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東京の国立市に住んでいた頃、移転前のなるしまフレンド立川店出入りしていた頃がある。今のモノレール駅近くの綺麗な建物と違い、古くて店内は狭く、初心者の私が入りやすいとは言えない、敷居が高いと感じたお店だった。まだフラットバーのGIANT FCR ZEROに乗っていた頃だと思う。
東京で1人で走っていた頃、練習会に何度かお邪魔させてもらっていた。今思えば貴重な経験だったと思う。今回なるしまフレンドさんの話を突然書いた訳は、ふとアマゾンで見つけた書籍を読んだからだ。
カリスマサイクリスト鳴嶋英雄の自転車の楽しみ方という書籍である。日本のスポーツバイク普及に多大な貢献をされた鳴嶋さんの軌跡が綴られている。著者は鳴嶋さんご本人ではなく、鳴嶋さんに密着したライターの方だ。
自転車はそれほど乗らないようだが、読み進めて行くとその文章構成や、言い回しや表現が素晴らしい。すぐさま引き込まれ、「立ち読み版」だけ読むつもりだったが続きが読みたくなり購入することにした。
読んだ感想を綴ろうと思う。
生涯現役
著者の方が表現する文章は読みやすく、鳴嶋さんの走りや、生き様をうまく表現している。著者は、鳴嶋さんが走り続けるその姿勢を日本の古典芸能に例えている。私は古典芸能に関してよく知らないが、日本の古典芸能は、生涯舞台に立ち続け、年齢に応じた芸の境地を求め続けるものらしい。
この芸の中の生き様や向かう姿勢は、鳴嶋さんが自転車に向き合う姿勢と合致しているというのだ。確かに一線を退いた「元選手」は監督業や、自転車ショップの看板的存在で自転車に関わり続ける。ただ鳴嶋さんのように「走る」という事を続け、身を持って示す事の重要さは、現役サイクリストにとって大きな目標と意味を持つと言えるだろう。
今だ多くのサイクリストに影響を与える70歳を超えたレジェンドが伝えたい自転車の楽しさとは何なのだろうか。
走行ルートも掲載
「東のなるしま、西のシルベスト」というチームの規模を表した言葉を聞いたことがあった。おそらくショップや所属するサイクリストの規模を表しているのだろう。本書はその走行会の模様が綴られている。
通常ショップやチームは、コーを非公開にすることが多い。しかし、本書では、どのようなコースを走ったのか、休憩したのか、細かく文章で記されている。さらに本書にはご丁寧にも地図が乗せられており実際に使うこともできるのだ。良い道を知らないサイクリストにとってこれは嬉しい特典である。
まとめ: 速くなるための本ではない
本書は、自転車と人が織りなす読み物として、大変面白い。試しにKindle版でお試しで読んでみるといい。私は買うつもりはなかったがまんまと買ってしまった。
最後に、本書は自転車を速く乗りたいだとか、パワーウェイトレシオだとかそういう話はでてこない。長い距離を楽しみながら、かつ自転車と共に人生を過ごす「自転車を楽しむため」の指南書である。
今自分は本書の鳴嶋さんのように本当に楽しめているのだろうか。
その答えは、あと40年以上先にあるのかもしれない。本書を読んでいるとまだまだ自分など、まだまだ駆け出しのヒヨコだと思い知らされるのだ。それは50代、60代のサイクリストにとっても同じかもしれない。
本書で70歳を過ぎたレジェンドから学ぶ自転車の真髄は、これから自転車を続けていく為の一つの地図となるだろう。
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