今月号のチクリッシモの拍子に目を奪われる。
プロ選手のポジションは我々アマチュアサイクリストには参考にならないが、観察しているとプロ選手に共通していることがある。ダウンチューブと膝下が並行していること。ファビアンカンチェラーラはタイムトライアルや、ロード共にこの傾向が強い。
で、このポジションを実現しようとするとサドル後方に座っているとこの形にならない。ではなぜこのようなポジションが生まれるのか考えてみる。第一にサドル前方前よりに乗っている。逃げる選手がエアロポジションを取るとき、この前乗りが多く見られる。実際ローラーで鏡を見ながらやってみるとわかることがある。
カンチェラーラもダウンチューブと平行に。
このダウンチューブと平行に膝下が位置するように見える動きは、脚の裏側の筋肉をよく使う。具体的にはハムストリングを総動員している印象。そして臀筋とハムの間に力を感じながらペダリングできる。この場合、脚前面の大腿四頭筋類はあまり負荷がかからず、サッカーのように蹴るような筋肉の使い方はしなかった。
このポジションでわかるのはタイムトライアルのポジションでペダリングした時と同じ感覚を得た。ロードに落とし込んだ場合、負荷を上げていくとだんだんと前乗りになったことは無いだろうか。あの徐々に「体が楽なポジションを探していく」時に前乗りになっていく。なぜ、そのようになるのか考えてみると、脚前面の筋肉を逃がすかのような動きを自然とするようだ。
この傾向を狙って、スペシャライズドはパワーサドルを作った。普段のロードで前乗りでもパワーが出せるようにサドルを設計している。ノーズがいくらか広くできており、前乗りでも効率の良いペダリングができるとされる。
ただ、忘れてはならないのはこのダウンチューブと膝下が平行になるフォームだけ真似しても本質は得られない。適切なフレームサイズ、サドル高さ、ステム突き出し量、体幹、強靭な筋肉を基に、いかに低いポジションで効率よく大きな筋肉をエコノミーに使うか、その結果として生まれたのであってフォームだけを真似するのは本末転倒だ。
私はエンジニアであって、フィッターではないので確からしいことは言えない。ただし自分の体を観察すると、結果として見える状態に至るまでのプロセスや仕組みの方が、重要な要素を締めている。形やフォームを真似するのも単純で良いがまず「なぜそうなったのか」を深く考える。それらの到達地点は、結果同じところへと辿り着くのだ。