世界最高のサイクリストたちのロードバイク・トレーニングを読んだ感想

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世界最高レベルのサイクリストたちは、どんなトレーニングに取り組んでいるんだろうか。圧倒的なスピード、強烈なパワー、美しいフォームは同じ人間だとは思えない。しかし、そんなトップレベルのサイクリストたちであっても、私たちと同じように「トレーニング」に取り組んでいる。

しかし内容や取り組み方は、いままでそれほど明らかにされていなかった。

世界レベルのロードレースで活躍するような選手たちであろうと、食べる、寝る、運動するといった、基本的なあたりまえのルーティンを繰り返している。本書を紐解いていけば、フィジカルを向上する方法から、レース中の効率の良い補給、そしてレース後の回復方法まで網羅的に深く学ぶことが可能だ。

そしてトップ選手たちが、どのようなバイクフィッティングをおこなっているかや、ポジショニングの解析、ロードレース特有のスリップストリームが生み出す空気抵抗削減の話など、最先端のトピックを科学的観点で解説している。雑誌でよくみかける抽象的な表現は一切見られない。実際のレース現場で得られた情報をもとに、具体的な実例を交えながら、美しい写真と共に書籍の世界は進んでいく。

世界最高のサイクリストたちのロードバイク・トレーニング』は、言うなればトレーニングの技術理論書だ。

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余談:全部絶対必読・・・。

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私は冬のオフシーズンにサガンのウェイトトレーニングをInstagramで見ていた。どんなメニューなんだろう、何をやっているんだろう、何kgなんだろう!ともやもやしていた。「ロードバイクとウェイトトレーニング」についてプロがどのように取り組んでいるかまさか本書に書いてあるとは。。。クリス・フルームが41分28秒ものあいだ414Wを出し続けるなど・・・、続きは本書を読み進めていってほしい。

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まとめ:現時点で最高レベルのトレーニング科学本

本書『世界最高のサイクリストたちのロードバイク・トレーニング』を読了して、いくつか問題も感じた。トレーニング情報に関する収集作業はいったんこれにておしまい、他の情報は当分不要、これから予定していたトレーニング情報の調査時間をトレーニングに充てねばならない・・・。それほどの内容だった。

あとは細かなトレーニングメニューが書かれた『パワー・トレーニング・バイブル』が手元にあれば、もうこれ以上の知識は当分必要ないし、身に着ける必要もないと断言できる。

本書は知識人がまとめた待望の”理論書”だ。強くなりたい、トレーニングに悩んでいる、そもそも何をやったら良いのかわからない・・・、というサイクリストに対して手ほどきならぬ”脚ほどき”を理詰めで伝えてくれる。これ以上、まとまった最先端の科学情報を入手する事は当分難しい(というよりも必要ない)とさえ思う。

いままで知りえなかった、世界最高レベルの選手たちのトレーニングや走りの秘訣が1冊にまとめられ、ついに解き明かされていくのだ。わたしたちが現時点で入手できるトレーニングや機材情報において、これほど濃密にまとめられた書籍は他に類を見ない。本書『世界最高のサイクリストたちのロードバイク・トレーニング』は、私の知りえるかぎり最高レベルの書籍だ。

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コラム:情報を取捨選択する

知りたい情報は、簡単に入手できる時代になった。インターネットの爆発的な普及によって、だれでも瞬時に情報を得られるようになった。しかし、情報が爆発的に増えていくにしたがって、マイナスの効果も浮き彫りになってきた。

情報量が増えるあまり、「質の高い有益な情報」を入手しづらくなってしまったのだ。価値もなく、知るに値しない無数の情報の中に、質の高い情報は埋もれていった。そうとは知らず、私たちはネットの検索上位に表示されているような情報をうのみにし、情報にほんろうされている。

だからこそ、膨大な情報の中から有益な情報を取捨選択する能力が必要になっている。しかし、「取捨選択」とひとことで言っても、情報の良し悪しを区別する能力は「宝石鑑定」と似ている。情報にも良し悪しがあるから、その見極めはかならず必要だ。

やっかいなのは、自分より少し詳しそうな人が、「それっぽいこと」を声高らかに述べた場合だ。間違えている情報だとしても、正しい情報だと受け取ってしまいかねない。そして、爆発的に増加していく情報は、まるで砂漠の砂のように数えきれないほど増えていく。たとえ、砂の中に価値あるダイヤが埋もれていたとしても、もはや見つけ出すことは難しい。

トレーニング情報もいまや「砂漠の砂」状態である。そのような状況のなか、本書を手にとることは砂漠の砂からダイヤを見つけることと等しいのだ。もはや不毛な情報収集に、時間を割かなくてもいい。いつまでも、あの手この手の雑誌の特集記事にほんろうされ続けなくても済む。

極端な話をすれば、少々のお金を払ってでも質の高い情報を得た方がいい。「対価」とはそういうものだ。知識人がまとめた本書を手に取りさえすれば、ダイヤはあなたの元に簡単に転がり込んでくる。

今回の知識人は、西薗良太氏とジェイムズ・ウィッツ氏だ。もはや両氏がだれなのかを説明する必要はないと思う。とは言いつつも、本書を日本語でわかりやすく読める形としてここまで仕上げて頂いたのだから、あえて詳細にご紹介したい。

【著者】ジェイムズ・ウィッツ(James Witts)
スポーツ科学のバックグラウンドを持ち、英国で数多くの雑誌のライターをつとめる。おもな執筆誌に『サイクリスト』、『サイクリング・プラス』、『220トライアスロン』、『ランナーズ・ワールド』、『メンズヘルス』、『GQ』など。また、「ガーディアン」紙にも執筆し、ツール・ド・フランスの多くの現場を報告している。トライアスロンをはじめ、ハーフマラソンなどのアスリート活動も活発であり、世界中で競技している。

【監訳者】西薗良太(にしぞの・りょうた)
元プロロードレース選手。スポーツデータアナリスト。1987年鹿児島県生まれ。鹿児島第一高校を経て、東京大学に進学。全日本大学対抗選手権(インカレ)の自転車競技・個人ロードレース及び個人タイムトライアルを制し、学生ロード二冠を達成。2011年、東京大学工学部計数工学科システム情報専攻を卒業し、シマノレーシングに加入、日本初の東大卒のプロロードレース選手として話題になる。ヒルクライムでの強さを誇ったが、理詰めでフォームや戦略を組み立てていくタイムトライアルも得意としており、全日本選手権を3度制覇するなど、トップレベルの実績を残し、2017年シーズン終了とともに引退。

3,000円という価格設定は高いだろうか、それとも安いだろうか。私は安すぎると思う。内容とボリュームを考えて価格があと数千円高かったとしても、私は喜んで購入する(でも値上げはしないでください)。3,000円を自分自身への投資だと思えば、そのリターンは計り知れない。もうトレーニング情報の収集に、よけいな時間を割かなくとも済むのだから。

私は3,000円で時間を買った。これから先、調査に費やしていたかもしれない時間を買ったのだ。

浮いた時間はトレーニングに割り当てよう。ソファに深く腰掛けてコーヒーを飲みながら、フンフンと読んで理解した気になっているだけでは本書の意味もなくなる。読み、考え、理解し、トレーニングを実行する。私たちがほんらい座る場所はサドルの上だ。そしてトレーニングを実行し、次のレベルへと向かおう。

そこまでたどり着いた先には、ようやく強さというご褒美が待っている。「次のレベル」にむかうヒントは読みすすめれば、あちこちにちりばめられている。本書を参考に計画を練り、理論的に実行していくことで、あなたはそこに到達することができるのだ。