トップカテゴリの選手が指針にする本なのだろう。
■本書の”注意書き”から
本書の前置きにこう書かれている。
『本書は主に、ある程度の期間トレーニングを積み、レース経験のあるアスリート向けに書かれています。これから自転車競技を始めようと考えている人や、トレーニングを始めたばかりの人は、まず健康診断を受けてください』
ということが書かれていることから、来年から、「実業団登録しよう」、「レースデビューしてみよう」という場合は(健康診断を受けないにしても)クラブチームや先輩から基本的な走り方や、集団走行のルール、基本的な練習の仕方をまず学んでから読んでほしい、と自己解釈した。このように幾らかの配慮されているのが、本書の位置づけである事をまず初めに抑えておきたい。
具体的に言えば、必ずしも、ロードバイクを、フィットネス、健康、センチュリーライド、ロングライドといったレジャーに分類されるカテゴリを楽しむサイクリストを対象としていない。その点を購入前には留意せねばならないが、逆にこれから本当に計画的に強くなって、強くなるための近道をしたいのであれば本書ほどレーサーに対して有益なものはない。
次のページではアマゾンのレビューに躊躇したことについて
まず今回、私が購入を躊躇ったのは、日本のAmazonのレビューがあまり良くなかったことだ。かたや、原書も持っているので、以前米国のAmazonの評価を確認している。
50 ☆☆☆☆☆
21 ☆☆☆☆
4 ☆☆☆
2 ☆☆
1 ☆
なかなかこの評価はすごいと思うのだが・・・。日本のAmazonの評価が思いの外、レビュアーの評価が低く、実際どうなんだろう?と、正直疑心暗鬼では有る人も私も含めて多くいることだと思う。実のところ買うのを躊躇してしまったが、率直に言うと、数名のAmazonの評価者の評価から、本書の本来の価値が、日本のサイクリストに伝わらず、読まれない事は、非常に残念であると感じる。(むしろ皆が読まずに自分だけ有益な情報を得ていたほうが徳かもしれないが)恐らくこの”濃さ”は著者のジョー・フリール氏が長年蓄積してきた実績と、成果からノウハウがフィードバックされたものであることは間違いない。
■著者のジョー・フリール氏とは
著者のジョー・フリールが対象としてきたサイクリストについてだが、
・アマチュアやプロのロード、MTB、トライアスロン、デュアスロン、水泳、ランナー
・世界選手権、オリンピック選手
といったトップアスリート達を対象に指導を行なってきた実績がある。従って、本書の対象が自ずと高いレベルを目指すアスリートに絞られる事は明白である。著者、本書が意図する物は何なのかを汲み取り記載していくことにする。
次のページではこの本をどう使うかについて
■シリアスなサイクリストは本書をどのように扱うべきか
私が読んで思ったのは、「全て読んで、全て実践する為の本ではない」
ということだ。何が言いたいかというと、本書の注意書きにも有ったとおり、
「ある程度トレーニングを積んだ選手向け」
に書かれていることは冒頭にも記載した通りだ。私も、チームに入り、実業団で走り、日々トレーニングを積み、まず思うことは、結局の所人それぞれ効果があるトレーニングは異なるということで、正攻法は無い。しかし、遠回りをして、良い結果にたどり着くのか、近道をして辿り着くのかはそれぞれの環境や、経験のある選手が身近にいるか居ないかで大きく別れるところである。そのような時に本書が活用できるのではないか。
強くなる為のプロセスの中では、様々な問題や、トレーニングプランの悩みが出てくる。今行っていることは本当に意味のあることなのか?と。その際に悩ましいのは、解決方法が1つの方法でアプローチする事が必ずしも正しいというわけではない事だ。
本書の狙いを汲み取るならば、自転車というスポーツに対して、真摯に考え、それぞれの疑問に合わせた、解決のヒントを得るために使用するのが本書の位置付けだと察する。本書においては各章ごとに、著者のノウハウから問題に対してのアイデアや、解決法を紹介する構成になっている。章を読み進めて行く毎に、トレーニング方法の「根拠」と「理論」が次第に腑に落ち、理解できる。
次のページでは問題解決の例をあげる
■悩みと改善案の例
私が悩んでいた事を、まさに科学的根拠と、例を用いて紹介している。例を一部上げると
・「高強度を始める前に、どれくらい距離を乗ればよいのか?2000km? 3000km?」
・「ウェイトトレーニングは必要?週にに何回?」
・「回復走の方法」
・「サプリメントは飲んだほうが良いのか」
細かい話で行くと、「ヒルクライムに向いているとされる選手の身長1cmあたり何グラムか?」という、ところまで書かれている。
サプリメントについても詳細に書かれていた。自分で様々な論文を調べて、エビデンスを集め、摂取タイミング等を調べた調査に費やした努力を考えるならば、本書を早めに買っておけばよかったと思う。本書では科学的根拠を用いて説明がされている点が、具体的であり、自転車選手を被験者としているからなおさら信憑性が有る。
まとめとしては、460pと相当ボリュームが有り、一日二日で読めるものでは当然無い。そして章に沿って一つ一つ実践してく事が求められる本でもない。しかし、確実に上を目指す際に出てくる悩みや、改善の方法案を探るための解決策として、さいくりは有効な手助けになる一冊であると思う。