どうやら暖かいインナーには素材以外の別の特徴があるようだ。先日投稿した「ヒートテックを山岳ガイドが使わない理由」では、素材のレーヨンが及ぼす乾きにくさにフォーカスしていた。一方で、素材だけでは暖かさの部分は決まらない事がわかってきた。
「構造上暖かい」とはどのような仕組みなのだろうか。
繊維の隙間が生む暖かさ
出典:モンベルオンラインショップ
例えば私が雪山や、サイクリングで使っているジオラインの場合、マイクロファイバーという構造で構成されている。マイクロファイバーは繊維の隙間が多く、暖かい空気を保持できるとあるが、本当なのだろうか。なぜ”隙間が多い”のに”暖かい空気”を逃がさず保持できるのか。
隙間が多ければ、その分空気は逃げて行きやすそうな気もする。そこでマイクロファイバーの構造を見ていく。マイクロファイバーとは、マイクロ(μ)で示される通り、10-6倍のことだ。非常に小さい値である。ファイバーとは繊維を表し、非常に細かい繊維の束で構成されていることを指している。
ではなぜ、 多くの隙間があると空気を”保持”できるのか。次では防風林とマイクロファイバーの相関関係からその疑問を紐解いていく。
防風林とマイクロファイバー
防風林を想像してみてほしい。海沿いからの吹きさらしや、砂を防ぐために幾つもの樹木が無造作に配置される。たとえ浜辺で風が強くても、防風林の中に入ってみるとどうだろう、静かで空気の移動が少なく静かだ。
同じ事がマイクロファイバーの中でも起こっている。空気の移動を少なくすることにより結果、暖かい空気を保持するのだ。
また、素材の編み方にも注目したい。「ストレッチスパン糸の2種類の保温繊維」を使用している、とある。この繊維の構造の特徴は、マイクロファイバーのさらに”中”にある。
マイクロファイバー内にはさらにDNAの二重らせん構造に似た繊維が入っている。2重らせん構造の周りをマイクロファイバーの筒が覆っているのだ。
2重らせん構造の糸(1種類)+超極細糸(マイクロファイバー)で1種類 = 合計2種類の保温繊維いう構造だ。ではストレッチスパンの繊維とは、どのような構造と役割があるのだろうか。
筋トレグッズに”エキスパンダー”がある。構造は伸ばしたり、縮めたりできる道具だ。まったく同じ構造の繊維が組み込まれている。利点はなにか。ここでいう長繊維とは、あらかじめ長かったものを先ほどのマイクロファイバー内に短くして詰め込んだ構造だ。
だからあらかじめ長かったものが元に戻るだけだ。したがってストレッチをする構造により、”くたびれた”なシャツになりにくい。このような繊維の特徴を持っていると、長年使用してもなんらヘタることは無い。
まとめ: 大阪のモンベルショップで聞いてきた話
私はモンベルジオラインがなぜ汗冷えをしないのか、さらに原理が知りたくなり大阪のモンベルショップで先日聞いてきた(おじさん系スタッフを捕まえる事)。バイトっぽい人ではなく、おじさん、おじいちゃん手前ぐらいの玄人スタッフさんを見つけて聞いて見た。
このジオラインの構造は、汗を吸い上げて、4倍に汗を繊維上で広げる。そして速やかに蒸発させる。例えば、バケツいっぱいに貯めた水はなかなか蒸発しないが、道路に同じ量を巻いたら蒸発するスピードは早い。原理がわかればこれほどまでによいインナーは他にはないのではないか。
素材、さらに繊維の編み方で暖かさと水分の蒸発スピードは変わるのだ。今後寒くなってくるが、大量に汗をかくスポーツにおいて、インナー選びの参考にしていただけたら幸いだ。
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