私は、12年間同じブランドのインソールを使い続けている。よく考えたら、機材に飽きやすい私が一つの製品を使い続けるだなんて、自分でも驚いている。というのも、今回の記事を思い出したように書いているのには理由がある。いつも面白い質問が飛んでくる「匿名の質問箱」だ。
そういや、自分が使っているインソールの事なんてとうの昔に記事にしていたが、皆さんに読んでいただけるようになってからは、すっかり忘れていた。12年間も同じブランドを使い続けていて、仕事用のビジネスシューズにも、トレーニング用のシューズにも、シクロクロス、MTB、全てのシューズに使っている。今書きながら気づいたのだが、その存在するら忘れていた。もしかしたら一番長い間使っていて、一番記事にしていない機材である。
今回は「忘れ去られたけど使い続けている機材」として私が愛用するインソールを紹介する。自転車界隈ではあまりメジャーなインソールではないかもしれないが、隠れた名品として思い出したのでご紹介しようと思う。
スーパーフィート
ロゴがかすれて読めないw
2006年頃、SAJ(全日本スキー連盟)の推薦商品としてスーパーフィートの存在を知った。私は、9年間ほどSAJの指導員として活動していた時期があった。当時使用していたのは、シダスのカスタムインソールだった。特殊な装置を用いて自分の足裏形状に合わせてインソールを整形する。何万円もするオリジナルインソールだったから、お気に入りだった。
ただ、しっかりと足裏に合わせたインソールは、合う人と合わない人がいる。残念ながら私は後者だった。その後、様々なインソールを何枚も試した。>当時のスーパーフィートといえば、出始めで知名度もなく、4000円程度だったと思う。ただ、膝が素直に真っ直ぐに入るのが気に入って、それからずっと今でも使っている。
スーパーフィートは、米国の足病医学博士が開発したインソールだ。カスタムインソールも現在では作成できるが、既成品でも十分だ。形状がとても良く考えられているようで、こんなただの薄っぺらいインソールなのに、40件にものぼる特許を取得している。そして、100万足以上の医療用足底板技術の実績をベースに、用途に合わせたインソールがラインナップされている。
100万足である。
スーパーフィートの黎明期は、治療用途だったと記憶している。主に脚に何らかの問題を抱える患者のリハビリ用途に用いられた。それから、アウトドア関連、スキー、ランニングなどの各種スポーツにその場を広げた。競技パフォーマンスを上げると言うよりは、何かしらの問題、例えば足底筋膜炎に悩まされる選手が、スーパーフィートを使用している例が多くある。
「【足底筋膜炎】市民ランナーが10年間付き合ってきて分かったこと」
「足底筋膜炎対策として、高機能インソール スーパーフィートを買った 」
足底筋膜炎は、歩いたり、走ったりすると、かかとの裏や土踏まずあたりが痛くなる症状が出る。私は朝イチ、土踏まずにこの症状が出やすかった。全てが足底筋膜炎とは断言できないが、スーパーフィートを通勤用に使用し始めてからはその傾向が徐々に無くなっていき、今では気にならくなった。
さて、医療用インストーがなぜスポーツ分野にまで拡大したのだろうか。そこで、スーパーフィートのヒストリーをたどっていくと、とても興味深く、知れば知るほど面白い内容だった。
1962年に創立者のデニス・ブラウン氏は、肢切断者用のスキーブーツ専用インソールの制作をオーダーメイドで開始、フィッティングや足の矯正を行うカスタムインソールを一枚一枚制作していった。今からおよそ半世紀前の話である。
70年代に入ると、スキーヤーに馴染み深いNORDICA社と協力し、ブーツの履き心地や、パフォーマンスを向上させるインソールの開発に乗り出した。その後は医療分野問わず様々なスポーツへとその場を広げていった。元は矯正用から始まり、それらをベースにパフォーマンス向上のためのインソールを開発していったというわけだ。
余談だが、私が初めて使用したブーツはNORDICAだった。そして選手を辞めるまでNORDICAのDOBERMANを使っていた。>どうやらNORDICAとスーパーフィートは相性が良いようだ。
ここまで一切自転車関連の話が出てこないから、心配になった人がいるかもしれない。そりゃそうだ、スキーヤーや、ランナーには馴染み深いが、こと自転車界隈ではあまり聞き慣れないインソールだ(もしかしたら使っている人も居るかも知れないが)。使っている人が居たとしても、シューズの中に入っているから、話題に上がらないことが多い。
でも安心してほしい。2018年のTREK社のカタログで偶然見つけた。BONTRAGERのシューズ紹介のページだ。BONTRAGERのシューズのインソールは、スーパーフィートと協力して制作されている。医療分野から始まり、スキーヤーやランナーの支持を得たが、やはりサイクリングにももちろん適している。
私はスキーから流用してきたが、間違いではなかった。冒頭でも記したが、今では通勤用の中敷き、ロード、MTB、シクロクロス、ジムトレーニング用全てにスーパーフィートを敷いている。ただ、こんなにも何足もスーパーフィートを揃えられるのにはワケがある。インソールにしては安いのだ。
スーパーフィート社の理念にこうある。
この理念は現在でも変わらない。インソールにしては安く、4000~6000円程度。いまでも「10年前のお値段です」を地で行っている……。さおだけ屋かよ……。かなり話は脱線してしまったが、私の中で忘れ去られていた機材を思い出させてくれた質問者さんに、心から感謝したい。
まとめ:インプレ無しwww
今回インプレは無いwww。なぜならインソールは、合う合わないが顕著に出る機材だからだ。なので使ってみないことには、良し悪しが全くわからない。「インソール合う合わない」は一人一人好みもある。インソールに期待する事も一人一人異なるだろう。
ただ、12年間も同じブランドを使い続ける理由はなんだろうと、考えてみた。私の「歩く」という行為に対して、スーパーフィートが全てを支えている。注意深く観察してみれば、毎日仕事の通勤でも使っているし、サイクリングでも、ジムトレーニング用途とあらゆるシチュエーションでスーパーフィートを使っているのだ。
なお、ラインナップ表の通り、私はカーボンを使っている。ビジネス用はインソールが変えられないものもあるから、このハーフの黒を使えばいい。
さすがに部屋のスリッパはスーパーフィートじゃないが、寝る時以外つねに使用していることになる。私の体の一部として、何年も支えているわけだからそれは手放せない。私のペダリングの左右差はほぼ無く、50:50だ。差が出ても49.6:50.4といったように、ちょっと壊れているんじゃないかという数値が出る。
もしかしたら、普段の生活からスーパーフィートで体が矯正されているのかもしれない。サイクリングでも、通勤でも同じインソールを使用する意味は、もしかしたら結構大きな意味を持っているのではないかと考えている。私は無意識のうちに、足元をスーパーフィートで固めていた。何年も当たり前に使っていたから、記事として日の目を見る事はなかった。
確かにサイクリングシューズ用途として、スーパーフィートを使うのもよいかもしれない。しかし、それよりも時間を費やすであろう日々の通勤や、生活においても、しっかりとしたインソールを選択して、普段の生活から足元を変えていく必要があるのではないか。