スポーツ前に摂取することによってパフォーマンスが向上できるサプリメントは多数ある。呼吸が楽になるというカプサイシンや、脚がつらなくなるマグオン、吸収できる炭水化物の量を増やすモルテンなど多種多様だ。その中でも、レース中の集中力や、パフォーマンスの向上が期待できるエルゴジェニックエイドが登場した。
マトリックパワータグの吉田隼人選手が監修したBOOSTSHOTだ。
BOOSTSHOTはカフェインを多く含むエルゴジェニックエイドである。今回の記事は私自身を実験台として、BOOSTSHOTをテストしたその結果をお伝えする。飲みやすさ、使いやすさ、効果(個人の感想です)は本当にあるのかをまとめた。
国際スポーツ栄養学会による栄養のエビデンス・レベル
エルゴジェニックエイド(スポーツにおけるパフォーマンス向上が期待される手段・食品)を見極める際の指標として「国際スポーツ栄養学会」が公開している栄養のエビデンス・レベルがある。エビデンス・レベルはA~Cに分類されており、様々な論文からパフォーマンスの向上が明らかに認められるの、そうでないものを明らかにしている。
様々な物質が存在しているが、本当に効果が認められているものは少数だ。載っていないものは効果がないと思ったほうがいい。エビデンス・レベル別の内容は以下の通りだ。
エビデンス・カテゴリA:明らかに安全で効果のある強力なエビデンスを示すもの。
- カフェイン
- 炭水化物
- クレアチン
- 重炭酸ナトリウム
- リン酸ナトリウム
- βアラニン
- 水
エビデンス・カテゴリB:限定された効果のあるエビデンスを示すもの。
- BCAA
- EAA
- HMB
- シトルリン
- 運動後の炭水化物とタンパク質
- タウリン
- L-アラニル-L-グルタミン
- アラキドン酸
- グリセロール
- 硝酸塩
エビデンス・カテゴリC:効果や安全性を裏付けるエビデンスがほとんどないもの。
- MCT
- グルタミン
- カルニチン
- イノシン
- リボース
これらをふまえて、BOOSTSHOTの成分を確認していく。
原材料と成分
- グラニュー糖
- レモン果汁
- ガラナエキス末/タウリン(抽出物)
- ビタミンC
- カフェイン
- クエン酸
- 香料
- 甘味料(アセスルファムカリウム)
BOOSTSHOTは1本あたり、カフェインが180mg、ガラナエキス末が100mg配合されている。ガラナエキスは先程のエビデンス・レベルには登場しないが、ガラナ自体にもカフェインやが含まれている。BOOSTSHOTは主にカフェインを中心としたエルゴジェニックエイドということになる。
「Guarana (Paullinia cupana) improves fatigue in breast cancer patients undergoing systemic chemotherapy」によると、ガラナの効果としては放射線治療による倦怠感のある乳がん患者75名を対象に、2重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ比較試験において、ガラナ50 mg×2回/日を21日間摂取させたところ、倦怠感や疲労感の自己評価 (FACIT-F、FACT-ES、BFI) が向上したことから、ガラナは倦怠感改善に役立つと考えられている。
飲むタイミング
エルゴジェニックエイドは飲んだらすぐ効くような即効性のあるものから、数時間かけて効果が持続するようなものまで多種多様だ。さらに「空腹」「満腹」といった、胃の残留物の違いも効果が現れるまでの時間に影響してくる。まずは、BOOSTSHOTに記載されている飲み方を確認した。
有酸素運動・無酸素運動問わず3時間未満の場合、運動開始・競技開始の45分~30分前に服用させる方が多く、競技時間が4時間超える場合は競技終了/ゴールまで残り1時間半~1時間で服用される方が多いです。
競技時間にもよるが、アマチュアが走る一般的なレースであれば長くても3時間前後のため、45分~30分前にBOOSTSHOTを服用するほうが良さそうだ。カフェインを摂取するタイミングに関する情報としては、『International Society for Sports Nutrition』の情報が参考になる。
International Society for Sports Nutritionで推奨しているのは、レース開始60分前に多めのカフェインを摂る方法だ。空腹時と胃に食べ物が入っている状態でカフェインが吸収される時間にも考慮している。空腹時に摂取した場合は、カフェインが血中を巡り始めるのは約15分後だ。そして、食べ物と一緒に摂取した場合は45分以上経過してから吸収される。
一度取り込まれてしまえば、カフェインは長いあいだ体内にとどまる。体内でのカフェインの半減期は約5時間だ。つまり、5時間たってようやく、摂取量の半分が体外へ排出される仕組みだ。すべてのカフェインを排出するまでにかかる時間は、初めにどれだけの量を摂取したかによって決定される。摂取量が多ければ多いほど、効果の持続時間も長くなる。
BOOSTSHOTはカラダに吸収されやすい液体で180mgのカフェインを含んでいる。カフェインは錠剤200mgのカフェインは多く存在しているが、眠眠打破でさえカフェインは150mgだ。液体で180mgのカフェインを1度で摂取できるということもメリットの一つとして挙げられる。
コーヒー100mlあたりのカフェイン含有量はおよそ60mgであるため300ml飲む必要がある。BOOSTSHOTであれば1/6の50mlでいい。
摂取量
BOOSTSHOTは180mgのカフェインを含む。この量は多すぎやしないか。そもそもカフェインはどれほど取ることが望ましいのか基本的な疑問があった。参考になったのは、「American College of Sports Medicine」の文献だ。運動でパフォーマンスを向上させるためには、体重1kgあたり3~6mgのカフェインを摂る必要がある。体重が約60kgの人なら。180g~360mgということになる。
量を多く取ればそれだけ効果があるが、ある一定量以上は効果が見込めない事も明らかになっている。体重1kgあたり9mgが摂取量の上限だ。しかし問題はドーピング検査だ。カフェインは禁止物質でないものの監視プログラムに含まれている。「4.興奮薬: 競技会(時) のみ:カフェイン」
多用するのは好ましく無いが、自分の体と相談しながら摂取することが望ましい。
インプレッション
実際にレースでBOOSTSHOTを使用した。「飛ぶように走れる」なんてことはなかったが(それは本物のドーピングだ)集中力を切らさずに最後まで走れるという感覚はあった。インプレッションでは以下の5つのポイントにフォーカスして記載していく。
- 使い方
- 飲むタイミング
- 事前テストが必要
- 味
- カフェイン抜き
1つ目の「使い方」についてだ。サイクリスト向けのエルゴジェニックエイドといえば、小さな袋に入ったものが多い。しかしBOOSTSHOTは小さな小瓶に入っている。眠眠打破と同じような瓶のサイズだ。瓶詰めされたドリンクは製品の劣化を防ぎ、持ち運びにも便利だ。しかし、レース中に飲むことを考えると不便極まりない。
長丁場のレースを考えると、レース後半の勝負どころで効き始めてほしいことがある。その場合は小さなフラスコに移し替えて、レース中に飲む方法がある。この方法であれば、効果を発揮する時間をずらすことも可能だ。瓶のドリンクタイプには保存面でのメリットもあるが、使い方を考えるとフラスコに入れて使用したほうが使いやすかった。
フラスコは↓を使用した。サイクリスト仲間のキリPから教えてもらったサロモンフラスコ。通称キリPフラスコと呼ばれている。
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2つ目の「飲むタイミング」については、レースの開始時間から逆算して1時間前に飲んでいる。この時間は目安であり、人によって効果が訪れる時間は異なる。説明どおりに効果を感じる人もいれば、そうでない人もいる。3つ目の「事前テストが必要」というのは飲むタイミングを見計らうねらいもある。
あらかじめカラダがどのような反応を示すのかはテストしてみなければわからない。思い切って1箱買って、練習でテストするしかない。決してやってはいけないのは、レース当日にぶっつけ本番でBOOSTSHOTを試すことだ。レース前に2~3回は練習で使うことが望ましい。カラダがどのように反応するのかまずは見定める必要がある。
4つめの「味」については、思いっていたよりも飲みやすい。リポビタンDのような甘ったるさもなく、眠眠打破のような少々飲みづらい感じもしない。サラッと飲めてあっけないと思うほどだ。レース後半で胃に物を受け付けなくなったときでも飲めるというような味付けになっている。
5つめの「カフェイン抜き」はカフェインの効果を最大限に高めるために行う方法だ。カフェインを日々摂取し続けていると、体に耐性がついてしまう。1週間ほどカフェインを断つことで、体からカフェインを抜く事ができる。そしてレース直前にカフェインを入れるとより高い効果が見込めるとされている。
BOOSTSHOTを最大限に活かすためには、レース1週間前にはカフェイン断ちをしたほうが良いだろう。効果は人によって異なるが、ゴールデンウィーク中に開催されたZWIFTのレース前にBOOSTSHOTを飲んだところ5分間のピークパワーを更新している。BOOSTSHOTの効果なのか、それともZWIFTで限界が引き上げられたのかは定かではない。
しかし、都合よくタイミングが重なったためある良い印象を持った。いつもよりかかる感覚は確かに感じられたということもある。常套句の「個人の感想です。」という範疇からは抜けないが、実際に使用を検討している人は、まずは自分で試してみてその効果を見極める必要がある。
まとめ
BOOSTSHOTは、現在プロ選手として活躍するマトリックパワータグの吉田隼人選手が監修した。2018年から2シーズン、NIPPO・ヴィーニファンティーニに所属し、イタリアを拠点にレースを転戦している本物のプロ選手だ。BOOSTSHOTが生み出されたきっかけとしては、欧州でカフェイン系のエルゴジェニックエイドに出会ったからだ。
欧州で活動していた際はトレーニングやレースでカフェイン系のエルゴジェニックエイドを使用していた。しかし帰国後、日本ではそれほどカフェイン系のエルゴジェニックエイドが浸透していないこと、そして製品が手に入りづらかったことに吉田選手は気づいた。吉田選手は、自分自身で製薬会社と契約し商品化を実現させたのがBOOSTSHOTだ。
BOOSTSHOTはマトリックスパワータグの選手だけでなく、競輪選手も愛用している。また、サイクリストに限らずランナーの使用も多くなってきているという。また最近では、ズイフターの中にはレース前にBOOSTSHOTを飲んでいる人もいるようだが、スタート直後から高強度の領域で踏み続けなければならないレースの性質も影響しているのだろう。
そういう意味では、シクロクロスのスタート前にもBOOSTSHOTは活躍しそうだ。BOOST SHOTの価格は1本税込530円で販売されている。少々お高いが、レース前の1本としてパフォーマンスを高めたいと考えているサイクリストならば、試してみる価値があるドリンクだ。
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