新型Tarmacインプレッションもはやターマックではない

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ついに新型Tarmacに試乗することが出来た。幸運にも好条件で試乗し、SL4との違いを感じられることができた。そこで得られたSL4ユーザーが買い換えるべきか?の問について、そして明確に方向性が変わった新型Tarmacの特徴を、できるだけ正確に書いていきたい。

なお、常に当ブログでも書いていることだが、人間が機材を使った感触をインプレするわけだから「絶対評価」は不可能だ。ここから書く内容は相対評価になる。しかし相対評価の元が私のSL4なので、それら双方の違いを相対的に記述している。

従って、今回は非常に限られた範囲である既存のSL4ユーザー、特に今回大幅にテコ入れがされた小さいフレームサイズ(49,52)の購入の判断材料という非常にターゲットが絞られた内容である。しかし、それ以外のユーザーにも有益な情報になるように構成した。

なぜ、ここまで強く書いているかというと、試乗する条件が整ったことも大きいが、自分の中で初めて明確に「フレームの性能差」を感じるられた事、そして「フレーム単体」の性能というモノが感じ取られた事が衝撃だったからだ。

正直今までフレームというものは、どれも一緒で、乗り込んだら体に馴染むからそこまで違いはないと思っていた。ところが新型Tarmacは違った。SL5というモデル名を付けなかった意味も感じ取れた。というと、周りに「胡散臭い」と言われるかもしれない。しかし、私の中でかなりの特徴の違いを感じられた事は間違いない。

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新型TARMACの試乗条件

前置きが長くなったが、今回非常に好条件で試乗させていただいた。その条件は、TarmacSL4を当チームの練習で150km乗り回す。その脚で帰宅途中(幸運にも)の川沿いで開催された試乗会で、新型Tarmacにすぐさま試乗した。Tarmac SL3からSL4と乗り継ぎ、いよいよ新型ターマックである。

tarmac SL4にしっかり150km乗り込んでから、新型TARMACに乗る。これ以上差を知るための条件はない。

さらに、明確に「フレームだけ」の性能を知りたかった。従って、試乗車にはRovalのCLX40 CLが取り付けられていたが、自分が使っている同型のRoval CLX40に変えた。できるだけ徹底的に機材誤差をなくすことにした。試乗車にはスペシャライズドのTurbo 24が着けられており空気圧も違う。

明確な違いを感じ取るためには、全ての誤差を埋めることが必要である。事実、空気圧一つ、タイヤ幅で大幅に乗り心地が違ってくる。人間は曖昧な生き物だから、感じている感覚が、フレームの性能なのか。タイヤの性能なのか、空気圧なのか、ホイールなのか明確に判断することはできない。

そういう意味でも、かなり機材誤差が少ない「フレームの」インプレを今からお伝えできると思う。これから新型ターマックの購入を検討されている方の、判断材料にしていただけたら幸いだ。

前半は感覚的な話、後半は構造的な話と数値データーを示す。

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新型Tarmacのインプレ 感覚編

まずは、新型Tarmacの感覚的な話を書いていきたい。全体的な新型TARMACの印象は、雑誌などで使い古された言葉「マイルド」という言葉一つで片付くだろう。しかし、マイルドとは何か。優しい、柔らかい、様々な抽象的な言い方がある。ただ、いろんな意味に取られる書き方はしない。私が感じた点をダイレクトに書いていく。

新型TarmacはSL4と明確に違う

数年前、確かに自転車業界は「軽く」「高剛性」の潮流が存在していた。フレームで言うとSUPER SIX EVO。もう少し前は、VengeやFoilといったロードエアロフレームの流れがあった。それらに合わせ、Tarmac SLシリーズは常に剛性を追い求めた。重量剛性比率という「重量に対してどれほど剛性が高いか」を競い合った。

ところが、新型ターマックはそれら「乗り手の人間を置き去りにした」方針から転換した。事実、ドイツの基幹紙TOURMagazineで行われたSL4の剛性数値の試験結果は、49サイズが特に高く、サイズが大きくなればなるほど徐々に剛性値が下がっていくデーターが得られている。

そもそも試乗した感覚は、SL4と新型TARMACでどのように違ったのか。明確にBBからチェーンステイの感覚が違っていた。SL4はBBからチェーンステイまでは、全く微動だにしない「1枚モノ」のようだった。しかし、新型ターマックは違う。

ダウンチューブからBB周りに変わる部分からチェーンステイにかけて、僅かながらクッション(もしくは、しなるような)のような感覚がある。ただ、重要な点をここで言いたい。剛性が落ちたというよりも「ある一定以上から全くたわまなくなる」のだ。

これはただ単に、剛性を落としているだけではないと感じる。おもいっきりフルもがきしても「ある一定のしきい値」以上は抑えこんでくる。SL4はBBからチェーンステイにかけて微動だにしない印象があり、踏んでもビクともしない。

新型ターマックは、思いっきり踏むと剛性のしきい値の様な底がある。そしてしっかり受け止められる印象が得られた。まとめるとBBからチェーンステイが、以下のような感触で違うのである。

TARMAC SL4: 踏んでもびくともしない剛性
新型 TARMAC: 踏むとある程度たわむがどこまでもたわまない

新型ターマックは、ある所にセーフティーネットのような高剛性を残しているようだ。

新型Tarmacのステアリング性能

SL4は切れ込みが結構きつかった。それを操れるとコーナリングはかなりの鋭角で入っていける。ただこれはステアリングがクイック過ぎると言えばその通りだ。新型ターマックを蛇行運転して気づいたことがある。

ハンドル角とステム長が違っていたので、確からしい記述ではないことを留意していただきたい。新型ターマックは大回りする印象が得られた。別の言い方をするならば、「もっさり」している。入力に対して従順な印象である。1の入力に対して1を返すそんな反応だ。

対して、SL4は一気に切れ込む感じだ。1の入力に対して1.5程返してくる。元気がよい印象だ。どちらがいいのかは好みの問題だろう。ただ、SL4は下ハンドルを持ってもふらふらすることがある。

本人の問題もあるだろうが、新型ターマックの方がキョロキョロしないので「安定している」と言っても問題ないだろう。SL4の様な切れ込みは、クリテリウムでも実業団の宮田クリテリウムのような直角コーナーが連続している場合は良い。

ただ、エンデューロやロードレースではSL4のような反応の良いステアリングは必要はないだろう。恐らく落車を避ける時に役立つぐらいだ。

なぜこのようなステアリングになったのか色々調べてみたが、恐らくフォークが変わっている。この辺は、フレームなのかフォークなのか、それとも全体のバランスなのかは私にはわからなかった。ただ、新型ターマックは極端な切れ込みはない。

まとめると次のように表すことができる。

SL4:入力に対してダイレクトに反応する。
新型ターマック:大回りするような遊びがある。

フレームが「大きく」感じる

不思議な感覚があった。私が試乗したフレームは確かに自分と同サイズの49サイズだった。しかし実際に乗ってみると、一回り大きく感じる。非常に曖昧な表現で恐縮だが「お麩」を想像して欲しい。元々の水を含まない乾燥した状態がSL4だとすると、新型ターマックは水を含みやや膨張したお麩に似ていた。

非常に曖昧だが自分の中でパッと感じた事がコレだった。

新型ターマックは明らかにSL4よりも剛性は落ちている。しかし、最高レベルの剛性を持つSL4よりも落ちているのであって、普通のフレームと比べるとまだまだ硬いだろう。SL4よりもいくらか優しいフレームになっているため、その分大きく感じたのかもしれない。

面白いことに、SL4ユーザーなら間違いなく体感できる感覚だ。どれくらい違うのかというと、サイズを乗車中に確認してしまうほどに違う。このフレームが大きい事は良いことなのか、悪いことなのかと言うと人によって判断が分かれるところだろう。

ちなみに私の場合は「調子がいい時=小さく感じる」「調子が悪い時=大きく感じる」のでもしかしたら新型ターマックはどこかジオメトリーで合わないところが有ったのかもしれない。すこしサドルが前に出すぎているように感じたが、すくなからず影響しているだろう。

TIMEもフレームサイズ毎の剛性が違う

今回SPECIALIZEDが施したTarmacの改善点として、あるフレームサイズを基準にした乗り心地を統一設計すること。目新しいものかと思いきや、TIMEやORBEAは古くからその設計手法を取り入れている。TIMEは特に顕著であり、自社工場でカーボンを繊維を編むところから行っているので自由度が高い。

そのため、TIMEは様々な形状を作ることを得意としている。ある種TIMEは先に行き過ぎているかも知れない。TIMEユーザーからしたら「いまさら感」は否めないが熱心なS-WORKSユーザーは「まってました!」という感じだろうか。

そういう意味では、TIMEのフレームに一度乗ってみたいと思うところである。

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新型TARMACの速度域による性能差

ここからは、新型ターマックの速度差の違いによるフィーリングを書いていきたいと思う。正直に端的に書いていく。まず初動から高速域まで違いは感じられなかった。巡航中のフレームは等速運動をしているから、フレームにかかる負荷は低い。

初動~低速における新型TarmacとSL4の違い

違いはわからない。初動は若干であるが違う。SL4で1として感じる初動は、新型において0.9程に感じる。若干タメのような間がほんの僅かにあり、その後の際は皆無だ。SL4が良いのではなく、単純に設計思想の違いだからどちらが良いとはいえない。

高速における新型TarmacとSL4の違い

高速でも違いがわからない。巡航中はフレームよりも空気抵抗や、ホイールの慣性モーメント寄りの感覚になってしまう。フレーム単体で感じられる差はSL4と新型ターマックの間にはなかった。

小さいサイズにおいてダウンチューブが細くなっているが、エアロダイナミクスの効果は感じられない。この辺はフレームのエアロダイナミクスよりも、人間が発生させる抵抗のほうが大きい。この辺についても明確な違いはない。

新型TarmacとSL4で唯一違いがわかる条件

唯一違いがわかる時がある。クリテリウムの立ち上がりを想像して欲しい。アタックがかかった時だ。その際に双方のフィーリングは全く別物である。SL4はカンカン1,2,3,4,5と速していく。新型ターマックはどうかというと、(0.9→1),(1.9→2),(2.9→3),(3.9→4),(4.9→5)と若干のタメの後伸びていく。

この部分がキモなのでもう少し書きたい。数字だけでは伝わりにくいが、新型ターマックは1の入力に対して0.9の反応をする。結果的には1の入力に対して1出力されるイメージなのだが、その瞬間、のこり0.1は一瞬のタメの後開放され1に到達する。

これをウィップ感というのだろうか。恐らくLOOKの586がこのような感じなのだろう。ウィップ感という用語を知らない人のために補足しておきたい。ウィップとは、剛性と合わせて、しなりが生んだ反動を推進力へ変換する感覚をウィップ感と呼ぶ場合が多い。

クロモリのフレームに同様の感覚が顕著に存在するが、「剛性」と「しなり」という要素がれぞれ絶妙なバランスで成立した場合に発生する。新型ターマックも同様に「かかった時」に独特のウィップ感が得られるのだ。

先ほどの(0.9→1)に話を戻そう。1の入力に対して、新型ターマックは0.9しか出力しない、と思いきや絶妙に調整された剛性バランスで残り0.1を「しなり」が生んだ反動で推進力へ変換する。そんな表現ができる。その「しなり」の部分はBBからチェーンステイまでの間で発生しているように思えてならない。

正直新型ターマックのダウンチューブは、殆ど存在していないかのように思える。それほど後三角のした部分が変わっている。このポイントが唯一、新型ターマックとSL4で明確に違う性能といえる。

TARMAC SL4: 1.0の入力に対して1.0出力
新型TARMAC: 1.0の入力に対して(0.9+0.1)=1.0出力

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新型Tarmacのインプレ構造編

感覚編の次は新型Tarmacの構造面について見て行きたい。正直なところ、元々のSL4自体の完成度が高いことからさほど大きな違いないように思える。ただ、ダウンチューブとトップチューブは別モノになっている。また、うしろ三角はいくらか広がっている。

ブレーキを取り付ける部分がどうもSL4よりも広がっているようだ。さらに細かい部分について見ていく。

BBのベアリング直径の変更

ベアリング部の大きさが変わっている。これは公開されていないようだ。なぜわかったのか。パイオニアペダリングモニターに使うスギノ製BBと、Tarmacに採用されているOSBBは相性が悪い。私のフレームにおいて回転問題が発生し15度程狂っている。

その為、行きつけのショップに頼んで、新型ターマックで採用されているBB部のアルミカートリッジを個別に取り寄せられないか聞いてみた。その回答の際にBBの外径が変わっているので、取り付けられないとの事だった。確かにBB部のアルミを確認するとカートリッジが薄くなっている。

SL4のカートリッジはプラスチック製の樹脂であった。新型ターマックのBB部はアルミの頑丈そうなカートリッジである。もしかしたらスギノ製のボトムブラケットの回転問題も発生しないかもしれない。

SL3のダウンチューブの太さに戻った?

新型ターマックの小さいサイズのダウンチューブは非常に華奢に見える。ただ、SL4と比較してだ。剛性を追い求めたSL4と比べると確かに細く見える。ただ、SL3時代からするとさほど変わっていないといえる。SL3は本当に良いフレームだった。全体的なバランスがとれている。

SL3のダウンチューブはSL4程太くなく、まるで新型ターマックのようだ。このため「新型ターマックはダウンチューブが細い」と錯覚してしまいがちだが、SL4が異常に太かったといっても良い。新型ターマックのダウンチューブはサイズそれぞれで異なる太さを持っている。

ただ、新型ターマックにおいて、SL3からSL4に乗り換えた時に感じた、トップチューブとダウンチューブの存在感は皆無だ。むしろ改良されたうしろ三角の方に意識が行き過ぎてしまい、トップチューブとダウンチューブの存在(本当は総合的なバランスだが)は無くなっていると言ったほうが正しい。

小さいサイズほど恩恵がある

49や52サイズのTarmacに乗っていた方は、今回のアップデートにおいて相当恩恵が得られると言える。私自身が49のTOP518を好んで乗っていたが、SL3から乗り換えた時に非常に固く感じた(今は慣れたが)。小さなサイズ程、今回の新型ターマックの乗り味が明確に感じることができる。

また、フレームの特性として、小さいサイズになると非常に剛性が高くなってしまう傾向にある。特に49は顕著にその傾向が見られる。女性でTarmacSL4を乗っていた方も今回の新型ターマックの硬さは適度であり、そこまで脚に来ないのではないかと言える。

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SL4はもはや古いのか

ここで別角度から新型TARMACを見ていく。「Tarmac SL4は古いのか」だ。Tarmac SL4はいわばSLシリーズの最終形態である。このSLシリーズは剛性を追い求めてきた。いわばガチガチのフレームである。SLシリーズのコンセプトでもあり、設計の思想とも言い換えられる。

SL3からSL4に変わった時は「走る」や「BBの剛性が高い」だった。ところが新型はその剛性を否定してきた。要するに何が新しいか、古いかではなく設計思想が異なっている。設計思想が異なれば、自身が好きな乗り味を選べばいい。

では、新型ターマックはどうだろうか。新型ターマックはフレームで差がでていた剛性を「適正」にすることを目指した。サイズ差で剛性のばらつきを無くす方向へシフトした。元々SPECIALIZEDが想定していた「TARMACという剛性」をどのフレームサイズでも感じられるようにした。

SL4はSL4の反応の良さや、硬さがある。パワーが有り、短時間のレースならばSL4の性能を生かせるだろう。かたやロードレースのような脚の削り合いでは、新型ターマックが適任だと言える。ようは自分がどちらの味付けが好みなのか、その違いだけである。

それがSL4の様な剛性の塊が良いのか、新型TARMACのようなウィップするような乗り心地が良いのか人によって判断が別れるところだ。

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まとめ:本気で乗り換えを考えてしまう新型Tarmac

新型TARMACは確かにSL4よりも剛性は落ちている。しかし「剛性が落ちている=走らない」という単純な図式で表す事は出来ないことはここまでで述べた。新型TARMACは(0.9→1)という様なウィップ感のあるカカリ方をする。

SL4とは別物と考えたほうが良い。SPECIALIZEDが公開している伝達効率データについても、新型ターマックの方が秀でている。「硬い=伝達する」という単純な図式でフレームは表せられない事が今回知ることが出来た。

フレームとは、様々な要素の集まりのバランスで決まる。たしかに「SL4から乗り換えても良い」と思えるフレームである。小さいサイズで、硬さに困っていたユーザは特に乗り換えの恩恵が得られるだろう。

極論を言うと、あのSL4の硬さは私のようなホビーサイクリストには必要ないものかもしれない。ただフレームは好みの問題であり「かかりの良さ」を剛性に見いだしている人の場合はSL4が最適だといえる。また、ある程度の剛性を担保しつつ快適な乗り心地が欲しければ新型ターマック一択だ。

以下新型ターマックのまとめを記す。

  • SL4とは別物
  • 小さいサイズ49,52は恩恵が得られる
  • 長い距離、ロードレースなら新型
  • 30~40分ほどのクリテリウムならSL4

このように新型ターマックについて思うところを記載した。個人的な感想であったが参考にして欲しい。以上で新型ターマックのインプレッションとさせて頂きたい。既存のユーザーやSL4に試乗して硬いと諦めていたユーザーは今すぐ試して欲しいし、きっと乗りやすいフレームだと感じる。

最後に未だ公開されていない情報を、一つ付け加えたい。試乗会にてSPECIALIZEDの中の人が「チームカラー出る(かも)」と漏らしていた。恐らくオメガファーマ・クイックステップかティンコフサクソのカラーが出そうな予感だ。私も早くレースで新型ターマックを使ってみたい。

新型ターマックが「SL」の冠を脱いだワケを、是非体験して感じ取ってほしい。

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