GIANT TCX インプレッション これが真の「シクロクロスバイク」だ!

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GIANT TCXを2台買ってしまった。

シクロクロスという競技の特性上、代車を用意することは当然のことだ。しかし、2台とも同一のバイクである必要はなく、別のバイクだっていい。しかし、GIANT TCXは「もう1台欲しい・・・」と思ってしまった。

お気に入りのシューズや、ウエアをもう一着ほしくなるように、GIANT TCXを実際に使ってみてもう1台購入してしまった。TCXは、そんなバイクだ。

(c)ジャイアント・ジャパン

TCXが魅力的な理由はいくつかある。まず、シクロクロスという競技が楽しくなる。楽しさを生み出している秘訣は、欧州の伝統的なシクロクロスバイクのジオメトリ設計にある。特に小回りと、バイクの操縦性が気持ちよく、コーナーリングがうまくなったと錯覚するほどだ。

ITさん
ITさん

実際にはうまくなってない・・・。

GIANT TCXは、国内の限られたスペースを利用して行われるシクロクロス競技にマッチしている。コース距離を稼ぐため、ウネウネとしたコースレイアウトが国内のレースでは多い。このレイアウトを攻略するために適したバイクだといえる。

今回の記事は、GIANT TCXについてインプレッションを行った。細かなバイク装備や、重量、エアロダイナミクスにはほとんどふれない。シクロクロスという競技に求められる、操縦性能、かつぎ、ドロはけといった「シクロクロスを走るために必要な要素」についてフォーカスし、まとめた。

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BBハイトとシクロクロス

シクロクロスバイクを語るとき、必ず話題に上がるのがBBハイトだ。BBハイトの違いは操作性に大きな影響を及ぼしている。BBハイトが高いと、バイクの重心が高くなり、クイックな操作性になる。

逆に、BBハイトが低いと重心が低くなりバイクの安定感が増す。ロードバイクやトラックバイク、TTバイクになるとさらに低くなる。BBハイトが低い場合、ペダルヒットなどが起こりやすくなる。ただし、ロードバイクなどは外脚を伸ばしながらコーナーリングすることが多く、問題になることは少ない。

シクロクロスバイクは、特殊な競技性からBBハイトが高い傾向にある。では、実際にBBハイトが高いことによってどれくらい違いが体感できるか。実際のところをいうと、バイクの振り回しやシチュエーションの違いで明確に違いを感じ取ることが”できる”。

なぜ、このようなことをあえて書いているのか。実は、BBハイトの違いと操作性の相関関係について、自分の中で確証が持てていなかった。これまでシクロクロスバイクをいくつか乗ってきたが、BBハイトがおよぼす操作性の違いよりも、タイヤの影響が大きいことがほとんどだった。

ただ、TOYOのシクロクロスバイクや、CANYONのINFLIGHT、お借りしたRIDLEYのX-NIGHTを乗った頃からBBハイトの違いが非常に重要であることを実感しはじめた。これまでレースに投入できたのは、TOYOのシクロクロスバイクだけだったが、TCXを乗ったところ、以下のポイントで大きなメリットがあることが”体感”できた。

  • キャンバーでペダルヒットしにくい
  • 登り終わり頂点でペダリングできる
  • バイクを倒しやすい
  • コーナーの旋回がワンテンポ早い
  • コーナーリング中にペダリングできる

BBハイトが高いということは、クランクのシャフト軸が地面と離れていき、上方向に位置する。キャンバーが多いセクションは、ペダリングをし続けても怖さがなくなった。これまではバイクを傾けることが必要だったセクションも、キャンバーを切るように走れるようになったことは大きい。

また、直登することが難しい壁のような登り区間であっても、斜めから登ることでクリアできるライン選択の幅も広がった。私のようにテクニックが劣る選手は、ペダルヒットしない恐怖心が払われるため大きなメリットになる。

次に、登り終わりの頂点でペダリングできる特徴がある。シクロクロスは、身長よりも少し高いかまぼこ型のバンプ(たいてい急勾配)を乗り越えることがある。そのようなセクションを通過する場合、前輪だけが先に登りきり、後輪はまだ登り手前で取り残されている場合がある。

このようなシチュエーションは、BBがより地面に近づいてヒットするような場合もある。BBハイトが高いことによって登り切る手前でペダリングできるため、勢いで通過できたことが何度もあった。

BBハイトの影響は、コーナーリング中も感じ取れる。バイクをこれまで以上に倒しやすくなった。バイクは倒れることで勝手にステアリングが切れてどんどん曲がっていく。GIANT TCXはハンドルを積極的に切らずとも、重心移動だけでコーナーに切れ込んでいく。

また、バイクを傾けてもBBハイトが高いためコーナーリング中もペダリングをすることができる。TCXに乗り換えてから、コーナーリング中のペダリングを意識して行えるようになった。このように、真っ直ぐ進むこと以外の小さな(と、いってもシクロクロスでは大きな)違いがTCXというバイクには備わっている。

TCXとコーナリングについては、次章でもう少し掘り下げて考えてみたい。

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コーナーリングがしやすい

コーナーリングのしやすさは、BBハイトと合わせてトレール量の影響”も”大きい。

「バイクがコーナーリングを楽にしてくれた」TCXはそう実感した数少ないバイクだ。具体的にいうと、描ける8の字がより小さくなる。8の字練習をする際に、「歩数」を参考に円の大きさを決めている。適当に円の頂点に1つパイロンを置き、5歩歩いてパイロンを置く。また、5歩歩いてパイロンを置く。

この歩数が小さければより小さい円になる。私の身長とバイクサイズの場合、ペダリングをしながら無理なく描ける最小のパイロン数でいうと以下のようになる。

  • SPECIALIZED CRUX:5.5歩
  • TREK BOONE:5.0歩
  • CANYON INFLITE:4.5歩
  • TOYO HYBRID CX:4.0歩
  • GIANT TCX :4.0歩
  • RIDLEY X-NIGHT:3.8歩

「ペダリングをしながら」というのがキモで、速度を落としてペダリングをせずに旋回すれば当然ながらもう少し小さい円でも回ることができる。実際のレーススピードに近づけて「これぐらいなら攻めても滑らないな」という微妙なさじ加減で練習している。

TCXは特に小さく回れる。バイクが旋回していくときの挙動も、よりお腹に近い位置でバイクが旋回する。トレール量も多大な影響を及ぼしているが、よりお腹に近い位置で旋回する特徴がある。

これら、操作性の違いについてはメーカーの設計思想が大きく反映される部分だ。海外のシクロクロスコースは、広大なエリアをふんだんに使ったレイアウトが多いため、最近では直進性能を高めた(よりグラベルロードに近い)バイク設計が行われることが多い。

271732820_515959569689647_5814378381177793407_n photo: Kei Tsuji

TREKやSPECIALIZEDといったメーカーはどちらかといえば、ハイスピードでコーナーリングするようなバイク設計が行われている。対して、欧州系のRIDLEYやは回転性能を高めたタイプだ。GIANT TCXは後者に属している。

この性能が、好きか嫌いかはライダーによって好みが異なるため一概に良い悪いをつけがたいところだ。

ただ、国内のように狭いエリアでコースの距離を伸ばそうとすると、どうしても曲がりくねったレイアウトになる。そのような場合は、コーナーをいかに速く駆け抜けたかの積み重ねがタイム短縮へとつながる。そのような場合を考慮すると、X-NIGHTやINFLIGHT、TCXのようなタイプのバイクが扱いやすいというシチュエーションは非常に多い。

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振動吸収性

(c)ジャイアント・ジャパン

TCXの機能のウリの1つに、振動吸収性の高さがある。バイク自体は非常に剛性が高いことがTOUR紙の実験データからよみとることができる。特にシートポストは独特の構造をしており、通常よりもよく”しなる”。

標準搭載されているGIANT製のCONTACT SLR D-FUSEカーボンシートポストは、従来製品に比べ20%しなりやすくなっている。シートクランプ自体が、シートステーとシートチューブの接合部分に内蔵されており、見かけよりも低い位置でシートポストが固定されている。

(c)ジャイアント・ジャパン

通常の位置とは異なる低い位置でシートポストを固定するため、その分しなりやすくなっている。実際に乗っていても、TREKのISOSPEEDと変わらない振動吸収性が特徴的だ。シクロクロスは基本的にサドルから腰を浮かせて振動を逃がす。しかし、サドルに乗っていたままでもある程度の振動をシートポストが吸収してくれる。

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ドロはけのよさ

(c)ジャイアント・ジャパン

TCXはタイヤクリアランスにかなり余裕をもった設計だ。そのため、チェーンステーとBBまわりは広大なスペースが確保されている。あわせてフロントフォークまわりにも十分な余裕がある。特にリア側のスペースはドロや芝の堆積が少ない。

ドロが多いレースだと、バイクのBB付近にドロが積み上がってくる。TCXは、異物が下へ流れていくようなフレーム造形をしている。上からバイクを見下ろすとフレームは随所で細くなっていることがわかる。できるだけ異物を取り払えるようにしている仕組みだ。

TCXを使用してから、ドロが厳しいコンディションにはまだ巡りあえていないが、TCXを使用するライダーは口々に”ドロに強い”という。実際に洗車をした際に、フレーム細部に手を入れやすいことから、回転部分とフレーム部分の境界線を可能な限り広げ、ドロ対策が施されていることがわかる。

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剛性感

剛性感に関していうと、バイクとしては非常に硬いデータが出ている。しかし、シクロクロスにおいてはタイヤが支配的であるためバイクの剛性に関してはふれない(というよりもわからない)。シクロクロスという競技の特性上、60分間体力が持てば良いだ。したがって、剛性を高めに設定しているメーカーは多い。

シクロクロスにおいて剛性は確かに必要だ。しかし、ある程度の剛性があればそこまで重要視する要素ではない。

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ジャイアントTCXの重量は?

ジャイアントTCXの重量はフレームが850g、フォークが400gだ。前作のTCXと比較し重量は、フレームが1050gから850gに軽量化、フロントフォークが460gから400gに軽量化されている。フレームとフォークのねじれ剛性とペダリング剛性をそのままに軽量化するというGIANTのお得意の改善方法だ。

結果的に、重量剛性比が向上しておりシクロクロスバイクのみならず、ロードバイクとして考えても十分に軽い仕上がりになっている。GIANTの技術があればさらに軽量なバイクを作ることは可能だと思う。しかし、剛性を無駄にした軽いバイクはシクロクロスでは求められていない。

筆者の完成状態のバイクは7.4kg(ペダル、サイコンマウント、シーラント込み、42T、11-34T)だ。

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OVERDRIVE 2

(c)ジャイアント・ジャパン

コラム周りはGIANT独自規格のOVERDRIVE2を採用している。賛否両論あるが、CANYONも同一経のコラムを使用している。上側に1-1/4インチ径、下側に1-1/2インチ径のヘッドセットベアリングを採用している。

上下異径のテーパー形状となるコラムを組み合わせることにより、重量を増やさずにステアリング性能を大幅に向上するといううたい文句だ。初代のオーバードライブと比べると、ねじれ剛性とステアリング剛性が30%以上も高められている。

見るからに太く、剛性が高いことがわかるが実際に使ってみると「あ!剛性が高い!」とは感じない。ハンドルをキャニオンの一体型ハンドル(マチュー・ファンデルプールやセイリン・アルバラードが使用)に変更しているが特別剛性感などの違いは感じられない。

ただ、フロントまわりはしっかりとした感じを受けることは確かだ。CANYON一体型ハンドル幅とステムが気に入れば、GIANTのステムとハンドルよりは軽く仕上げることができるためおすすめだ。

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どんな人に向いている?

TCXが向いているライダーは、コーナーリングが苦手だと感じているライダーや、バイクを操ることを明確に感じたいライダーに向いている。特に国内のウネウネ系コースには特に向いているバイクだ。それでいて、価格も手頃に設定されている。

サイズ感は、身長169.5cmの筆者であればXSが適切だ。Sは少々大きい。実際に試乗できる機会があれば良いがもしない場合は、会場で「TCX友の会」の方々に乗せてもらうといい。

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THE CYCLOCROSS BIKE

これぞ、シクロクロスバイクだ。

GIANT TCXは伝統的かつ保守的なシクロクロスという競技に適したバイクだ。しかし、GIANTは現代の最新技術を用いて、タイヤクリアランス、振動吸収性に優れたCONTACT SLR D-FUSEカーボンシートポスト、安定したハンドリングを実現するOVERDRIVE 2を搭載した。

それでいて、欧州の伝統的なシクロクロスバイクのようなジオメトリの設計が美しい。

最新技術と、シクロクロスで要求される設計のいいとこ取りをした珍しいバイクだ。この設計思想は、今後もGIANTに続けていってほしいと思うし、ジオメトリの設計は変えてほしくないとも思う。次回のTCXは、おそらく内装化と一体型ハンドル、エアロ化でPROPELに寄せてくるのかもしれない。

とはいえ、感動的な操縦性能とバイク振り回しの良さは、シクロクロスという競技をより楽しいものへと変えてくれるだろう。少なくとも、コーナーリングが苦手だったがTCXに乗ってからというもの、小回りが楽しくなった。

TCXに乗り換えてから、過去一番の成績が出ているのはバイクのおかげかもしれない。GIANTから何かもらっているわけではないが(むしろ買いまくっている)、TCXは乗る楽しさがある。シクロクロスに苦手意識を持っている方、バイクに悩まれている方は、ぜひともGIANT TCXに乗ってみてシクロクロスを楽しんでみてほしい。

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