世界的な物価高、材料費高騰、それでいて賃金が上がらない状況の最中、ロードバイクという機材スポーツは「お金持ちの趣味」にいっそう拍車をかけた。もはや、ロードバイクなんてスポーツを始めることなど、金銭的に容易がなければ 難しくなってしまった。
それでも、メーカーがラインナップしているバイクは、ハイエンドモデルばかりではない。エントリーグレード、ミドルグレードといったバイクも確実に存在している。しかし、各社が展開するモデルは、搭載されているパーツに対してやすいのか、高いのかは見分けがつかない。
そこで、様々な機材を見てきた経験から「買ってもハズさない」と思えるロードバイクをいくつかピックアップしていくことにした。第1回はコストパフォーマンスに優れつつも、世界最高峰のバイクを生み出し続けているCANYONの Endurace CFを紹介する。
新型105 Di2、12速、カーボン、完成車が31.9万
まず、新型105 R7100のコンポーネントだけで167,752円だ。そこにバッテリー、ケーブル、充電器を含めると合計202,204円になる。大手メーカーは大量にパーツを仕入れてコストダウンを図っているため定価ベースの算出はあまり意味がない。
しかし、完成車価格(31.9万円)のおよそ64%分がコンポーネント代と考えると、CANYON Endurace CF 7の優れたコストパフォーマンスが理解できる。さらに、付属しているコンポーネントの細かい部分にも妥協はなく、むしろコストがかかっている。
105のR7100シリーズであれば、SM-RT70が付属するはずだが、ローターはMT800で上位のアルテグラグレードだ。他社であれば「気づきにくいところでコスト削る」というあざとい商売をする場合がある。CANYONはブレーキローターをけちらずMT800を搭載している。
ホイールはFulcrum Racing 900 DBで実売価格が25000円前後だ。お世辞にも良いと言えないホイールであるものの、初めてロードバイクに乗ることを考えたらメジャーブランドという安心感、そして十分な性能を備えている。
このFulcrum Racing 900 DBを足がかりとして使い、ロードバイクを体験して次のステップアップで別のホイールを買うことを考えると、ある意味適切なホイールアッセンブルだと思う。
タイヤはSchwalbe Oneの32mmが搭載されている。Endurace CF 7は文字通りエンデュランス系のバイクであるため32mm幅で走破性や快適性を求めているようだ。ただ、軽快感や、速さを少しでも求めるのならば28mmに変更したほうが良いだろう。
また、チューブはブチルが入っているためラテックスやTPUチューブに変えると更に走りの性能が変わるので試してみてほしい。
サドルはSelle Italia Model Xだ。特徴としては、サドル中央部分が空いており、サイド部分に柔軟性を持たせた快適性を追求したモデルだ。表面素材には丈夫なSoft-Tekを採用。耐久性が高く摩擦による破れにも強くなっている。長時間乗ることを想定してパッドは厚めだ。
シートポストも快適性を追求したCanyon SP0057 VCLSを搭載している。振動吸収設計が施されている。同価格帯の他社モデルであれば、シートポストは間違いなくアルミだ。しかし、SP0057はカーボン製だ。セットバック20mmで標準的な設計になっている。
ステムはCanyon V13のアルミ製で新設計のハンドルクランプでねじり剛性が最大40%向上している。ハンドルはCanyon H17 Ergobarでこちらもアルミ製だ。ハンドルタイプは Ergoタイプでリーチは短く70 mm、ドロップは130 mmと標準的なサイズだ。
ハンドルとステムは標準的なサイズが標準搭載されている。ただ、乗り慣れていくと自分のポジションに合わせるために異なるサイズを見定めていく必要がある。それまでの足がかりとして、このステムとハンドルを使うのが良いだろう。
フレームとフォークがカーボン
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フレーム
- Canyon Endurace CF Disc
- 材質: カーボン(CF)
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フォーク
- Canyon FK0089 CF Disc
- Material: Carbon
- Steerer tube diameter: 1¼”
- Axle dimensions: 12 x 100 mm
- Brake mount: Flat mount
- Wheel size: 700C
フレームとフォークもカーボンだ。31.9万円の電動シフト12速でありながら、カーボンフレームを展開しているメーカーは数えるほどしかない。カーボンにも様々なグレードがあり、特徴も異なるがアルミフレームと比べても軽量かつ、高剛性という特徴は変わらない。
ロードバイクを初めてみたい方にとって重さは重要だ。軽いバイクのほうが走りやすいし、振り回しもしやすい。アルミで重たいバイクを購入するくらいなら、カーボンバイクを選んでおいたほうが無難だ。
わたし自身もロードバイクを始めた頃、安いアルミを購入したのだが結局1ヶ月も立たないうちにカーボンフレームを購入した。初期投資を考えるとカーボンフレームの完成者は躊躇してしまうかもしれないが、トータルで考えると初めからカーボンフレームの完成車を買うことをおすすめしたい。
ストレージが追加できる
Endurace CFはトップチューブにストレージ(バッグなど)を追加できる。トップチューブに専用のネジ止めできるボルト穴があり、これを使用してストレージなどを確実に固定できる。わたし自身も、ロードバイクを始めたときにフレームに収まるバッグを取り付けていた。
ボルト穴の間隔はユニバーサル規格となっており、標準的なトップチューブボックスに幅広く対応している。
ジオメトリー
今回はエントリーグレードを検討中の人に向けて書いており、ジオメトリーについて知らない方もいると思うため簡単に触れておく。ジオメトリーは自転車の各部の寸法や角度などの設計を数値化したものだ。一覧表や図などで提供される。一般的には、自身の身長にあうバイクであるかの判断基準になる。Endurace CFは8種類のサイズで展開しており、身長158cm以下や197cmまで対応している。
サイズの注意事項としては、2XSと3XSはホイールサイズが小さい。標準的なロードバイクは28インチ(700c)だが、小サイズは27.5インチ(650B)だ。CANYONはどのモデルでも共通して小さなサイズに27.5インチのホイールを採用している。
フレーム設計の都合を考えると、たしかし小さなホイールを選択することが望ましい。しかし、市場に出回るロードバイクホイールが700cであるためホイールの選択肢が少ないというデメリットがある。
XSサイズから28インチ(700c)であるため、Endurace CFであれこれロードバイクを楽しみたい場合は164cm以上のライダーに限定されるだろう。27.5インチ(650B)でも問題はないのだが、なにぶんパーツの入手性や流通が極端に少ない。
「ジオメトリー」なる数値が羅列された表を初めて見た方は、よくわからないと思うので自分の身長に適したバイクを選べばいい。エンデュランスというわりには小サイズではチェーンステーが詰められていたり、ヘッド角度の設計自体はロードバイクそのものだ。
全体的にはロードバイクの基本的な設計が施されているものの、使用するパーツで快適席を引き出しているモデルと言える。そのため、バイクの振り回し自体はクイックになるジオメトリーと読み取れる。
まとめ:コスパは高いがメンテナンスと送料も視野に
ロードバイクをこれから始めたい人にとって、CANYONというブランド自体を知らない人がいるかもしれない。実店舗で取り扱っておらずバイク自体を見かけないはずだ。その理由としてCANYONは実店舗をもたず、直接バイクを顧客の家に届ける販売形式をとっている。
そのため、中間コスト(店舗や代理店のマージン)が発生しないためバイクが”適正価格”なのだ。本来のロードバイクの価格はCANYONの価格程度なのだろう。また、見たこともない巨大な箱が海外から届く。販売価格は31.9万円だが、送料や関税も考慮しておきたい。
ただ、それと引き換えにメンテナンスを行ってくれる店舗を自分で見つける必要がある。CANYONが公開している全国60箇所以上のショップ一覧は以下を参照してほしい。
CANYONは決して安かろう悪かろうなバイクではない。わたし自身もレース用のバイクはCANYONを使用している。もしも、ロードバイク購入しようと考えていてある程度のパーツと、コストパフォーマンスが高いバイクを探しているのならばEndurace CF 7 Di2はおすすめだ。
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