空気抵抗のシミュレーション
ロードバイクの空気抵抗は体感できるものであるが、実際に「見えない空気の壁」であった。しかし、空気抵抗を可視化した動画がある。数値計算ソフトのMATLABで空気抵抗を数値シミュレーションしたものだ。結果がYoutubeに掲載されていたので紹介する。
グラフ上の矢印は流体の速度ベクトルを表している。赤い矢印は流速が速い部分であり、青い矢印は流速が-遅い部分を示している。風は左から右へ向かって定量的に流れているという想定だ。
それぞれ、1人、2人、4人で列車を組んだ状態の計算がされているので、一つづつ拝見しライダーに何が起こっているのか見て行くことにする。
1人で走行した場合の空気抵抗
1人で走行した時に確認できることは、ライダーの前方に赤い矢印が発生している。そして背中部分は流速が遅くなっている。このため、後ろに引っ張られるような関係になっていることがわかる。
ライダーが走ると、魚の尾ひれの動きに似たカルマン渦が発生している。カルマン渦とは、物体が進む際に後方に交互にできる渦のことをさす。旗がなびく、あの動きだと思えば良い。
2人で列車を組んだ場合の空気抵抗
2人で列車を組んだ場合はどうだろうか。サイクリストなら一番興味のあるところだ。先頭の人は当然風を受ける。そしてライダーの前方には1人で走っているのと同じだから、赤い矢印が発生している。しかし、2番目人はどうだろうか。
先頭の背中部分は流速が遅くなっているので、先頭ライダーの赤い速い流速とはことなり、2列目の人の前には青の遅い流速が発生している。
色だけで判断するならば、2列目の人は前方後方ともに流速が遅い事がわかる。よって空気抵抗が、1列目の人よりも小さいことがわかる。
そして、なにより「これは素晴らしい!」と思ったのは「1人で走る場合」と「2人で走る場合」の先頭の人の背中の流速だ。
なにが素晴らしいかというと、2人で走る場合の方が先頭の人の背中の流速が遅い。なぜなら2番目の人が先頭の背中の空気を押しているからだ。そう、ということは一人で走るよりも、後ろに人がピッタリつくことにより2番めの人は先頭の人の手助けをしている。
1人よりも、2人で(むしろ後ろにつきっぱなしでもいい)逃げたほうが良いことが流速からもわかるのだ。これは目から鱗が落ちたと言っていい。
2人で離れた場合の空気抵抗
2人で列車をくみ、ホイール1つ分ほど離れた場合はどうか。まだ2列目のライダーの前には赤の速い流速が発生していないが、わずかなカルマン渦の影響で進行方向前方にやや速い青の流速が発生していることがわかる。
しかし、2列目人はまだまだ空気抵抗の影響を受けているとは言いがたい。
2人でさらに離れた場合の空気抵抗
しかしホイール2つ分よりももう少し離れてしまうとどうだろうか。先頭の人が発生させるカルマン渦に飲み込まれつつ有り、ドラフティングの恩恵はまだ得られているようだがなっていることがわかる。
したがって空気抵抗の効率が良い位置とは、ホイール一つ半ぐらいまでと推測できる。
追いかける構図
それより離れると自体は悪化する。先頭の人のカルマン渦に完全に飲み込まれ、空気が乱された中を進むことになる。もしかしたら少しよけつつ単独走行したほうがカルマン渦に飲み込まれず勧める可能性がある。
チームTTの場合
鈴鹿や実業団ではチームタイムトライアルがある。その時に非常に役に立つ空気抵抗シミュレーションだ。私は何かのデーターで「3列目が一番楽」と見たことがあるが違っていたようだ。
4人で列車を組んだ場合、シミュレーションからもわかる通り、一番恩恵をうけるのは2番目だ。3番目以降の人は先頭、2番目の人が発生させているであろうカルマン渦に飲み込まれている。
空気抵抗が生み出した美しきつながり
上記のシミュレーションから、改めて確認できたことが有る。
- 2番目は流速が遅くなるので楽に進める
- チームTTにおいて2番目の人が一番恩恵をうけている
- ツキイチも先頭の人の速度を上げる手助けになっている。
列車とは、「空気抵抗が生み出した美しき速さのカタチ」と言っても過言ではない。
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