- フレーム重量 782g, フォーク重量 321g
- 10W空力性能が向上
- 15%ヘッドチューブ剛性が向上
- エアロードのCP0018一体型コックピットを採用
- 32mmのタイヤクリアランス
- 新しい D 形状のシートポスト
新型アルティメットは、クライミングバイクでもなく、エアロロードでもない。
だったら、何だというのか。6.3kgの重量をみれば軽量バイクそのもので、日本の(非常に小さな)マーケットをみても「ヒルクライムバイク」とアピールしたほうが売れるだろう。しかし、アルティメットは、単なる軽量バイクとは違う目的と、揺るがない設計思想を持って誕生した。
キャニオンが生み出した第 5 世代のアルティメットは、「究極のバランス」に注力したバイクだ。簡単にジャンル分けするなら、「オールラウンドなレースマシン」だ。人気のエアロロードバイクではないものの、平地も走り、上り坂と下り坂どちらでも優れた性能を発揮する。
(と、どこにでも書かれているような内容だが)アルティメットに乗ったライダーはそう思うだろう。
キャニオンが新型アルティメットを語るとき、バランスのとれた性能を強調し、「パーフェクトバランス」というキャッチフレーズを全面に押し出す。そのように刷り込まれれば、ライダーは乗る前からアルティメットに一定のイメージを持ってしまう。
マーケティング上の誇張表現と言ってしまえばそれまでだ。しかし、新しいアルティメットの進化を考えたとき、「この言葉の意味は真実なのか」ということを、実際に乗ってあらためて確かめる必要があった。
アルティメットが登場した際、もはやメーカーのプロモーションは定型文とおりにしか表現できないかと少々退屈に感じてしまった。「空力的に優れている」、「時速45kmで10ワット改善」、「重量削減」、「剛性向上」、「新素材を採用」と。
ここまでは、メーカーのプロモーションとしては、ごくありきたりなことだ。しかし、実際に新型アルティメットに乗ると、「バランスをとる」という一見すると簡単に思える設計思想をいかに重視しているのかが、徐々にわかってきた。
アルティメットがライダーに向けて訴えかけてくる最も重要な要素は、「剛性・空力・重量」だけではない。キャニオンが描くアルティメットの理想形に近づけるために、それ以外のバランスもとった。だからこそ、アルティメットは安易にクライミングバイクという位置づけにもできなかった。
エアロードに搭載されたハンドルとまったく同一のコックピットを採用し、ディープリムも搭載した、キャニオンの新型アルティメットはいったいどこを目指したのか。
今回の記事は、キャニオンの新型アルティメットに実際に乗り、パーフェクトバランスの真の意味を探った。
悩ましき、ハンドル
アルティメットは、AEROADで使用されているハンドル(CP0018)をそのまま使用している。このハンドルに対しては、いまだにさまざまな意見や議論がかわされている。一歩身を引いた結論としては、CP0018をAEROADに使うのは良いと思う。
しかし、アルティメットにCP0018ハンドルを使うことに関しては、合理的な理由が見いだせない。
まず、AEROADは「空力性能に全振りしたバイク」だ。AEROADは世界最速のバイクの称号を得るため、空力性能を特に左右するハンドルまわりを一体型ハンドルで最適化した。空力性能と引き換えに犠牲になったのは、ご存知のとおりポジションの自由度だった。
AEROADは空力性能を尖らせたからこそ、ハンドル周りの犠牲がある程度受け入れられたのだと思う。世界最速の空力性能を手に入れるためには仕方がない制限だ。その制限を受け入れられるのならば、優れた空力性能を手に入れることができる。
いわば、ハンドルは空力信仰への踏み絵だ。
しかし、アルティメットは違う。パーフェクトバランスを掲げたバイクだ。だからこそ、剛性、空力、重量、乗り味、そしてどんなライダーにも制限なくポジションが出せるバイクであるべき、だ。
「べき論」は、きな臭くて好まない。しかし、アルティメットのパーフェクトバランスはCP0018を使ってしまったがゆえに、すこし滲んでしまったように感じた。空力性能を突出した1つの要素として扱う必要がないなら、CP0018は使う必要がなかったと思う。
という考え方が、「アルティメットとCP0018」というテーマの組み合わせにフォーカスした場合の1つの切り口だ。
実際に「アルティメットとCP0018」という組み合わせに対しては、合理的な理由が見当たらない。ただし、パーフェクトバランスという言葉を置いといて、筆者の場合はAEROADで使い慣れたCP0018のハンドルが単純に合っていた、という場合についても考えてみる。
合っている場合は、このハンドルの空力性能や重量はアルティメットにプラスにしか作用しない。しつこいようだが、ポジションの自由度という話を除いてはだ。新しいアルティメットはケーブルが完全に隠されている。対象的にエートスは軽量バイクに振りすぎて、ケーブル類が出ていているところがマイナスポイントだった。
もしも、アルティメットが軽量化に振りすぎていて、ハンドル周りのホース類がニョキニョキと出ていたとしたとしよう。そうすると、空力性能について必ず言及される。
アルティメットを購入する消費者に一度考えてみてほしいことは、アルティメットで新しいハンドル構造をキャニオンが開発しなかったという事実だ。あえて使い古され、問題を改善し検証しつくされたCP0018を踏襲したという、保守的な選択は逆にプラスにもなる。
CP0018のコックピットの完全内装構造は少なからず異論があるが、構造上の問題が解決され問題が落ち着いた2世代目のCP0018は、「安定性」や「信頼性」という部分に関してはバランスが取れていると受け取ることもできる。
剛性
アルティメットのねじれ剛性は、約15%向上した。ニューモデルが登場したときに「前作比○○%の剛性向上!」という話はもう10年以上も続いてきた。集積回路のムーアの法則ではないが、10年前のバイクとくらべると倍以上の剛性アップになっている。
現代のロードバイクはどれもある程度の剛性を備えている。したがって、剛性は主要な優先事項ではなくなったように思う。新しいアルティメットは、落車などのアクシデントに耐えられるように、フレームあたり約30gのカーボンファイバーを追加した。
従来よりも耐久性と耐衝撃性が向上している。新型アルティメットは乗り味以外に、使う上で必要な耐久性や耐衝撃性への配慮をした結果、剛性も上がった。
剛性に関しては、AEROADほど硬くはない印象だ。AEROADはドイツのTOURマガジンのデータや、キャニオンが公開しているデータ上でも硬いバイクとして知られている。AEROADとくらべると相対的にみてもアルティメットは硬くはない。
Emondaよりは剛性が高いと感じたが、Emondaのようにリアバックが揺れるような感覚はアルティメットには感じられなかった。アルティメットはホイールとリアバックが完全剛体のような一体感を感じるバイクだ。簡単な表現をえらぶなら、TARMAC SL7に近い。
この剛性の話も、「タイヤが支配的」という前提で表現している。私はいつも同じホイールと同じタイヤとチューブを使っている。できるだけタイヤの影響を最小限に抑えて乗り込んでいる。軽量バイクにありがちなふわふわとした感覚はアルティメットには感じられなかった。
ヘッド周りの剛性も向上しているというが、CP0018ハンドルが程よくしなやかであるため支える土台としての役割は十分にある。キャニオンの最新バイクはどれも剛性が高く、他社製品と数値的にくらべても頭1つ抜きん出ている。
アルティメットは間違いなく剛性が向上している。しかし、高剛性による跳ね返すような嫌な乗り心地や、脚が削られるような間違えた方向に剛性が高められているわけではなさそうだ。バイクとして、乗り手のことを考えた剛性チューニングだと言っていい。
重量
重量は前作とくらべて増加している。最上位のアルティメットCFRの重量は、ペイントと小物類を含めておよそ762gだ。前作の675gから87g増加している。フォークは321gだ。新しいアルティメットCF SLXは846gで以前とほぼ同じ重量でフォークは351gだ。
シートポストはCFRとCF SLXで異なっている。CFRのシートポストは超軽量の70gだ。SLとSLXのシートポストは110gとこちらも軽い仕上がりになっている。
実際、フラッグシップ モデルの実測重量はわずか 6.30kgだ。ミドルグレードのULTIMATE CF SLX 9 Di2でも6.67kgだ。軽量バイクではないにせよ、この重量はディスクロードとは思えないほどに軽い。
- CFR:フレーム重量 782g, フォーク重量 321g
- CF SLX:フレーム重量 846g, フォーク重量 351g
空力性能
エアロダイナミクスの改善については、高速なエアロ系ロードバイクから乗り換えると精神衛生上は良くない。特にAEROADから乗り換えると、どうしても平坦で遅く感じてしまう。特に下りの速度は顕著だ。AEROADの空気の壁を超えるような体験はできない。
私がアッセンブルした、ローハイトのホイールは別の章で記すが相性があまり良くない。アルティメットであれ、35mm以上のディープリムを使う必要がある。おそらくアルティメットが「パーフェクトバランス」を達成するには、ロープロファイルを使用しないほうがいい。
空力性能に関してあまり驚くことはない、と思っていたのだが技術資料を読み込むと違っていた。アルティメットの技術資料には興味深い一文がある。
新型のアルティメットは、第4世代と第5世代のフレームセットを同一のコンポーネント(ホイールなどを含め)に組み上げた状態で10ワットの向上しているという。この数字はとても興味深い。単純に「フレームだけで」10ワット向上しているのだ。
新旧の比較の場合、ホイールやコンポーネントなど、空力的に差をつけるためホイールやハンドル部分に変更が加える「魔法」がかけられることが非常に多い。そのため、単純に比較することは難しい。RP9がそうで、新型と旧型におけるアッセンブルに大きな差がありすぎて、性能差は当然だろうと思う実験結果も実際にある。
新型アルティメットは、シートポストとシートチューブが従来の丸型からD型に変更された。シートステーもD型、さらにヘッドチューブとボトムブラケット周辺の表面も微妙に更新された。クラウン下部とタイヤ上部の隙間が大きくなり、D型ダウンチューブに空気を通しやすくしている。
また、ヘッドチューブの付け根に微妙な水平方向のシワを入れ、フォークからの気流をダウンチューブの周りにきれいに導く効果がある。空力性能に関しては、同社の世界最速バイクの存在が大きすぎて比較対象にもならない。しかし、SWISS SIDEとの協力でエアロ性能もバランスがとれた設計に落とし込まれている。
空力性能に対する捉え方は人それぞれだ。アルティメットの場合は、空力性能よりもデザインやオールラウンドな乗り心地を総合的に考慮する必要があるだろう。
登坂性能
アルティメットはクライミングバイクではないが、クライミングに強い。
これまで登りでも空力性能最優先でAEROADを使ってきた。アルティメットをいつもの上りで使ってみたが、軽いバイクと、剛性バランスの取れたバイクというのは登っていて単純に楽しい。AEROADは、ノッシノッシと重厚感を感じながら高速に登っていく良いバイクだ。
一方で、アルティメットは明らかに動きが軽く、小さな力を与え続けて軽快かつ高速に登っていくタイプだ。バイクの振りの軽さもアルティメットのほうが勝る。AEROADは一枚板のような感覚があるが、アルティメットは操縦性の良さ、俊敏性と身軽さを感じる。
登りの良さに定評があるエモンダとも違う。エモンダは柔らかさとバネ感を生かして登るタイプのバイクだった。アルティメットは、リアバックやBB周りが硬いためバネ感がほとんどない。もしも、エモンダに頼りなさを感じていた人はアルティメットの硬い上り心地を好むはずだ。
このアルティメットの特徴は、登り区間でアタックがかかったときに武器になる。海外のプロレースの山岳ステージで、AEROADではなくアルティメットが使われた理由もどこか理解できる。登坂時に繰り返されるアタックの応酬に耐えるなら、軽快さと反応性に優れたアルティメットが勝る。
アルティメットはヒルクライムバイクではないにせよ、登りで最終決戦をするライダーにとって有効な機材と言える。乗鞍でラスト数百メートルの勝負など、勾配が長く厳しいほどその真価が発揮できる。
一発の峠のタイムアタックには、アルティメットのほうがAEROADよりも勝るかもしれない。少なくとも、登坂時のリズムの取りやすさや、バイクの振り回しのしやすさはアルティメットのほうが優れていると感じた。
ホイール相性
アルティメットの最強量モデルに付属するホイール、「DT SWISS PRC 1100 Mon Chasseral」はアルティメット組み合わせとしてあまり良くない。カタログ数値が好きな日本人向きだ。6.3kgという目に付きやすいカタログ重量の数値を書くために、あえて選択されただけのホイール、としか言いようがない程に使い勝手が悪い。
とにかく、慣性がない。激坂一発用と割り切れば使えないことはない。しかし、パーフェクトバランスを自称するアルティメットにとって、DT SWISS PRC 1100 Mon Chasseralは逆に足かせだと感じた。DT SWISS PRC 1100 Mon Chasseralでオールラウンドに走ることは想像しにくく、使い方が非常に難しいホイールだ。
本当のパーフェクトバランスを目指すのならば、シマノの DURA-ACE C36チューブレス(1,350g)やENVE SES 3.4を使うべきだった。C36であれば重量、価格共に優れたホイールの1つでもう少し価格も抑えられたはずだ。とはいえ、政治的な理由でDTSWISSの最軽量ホイールを使用したのかもしれない。
それゆえ、ULTIMATE CFR eTapに付属する「Zipp 353 NSW Hookless」や、ミドルグレードのULTIMATE CF SLX 9 Di2に付属する「DT SWISS ARC 1100 50/50」は最高の選択だと思う。DT SWISS PRC 1100 Mon Chasseralは早々に売ってしまって、C36だとかENVE SES 3.4あたりを搭載したほうが相性がいいと感じた。
私は、たまたま借り物のC36をアルティメットに取り付けて使用できた。合わせて65mmハイトのWAKE6550をアルティメットに取り付けた。総合的なバランスを考えると36~45mmほどが合う。使えても50mmまでだ。AEROADになると不思議と50mm以上のホイールとの相性が良くなる。
アルティメットの操縦性や、バイクの重量バランス、バイクとしての性能を考えると36mm~45mmに落ち着くのだろう。エアロ性能に振るのならば50mmが良い。アルティメットをさらにバランスよく使うのならば、上りが多ければ36mm、平坦や起伏に富んだ道を走るのならば50mmの2本体制が良いと感じた。
ジオメトリ
新型アルティメットは、現行のAEROADとほぼ同じジオメトリーを採用しており、旧AEROADほどアグレッシブではない。採用されているジオメトリは、プロではない人にとってより理にかなっているという。
非常に柔軟性を持ったライダーの場合CP0018のコックピットを使うと、ハンドル高さを限界まで低くすることはできないかもしれない。しかし、ほとんどのライダーは問題にならない調整幅だ。
キャニオンはアルティメットをロード用のレーシングバイクと位置づけている。ステアリングを決めるトレール量は59mm前後に設計されており、意図的に機敏な動きをするバイクに設計されている。
アルティメットは豊富なサイズバリエーションが展開されている。アルティメットCF SLXとSLは3XSから2XLまで8サイズある。CFRは2XSから2XLまで用意されている。
チェーンステーの長さはサイズによって異なっている。ほとんどのサイズでは410mmと短めな数値だ。L-2XLサイズでは415mmまでチェーンステーが長くなり、背の高いライダーにもバランスの良い操作性を実現している。
このようなチェーンステーの設計手法は、マウンテンバイクの世界では一般的になりつつある。しかし、ロードバイクの設計ではまだ少数だ。シートチューブ角は全サイズ共通で73.5°というのはどのような設計意図があるのか紐解けなかった。
Canyonはアルティメットのモデル別に異なるサドルポジションで走行することを想定しているという。アルティメットCF SLXとSLのシートポストは、20mmのセットバックだ。より大きなしなりを生かして乗るような一般的なシチュエーションを想定した設計だ。
CFRはセットバックが0mmだ。キャニオンは、プロレーサーが好む前方にサドルポジションをとった乗り方に合うように設計されている、というものだ。実際に乗ると、0mmセットバックよりも使い慣れた20mmセットバックのほうが好みだ。
アルティメットを購入する前に、乗り方をふまえ必ずシートポストのセットバックは考慮に入れておいたほうがいい。
インプレッション
ここまでさまざまな角度からアルティメットを評価してきた。インプレッションでは、ここまでの内容を包含してまとめてみたい。まず「パーフェクトバランス」という言葉で疑ったことは、前作のバイクが「アンバランス」で何か足りなかったのだろうか、という疑問だ。
実際に乗ると、登坂性能は優れている。エアロ性能は同社のAEROADが居る限り「相対的に空力性能が劣るバイク」としての立ち位置は覆せない。おそらく、前作のアルティメットも高い次元で「パーフェクトバランス」だったのだろう。
前作と比較すると、新型アルティメットは重量増による剛性向上が最も顕著だと感じた。TOUR誌の実験でも、フロントヘッド周りの剛性が他社製品とくらべて相対的に低い値だった。ローンチの資料でもしきりに「ヘッド周りの剛性が」と記されていたことからも、以前のバージョンはフロントが柔らかすぎたのかもしれない。
とはいえ、新型アルティメットで特に気になる剛性の変化はなかった。不安に感じなければ、それゆえ十分な剛性を備えているということだろう。特にリア三角の剛性感は(タイヤが支配的であるにせよ)AEROADと近い硬い印象を受けた。
リアエンドは、乗るからに硬く感じる。急勾配で雨が上がった登坂の場合はリアタイヤがズルっと行くことが合った。そして、若干ながらもリアバックは衝撃をもろに受ける印象を受けた。
下りはAEROADのような吸い込まれるような恐怖に近い速度は出ないものの、下り坂でコーナーの途中に段差があっても、不安は感じなかった。奇妙なことに、バイクのフロントからリアまで異様なまでの一体感がある。
エモンダのような軽快さとバネ感は皆無だが、硬いバイクがゆえパワーを掛けつつハイケイデンスで軽快に登るような走り方を好むのがアルティメットだ。
ハンドリングの面では、ほとんど欠点はない。アルティメットはAEROADよりも軽快かつ機敏に動く。私にとっては、純正ステムの長さがほぼぴったりだったのも功を奏した。ハンドルの交換が不可能なことを考えると悪夢だ。しかし、私にとっては良いことだった。
とはいえ、バイクの注文時にそろそろコンポーネントサイズをカスタマイズできる自由度を追加する時期にあると思う。パーフェクトバランスというのならば、バイクフィッティングの要であるステアリング周りの自由度は捨ててはならない。
価格
自転車機材の値上が行われる最中、アルティメットは豊富なモデルバリエーションと魅力的な価格設定がなされた。Canyonのアルティメットは、3種類のフレームバージョンで形状は同様、カーボンファイバーのレイアップと含有量が異なる。
最上位モデルは、軽量モデルのアルティメット CFR Di2だ。シマノ最新のワイヤレス12速電子グループセット「DURA-ACEDi2」と、新型「DURA-ACE両面パワーメーター」が付属する。ホイールは、DT SWISS PRC 1100 Mon Chasseralのカーボンクリンチャーだ。
タイヤはSchwalbe Pro One TT Skin、サドルはパッドなしのSelle Italia C59 カーボンサドルを搭載している。重量はMサイズで6.3kgだ。価格は1,259,000円。
SRAMファンには、ULTIMATE CFR eTapがある。SRAM Red eTap AXSワイヤレスグループセット(パワーメーター付き)、Zipp 353 NSWチューブレスカーボンクリンチャー(実用的)、シュワルベPro One TTタイヤ、フィジークAntares Versus Evo R1 Adaptive 3D プリントサドルを搭載している。
重量は6.66kg、販売価格は1,319,000円だ。
フレームセット売りもある。フレーム、フォーク、ヘッドセット、コックピット、シートポストに加え、DURA-ACEの油圧ブレーキキャリパーも付属しているので、自分でホースを通す必要はない。価格は599,000円だ。
最も人気が出そうなモデルが、ULTIMATE CF SLX 9 Di2だ。DURA-ACE Di2 12速ワイヤレスグループセット、50mmディープのDT SWISS ARC 1100エアロカーボンクリンチャー、シュワルベプロワンタイヤ、カーボンレールのSelle Italia SLR Boost Superflow Carbonサドルを搭載している。
車両重量は6.67kgで販売価格は1,049,000円だ。
「パーフェクトバランス」を価格でも証明したのが、アルティメットCF SLX 8 Di2だ。シマノアルテグラDi2ワイヤレス電子グループセット(4iiiiパワーメーター付き)、50mmディープのDTスイスARC 1400エアロカーボンクリンチャー、シュワルベプロワンタイヤ、Selle Italia SLR Boost Superflow Ti316サドルを搭載している。
重量は7.10kg、販売価格は779,000円だ。
まとめ:パーフェクトバランスだとしても
いろいろと目をつぶって、キャニオンがアピールするとおりに(100歩譲って)アルティメットは「パーフェクトバランス」だとしよう。とすると、ここまで紹介してきたとおり「剛性」「軽量」「空力性能」をミックスしたバイクが出来上がる。
一方で「何も尖ってない汎用的なバイク」とも言い換えられる弱みもある。
バランスを決定づける要素には複数ある。先程の3つの要素以外にも「乗り心地」が不快であれば、バイクとして何の意味もない。この乗り心地というのは(タイヤが支配的という話はいったん置いといて)ライダーの好みに左右される部分が大きい。
バイクの設計は、ある方向性を持って「味付け」される。味付けがライダーに受け入れられるか、そうでないかはライダー自身が決めることだ。筆者自身は、VENGEは好きだがTARMACは好きになれない。AEROADは好きだが、アルティメットがこれから好きになれるかは未知数だ。
前作比10ワットのエアロダイナミクスが改善されても、6.3kgの重量を達成しても、乗り心地が悪くては意味がない。走っていて楽しいバイクは確かに存在していて、同社のAEROADがそうだ。
乗り心地に影響を及ぼしそうな、前作の直径27.2mmの丸型シートポストからD型に移行したことは評価できる。TREK EmondaがHEEDSを用いて「バランスを優先」して丸パイプを残した。このように、D型は空力性能と乗り心地のトレードオフの関係にある。
タイヤクリアランスは、従来のアルティメットの700×30mmから、新型では700×32mmと若干改善された。新型アルティメットには、リアに28mm幅、フロントに25mmまたは28mm幅のタイヤが装着されているが、快適性とバランスを重視するのならばもう少し太いタイヤを使用するほうが良いだろう。
ボトムブラケットにはPF86プレスフィットだ。そろそろ圧入式はやめてT47BBに変更しても良い時期だと感じた。バランスを考えると古臭い圧入式や、ダイレクトマウントハンガーがいまだに純正品としてないこと、ハンドル周りの自由度のなを考えると、パーフェクトにはもう少し課題が残っているバイクだと感じた。
バランスを重視する際に、開発者も当然優先度を着けている。細かな要素よりも、重要な要素を優先させ、誰にでも扱いやすく仕上げた。それゆえ、尖った性能はないがそれこそがアルティメットというバイクなのだろう。