サイクルウエアといえば、ウエアとビブが別々のタイプが長年主流だった。2015年に乗鞍の1位、2位がサンボルト社のセパレートワンピースを着用していたことが話題になり、レーシング層に一気に普及した。
あれから、サンボルト以外のメーカーもセパレートワンピースタイプのウエアを続々とリリースし一気にサイクリストに普及していった。今では珍しくもなくなったセパレートワンピースは、毎年少しづつアップデートが行われ今では非常に完成度の高い製品に仕上がっている。
今回の記事は、練習からレースまで3種類のセパレートワンピースを使い分けたレビューをお届けする。というのも、セパレートワンピースを着るとその快適性から抜け出せなくなる。ウエアとビブを分けている方にこそおすすめしたいウエアだ。
セパレートワンピースの快適性
まず、セパレートワンピースについてご存知のない方もいらっしゃると思われるので簡単に触れておきたい。セパレートワンピースとは、パンツとウエアがつながっており、ウエアが観音開きになっているウエアだ。
これまでタイムトライアルで使われてきたワンピースといえば、ウエア全面にジッパーが付いているだけで着用する手間がかかるウエアだった。セパレートワンピースは観音開きになっているので、ビブパンツが履きやすく、ウエアも着やすい。
普段使っているウエアと同様の着用方法ながらも、ワンピースのメリットが得られるウエアだ。
セパレートワンピースが優れている点は以下のとおり。
- ビブヒモがないのでウエアがピッタリ体に沿う
- 呼吸がラク
- ウエアのずり上がりがない
- 空力性能が良い
- 呼吸がラク
- 軽い
- 洗濯が超絶ラク
- ウエアとビブを買うより安い
一番気に入っているのは、ビブヒモがないことだ。私はハートレートセンサーの胸バンドが苦手で(貼り付け式のパッドも苦手)とにかく呼吸をラクにしたい。室内ローラー中もビブヒモを着けないほどビブヒモが苦手だ。
どうしても胸部分を通ると、段差ができて余計な締付けがある。そして、空冷を考えるとビブヒモはそもそもない方がいい。ということからも、セパレートワンピース一択になった。
また、ウエアとパンツが別々のタイプだと、ウエアがずり上がってしまうことがたびたびある。そのため、ずり上がったウエアをいちいち下げる必要がある。ライド中に何度もこの手間を繰り返すのが非常にストレスで、レースともなると非常に無駄な作業だ。
セパレートワンピースは洗濯がラクだということもある。ウエアとパンツが一体化しているため、洗ってもバラバラにならないし、取り込んだあともウエアを干すスタイルでビブパンツまで乾かせる。そして、ビブパンツの形状を保ったたま干せるので乾きも速い。
そして、セパレートワンピースは、ウエアとビブパンツを別々に購入するよりも安上がりだ。ウエアとビブパンツをセットで購入するとモノにもよるが3~4万円する場合がある。セパレートワンピースは2万円少しと非常に安い。ウエア1万、ビブ1万と考えても非常にお買い得だと思う。
とはいえ、デメリットもいくつかある。
- ピチピチ系ウエア
- ゆったりとした着心地ではない
- ガチ勢感がある
- パンツがダメになると上も使えない
- 着回しができない
- 上下のコーディネートができない
デメリットは主に外見部分の見た目にある。ピチピチ系が苦手な人やウエアの組み合わせをあれこれ考えたい人には向いていない。また、ワンピースというと「ガチ勢感」がある。セパレートワンピースはその傾向は薄れているが、やはり抵抗のある人は少数居るだろう。
また、ビブパンツもしくはウエアが破れしまうと共倒れしてしまう。これらのデメリットが許容できれば、それ以外はセパレートワンピースの性能が勝っている。
セパレートワンピース3種
次は、サンボルトのセパレートワンピースの3種類の比較だ。
サンボルト社からは生地やカッティングなど目的別に3種類のセパレートワンピースがラインナップされている。筆者自身3種類使い分けている。
- シームレスレーシングセパレートワンピース(アルティメット)
- S-RIDE PRO パフォーマンス セパレートワンピース(ハイエンド)
- クールメッシュセパレートワンピース(ハイエンド)
それぞれの特徴をふまえ、練習に使う場合やレースなどシチュエーションに応じた使い分けを次章から紹介していく。
シームレスレーシングセパレートワンピース
レース決戦用ウエアとして、サンボルトの長年の叡智を結集したウエアが「シームレスレーシングセパレートワンピース」だ。究極のセパレートワンピースで、国内最強チームの宇都宮ブリッツェンが使用するウエアでもある。
開発には数年を要したモデルで、国内のプロチームにさまざまなプロトタイプを繰り返しテストしてもらい、幾度となく改良が行われた究極のセパレートワンピースだ。ありとあらゆる部分が「シームレス」になっており、とにかく縫い目がない。
特にスソ部分の滑り止めもシームレスになっている。使用している生地も妥協がなく、イタリア製の高級生地(某有名メーカーも使用)を採用している。プロ選手は「これ一択」という評価のようだ。
とはいいつつも、価格が最も高く一般的には必要のないレベルの性能が盛り込まれている。私自身も、決戦用ウエアとして1着持っているだけで常用することはしていない。ただ、レースウエアとして考えたときはこれ以外のウエアで走ることは考えられない出来だ。
今年、様々なレースを走ったがすべてシームレスレーシングセパレートワンピースを着用している。
S-RIDE PRO パフォーマンス セパレートワンピース
アルティメットモデルの性能を踏襲しつつ汎用的に使えるのが「S-RIDE PRO パフォーマンス セパレートワンピース」だ。最も標準的な性能を備えており、普段の練習ではこのモデルを使用している。今までマイナーアップデートが行われており、合計4着ほど使用してきた。
サンボルト社の代表的なセパレートワンピースであり、日本の気候にあった生地を選定している。半袖シーズンにオールマイティに使用可能だ。伸縮性が高くある程度の体系の方でも体にフィットする。とにかく気心地がいいウエアだ。
まず1着買うとしたらS-RIDE PRO パフォーマンス セパレートワンピースだ。
クールメッシュセパレートワンピース
同じく、アルティメットモデルの性能を踏襲しつつ汎用的に使えるのが「クールメッシュセパレートワンピース」だ。PROパフォーマンスの上半身の生地をメッシュ生地にしている。
真夏、特に湿気が高い時期に最適で、日本の夏季の高温多湿の気候に合った生地組み合わせを選定している。1つ注意が必要なこととしては、メッシュ生地のため長時間ライドをしていると日焼けするおそれがある。そのため、体に日焼け止めを塗っておく必要がある。
私は、真夏の早朝でメッシュワンピースをしようしている。着心地はS-RIDE PRO パフォーマンス セパレートワンピースよりも硬めだが、ひとたび着用すると爽快感が非常に強いウエアだ。これからの夏に最適な1枚といえる。
性能比較
シームレス | S-RIDE PRO | クールメッシュ | |
グレード | アルティメット | ハイエンド | ハイエンド |
価格 | 29,800円~ | 24,800 円 | 24,800 円 |
既製品 | なし | あり | あり |
オーダー | 可能 | ||
トップス生地 | シルク系 | シルク系 | メッシュ |
スソ | シームレス | 縫い目あり | 縫い目あり |
パッド | Elastic Interface(R)社 イタリア製高性能プレミアムパッド |
||
伸び | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆ |
通気性 | ☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
フィット感 | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ |
動きやすさ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ | ☆☆☆ |
エアロ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ |
おすすめ度 | ☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆ |
上記のとおり、すべてのアイテムでインターフェイス社のイタリア製高性能プレミアムパッドを標準装備している。数多くの有名サイクルウエアブランドにも採用されているイタリアのサイクリングパッド専業メーカーで、80種類以上あるプロダクツの中から、最適なパッドを採用している。
まとめ:おすすめはS-RIDE PRO
1つ選べといわれたら、価格と性能のバランスが最もすgれたS-RIDE PROセパレートワンピースを選ぶ。最高峰のシームレスレーシングセパレートワンピースも当然良いのだが、オーバースペックだと感じた。また、既製品のラインナップもなく価格も3万円近く手軽に購入できない。
S-RIDEとメッシュを着比べるとはっきりわかるのが「肌触り」と「伸縮性」の2つだ。袖を通したときのひんやり感や、シルキーさ、滑りの良さはS-RIDEに軍配が上がる。そして、着ている際の体へのまとわりつきも少ない。
メッシュワンピースはやや硬めの生地だ。袖を通したときにやや引っかかる印象がある。S-RIDEと相対的に見れば、だが着心地を考えるとメッシュワンピースは着たあとの爽快感や発汗性のよさ、高温多湿の環境化での使用に特化している感じがある。
したがって、もしも購入するようであればS-RIDEをおすすめしたい。これから外を走る絶好の時期が訪れる。その際、夏の暑さに負けないように快適なウエアを選択してライドを楽しんでいただきたい。