書籍アスレティックパフォーマンス向上のためのトレーニングとリカバリーの科学的基礎を読んだ感想

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本書「アスレティックパフォーマンス向上のための トレーニングとリカバリーの科学的基礎」は、科学的根拠に基づいたトレーニング指導を行うために、「トレーニング」「リカバリー」「身体に関わる情報の活用」に関する数多くの科学的知見や科学的研究の最新情報が掲載されている。

本書がこれまでの書籍と異なるのは、各分野の第一線の科学者や,研究と実践の両方を専門とするスポーツ科学の専門家らが参画し、執筆開始時点での世界最新の知見を踏まえた上で、基礎知識から現場応用まで見据えた形で科学的知見を整理したことにある。

科学的知見が一般的な教科書に反映されるには5〜10年かかると言われているが、
本書は、①教科書、②最新の科学論文、③トレーニングのHow to本、これら3つをつなぐことを目的としている。

実は、本書を書店で立ち読みして買うつもりはなかった。しかし、自転車競技のトレーニングで話題になりつつも確かなエビデンスが少ないPOL(ポラライズドトレーニング)に関して様々なエビデンスとともに解説されていたため、購入してしまった。

本書でサイクリストのトレーニングに役立つのは以下の章だ。

  • 第9章 持久力向上のためのトレーニングとそのメカニズム
  • 1 持久力のとらえ方
  • 2 持久力と代謝エネルギーおよび効率の関係
  • 3 持久力を改善するためのトレーニング
  • 第10章 high-intensity interval training(HIIT)
  • 1 high-intensity interval training(HIIT)とは
  • 2 HIIT処方のためのプログラミング
  • 3 HIITプログラミングの要素
  • 4 HIITの種類
  • 5 HIITの効果的な実践のために
  • 第12章 睡眠
  • 1 疲労の概念と分類
  • 2 睡眠と疲労回復
  • 3 運動が睡眠に与える影響
  • 4 睡眠と疲労からのリカバリー
  • 5 仮眠と運動パフォーマンス,疲労回復
  • 6 睡眠環境の最適化
  • 第13章 積極的なリカバリー介入の効果と回復メカニズム
  • 1 積極的なリカバリーと関わるパフォーマンス低下の要因
  • 2 その他のパフォーマンス低下の要因
  • 3 軽運動
  • 4 ストレッチング
  • 5 温熱
  • 6 冷却
  • 7 交代浴
  • 8 コンプレッションウェア
  • 9 マッサージ
  • 10 筋膜リリース

特に「3 持久力を改善するためのトレーニング」ではPolarized Training(POL)について、最新の論文を引用し、より詳しく、よりわかりやすくまとめられている。比較対象として、HIT、SSTのような閾値トレーニングとの比較検証がなされており、POLのトレーニング効果の高さがわかる内容だ。

POLに関していえば、今現在出回っている持久系の書籍のなかで最も詳しく、最も確実な情報と言える内容だった。トレーニングをしてもFTPや能力が伸び悩んでいるサイクリストや、トレーニング組み立てに疑問や疑念を持っている方にとって手助けになる内容がまとめられている。

数年前まではSSTのような閾値トレーニングが主流だったが、また潮目がここに来て変わってきているのをひしひしと感じた。研究と実験は日々進んでおり、また新しい手法が生まれてきている。閾値トレーニングよりもさらに優れたトレーニング方法がまとめられていた。

「第10章 high-intensity interval training(HIIT)」は、HIITの効果的な実践方法が記されている。トレーニングメニューと言うよりも、インターバルの間隔やVo2MAXへの刺激といった科学的根拠を引き合いに出した内容がまとめられている。

特に、HIITの種類は自身のインターバルメニューの強度や頻度、レストの時間といった内容に新しい知見を与えてくれるだろう。

そして、「第13章 積極的なリカバリー介入の効果と回復メカニズム」は回復に関する様々な手法に対する科学的根拠がまとめられている。最近極端に回復が遅くなってきているので非常に参考になった。

老若男女、年齢を重ねても回復とうまく付き合う術が記されている。

  • 軽運動
  • ストレッチング
  • 温熱
  • 冷却
  • 交代浴
  • コンプレッションウェア
  • マッサージ
  • 筋膜リリース

アクティブリカバリーと呼ばれる軽運動や、水風呂やサウナを使った交代浴、そして結構効果があるコンプレッションウェア、マッサージ、そして以前はその効果が疑われていた筋膜リリースに関しても様々な論文を引用しまとめられている。

本書はいわば、トレーニングと回復の「ゆりかごから墓場まで」をまとめた1冊だ。ただ、本書は一般向けではなく、科学者、研究者、指導者、トップの競技者向けに書かれた内容であるため、値段が4950円と非常に高価だ。

しかし、どの業界でも「技術書」といえばこれくらいの値段が普通であり、本書でまとめられた最新の情報にアクセスするための入場料だと見れば安いとさえ思えてくる。マッサージ1回行くぐらいなら、間違いなく本書に投資するほうが合理的だ。

そうすれば、POLからHIIT、回復の科学的知見とエビデンスの最新情報が簡単に手に入る。久しぶりに高い本を購入してしまったが、それに見合う価値のある1冊だ。

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