる突き上げの話は分けて考える必要がある。一見すると、振動吸収性能が高いバイクは柔らかく、しなやかな印象があるがそうではない。

TARMAC SL8はたしかに乗り心地が良くなっている”はず”だが、激的に乗り心地がスムーズになったり、常套句の「路面からのインフォメーションが無くなった」ということもない。SL7と比べたとしても、変化をライダーが感じとることは難しい。

かといって、地面から伝わってくる振動や、サドル上での突き上げ感は走っている間、SL7だろうがSL8だろうがどちらもまったく気にならない。それこそがSPECIALIZEDが意図しているライドに集中できることの証明にもなるし、ライダーが不快になるような情報を伝えないチューニングなのだろう。

実際にVENGEやAEROADの乗り心地と比べると、SL8の乗り心地のほうが長時間疲れにくく、しなやかさを感じた。40%も改善すればさすがに誰だって気づく。しかし、6%はわからない。誤差だ。

そして、「コンプライアンス6%の改善」がSL8にアップグレードする理由かと問われれば、まったくもってそうではない。これは、はっきりと言える。

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SL7の軽量化、ではなくAETHOSのエアロ化

TARMAC SL8は、TARMAC SL7を軽量化したわけでもなく、空力を改善したバイクでもない。ましてや、VENGEの要素などゼロだ。ヘッドチューブ周りのノーズコーンはVENGEの要素があるらしいが、実際に見るとVENGEとは似ても似つかない。

SL8でVENGEの名前を出したのは、VENGEに未練があるサイクリストを囲い込むためのリップサービスにすぎない。SL8は何者なのか。細部を見れば見るほど、乗れば乗るほどAETHOSだ。シートステーの付け根付近や、シートチューブの造形を除いては、ピーター氏が言うとおり「AETHOSのコピー」だ。

もともと軽量に作られたAETHOSをベースに、エアロダイナミクスを高めたのがSL8だ。そう受け取った。乗り心地はおろか、丸パイプのフレームやBBまわり細部の造形はAETHOSそのものだ。乗り心地に直接影響はしないが、スルーアクスルの型番はAETHOSと同一だ。

かろうじて、シートポストだけは丸パイプを避けた。エアロダイナミクスを考えると丸パイプは最悪の形状だ。TARMACだろうがなんだろうが、自然界の法則で丸型は空力的に最悪の形状だ。Yaw角0°なら前方投影面積だけ気にしていればよいが、実環境ではそうはいかない。

VENGEやSL7の空力開発をしたイングマル氏はもしかしたら今回のSL8には関わっていないのかもしれない。

SL8の開発においてピーター氏の発言力が強いとしても、SL8がAETHOSのように全てが丸パイプにならなくて本当によかったと安堵している。丸パイプは乗り心地は良くなるかもしれないが、エアロダイナミクスとのトレード・オフの関係にあり、空力性能の悪化から逃れることはできない。

SPECIALIZEDが細いと自慢気に言っていたシートポストはたしかに細いが、CANNONDALE SuperSixEVO4やDOGMA Fの細さには遠く及ばない。EVO4とDOGMA Fを所有している身からすると、SL8は全てが太い。

これから登場するバイクのどれもが細身になっていくと考えられるが、SL8のシートポストは新UCI規定のバイクにしては太いほうに分類されるだろう。

後述するが、AETHOSの悪い要素もSL8は引き継いでいる。だから、全てが良いとは言えない。詳細についてはのちほど。

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空力性能のまやかし

「RAPIDEハンドルとRAPIDE CLXをSL7に使えばいい」

SL7ユーザーはこう考えている可能性がある。正解だと思う。不思議なことに、RAPIDEハンドルの在庫が無いらしい。ハンドルばかり売れてしまえば、既存のSL7のドル箱ユーザーがSL8に移行するのをためらってしまう。ハンドルの枯渇が意図的なのかは不明だ。

SL8の空力改善の50%以上はハンドルによるものだという。旧型のハンドルシステムよりも50g軽量になっている。これだけの理由があり、価格が8万前後ならば賢いSL7ユーザーはハンドルだけ変えるだろう。

結局のところ、SL8の空力性能はSL7やVENGEを超えている。しかし、蓋を開けてみれば、改善の大部分はフレームではなく、ハンドルとホイールによるところが大きい。

空力性能は、最近のライダーが最も注目している部分だ。もしも、「空力性能はSL7よりは高い、しかしVENGEはよりは悪い」というプロモーションなど嘘でもしないだろう。そんなことをしてしまったら、SL8が売れなくなる。

実際にVENGEの空力性能よりも優れているかは実験結果が待たれる。おそらく超えてくることは間違いない。ただ、世界最速なのかはわからない。

TARMAC SL7 VENGEよりも遅くSL6よりも重いバイクの意味
本記事は「TARMAC SL7 インプレッション 前編 〜VENGEの時代は終わる〜」の続きです。まだ読まれていない方は、こちらを先にお読みください。世の中にはさまざまなロードバイクが存在している。その中でも「TARMAC」は常に注目され、最先端を行くバイクのひとつだ。私の記憶の中で最も印象に残っているTARMACはSL2だ。TIMEフレームの印象が強いベッティーニが世界選2連覇し、アテネ五輪で金...

空力性能は、実際に走らせてみたときのほうが重要だ。SL7ユーザーは安心してほしい。実際に走らせてみると、SL8は空力性能が良いとは感じなかった。わたしが相対的に比較しているバイクが、世界最速クラスのCANYON AEROAD CFRであることも影響していると思う。

それらを差し引いても、空力性能はいきつくところまで行き着いており、ライダーが感じるほどの性能差がなく空力性能が高止まりしているのが現代の最新バイクだ。また、LAB71のSuperSixEVO4との比較をしてみたが、空力性能に関しては違いがわからなかった。

乱立する「オレオレ世界最速」のバイクであれば、どれも一緒で体感できるほどの空力性能など期待しない方がいい。

新型ENVE SESが世界最速に!TARMAC SL7との風洞実験結果を公開
ENVEのSES(スマート・エンヴィ・システム)が5年ぶりにリニューアルした。SESはロード用に空力を追求したエアロカーボンリムとして2013年にリリースされた。手掛けたのは元F1のエンジニアであり、エアロダイナミクススペシャリストのサイモン・スマート氏だ。リニューアルしたSESは3世代目にあたる。数々の新機能と時代の数歩先を見すえた新型SESは、エアロ性能の向上、軽量化、効率性、そして「Real...
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AETHOSの悪さも引き継ぐ

SL8のDi2ケーブル排出口。

金型を流用したのか?と思うほどチェーンステーの造形はそっくりだ。事実、AETHOSで「これは軽量なAETHOSだからしょうがないな」と納得していたリアディレイラーのDi2ケーブルの排出口が、SL8のチェーンステー下部に空いていた。

AETHOSのDi2ケーブル排出口

この構造を踏襲してしまった事実に対しては、政治家が好んで使う「極めて遺憾」が適切だ。この構造はAETHOSだから許せた。しかし、TARMACにおいては極めて遺憾、最も強い言葉で非難したい。

SL8とAETHOSは軽量化とできるだけ細身にしようと贅肉(カーボン積層)を削っていった結果、チェーンステーとシートステーが交わるスルーアクスルシャフトのネジ山まわりに、Di2ケーブルを通す内部スペースすら無くなってしまった。

ディレイラーハンガーを取り付けるスペースしか用意されていない。

ホース類がむき出しになったAETHOSだからこそ納得できる構造だったが、TARMACで引き継いでほしくなかった。極めて遺憾。

AETHOSから引き継いだ悪い点は他にもある。SL8の造形はシンプルすぎる。AETHOSと同様、フレームの造形に高級感がない。DOGMA F、LAB71 EVO4、Madone SLRの美しい造形、美しい塗装と比べるとSL8は今ひとつに感じてしまった。

他社製のバイクを数多く見て触れてくると、SL8の炭素繊維感や塗装など仕上げがいま一歩と感じてしまった。他社ブランドのハイエンドモデルを所有している場合、所有する喜び、愛着は持ちにくいと感じてしまうかもしれない。

TARMACからTARMACという方には関係のない話ではあるのだが。

「モノ」として所有する喜びよりも、走りや性能を優先しているのがTARMACだと言われたら、たしかにそのとおりだ。実際にはそのほうが重要だ。否定はしないが、レースにも出ず、乗ることが趣味で、所有物として眺めて楽しんだり、走りながらだれかとバイクの自慢話をしたい人にとっては重要になってくる話だ。

同じお金をかけるのなら、SL8以外の別のバイクでもいいような気がする。むしろ、他社のハイエンドモデルと突き合わせて整理し、比較検討する必要がある。SL8は見た目はSL7と見分けがつきにくく、フレーム自体にそれほど大きなアップデートもなく、性能も微増といって差し支えない。

だからこそ、価格に見合った作りなのかSL8の実物をみて再考したほうがいい。

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インプレッション

インプレッションでは、実際にSL8を走らせたときにどのように感じたのかを記している。SL8については、ちまたのライダーや、ユーチューバー、評論家の方々が乗って「大絶賛」の嵐が吹き荒れているのは、すでにご存知のことと思う。

売りたいショップは今回も「TARMAC史上最高の1台」と言う。SL9、SL10が出れば、その言葉がただただ受け継がれていくだけで、意味のない言葉だと今回も呆れた。

残念ながら、これらの記事・評価が世の中に溢れている現状はサイクリストにとってつまらないだろう。そんな評価は逆に必要がなく、「悪いところを理解して買いたい」という方にここからの内容を伝えたい。

以前「RAPIDE CLXユーザーに謝れ!」と匿名DMを頂いた。所有しているとどうしても確証バイアスにおちいるのだろう。理解はできる。今回も同じようなことを言われそうだが、ありのままに感じたSL8について書きまとめてみたい。

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平坦はAEROADやEVO4よりも良い

決して、SPECIALIZEDやTARMACユーザーに媚びているわけではない。

EVO4との厳密な比較は別の記事にまとめる予定なので、楽しみにお待ちいただけたらと思うのだが、平地の踏み出し、巡航、トップスピードに乗せていくまでの様はこれまでのTARMACとは似ても似つかず、はじめて和解したような気分だ。

SL8というバイクとの掛け合いが楽しめた。

冒頭でも記した通り、例えるならば奈良「中谷堂」の名物“高速もちつき”のような、絶妙なタイミングと相性のよさがあった。

だから、SL7が気に入っている人はSL8の乗り心地を嫌うはずだ。嫌いになれず、これでも良いなと思ってしまったSL7のユーザーは、たいして強い思い入れがないか、違いを感じるほど他のメーカーのバイクに乗り込んでいないのだろう。

S-WORKS TARMAC SL7 追加インプレッション 乗り込んで変化した印象をまとめた
10日間、毎日SL7に乗った。TSSは約1500弱で獲得標高は1万メートル超だった。そして、TARMAC SL7というバイクの印象が徐々に変わっていった。正確な表現をすると、SL7に合う力のかけかたが徐々にわかってきた。乗り込むことで性能面の違いが徐々に見えてくることもある。感覚の精度が高まっていく感じだ。TARMACのファーストインプレッションは「VENGEとの相対的な評価」だった。SL7はVE...

SL8を平坦で走らせたときの良さは、AEROADやEVO4よりも良い感触を受けた。速い遅いという単純に表せる物理的な速度の評価ではなく、踏み込んだ時に進んでいくさまが非常に好みだった。

冒頭で、歴代のTARMACで最も好みだと記したように、速度が上がっていくときのバイクとの掛け合い、踏み込みと進んでいく感覚とのズレが非常に少ない。1500gオーバーのクソ重いRAPIDE CLX2をつけて、なんでこんなに軽くバイクが走るのかと疑ってしまうほどに突き進んでいった。

余談だが、重量増のほとんどがリムに行ってしまったRAPIDE CLX2は、まったく使ってみたいと思わないホイールNo.1になってしまった。チューブレスを使わないならCLX1を探し回った方がいい。という、辛辣なことを言うほどCLX2が嫌なのだが、どうしたものかSL8と組み合わせると重さを感じない素晴らしい走りをする。

CLX2が嫌いすぎて、食わず嫌いだったと理解した。SL8と合わせたCLX2はリズムが取りやすく、相性がよく感じる。以前、VENGEとSL7にCLX1を取り付けたときの残念感たるや、当時インプレしないでその日のうちに売却してしまったと、いまだから白状しよう。

TARMAC SL7 インプレッション 前編 〜VENGEの時代は終わる〜
「VENGEの時代は終わる。」SPECIALIZED TARMAC SL7が登場した瞬間、SL6とVENGEの2台は一夜にして陳腐化してしまった。SPECIALIZED自らの手によって。SL7の発表の1ヶ月前にリリースされたEMONDAは軽量に特化したバイクだった。しかしエアロダイナミック性能はそこまでだった。EMONDAの記事でも述べたとおり、ユーザーは何台もバイクを所有できないから「エアロと軽...

インプレしないで売ったホイールは、Lightweight SWISSホワイト、Lightweight オーバーマイヤーTUとCL、Lightweight アウトバーン、そしてROVAL RAPIDE CLX1だ。今ならCLX2を乗り込んでインプレしなければならないとすら思った。

話を戻すと、リム外周重量が重いはずの、好みではないRAPIDE CLX2がよく回り進む。SL8とホイールの相性がいいのか、加速していく過程において、パワーのつなぎやすさは圧倒的にSL7よりもSL8のほうが秀でている。

下手な鉄砲も数撃ちゃ結構進むVENGEとも似つかない走りの特徴で、SL8はフレーム側が雑な入力を”わざわざ拾い集めてくれている”ような好みの乗り心地だった。

わざわざ。

高出力になるとさらに顕著だ。どんなペダリングでも拾ってくれる印象をうける。このひとつひとつの入力を取りこぼさないSL8の特徴が、SL8がライダーと掛け合いながら進むと感じた要因のひとつだと考えている。

ただし、SL8の登りが少し厄介だ。意外かもしれないが。

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登りで化けの皮が剥がれ・・・

疑ってしまうほどの平地性能と対象的なのが登りだ。登り区間で良い動きや進み方の印象をあまり受けなかった。

AETHOSから多くの技術が流用され、軽量化も果たしたものの、いつも練習で使っている登り区間(Strava上では500回近い)において、SL8は「登っていく」という感じをまったく受けなかった。物理的にも、AEROADよりも、人気のEVO4よりも軽いにもかかわらず。

登りの良さは、AETHOS>EVO4>AEROAD>SL8だ。登り専業の方は今からでも投げ売りされているAETHOSを買った方がいい。

意外かもしれないが、この反応はわたしも予想外だった。軽ければ登ると思いきやそうではない。平地での走りが良すぎて、そのイメージのまま「登りだったらどんなに素晴らしいのだろう!」という余計な期待と先入観を、SL8に持ってしまったことも影響したのかもしれない。

確証バイアスは、わかっちゃいるがおちいりやすい。

予想に反して、登りはとにかく普通だった。飛ぶように登るわけでもなく、常套句のギア一枚軽くなるわけでもなく、とにかく普通だ。

CLX2の外周重量増加にともなう慣性の変化を差し引いたとしても、期待したほど登ってくれやしない。重量が6.6kg前後という軽量バイクにしては、予想以上に重い走りをする。

誤解のないようにいうと、峠のタイムは変化がない。いいのか悪いのかは別としてだ。SPECIALIZEDが提示したSL7との比較データーは、現実環境と比べると前提条件が違いすぎてそもそも参考にならないので忘れた方がいいと思う。

登りを走る進み具合は、相性の悪いSL7、さらには比較的相性の良いAETHOSのほうが良いと感じた。SL7で六甲山を登ったときに感じたのは、走らせにくさを感じつつも、踏み込みに対してやや過剰に反応して登っていく走りをした。

SL7の走りは、これはこれでいい。

軽さに反して、SL8には登りで突き進んでいくような、そもそもの軽快感が感じられなかった。AETHOSの登りの良さ、そこから生まれた期待とイメージを、そのままSL8に期待していただけに、登りでSL8を使ったときのギャップが頭から、脚から離れない。

「10進むはず」という自分意思と期待に反して、SL8は、進み方が9か9.5でわずかに歩留まり、ライダーの期待に対して返す成果・結果が登りでは達成できていないと感じてしまった。AETHOSと比較するのも酷な話かもしれないが、クライミング性能でAETHOSにたどり着けるバイクは他社を含め当分登場しないだろう。

たらればの話をすると、AETHOSに乗っていなかったら、AETHOSの登りの軽快さが基準になっていなかったら、どうだろう。

SL8に対して、違った意見を抱いていたのかもしれない。そういう意味では、AETHOSには登りでの優位性がまだまだ残されている可能性がある。

SL8のデーターシートでVENGEとSL7の比較は登場した。しかし、AETHOSは登場しなかった。峠のタイムうんぬんを抜きにすると、登りではAETHOSの方が優れているというのが結論だ。

総じて、SL8の重量、平坦での良い相性を総合的に判断すると、思ったよりも登りでは走らないと感じた。登りにさしかかると、パワーだけがバイクに溜め込まれて放出されないようなフラストレーションが溜まり続ける走り方をする。

平地では感触の良かったリアバッグまわりは、勾配がきつくなるととたんに、ライダーの悶々とした期待だけを溜め込んでいき、山頂に到着しても放出されることはなかった。

平坦で感じたような、感動は訪れることはなかった。

これらの原因について、根本的な理由はわからない。

私とTARMACの相性によるものなのか、それとも剛性が低いのかは定かではない。嫌な予感がするのは、重量剛性比はフレームの軽量化で大幅に(比率上は)改善したものの、実際のBBまわりの剛性、シッティング時のシートポスト剛性などが総じてSL7よりも低くなっているのではないかと勘ぐっている。

AETHOSの優れた設計にもあるとおり、BBだけでなくフレーム全体でパワーを受け止めるという新しい設計思想は、BBまわりの剛性をそれほど高めていない、必要としていないのではないか。

登る際、シッティングでハンドルバーを引きながら、後方に体重をかけ、前方向にペダルを押しだすようにしながら、何度も何度もパワーを掛けるような走り方をするとどうもSL8は走らないと感じる。

では、逆にAETHOSがなぜ登りに優れているのかという問に対しては、正直なところわからない。AETHOSで使用したホイールがアルピニストでフレームとの相性問題もあるだろう。そうすると、SL8にアルピニストを使えば話は変わるのだろうか。

AETHOSにRAPIDE CLXをつけるとバランスが破綻すると感じるように、SL8とRAPIDE CLXの組み合わせでは、登りを走る印象が悪く感じた。AEROADやPCW WAKE6560との組み合わせでは感じなかったこの微妙な差は、AEROADの圧倒的に剛性が高いBBまわりも影響しているように思えてくる。

SL8はSPECIALIZEDが公開している通り、全てにおいてVENGEやSL7よりも確かに速いのだろう。たしかに速く、たしかに峠のタイムも改善されるだろう。

しかし、実際に登ってみると、想像している進み具合のギャップがいつまでも身体に残っていた。SL8は完全無欠のTARMACで、AETHOSのDNAをほとんど受け継いでいるはずなのに。

わたしが感じた登りの評価は、良くなかった。それが結論だ。

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逆を考えてみる

TARMAC SL8に乗りながら、考えていたことがある。

もしも、TARMAC SL7時代のコンポーネントを逆にSL8に載せ替えたら何が残るのだろうか。TARMAC SL7にRAPIDEハンドルやRAPIDE CLXホイールを載せ替えるとSL8に近づくのと同じように、SL8にSL7のコンポーネントを使ってダウングレードした場合はどうなるのだろうか。

重量はSL8が確実に勝り、およそ100g前後の重量削減が見込める。それ以外の空力性能に関しては、ノーズコーンがいくらか良い仕事をするかもしれないが、激的な変化は期待できない。

最終的には、乗り心地と走りの違いだけが浮き彫りになってくる。AETHOSに近いSL8の乗り心地、SL7のTARMACを象徴する走り、この対比が両者の大きな違いになる。とすると、重量、期待できない空力差、全く異なる乗り心地この3つに集約される。

確かにSL7からSL8は進化していた。重量削減と空力の性能向上、そして乗り心地の「変化」を考慮したとき、SL8というフレームに対してなにか強い価値を見いだせるのかというと、よい解釈が思い浮かばない。

どうしても軽いバイクに仕上げたい、6.8kg以下でもなんら支障がない方はSL8が良いと思う。

SL7にRAPIDE ハンドルとRAPIDE CLXホイールを取り付けてSL8に近づく。一方でSL8にSL7時代のコンポーネントを取り付けるとSL8はSL7に近づく。そう考えていくと、SL8はフレームだけで成立するバイクではなくRAPIDE CLXとRAPIDEハンドルによってはじめて成立するバイクであることが見えてくる。

「SL8」というTARMACはSPECIALIZEDがパッケージングした状態で完成するバイクであり、TARMACであって、それ以外の構成ではSL8として成立しないように思えてくる。SL8の性能向上の多くの部分は、フレーム以外の機材に頼っている。

わずかな変化を、いかに大げさに、大きな改善であるかのように見せるのがプロモーションだ。ぱっと見聞きしただけで、SL8はなんとなくすごそうなバイクだと勘違いしてしまいかけた。だから、SPECIALIZEDがおこなったSL8の巧みなプロモーションは、今回も成功したのだろう。

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SL7からのアップグレードは?

SL7からアップグレードする際に気をつけることは3つある。なお、SPECIALIZED信者や、売りたいショップの方向けではないポイントであることを先に書いておく。

  1. SL7の乗り心地が好きなら、SL8はやめたほうがいい。
  2. エアロ性能はハンドルとホイールを変えるだけでいい。
  3. 価格に見合う性能の変化はない。

1つめの「SL7の乗り心地が好きなら、SL8はやめたほうがいい。」は、ここまで書いてきたとおりだ。SL7とSL8の特徴は全く違う。開発者が違うから当然、というよりもSL7に乗っていてAETHOSの乗り心地が気に入らなかったらSL8もやめておいたほうがいい。

私は、AETHOSの乗り心地が好きだ。だからSL8も好きだ。一方でSL7は合わない。日本人の美徳として、物事を曖昧にして、どっちつかずの判断をすることがある。TARMAC SL8の特徴に対して、曖昧さに丸め込んで、なかったことにするのはやめておいたほうがいい。

全く違う、別物だ。

2つ目の「エアロ性能はハンドルとホイールを変えるだけでいい。」は、SL8のフレームでのノーズコーンは、空力性能の改善にそれほど大きな影響を及ぼしていない可能性がある。

SL7でもハンドルバーとホイールを変更すれば、SL7とSL8の差は僅かになるのではないか。費用対効果、資金投資のリターンを考えると、100万以上の金をつぎ込んでSL8で手に入る性能の対価としては、正直なところあまり納得がいかない。

3の話とも類似しているが、SL7で十分だし、費用対効果を正当化するだけの理由も見当たらない。SL7をすでにお持ちならハンドルだけ変えるのが合理的だろう。

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総合性能で勝てるバイクはいない

空力性能、重量だけを考えると、TARMAC SL8に勝てるバイクは数少ない。空力性能はVENGEの208Wを超えてくるだろうし、これだけの空力性能をそなえていながら実測重量で600g台のバイクは現状、存在していない。

ここまで色々と書いてきたが、重量と空力をした考慮した総合性能であればTARMAC SL8がパーフェクトバランス、どのブランドのハイエンドも到達していない領域にたどりついている。

SL7はVENGEの空力を超えられなかった。SL8はVENGEを超え、AETHOSの重量に迫った。SL8という存在は、他社のハイエンドバイクで備えているありとあらゆる性能を補っている。だから、SL8に乗っていれば他社のバイクの性能を羨むことも少なくなるだろう。

これからハイエンドバイクを買う方、難しいことはよくわからないけど、お金はあるから良いバイクがほしいという方はTARMAC SL8がぴったりだ。いっぽうで、SL7ユーザーはどうだろうか。アップグレードするだけの価値と性能があるとは思えない。どの視点でSL8を考えるかによって答えは無数にある。

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まとめ:もはや、TARMACではなく

TARMACが悪いはずがない。

私もそう思っている。しかし、歴代のTARMACが築き上げてきたTARMACらしさは、SL8にはなかった。とはいえ、重量、エアロダイナミクス、乗り心地、どれをとっても満足の行くバイクだ。現代のハイエンドバイクの性能は高止まりしている。SL7でいきつくところまで行き着いた性能から、さらにもう一歩絞り出すような性能の向上を成し遂げている。

SPECIALIZEDも苦労したに違いない。

SL8は、フレームのみならずハンドル、ホイールと総合的なアッセンブルをもって成立する。とすると、別の切り口として、SL8にRAPIDEのハンドルとホイールがなければSL8の価値は減ってしまうのか。おそらくそうだろう。

SL8の性能は、RAPIDEハンドルとRAPIDE CLX2のパッケージングあっての話だ。だから、私のようにホイールやハンドルをあれこれ変える人は、SL8の導入は再考したほうがいいとおもう。AEROADがそうであったように、純正部品を使うのが最速であって、あれこれ変えていけばいくほど世界最速から遠ざかっていく。逆に性能が落ちる可能性が高くなる。

SL8は初期パッケージングで使うべきバイクであり、チューニングの楽しみなど排除されている。こだわりがない方はそのまま使ったほうが合理的だ。

乗り心地に関して、SL8はSL7と別物だった。なんども指摘したように、SL7の乗り心地が気に入っているのならSL8はやめておいたほうがいい。

ただ、乗り心地に関しては、人によって受け取り方が異なる千差万別の感覚だ。だから、私が感じた内容が全てではないし、もしかしたらSL7とSL8は同じ乗り心地だと感じるかもしれない。乗り心地に関しては、必ず乗ってチェックした方がいい。

総合的に考えて、今回のTARMAC SL8は欠点らしい欠点がない(リアDi2ケーブル穴ぐらい)。だからこそ、乗り心地だったり、重箱の隅をつつくようなわずかな変化が目につくのだろう。裏を返せば、完成度が高いことの証明でもある。

総じて、SL8に悪い評価を下すことは難しい。ありとあらゆる性能が、最大限に高められている。ただ、SL7から激的に性能が向上しているわけではないことを考慮すると、SL7も100点満点中、99点に達していたのだろう。

残りの1点を獲得するために、SPECIALIZEDはありとあらゆる方法を考え企てた。SL8が100点だとしたらSL9は?SL10は?これ以上できることは、ノーズコーンを更に伸ばすことぐらいだろうか。

これからもTARMACは、TARMACを超えていくはずだ。しかし、超えようは毎回軽微な変化にとどまるだろう。それでも、長い時間をかけて世代交代を繰り返していくことで、いずれはSL8がTARMACの基準になっていくのかもしれない。

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