新型ROUBAIX インプレッション 振動吸収は速さにつながるのか?

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「Roubaixは、いったい誰のためのバイクなのか。」

新しいRoubaix(ルーベ)に乗りながら、そんな疑問を抱いていた。現代のバイクに必要とされるのは速さと軽さだ。スペシャライズドのラインナップには、エアロロードのVengeと軽量オールラウンドバイクのTarmacが存在している。メーカーとしては、「軽量」と「エアロ」を印象付けるバイクがあれば、それだけで十分なのだ。

だからRoubaixのようなバイクは私たちには不要で、振動吸収構造なんて重量がかさむシステムも不要だ。「Roubaix」というバイクに対する第一印象は良くなかった。ただのエンデュランスバイクで、VengeとTarmacがあればRoubaixは不要だ。

ただ―――。

今こうやってRoubaixの記事を書き進めていくうちに、「いずれロードバイクはフルサスペンション化していく」という未来が見えはじめつつある。

「Roubaix」というフィルターを通すことで想像できるのはロードバイクの進んでいく道だ。速く走るためのアプローチは「軽量化」と「エアロダイナミクス」だけではない。「振動吸収」はこれからのバイクのスタンダードになりうる可能性がある。

今回の記事は、油圧ダンパーFuture Shock2.0を備えた新型Roubaixをインプレッションする。TarmacやVengeとの比較や、そもそも「振動吸収に意味はあるのか」という根本的な疑問もふまえ、新型Roubaixに迫っていく。

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Future Shock2.0

新型Roubaixで最も注目している新技術は?と聞かれたら、多くの人は「Future Shock2.0」の名を上げるだろう。Future Shock2.0(以下FS 2.0)は新型Roubaixの要の技術であり、伝わってくる不快な振動を積極的に”いなす”効果がある。マウンテンバイクのフロントサスペンションほど大掛かりなシステムではないが、実際に油圧式のオイルダンパーが搭載されており、ダンピング量などが適切にチューニングされている。

FS 2.0は「サスペンション」なのだろうか。メーカー側も明確に「サスペンション」と表現している。緩衝装置としての機能を有した、「路面の凹凸を車体に伝えない機構」ととらえても間違いではないようだ。似たようなフロント側の衝撃吸収システムでTREKのISOSPEEDという技術があるが、ストローク自体がそもそも無く、どちらかというと衝撃吸収素材をつかった簡易吸収システムのような構造だった。

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FS 2.0のストローク(伸縮する量)は20mmだ。FS 2.0では入り込むコンプレッション(圧縮時)と、開放されるリバウンド(伸長時)を同時にコントロールできる特殊な機構を採用している。たとえばMTBのXCであれば、フロントサスペンションのストロークは100m前後が一般的である。実際にRoubaixを使用してみると、MTBほどのストローク量は必要なく、ロードバイクの場合は20mm程度で十分だと感じた。

FS 2.0の調整方法は「オープン」と「クローズ」の2段階で設定をする。MTBのフロントサスペンションの場合は、リバウンド量やロック状態と多様なチューニングが可能だが、FS 2.0の場合は細かなチューニングを抜きにしてONとOFFの2種類(動くor固定)のみを採用した。

新し物好きのライダーであれば、サスペンションのリバウンド量のチューニングを自分好みにしてみたいという人もいると思う。しかし、実際はユーザーが介入できるサスペンションの構造ではない。というのも、スペシャライズドが新型Roubaixに乗ったテストライダーの意見を聞き入れていくと、「動くか固定かのどちらかでよい」という結果に至ったという。

実際にFS 2.0を使ってみると確かにそのとおりで、レースやライド中に細かなチューニングの必要性など全く感じることはなかった。

理由の一つとして、FS 2.0の振動吸収性が高いため、サスペンションの仕事に口を出す必要はほとんどない。たとえ細かなチューニングができたとしても、サスペンションのリバウンド量の調整経験が無い人にとっては無用の長物になりかねない。そのような「システムにおまかせ」考え方は、同社の独自サスペンションシステム「BRAIN TECHNOLOGY」から引き継がれているようにも思う。

スペシャライズドはROCKSHOCKSと共同でBRAIN Shockをというサスペンションを開発している。「考えるサスペンション」という異名を持ち、ライダーの体重や地面からの突き上げを加味し、有効なダンピング性能を自動で発揮する。サスペンションの動きは、サスペンションにお任せ、というAiっぽいサスペンションだ。

私はS-WORKS EPICの2015と2019の完成車を購入した際に使用したが、必要なときに必要な分だけ動作するため初心者の私には都合が良かった。サスペンションのチューニングは素人には難しく、ロードバイクだけ乗っているライダーにとって何が適正なのかはすぐに理解できない。「おまかせ」は一見すると自由度が低い。しかし、そのぶん大幅にハズれることはないのだ。

実際に新型Roubaixを開発したエンジニアは、同社のオフロードバイクの代名詞「StumpJumper」の開発も担当していた。そのためサスペンションや振動吸収の話題に精通しており、新型Roubaixにはそれらの技術や知識がふんだんに詰め込まれている。

FS 2.0の調整方法

次はFS 2.0の調整方法の話に移る。調整方法はいたって簡単なのだが、初めて使うときは一瞬とまどってしまう。ONかOFFの2通りしか調整できないはずなのに「無段階式の調整機構」だと錯覚してしまうのだ。どういうことだろう?ONからOFFに変化させる場合はダイヤルを回転させるのだが、単純に「オープン」と「クローズ」というはっきりとした「ON/OFF スイッチ式」ではないのだ。

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イメージとしては、水道のじゃ口を閉める動作と同じ方法を採用している。徐々に抵抗が増していき、「締めた」という感覚が得られる。FS 2.0の調整の際には、この物理的なクリック感をあえて持たせるようにしている。この特殊な調整スタイルは、サイクリストが「調整しているという実感」をより得られるようにスペシャライズドが配慮した結果だ。

このようなことを書くと、好奇心旺盛なライダーは次のようなことを想像する。「ライド中に調整したい場合はどうするんだ」と。たしかに、水道のじゃ口のようにねじ込み式調整は少々不便に思う。しかし、調整ダイヤル自体はトップキャップ部分に配置されているため、走行中でもダンピングの調整は可能だ。

実際に乗ってみると実感するのだが、OFFの状態でRoubaixを乗ることは非常に少ないと思う。このあたりの話は、インプレッションで詳しく触れる。

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FS2.0の効果についてもインプレッションで触れるが、効果を数値で表すと、リジットバイク(サスペンションが無いバイク)と比べるて5.8%トラクションが向上している。トラクションとは、タイヤと地面が設置している時間のことだ。たとえば、デコボコ道などでタイヤが跳ね上げられて地面に接触していないような状態は、「トラクションが低い」と表現する。

対して、タイヤが地面にへばりついてしっかりと地面に接触している状態は「トラクションが高い」と表現する。ではなぜ、トラクションは重要なのだろうか。単純な話、高速なエアロバイクに転がり抵抗が小さなタイヤを付け、1000Wの入力をしても、空中に浮いている状態では前に進むことはない。

この話は極端な例であるが、地面からの振動でバイクが上下に揺さぶられることでエネルギーロスが生じる。このエネルギー損失をインピーダンスロスという。この話は「【なぜ?】タイヤ空気圧を上げ過ぎると、転がり抵抗が増す実験結果」の記事で紹介している。

【なぜ?】タイヤ空気圧を上げ過ぎると、転がり抵抗が増す実験結果
はじめに 本記事はもともと、「MAVIC UST」の記事の一部として執筆した内容だ。ところがあちらの記事自体が膨大な文字数で構成されてしまったため、別の記事として起こした。本記事で言わんとすることは、「空気圧を上げすぎると抵抗が増して...

速さに対するアプローチは、エアロダイナミクスと軽量化だけではない。私たちが思っている以上に、「振動」との関わり方しだいで速くもなり遅くもなる。路面状況が整ったサーキットを走るスポーツカーでさえも、サスペンション調整は非常にシビアに行われるように、振動吸収は速さを決定する重要な要素である。

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バイクがスムーズに走るということは、速さに置き換えられる。『Smoother is Faster』スペシャライズドは新型Roubaixにこんな言葉を付け加えた。

新型Roubaixで1つ押さえておきたいことは、グレード別でFuture Shockの構造が異なっている。Future Shock2.0はExpert以上のグレードに搭載される。Future Shock1.5(ダンパーがないバージョン)はComp以下のモデルに搭載される。Future Shock1.5はプログレッシブスプリングにより前作と比べて、乗り心地が改良された。

ここまでFS 2.0について詳細を追ってきたが、新型Roubaixの振動吸収はフロントだけではない。ライダーとバイクの接点はハンドル以外にもある。そう、サドル部分だ。

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Paveシートポスト

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振動吸収をうたうフレームに共通しているのは、ハンドル周りとシートポスト部分に何かしらの振動吸収構造を備えている。2つの箇所に共通していることは、ライダーの体の一部が何らかの形でバイクに接触しているということだ。「振動吸収がなぜ必要か?」という問いには、「ライダーが不快に思わないため」という答えが適当だ。

そのためには、地面から突き上げられた何らかの衝撃がライダーに伝わるまえに打ち消される必要がある。その接続点を考えるとサドルまわり、ステアリングまわりになる。今回の新型Roubaixで振動吸収が盛り込まれている箇所としてはハンドル周り(フォークコラム部分)のFuture Shockと、シートポストのPaveの2か所だ。

新型Roubaixの振動吸収の要は「Paveシートポスト」と「Future Shock2.0」の2つだ。ここで重要なポイントは、それぞれが独立した振動吸収の機構ではなく、互いがうまく組み合わさるようにスペシャライズドが設計したという点だ。フロント側、リア側それぞれの振動吸収構造の特性とバランスを考えて振動吸収が高まるようにバイクがトータルデザインされている。

新型Roubaixに搭載されたPaveシートポストは、パッと見は何の変哲もない「ただのシートポスト」だ。現行Tarmacのシートポストと比べてみても大きな違いはない。しかし、それは目に見える範囲だけの話であって新型Roubaixのシートポストは固定するボルトの位置が異なっている。

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新型Roubaixは、「ヒドゥンシートポストクランプ」というシートポストの固定方法を採用している。シートポストの根元付近で(できるだけ深い位置で)シートポストを固定する構造を採用した。固定用ボルトの位置は、シートポスト後部に位置しておりボルトが手の届く範囲まで延長されているのが特徴的だ。なぜこのような構造を採用したのかというと、理由は単純でシートポストをできるだけ”しならせる”ためだ。

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クランプ位置(65㎜ほど奥に配置)を下げることでシートポストのしなり量を増やし、サドルに伝わる衝撃をいなす。一見すると画期的な構造だが、疑問に思うのはサドル高さの違いによる振動吸収性に変化は生じないのだろうか。この点についてもスペシャライズドは計算している。性能を最大限に発揮するためにPaveシートポストは露出する長さは、ライダーが必要なサドル高で合わせれば性能を十分に発揮できる。

もう一つのPaveシートポストの特徴としては、高い快適性だけではなく優れたエアロ性能も発揮する。今回の新型Roubaixの開発でも、エアロダイナミクススペシャリストのクリス・ユーが開発に携わっている。自社の風洞施設Win Tunnelを用いてFuture Shockを搭載したバイクに特化したエアロ形状を突き詰めていった。

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新型Roubaixは現行のVengeを開発した際に使用していたソフトウェア『Free Foil Shape Library』から最適なチューブ形状を選ん(Vengeのローンチ会場でスクリーンに映し出されたが撮影は禁止だった)で開発が行われた。その結果は、Tarmac SL6よりも速く(!)、さらに旧型Roubaixと比較して40km走行時に14秒速いバイクに仕上がった。

新型Roubaixの振動吸収を支える技術は、フロント側の「Future Shock2.0」と、リア側の「Paveシートポスト」から構成され、それぞれが連携することで高い振動吸収性を生み出している。ただ、こうなってくると重量面の重さも気になってくる。次章では重量と使用されているカーボンについてみていこう。

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重量とFacts11

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新型Roubaixは、使用するカーボンをグレードに応じて変更している。S-WORKSはFact 11rを採用しており、Expertグレード以下はFact 10rを採用している。Fact 11rと10rの大きな違いは重量差(もちろんそれ以外にも違いはあるの)だが、56サイズにおける重量差は約115gだ。

また、カラーや塗装の違い(サガンカラーのような厚いラメ塗装は一般的に重いといわれている)によっても重量の違いはあるため、参考程度にとらえておいたほうが良い。実際のフレーム重量はというと、56サイズのブラックカラーで900gを切っている。Roubaixというと重いイメージがあるが、油圧ダンパーや細かなギミックの重量が加算されているのであって、フレーム自体は軽い。

新型Roubaixは、新しい振動吸収機構の部品点数が増えた以上にフレーム細部の軽量化を図っている。ディスクロードかつRoubaixの完成車というと、重量は8~9kgの(間違った)イメージを持っていた。新型RoubaixのS-WORKS完成車の重量はeTap仕様で約7.4kg前後だ(イメージよりも相当軽い)。

今回テストしたS-WORKS RoubaixはSRAM RED eTap AXS仕様のためとても軽く仕上がっている。Tarmac SL6 Discがおよそ6.8kgで600g軽く仕上げられているが、振動吸収の部品を考えてみれば許容できる範囲の重量差だ。

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ジオメトリ

新型Roubaixのジオメトリは「プロ仕様」と「レギュラー仕様」の2展開がある。プロ仕様は2019年の秋ごろ発売で、レギュラー仕様はすでに発売が開始されている。今回テストしたRoubaixはレギュラー仕様だ。2019のパリ・ルーベでジルベールやサガンが使用していたのはプロ仕様だ。

プロ仕様とレギュラー仕様のジオメトリーの違いは、スタックとリーチだ。この2点以外はレギュラーとプロそれぞれ同じジオメトリを採用している。プロ仕様はレギュラー仕様よりもリーチを長くし、スタックは短く設計されている。プロ仕様はTarmacやVengeと非常によく似たジオメトリーを採用した。

これらラインナップの違いは、プロ選手が求める低いポジションを実現できるように設定された。プロジオメトリーには53、57、59の3サイズがある。対してレギュラージオメトリは、多くのライダーが選べるように44、49、52、54、56、58(S-WORKS eTapの場合)というラインナップが存在している。プロジオメトリ―は2019年秋ごろ発売予定で、日本では53、57サイズだけが展開される。

今回テストした「レギュラー仕様」は見るからにバイクの安定性に振ったジオメトリだ。サイズによっても違うが、Tarmacよりもホイールベースとチェーンステー長を延長している。チェーンステー長の設計は長くなるほど安定性が増す。ただ一方で「かかり」が悪いと感じるデメリットもある。

チェーンステー長がバイク性能に与える影響は深く、TTバイクやトラックバイクのチェーンステー長は400mmと短めだ。この手のバイクはカカリが良いと感じる一方で操作性はあまりよくない(まっすぐ進むことが最優先されるため)。バンクや直線が多い競技の場合は、チェーンステー長が比較的詰められたフレーム設計が目立つ。話は少々脱線するが、TIMEフレームが良いと感じていたころのチェーンステー長は398や402mmだった。

ロードバイクの標準的なチェーンステー長は405mm(魔法の数字とも呼ばれている)だが、TIME、デローザ、BH、コルナゴ(旧型)はサイズごとにチェーンステー長を調整していた。シクロクロスバイクの標準的なチェーンステー長は425mmだ。ただし、ここまでの話はリムブレーキの話で、最近のディスクロードの設計は408や410と少々変わってきている。

「リムブレーキをベースに設計したイケてないディスクロード」はたいていチェーンステー長がリムブレーキ時代のそのまま短く詰められている。というのもディスクブレーキ黎明期(クイックリリースやリアエンド135mmとめちゃくちゃだった・・・)に多かったが、最近ではあまり見かけなくなった。というよりもメーカー主導で規格を統一したから、フレームに謎の仕様を盛り込まずに済むようになったのだろう。

対して「ディスクロードとして設計しなおしたフレーム」を見てみると、チェーンステー長はたいてい405mmの名残は一切なく、410mmや415mmが多い。まれに420mmもあるが、どちらかというとチェーンステー長は短い方がかかりが良い印象がある。

プロ仕様とレギュラー仕様のどちらを選んだらよいのかは乗り方による。ただ、Roubaixの安定性を引き出すのならば私はレギュラー仕様をおすすめしたい。ヘッド長が長く、コラムスペーサーが少なくて済むからだ。なおリーチはTarmacよりも11㎜短く、スタックは40㎜長くなっている。

新型Roubaixにもライダーファーストエンジニアードが採用されている。そして、男女共通のジオメトリーを採用している。44サイズという小さなサイズも展開されているため、女性も安心して乗ることが可能になっている。

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インプレッション

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「Vengeと遜色のない空力性能」だとか「Tarmacよりもさらに爽快に走る」というインプレッションを期待していたとしたら、この先、文章が進んだとしても一切登場することはない。新型Roubaixはどちらも満たしていない。ただ、新型Roubaixを一言で表現するとしたら、「速さへのアプローチ」が今までとは異なるバイクだ。

速さを簡単に表現するのならば、エアロダイナミクスを追求し、もしくはとことん軽量化を追求する方向性が最もわかりやすい。空力性能の良さは消費者のウケも良く、プロモーションもしやすい。ただRoubaixという挑戦的なバイクは「振動吸収」という方向性で速さを目指した。根底にあるバイクの設計思想は「エアロダイナミクス」でもなく「軽量化」でもなく、振動を飼いならし、速さに変えることだ。

速さを引き出すための本質的な部分を理解してからRoubaixに向き合ってみると、「Tarmacよりも空力性能が優れている」というのはオマケみたいなものだ。「エアロダイナミクス」も「軽量化」もすべて蚊帳の外に追い出して、「振動吸収」という新しい速さへのアプローチを素直に受け入れたほうがいい。

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エアロダイナミクスと軽量化という要素だけでは、Roubaixというバイクを真に評価するためには少々物足りない。Roubaixは、Tarmacと比較されるものではなく、またVengeと比較されるものでもなかった。もしも、疲労を最小限に抑え遠くまで速く走れるバイクを選べといわれたら間違いなくRoubaixを選ぶ。

そして、下りがテクニカルで荒れた群馬CSCのようなコースでもRoubaixが活躍しそうだ。今まで「コンフォート」という刷り込みで影をひそめていたRoubaixは、レースバイクとしての十分な運動性能を備えていることがよくわかる。コンフォートバイクにカテゴライズされているモデルにありがちな、「モッサリ感」は皆無で、目をつぶって踏むとTarmacと違いがよくわからない。

ただ路面状況が良い広島森林公園や、長距離をできるだけパワーセーブして走るのならばVengeを選ぶ。レース機材として使うのか、それとも長距離を楽に走りたいのか。人それぞれ何を主眼に置き、何を目的とするのか。Roubaixを使う際は「速さの定義」という主軸をどこに置くのかで合う合わないがはっきりする。よって、Roubaixを使う前には速さを明確に定義しておかねばならない。

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参考までに、私は次のように定義する。バリバリにレースに出るサイクリストで1台しかバイクを所有できないとしたら、VengeかTarmacの2択だ。ただ、体へのダメージをできるだけ少なく、ストレスを減らし、コントロール性能をバイクにサポートしてもらうことが目的ならばRoubaixがいい。

自分が求める速さの理想形に対して、適切な軸を持つバイクなのかどうか。そこがRoubaixを使うかそうでないかの分岐点になる。

セッティングとポジション

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乗りやすさ、ポジションの出しやすさという観点で見てもRoubaixは無理なくポジションが出せるジオメトリだ。ただ、レギュラーモデルの場合は攻撃的なポジションや純粋なスプリンターが満足できるようなポジションを出すことは難しい。ただ、逆の見方をすればそんな乗り方をしない人にとっては、むしろVengeやTarmacを選ぶよりも、自転車を操る感覚を磨かせてくれるバイクだと思う。

Roubaixを扱っていくうちに疑問もわいてくる。路面状況に応じたセッティングはあるのだろうか。トラクションの向上が速さにつながるという「軸」があるとするのならば、ベストなセッティングがきっとあるはずだ。しかし、長距離を乗り込んでいくうちに気づくのは、思いっきりもがく以外はフューチャーショックをロックする必要などない。

ロック状態(しかし完全にはロックされない仕様)にしたRoubaixはターマックと同じフィーリングが得られる。スペシャライズドの芸が細かいのは、モデルごとに「進み方の味付け」を変更している点だ。VengeとTarmacでは進ませ方が全く違う。進ませる際の入力方法が異なっている。

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Tarmacの進ませ方は、常に入力をするように回すと進んでくれる。これはLightweightのホイールを進ませるときの感覚と似ている。まるで蒸気機関車の燃料を常に投入し続けるようなイメージだ。Vengeの場合は進ませ方はもう少し余裕のある感じで回してもいい。入力の周期が多少雑でも進んでくれるバイクだ。

RoubaixはロックアウトのON、OFF問わずTarmac寄りの進ませ方だ。決してコンフォート的ではなく、Tarmacと近しいバイクである。という順序でRoubaixを考えていくと、Tarmacに振動吸収装置がついたバイクがRoubaixという整理にたどり着く。重量面のデメリットを振動吸収で補うという考え方ができれば、Roubaixはレースで十分活躍できるバイクといってもなんら違和感はない。

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コラム:TarmacとRoubaixの違い

RoubaixはTarmacよりも速く走れるという。それは起伏のないフラットな環境という条件を付け加えておかねばならない。重量面ではTarmacに遠く及ばないし、機敏な動きを求めるならばジオメトリーを考えてもTarmacが有利だ。

新型RoubaixのレギュラージオメトリはTarmacよりも楽なポジションで乗ることができる。一方で「レース向きなポジションではない」ととらえてしまいがちだが、ジオメトリだけで新型Roubaixを判断してしまうのは少々乱暴だ。

Roubaixが得意とするシチュエーションというのは荒れた道だけではない。実際に乗ってわかるのは「長い時間楽に走れる」という特徴だ。ある限られた時間内に速く走ろうとすると、TarmacやVengeを使ったほうが速いに決まっている。ただ、長い距離を走ったり、ブルベだったり、もしくは様々な条件で走るのならば新型Roubaixのメリットはより高まってくる。

下りの安定性に限って話をすると、TarmacやVengeと比べても新型Roubaixのほうが優れている(下りの安心感がある)。フロントタイヤがしっかりと地面にグリップし、多少の凹凸も追従してくれる感覚がある。安定性が増すことで恐怖感は減ってくれるのだ。MTBの場合も同様にサスペンションのストロークが長く、ヘッド角度が寝ていれば、楽に下れることと似ている。

新型Roubaixの下りは、レースバイクにありがちなふわふわとした設置感が皆無で、タイヤの空気圧を下げたような独特のグリップ感を味わえる。

メーカーが定義しているように「新型Roubaixはレースバイク」かどうかを問われると、シチュエーションによる。ヒルクライムに新型Roubaixを使うかどうかと問われたら、Tarmacを使うだろうし高速なロードレースならばVengeを使うとはっきりと書いておきたい。

では新型Roubaixをレースに投入することを考えたら、どんなシチュエーションが適しているのだろうか。日本のように道路状況が良い場合はRoubaixの出番はなさそうに思えるのだが、あえて私個人の意見をいえばブルベや、体のダメージを極力抑えながら距離を乗り込む際に使用することが適していると思う。自分が出るレースの範囲ではTarmacかVengeを使うとはっきりと書いておきたい。

平たん路という状況下であればTarmacよりもエアロダイナミクスが優れており、測定上は速いという事実は確かにある。新型Roubaixのジオメトリやリーチとスタックの設計を見ると、純粋なレースバイクであるTarmacやVengeを好むライダーはまだ多そうだ。

この3種類のバイクが合わさりVENMAX(勝手にミックスした)なんて最強のマシンが登場しない限りは、それぞれのバイクのメリットを生かせる走り方や、楽しみ方をライダー自身が見つけるのが良い。そう考えると、レースを走らないのならばあえて背伸びをしてTarmacやVengeを選ぶ必要など無いのではないか。

「楽に」そして「速く」移動するのならばRoubaixが適している。背伸びをせず、見栄を張らずに自分が求める「速さのカタチ」を見極めてバイクを選択するのが本当に賢いライダーなのだろう。

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コラム:サスペンションの無い乗り物

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photo:specialized

いつかはフルサスのロードバイクが登場する。冒頭でそう書いた。新型Roubaixを見ていると、本当にそう思わずにはいられなくなる。

世の中にはさまざまな乗り物があるが、たいていサスペンションが搭載されている。自動車、オートバイ、戦車、バス、トラック、電車、レーシングカー、はたまたクレーン車といった建設機械、田植え機のような農業機械までありとあらゆる車両にサスペンションが搭載されている。マウンテンバイクにも当然採用されているが、ママチャリやロードバイクには搭載されていない。

実際に「サスペンションが採用していない乗り物」なんてものは数えるほどしかない。その少数派がママチャリだったりロードバイクだったりする。

ロードバイクに乗っていても、サスペンションなんてものが必要だと思うようなことはなく不便だと思うことも無い。その理由の一つとしては、日本は道路の質が高く常に整備されている環境要因もある。年末になると補修される道路、古くなってひび割れたりすればすぐさま補修が入る。諸外国と比べてみると、道路の質も高く走りやすい。

そうなってくると、振動吸収の必要性は無いように思ってしまうわけだ。ただ、Roubaixに乗ることで今まで忘れていた重要なことに気づかされた。私たちはバイクに乗る際に、振動をうまく体でいなしているのだと。VengeからRoubaixに乗り換えた瞬間、今まで無意識に行っていた「振動を体でいなす」動作を思い出した。

ロードバイクの振動吸収はライダー自身が行うもの、それが当然のことだと体が勝手に覚えているかのようだった。まるで鳥のインプリンティング(刷り込み)のように、初めて見たモノを親として認識するかのごとく。ロードバイクにまたがったその日から、振動吸収はライダー自身が行うという認識をこれまで持ち続けていたのだ。

ただ、Roubaixに乗ることによって、忘れていた事実が次第に蘇ってくる。車道から歩道に移動するほんのわずかな段差、道の継ぎ目、荒れた道、グレーチングを通過するとき。そして下りの高速コーナーでフロントタイヤを押し付けるという気づき。

すべては新型Roubaixに乗ることで思い出す出来事だ。それらはすべてFuture Shock2.0がライダーの代わりに先回りして処理を行った結果、「私は何もしなくてもよいのだ」と気づかされる。

おそらく、これからロードバイクの技術革新が進んでいくと、フロント周りに何かしらのサスペンションが標準装備されていくように思う。ロードバイクはよりマウンテンバイクに近づいていく。フロントサスペンション、リアサスペンション、それぞれをチューニングすることでより速さを追求していくのだ。

おかしな話だろうか。

たとえばF1を考えてみよう。F1ではエアロダイナミクスが特に注目されるが、軽量化やサスペンションのチューニングも速く走るために重要な要素になっている。路面状況がはるかに整ったサーキットであっても、サスペンションが無いレーシングカーなど考えられない。

これら振動の話をロードバイクに落とし込んだ話は、過去の記事「【なぜ?】タイヤ空気圧を上げ過ぎると、転がり抵抗が増す実験結果」という話に詳しく記載している。走っているときに生じる僅かな突き上げは物体を持ち上げ、落下するという運動の繰り返しだ。それらはエネルギーの損失、インピーダンスロスとして定義され、振動はエネルギーを奪っているという結果につながっていく。

これからロードバイクがどのように進化していくのは誰にもわからないが、レーシングカーと同じようにエアロダイナミクス、軽量化、そして振動吸収のサスペンションを搭載と、より自動車に近づいていくはずだ。そう考えていけば、ディスクブレーキがやっと普及し始めたロードバイクは、いまだ過渡期なのだ。

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まとめ:Smoother is Faster

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6世代目のRoubaixは、コンフォートというイメージからレース領域に踏み込んだバイクに仕上がっていた。より軽く、より速く、よりエアロを追求し進化を遂げていた。実際にVengeよりも軽く、Tarmacよりもエアロダイナミクスが優れている。ただ、TarmacやVengeと比較するという狭い範囲だけでは語れないバイクだった。

振動吸収のFuture Shock、男女モデル差をなくしたRider-First Engineered、Vengeで培ったFreefoil shapeと、新型Roubaixはスペシャライズドの最先端技術のすべてが注ぎ込まれていた。

振動吸収が速さにつながるという事実は、今はそれほど認知されていない。ただ近い将来、ロードバイクがフルサスペンション化していったとしても、なんらおかしな話ではない時代がすぐそこまで来ている。むしろサスペンションが備わっていない「取り残された乗り物」にはこれから先の未来があるとさえ思える。

「速さ」を求める戦いは、エアロダイナミクスや軽量化から次のステージに移り始めた。Roubaixの登場で、速さの定義は少しづつ変わろうとしている。

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