バイシクルオブ・ザ・イヤーとRP9への違和感

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ざっくりいうと↓

  • リムブレやミドルグレードからの乗り換えとして最高
  • ハイエンドモデル(SL7やVENGE等)から乗り換える理由は少ない
  • 違和感は、乗る前と乗った後の期待の落差が大きすぎたから
  • 評価は「何から乗り換えるか」で変わる
  • UCI旧規定最後の新型バイクか

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Webメディアや雑誌で異常なまでに高い評価を得ているRP9だが、実際に乗ってみると、これといった特徴や驚きがなかったことに困惑してしまった。フレームだけの性能を抽出し見定めようと、チューブや使用済みのタイヤに至るまで全て移植したうえでの率直な感想だった。

なぜ、このような結果になってしまったのだろうか。

「跳ね返すような剛性」だとか「路面のインフォメーションを消すような乗り心地」といった歯切れのいい言葉を散りばめながら、インプレッションをすらすらと書いてけるかと思いきや、RP9はそうはいかなかった。

RP9と向き合うためには、もう少し別の切り口と角度からRP9というバイクを見つめなおす必要がある。

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正確にRP9というフレームを理解するためには、「なぜ、RP9に熱狂してしまったのか」というバイアスがかかった根本を再定義する必要がある。もちろん、世界のトラックシーンを席巻したBRIDGESTONEが悪いバイクを作るはずがないことも理解している。

トラックバイクのDNAと競輪マネーが使われ、川崎重工業の風洞施設で生み出された究極のオールラウンドバイクが悪いはずなどないのだ。しかし、実際にRP9に乗った瞬間、魔法が解けて、目が覚めた思いがした。

それらは、良い感情ととらえることもできるし、悪い感情ととらえることもできる。過度な期待をしすぎていたのかもしれない。そして、わたし自身が抱いた感情など、日本の優秀なBRIDGESTONEのエンジニアが生み出したRP9の性能とは一切結びついてないことも理解している。

ただ、確実に言えることは、

VENGE、TARMAC SL7、AEROAD CFR、EMONDAといったハイエンドバイクを所有している方に向けて、乗り換えを強くおすすめする記事を書くことはできない―――、

それがRP9というフレームに対する結論だった。

今回の記事は、RP9を取り巻く世間の高評価に対し、自分自身が抱いた評価や感情との乖離について深堀りした。記事を読み終えたとしてもRP9の特徴や性能面がわかるわけではない。ただ、RP9に対する違和感や、言葉にできない想いや疑問を整理した。

絶賛の嵐が吹き荒れるBRIDGESTONE RP9に対して、すこし違った角度から評価を再構築していく。

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動画で解説


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”何”から乗り換えるのか

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RP9の評価は「何から乗り換えるか」でいかようにも変わってしまう。RP9を求めるライダーによっては、「素晴らしい!」と感じるかもしれないし「こんな感じかぁ」と思うかもしれない。

まず、いま使用しているバイクが何であるのか、その基準となるバイクアッセンブルによってRP9の評価が大きく分かれる可能性がある。RP9を求めるユーザーは大きく2つに分けられる。

  1. リムブレーキやミドルグレードから乗り換え
  2. ハイエンドモデルやディスクロード2台目以降の乗り換え

前者の乗り換えユーザーはRP9に感動する可能性は高い。ミドルグレードの価格帯ながら、RP9はPINARELLOのハイエンドモデルに使用されているT1100カーボンを使用したフレームだ。

これまで7.0kgに迫る軽量バイクに乗ったことがなければ、なおさら完成車の軽さに驚くだろう。剛性が高めで反応もよく、エアロダイナミクスの効果も高い。

対して、後者の場合どうだろう。

VENGE(6.8kg)、TARMAC SL7、EMONDAといった名だたる米国ブランドのバイクや、UCI旧規定で最速のAEROAD CFR、そして2018年以降に爆発的に登場したディスクブレーキを搭載した優れたハイエンドバイクをすでに所有しているユーザーたちだ。

後者は、RP9に対しての感動が薄いかもしれない。RP9はクセがなく特徴があまりない素直なバイクという、特別な感情や驚きも発見もない印象の薄いバイクに思えてしまうかもしれない。

理由は単純で、基準となるバイクから相対的にRP9をみるとハイエンドモデルはどれも行き着くところまで到達しており、その差はわずかになっているためだ。

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ここで一歩引いてものごとを考えてみる。潜在的に危惧していたことしては、わたし自身が伝える側として文章に落とし込もうとした時、前者や後者”どちら側”でも不適切だと考えていた。どちらかに偏った見方を続けてしまっては、RP9というバイクを正確に判断できるわけがない。

わたし自身、後者側であることを自覚しているためRP9が特別、良くも悪くも思えなかった。そうなると、インプレッションでは「VENGEやSL7とそれほど変わらない」という結論になる。

「RP9に驚きや変化が感じられない」と率直に思っているものの、ところ変わって世間やプロのライターたちは絶賛している。しかし、自身の評価とのあいだに乖離が生じている。その原因はいったい何なのだろう。

もしかしたら、ものごとの論点、評価に対する切り口がそもそも異なっている可能性はある。

切り口が無数のある一方で、たとえば次のような見方がある。「VENGEやSL7とそれほど性能が変わらないのならば、RP9はコスパに優れてお買い得なのでは」と。

それは先程の前者(ミドルグレードから乗り換える)の立場からすると正しいが、後者(ハイエンドや2台目候補)の切り口でいうならば「SL7やVENGEから乗り換える必要はない」ということになる。

ここで問題なのは、それぞれ別の切り口を議論している点にある。論点として異なる意見と意見をぶつけ合っても答えは定まらない。これらは、対立する意見ではなく、独立して存在する意見だ。

ましてや、「軽量バイク買うよりも体重減らせ」や「バイクのエアロ化よりも人間の空気抵抗のほうが~」といった主張も、論点が異なって(ずれて)いる。このように、「どの切り口で」という前提をはっきりと定義しなければ、RP9というバイクを正しくとらえることはできない。

RP9ひとつの評価に対しても、切り口は無数に存在している。ただ、厄介なのはディスクロードバイクが登場してから一定の年数が経過し、世間の状況が変わってきていることだ。

現代は、技術革新が繰り返されバイクの性能が大幅に向上してきている。RP9に求めることも大きく変化してきている。ディスクロードバイク黎明期の2018年に登場したVENGEと同じ条件でRP9を評価することはできないのだ。

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時代背景と評価

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VENGEが熱狂的に受け入れられた要因のひとつとしては当時の時代背景がある。2018年当時のVENGEの記事を読み返すと、とても新鮮味にあふれていた。その中で、いまとなっては懐かしいキーワードを抽出した。

  • いまだ疑わしいディスクロード
  • ディスクロードなんてブームが過ぎた業界の戦略だ
  • 比較対象はリムブレーキ式バイク
  • あたらしいVENGEはTARMACのエアロ版だ
  • チェーンステーが405mmから425mmに
  • ディスクブレーキに特化した空力改善
  • リムブレーキモデルの販売がないという衝撃
  • リムブレーキモデルが出てほしいとねがう
  • ディスクロード時代の幕が上がる
VENGE DISC 長期インプレ 完結編! ディスクロードの幕が開ける。
*はじめに* 本記事は、VENGEを2000kmほど乗り込み、感じたこと、気づいたことをまとめている。ボイスメモや書き溜めたメモから起こしたものがほとんどであるが、その間にも各メディアや国内のレースでVENGEが話題に上がらない日はなかった。サイクルスポーツ2018年12月号のエアロロードの比較テストやツール・ド・おきなわ2018の優勝など、もはや最速のバイクとして誰も疑うことはないだろう。しかし...

などなど。2018年当時、その時代に求められていた一歩先、いや、SPECIALIZEDは他社やユーザーが想像していたことよりも数歩先を見据えた開発を行い、VENGE DISCを完成させた。

リムブレーキからディスクブレーキに変化していく過渡期に、あらゆる要素をディスクブレーキを基準に最適化したバイクを登場させた。

VENGEが熱狂的に迎え入れたのは、当時のユーザーたちの多くがリムブレーキ(わたし自身もTIME ZXRS)であり、数年経過した今もなお最高峰の空力性能を備えたバイクであることに起因している。

では、全てが新鮮だった2018年から、現代に話を戻すととどうだろう。

グランツールやアマチュアレース問わずディスクブレーキが主流になった。リムブレーキモデルを発売するメーカーはPINARELLOぐらいになった。どのメーカーもドロップシートステーを採用し、VENGEと見分けがつかないようなバイクがそこら中に溢れかえっている。

新型のエアロロードがリリースされると、すぐさま風洞実験室に放り込まれ優劣がつく。SPECIALIZEDが2018年に言っていたとおり、UCIの(旧)規定の範囲ではもはやフレームのエアロダイナミクス改善は限界にきている。ワイヤー内装やエアロハンドルに変更するほうが多くの空力効果の向上が見込める。

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UCIの新規定を採用した高速なバイクがいくつも登場した。チューブは1cmに迫る細さで空力性能は大幅に向上した。弱小メーカーが大手を食ってしまうような状況になった。

カーボン素材の変化もめざましい。軽量で強靭な新しいカーボン繊維TORAY M40Xを採用したCanyon AEROAD CFRやTREK Emondaと、規格も素材も数年前とは比較にならないほどの向上がはかられている。

そして、数年をかけてサイクリストたちはこれらのバイクに乗り換えが確実に進んでいった。旧世代のバイクから、新しい世代の技術が盛り込まれたバイクにシフトしていったのだ。

このような時代背景のさなか、RP9はいったいどのような立ち位置で迎え入れるのが適切なのだろうか。VENGEが登場した2018年当時ではなく、現代における立ち位置だ。率直に思ったことは、RP9は「UCIの旧規定が適応された最後の新型バイク」になるかもしれない。

PINARELLO DOGMA FはRP9と同時期に登場した。しかし、UCI新規定を取り入れていた。UCI規定の改定時期を見越して開発が行われ、シートチューブとシートポストの幅を狭く設計(わずか1cm)し、ダウンチューブまわりを改良することで、空気抵抗を大幅に減らすことに成功していた。

DOGMA Fはいわば、これから到来する時代を先取りしたバイクと言える。VENGEがそうであったように、PINARELLO DOGMA Fもリリースした時期に求められるバイクの1歩先の要素を見すえ、時代に合わせてきた。

PINARELLO DOGMA F - THE ART OF BALANCE - エアロと軽さが融合した芸術作品
(Image credit: Pinarello) PINARELLO DOGMAF14と名付けられるはず、と誰もが予想したバイクがついに登場した。ただ、その数字の接尾辞を捨てさられ、単に「DOGMA F」という名前だった。チームスカイとイネオスを数えきれないほど多くの勝利に駆り立てたバイクがツール・ド・フランスを控え、ついにリリースされた。 新型PINARELLO DOGMA Fをまとめると、、...

UCIの新旧レギュレーションのはざまで、向こう側に行くか、留まるかは開発のマイルストーンによって大きく変わってしまう。RP9は旧レギュレーションの範囲でエアロダイナミクスを追求しリリースされた。

RP9は各社のエアロロードを研究したといわれている。ただ、そのどれもが旧レギュレーションの世界で作り込まれた製品だ。他社が創意工夫をしながら歩んできた道を同じくたどるのならば、その領域には到達できるかもしれない。しかし、超える可能性はとても低くなってしまう。

他社が当時のレギュレーションで求めていたことと、いま新しく生まれ変わったレギュレーションで求められることは大きく変わってしまった。そして、2018年頃と状況が異なっているのはサイクリストも同様だ。

多くがリムブレーキからの乗り換えではなく、すでに所有しているハイエンドやディスクロードからの乗り換える第2波の需要も追加されている。このながれは、ブラウン管テレビから液晶テレビに一気にシフトし、その後の2台目需要では求められる要件が変わり、競争がより激化したこととよく似ている。

RP9に対する想いや、製品としての良さを把握しにくい原因の1つは、VENGEから始まったディスクロード時代の幕開けから、今日に至るまでの時代背景を新たに考慮する必要があるためだと考えている。

VENGE DISC 長期インプレ 完結編! ディスクロードの幕が開ける。
*はじめに* 本記事は、VENGEを2000kmほど乗り込み、感じたこと、気づいたことをまとめている。ボイスメモや書き溜めたメモから起こしたものがほとんどであるが、その間にも各メディアや国内のレースでVENGEが話題に上がらない日はなかった。サイクルスポーツ2018年12月号のエアロロードの比較テストやツール・ド・おきなわ2018の優勝など、もはや最速のバイクとして誰も疑うことはないだろう。しかし...

そして、これから大手メーカーが新レギュレーションを採用しエアロダイナミクスと軽量化を追い求めていくことが明白であるがゆえ、なおさらRP9が「後発の後発」で登場して”しまった”ということに対して、どのように解釈すればよいのか悩んでしまった。

他社がやり尽くしたことを、同じように採用しているようにしか思えなかったため、RP9に対して特別な目新しさは何もなかった。補足しておくと、否定や批判をしているわけではない。どちらかと言うと、私自身がRP9に対して過度な期待や、幻想を、一方的に思い抱いていただけだった。

「TARMAC SL7やVENGEを超えるバイク」としてRP9に抱いていた一方的な思いだ。

「超える」というのは空力性能に限った話だ。バイクにはそれ以外にも重要な要素がある。だからこそ、剛性やその他の要素とは切り離して考えるべき話題ということも考慮しておく必要がある。それゆえ、純粋な「エアロロード」として売り出さず、「オールラウンドモデル」としてRP9を販売した事はBRIDGESTONEの英断だったと思う。

それは、先般の記事でもふれたたとおりだ。

RP9は「現段階」では、非常にバランスの取れたバイクである。とはいえ、純粋なエアロロードではなく、世界最速を目指したわけではない。しかし、リリースの時期が新旧のUCIレギュレーションが入り交じる時期であったため、RP9は「旧レギュレーションの設計」と言わざるを得ない。

それゆえ、RP9を純粋な「エアロロード」として位置づけせず、エアロロードバイクとして”空力だけ”の勝負をあえて行わなかったのは、BRIDGESTONEの英断だったのかもしれない。

ブリヂストン アンカー RP9 インプレッション 前編
ことばを選ばずにいえば、BRIDGESTONE(ANCHOR)のバイクがこれほどまで騒がれ注目を集めたことは、いままで無かったのではないか。 新型のBRIDGESTONE RP9は性能、価格、完成車のパーツ構成と、どの切り口でも海外ブランドに見劣りしなかった。それどころか、完成車に付属しているパーツ構成と価格を考慮すると、太刀打ちできるメーカーは少数といえる。 直販の海外メーカーと同様、それ以上の...

RP9を正確にとらえるためには、「時代背景」そしてユーザーが何から乗り換えるのかといった前提条件の「評価の軸」、さらには他社製品と比較した優位性など様々な要素を考慮し判断する必要がある。

それゆえ、RP9に満足できるかは前提条件としてワイヤー式からの乗り換えなのか、ミドルグレードからの乗り換えなのか、それとも他社のハイエンドモデルからの乗り換えなのか、RP9に乗りたいと思っているサイクリストそれぞれにおかれた条件次第で、満足度はいかようにも変わってしまう。

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ところで、RP9は”買い”なのか

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答えを求めがちなのは、だれしも同じだ。もしも「RP9は買いですか?」という質問に対しては、ここまでの内容で述べたとおり、前提条件の基準によって答えは大きく変わってしまうと答える。したがって以下の3つのパターンに分類し、現時点での答えを記した。

  1. リムブレーキやミドルグレードからの乗り換え
  2. 各社ハイエンドモデルからの乗り換え
  3. セカンドバイクとして追加

ひとつ目は「リムブレーキやミドルグレードからの乗り換え」についてだ。

RP9以外に迷う必要はないと思う。価格や性能のバランスを考えても明白だ。転売ヤーが居たら、格好の餌食になっていただろう。直販のCANYONや1番人気のTARMAC SL7を並べてみてもコスパに優れたRP9の完成車一択だ。

完成車のアッセンブルも”ステムを除いて”最高だ。TOUR紙の風洞実験でROVAL RAPIDE CLXの空力性能をしのいだ、世界最速の50mm DTSWISS ARC 1100が付属している。そして、コンポーネントはバラ売り入手困難なシマノ新型12速を搭載している。

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BRIDGESTONEが提示したお買い得な「マネキン買い」をすれば大満足するはずだ。提示されたアッセンブルを一通り全て購入すると、ある程度の速さと軽さを得られる。BRIDGESTONEが示した組み合わせは失敗しない完成車の買い方だ。

2つ目は「各社ハイエンドモデルからの乗り換え」についてだ。

すでに他社のハイエンドモデル(名前はあえて列挙しない)をお持ちであれば、RP9はピンとこないバイクかもしれない。すでにあなたがお持ちのバイクは、行き着くところまで行き着いた性能を備えており、RP9との性能差は非常に小さい可能性を示唆している。

高価なハイエンドモデルを迷わず、パッと買ってしまった方々は、「いまよりも更に良いもの」を求めてはいないだろうか。求めているものは「更に性能が高いバイク」であり、それほど性能が変わらない(もしくは性能に数値的な裏付けがない)のならば、あえてそのような方々に対して、RP9をおすすめはしない。

3つ目は「セカンドバイクとして」はどうだろうか。

ハイエンドモデル(特に純粋なエアロロード)をすでに所有しているかたで、少し違った汎用性に富んだ無難なオールラウンドバイクが欲しい場合だ。ハイエンドモデルは残し、追加の1台として最高のセカンドバイクを求めるとしたらRP9はとてもいい選択だと思う。

新型12速や世界最速の50mmホイールDTSWISS ARC 1100も付属している。所有しているハイエンドバイクの刺激がなくなってきているとしたら、12速化したRP9は乗る楽しみや喜びを与えてくれる可能性がある。

大きく分けて3つの条件に対して、私自身の答えを記した。もちろんこれが全てではないし、他にも条件は無数にある。RP9は買いなのか、については前提条件によるとしか言いようがない。

すべての人に当てはまるような都合のいい答えなど、どこにも存在していないのだ。

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納期の解釈

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RP9の納期はとうぶん先だという。こうなってくるとどこまで待てるかだ。厄介なのは、UCIの新レギュレーションの超高速バイクが登場し始めているということだ。それは弱小メーカーが巨大ブランドを食う状況になるほど革命的な規格改定になっていることは先日お伝えしたとおりだ。

世界最速のエアロロードバイクが”また”登場!CANYON AEROADを超えた2台とは?
世界最速のロードバイクの記録があっけなく塗りかえられてしまった。これまで世界最速の座を譲らなかったCANYON AEROAD CFRの記録を破ったの1台ではない。空力性能が優れたバイクが同時に2台登場したのだ。 理由は単純だった。2021年1月にUCIのレギュレーションが変更され、フレームの設計が緩和されたためだ。UCIはフレームのトライアングル形状をより大きく、より薄くすることを許可した。フレー...

のんびりと納期を待っているあいだに、SPECIALIZEDが、TREKが、CANNONDALEが、CANYONが、「世界最速の◯◯」や「◯◯史上最速の」というキャッチコピーを引っさげてUCIの新レギュレーションに特化したバイクをリリースしてくる。

すでにPINARELLOはVENGEの空力性能を超えるオールラウンドバイクをリリースした。規定緩和という、これほどわかりやすい変化などない。そして千載一遇の機会に対し、われ先にと、空力改善がほどこされた新製品をメーカーがリリースしないわけがない。

そういう意味では、ブルー・オーシャン状態の今だからこそ「SIMPLON」と「STORCK」のバイクは魅力的にうつる。それも全て、ここまでに述べた「時代背景」によるものだ。では、これから新レギュレーションを採用したバイクが登場したらどうなるだろう。

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市場は間違いなくレッド・オーシャン化し、市場参入時に高付加価値(UCI新規定準拠)を備えていたバイクの市場価値は低下する。世界最速のバイクがタケノコのこのように登場し、一般的な”商品”になってしまう。高付加価値は差別化戦略のひとつであるが、重量、空力、作り込みといった特徴は次第に薄れていく。

そして、商品選択の基準が「市場価格」や「ブランド」に絞られていく。自転車に限らず、家電、車、あらゆる商品に共通していることだ。このような未来が透けてみる状況の最中、RP9の納期を待つかどうかの判断を下すのは容易ではない。

ひとつ言えることは、それは今後もずっと続くということだ。VENGEやSL7、現段階で世界最速のバイクを所有していても同じことだ。上を見上げればきりがない。どこに自分自身の決断の落とし所を見つけ、納得できるか。

納期を待つという決断に対して、納得できる解釈が得られればRP9に限らず待つ価値はあるだろう。

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まとめ:さらなる検証を

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ここまでRP9に関して様々なことを書き述べてきた。バイシクル・オブ・ザ・イヤーを受賞したRP9に感じた違和感や、RP9に対する時代背景をふまえたズレも徐々に補正しながら整理を行っていく必要がある。

大手メディアや雑誌は、顔の見えない不特定多数のサイクリストに向けて情報を発信する必要がある。それゆえ、性能のみならず、価格、入手性、先進性、目新しさ、コンセプトといった総合的な要素を踏まえて適正な評価を下したと推測している。

それらの前提を理解したうえで、時代背景や自分自身が乗り継いできたバイクをふまえて再度考えてみた。多くの人や、ましてや生業としているプロの自転車ライターの方々と、わたし自身の意見が大きく違ったとしても何ら不思議なことではなかった。

「不思議ではない」という結論に至るまでに生じた「違和感」の原因を追求する思考実験は、様々なものごとの切り口や、見方を、考えるきっかけを与えてくれた。VENGEが登場したあの頃と、今とでは、時代やサイクリストが置かれている状況も大きく変わってしまった。

求められるバイクの要件や性能に対する評価も、大きく変わってきたともいえる。それらをふまえ、次回はRP9を自分のモノとしてさらに乗り込み、これから真価を見極めていく必要がある。

バイクの性能は100km、1000km程度、ましてや1日程度ではわからない。限界まで追い込まれた状況や、レースでのハイスピード域、アタックがかかったときの僅かな反応差、長距離を乗ったときのダメージと、あらゆる方面から多角的にRP9を引き続き検証していこうとおもう。

– – – – –

なお、2022バイシクルオブ・ザ・イヤーの記事は↓から読めます。

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