ほんの少し前まで、カーボンクリンチャーにお金を出すくらいならカーボンチューブラーを買うのが当たり前だった。ところがどうだろう。GOKISOホイールの活躍かは定かではないが、一気に市民権を得てきた。
ただ、Campagnoloはそれよりもはるか昔にハイペロンというロープロファイルのカーボンクリンチャーを開発し、世に送り出していた。
この使えるカーボンクリンチャーの元祖とも言えるハイペロンクリンチャーの流れを組み、現在のトレンドを盛り込んで開発されたのが今回紹介するBORAクリンチャーだ。「BORAならチューブラー」というのがサイクリストにとって当然の選択だったのかもしれない。
しかし、時代と技術は変わってきた。
一発決戦用のチューブラーよりも、汎用性と利便性に富んだクリンチャータイヤ。転がり抵抗係数(CRR)を考えてもクリンチャーの方が秀でている場合がある。海外の雑誌や第三者機関のテストでもクリンチャータイヤの優位性は示されている
しかし、いまだチューブラーに取って代わるようなパラダイムシフトは起こっていない。理由として、チューブラーの進行はいまだに厚いし、プロチームもチューブラータイヤが一般的だ。レースでも決戦用といえば、ホビーだってチューブラーだ。
チューブラーホイールで揺るがない地位を築いたBORAにクリンチャーモデルなど本当に必要なのだろうか。今回は、ハイペロンの称号を捨て、BORAの冠を被ったBORAクリンチャーホイールの意義を考えていく。
BORA クリンチャーの意義
まず軽快感のハイペロンと巡航性の特徴を持つBORAとでは、それぞれ全く似て非なるホイールという印象を持っている。ただ、ハイペロンにラインナップされていたクリンチャーモデルがBORAにも採用された意義を少し考えてみたい。
いつも通り記事を展開するとしたら、次のような書き出しになるだろう。「リム重量がどうだ」「組み方がこうだ」「ギアのかかりが1枚(以下略)」なんてくだりだ。しかし、今回は「BORA」という知名度も高く、こなれたホイールを見ていくわけだから、少し見方を変えてBORAクリンチャー考察していきたい。
なぜいまさら、Campagnoloが「カーボンクリンチャー」なんて物を作る必要があったんだろうか。
なぜ、BORAのクリンチャー?という根本的な疑問を起点として考え始めてみたい。BORAのチューブラーを使っている人の大多数は、クリンチャーホイール(アルミ)を持っているはずだ。「BORA使うならチューブラー」そんな考えの人が殆どのはずだ。
しかし、天下のCampagnoloがプロダクトとして「カーボンクリンチャー」というホイールを(改めて)出す意図は他にあるはずだ。Campagnoloの正確な意図は不明だが、35mmや50mmといったストライク・ゾーンのラインナップを見て、以下の要素が有るのではと感じた。
- カーボンクリンチャーの「耐久性」がある程度確保できた
- メジャーメーカーとの差別化
- 登場が早すぎたハイペロン(CL)に時代が追いついた
2つ目の「メジャーメーカーとの差別化」についてもう少し考えてみたい。
カーボンクリンチャーを販売しているメーカー(他社)といえば、ENVE、REYNOLDS、ZIPP、BONTRAGER、CORIMA、FULCLUM、ROLF、ROVALが思い浮かぶ。このように書くと結構なメーカー(もしかしたらシマノ&マビック以外?)が参入している。
昨今のグランツールに出場するようなチームのホイールといえばシマノ・マビック・Campagnoloと資金面で物を言わせられるメーカーがほぼ牛耳っている。ただ、その3大メーカーのホイール展開において、カーボンクリンチャーのラインナップはイマイチ芳しくない(というかラインナップに無い)。
いわば大手メーカーの中では未開拓領域の「ブルー・オーシャン戦略」が(少し古い言葉だけど)通用しそうな隙間にCampagnoloは知名度の高いBORAの冠を被った「カーボンクリンチャー」を投入するという戦略を取ったのではないか(と、勝手に推測している)。
シマノはいまだにカーボンクリンチャー市場へ参入をしていない。マビックのコスミック40Cは一見「フルカーボンクリンチャー」に見えるが「カーボンの毛皮をかぶったアルミホイール」にすぎない。一説には、カーボンでの製造も可能だったが、どうしてもブレーキの摩擦熱によりリムが破損する懸念が有ったという。
3大メーカーの中にあって、各社それぞれ一つ抜きん出るために何か他とは違う差がほしい。その中でCampagnoloは元々ノウハウ(ハイペロン)として持っていた「カーボンクリンチャー」というアプローチで、BORAという冠を「わざわざかぶせて」きたとも考えられる。
マビックはカーボンのカウルをアルミに被せてきたが、CampagnoloはBORAという冠を被せ正真正銘のカーボンクリンチャーを再度作り上げた。そのCampagnoloが作ったカーボンクリンチャーを実際に使い、感じたインプレッションを次の章で書き始めてみる。
BORA クリンチャーの他と違う「何か」
BORAクリンチャーというホイールに辿り着く前に、様々な「カーボンクリンチャー」と呼ばれるホイールを使ってきた。GOKISOのカーボンクリンチャー、MAVICの40C、ROVALのCLX40、ZIPPのカーボンクリンチャー、ENVEの1.45とSMART。色々と使ってみて感じるのは、それぞれ利点があり欠点があるという事だ。
欠点と言えば「製品の品質面」で満足できなかったり、「雨天でブレーキが効かなかったり」といった点があげられる。ライトウェイトだってフレ取りが出来ないという単純な(だが重要な)欠点がある。もしかしたら、ホイールというプロダクトに完璧を求めてはいけないのかもしれない。
ただ、BORAクリンチャーを見ているとわりと高い次元で「ホイール」という製品をうまくまとめてきている。美しいスポークパターンであるG3組を踏襲し、メンテナンス性に優れたexternalのニップル。そして細いエアロスポークと、どれをとっても既に完成された「BORA」だ。
例えばROVALのCLX40のリムを製品面で見てみると「押すとリムがへこむ」程に薄い。ただその見返りとしてリム重量実測419gという軽さを手に入れている。どうしても「押すとへこむ」リムが嫌な人も居れば、そうでない人もいる(軽さ好きの人は気にしないかも)。
軽さを求めた結果(剛性も考慮しつつ)そうなってしまったのだろうが、製品として見た場合やはり頑丈な方が良い。BORAの綺麗に編みこまれたリムはまるでTIMEのフレームように(見た目も似ている)どこを押してもヘコむようなことはなかった。
製品としての満足度と、乗った時の満足度は全く別物だ。製品としてBORAは非常に高い次元でまとめてきている。
TIMEユーザーなら欠かせないBLOGであるショップブログ「フィッテ」さん。私のお気に入りブログの一つなのだが「ショップなのによく書けるなぁ」と本当に感嘆しながらいつも拝見している。これぞ「顧客の立場」に本当に立って本音を書いて(いくらか国内代理店や他店を敵に回すかもしれないがユーザーはそれが知りたいので好きだ)いる数少ないショップなのではないか。
話はそれたが、私のBORAの製造はRomaniaでシグネチャーが書かれていなかった。そのへんの話は「フィッテ」さんのブログの記事を参照してほしい。私の何倍もの機材やBORAを扱い目が肥えている方だ。
参考1:「孤高の存在 BORA の真実 (Part1)」
参考2:「孤高の存在 BORA の真実 (part2)」
BORA クリンチャーの高い密閉度
BORAクリンチャーが他のカーボンクリンチャーホイールと違ったのは、その高い密閉度だ。なぜ「密閉度」なんてことが言えるのだろうか。理由は、空気を入れていった時の「干渉音」に隠されている。BORAクリンチャーに初めて空気を入れた人は、まずこの「音」に驚くかもしれない。
タイヤのビードが上がっていくと「バチン」という音とともにビードとカーボンリムのフックが噛み合う。リムの独特なくぼみがその音を生むのかもしれないが、しっかりとしたリム面とタイヤ面が接触することにより、この音が鳴っていると推測している。
チューブレスタイヤを石鹸水を用いて空気を入れ、徐々に追い込んで行く途中で「バチン、バチン」と鳴るアレだ。あの音が毎回タイヤを変えるたびに鳴る。もしかしたら個体差があるかもしれないが、少なくとも私のGP4000SとRaceDでは再現性100%だ。
おそらく、ニップル穴が無いためチューブレス対応も視野に入れたカーボンクリンチャーなのかもしれない。チューブレス対応したカーボンクリンチャーといえば、レイノルズやコリマが販売している。このBORAクリンチャーも同様にニップル穴がないリム形状を採用している。
リムの精度も実際に測定したわけではないが、カウンターバランスはデフォルトの状態で非常に優秀。リアホイールをぶん回してもマシンは上下にガタガタ動かない。なぜかフレ取りを完璧にしたMAVICのKSYRIUM125はぶん回した時にひどい縦揺れが有った。
この点Campagnoloは製品の特徴の一つとしてカウンターバランスを上げている。実際にバランスが取れており本当に「綺麗に」回っていることが確認できた。
BORA クリンチャーの唯一の欠点
ここまでBORAクリンチャーについて非常に好印象な事を書いてきたが、ネガティブな事(むしろ改善してほしい事)を書いていく。まず一つ目。カーボンの継ぎ目(接合部)の処理の粗さだ。私のBORAクリンチャーは早い段階で手に入れた初期ロットと思われるモノだ。
接合部処理の甘さ
実際に起こった事例も書いておきたい。チューブにR-AIRを入れて500~600km走り帰宅すると突然「シュー」という音と共にチューブがパンクしはじめた。原因はその時はわからなかったが、タイヤを取ってチューブを確認すると奇妙なパンクの仕方をしていた。
通常チューブに空く穴は外的要因(小さな針金)によりタイヤと接する外周「外側」に傷が位置する。ところがこの時確認した穴はリム面に面した「内側」だった。さらに縦に擦れて開いたような穴が開いていた。穴の位置とリムの位置を照らし合わせると原因が解った。
リム表面を注意深く見ると、どうやら原因は「接合部のバリ処理」にあった。接合部はホントにわずかながらズレて接合されており、その部分をおそらく出荷前にヤスリか何かで平にしている痕跡が残されていた。この面が膨らんでいくチューブを引っ掛け縦の線を残し、使用に伴いパンクが発生した様子だ。
もし、シグネチャーが記載されていないBORAが有ったとしたら、スポークテンションも注意してみるのも良いかもしれないが、その際はこの「接合部」の処理も注意深く見てほしい。私はリムを気にしながらヤスリの1000番でホンの少しづつ平にしていった。お陰で(カーボン柄は消えたが)段差がなくなりその後パンクは起こらなくなった。
バルブのプラスチックがハマらない
カーボンリムの場合チューブのバルブとリムが干渉してカタカタ音がなる。コレを防止するために「被せ物」をするわけだが、BORAクリンチャーに付属している「プラスチックの被せ物」がクセモノだった。私が使用しているR-AIRやSOYOラテックスのバルブはどうやら経が太いらしい。
どうやってもリムにプラスチックの詰め物の穴経が小さく、バルブが通らなかった。そのためプラスチックの詰め物は使わず、バルブ自体におなじみのテープを巻いて代替した。もうすこし余裕がある穴経にしてほしいものだが、初期ロットはしょうがないのだろうか。
というわけで私はこの純正のプラスチック詰め物を使用できなかった。
FULCLUM RACING ZERO CARBONとの住み分け
今回CampagnoloとFULCLUMで、うまくプロダクトを分けて来たなと感心したのがRACING ZERO CARBONだ。BORAは50mmと35mmのリムハイトで展開、FULCLUMのRACING ZERO CARBONは29mmのリムハイトを展開している。FULCLUMのターゲットといえば、シマノコンポにCampagnoloのホイールを付けたくない人向けのホイール展開だった。
ただ、最近はその傾向も薄れてきているように思う。当然Campagnoloのホイールにもシマノハブはラインナップされているし、私のようにシマノコンポにお構いなしにCampagnoloホイールを履かせるなんてのも何ら抵抗のない人だっている。
RACING SPEED クリンチャーなんてホイールは当面出ないだろうし、SHAMAL CARBON CLINCHERなんてモデルも当分出ないだろう。と、私は予想している。ある程度売れたら次の一手で販売されるかもしれないが、今はうまく住み分けができている状況といえる。
この辺の販売展開を見ても、Campagnoloは結構考えて今回のカーボンクリンチャーの展開をしてきている。というより、アルミクリンチャーの需要よりもカーボンクリンチャーの需要のほうが当然少ないわけで、わざわざ同じ傘の下で食いつぶし合う必要も無いのは、考えなくてもわかることだ。
関連記事:「レーシングゼロ カーボンは魅力的なホイールかもしれない」
雨天でのブレーキは「気づかない」
この記事を書く少し前、BORAクリンチャーをチームの合宿に持ち込んだ。幸運にも合宿は豪雨だったり晴れたり下ったり登ったりの「好条件」だった。噂によるとエグザリットと同様のPEO処理(プラズマ電解処理)が施されたカンパとフルクラムホイールで赤色シューを使うと、ある条件で問題が出るらしい。
Campagnoloのホイールを買うとブレーキシューは赤い物がついてくる。私もこの赤色を好んで使っているが、当初PEO処理のリムにもこの赤色が使えるとあった。しかしこの赤色をある条件下で使用すると一気にブレーキが突如効きすぎてしまい、場合によってはジャックナイフ状態になる可能性があるという。
どんな場合にに発生するのかというと、雨が止みリムが徐々に乾いていく時に発生するらしい。その解決方法として青色シューが発売されたらしいが、このようにリムとブレーキシューの相性問題は非常に重要な話題の一つだ。
もちろんCampagnolo推奨の赤色シューをBORAクリンチャーに使い走っている。私はこの赤色シューがお気に入りで、エグザリットのKSYRIUMにも使っていた。ただ、GOKISOのリムとは相性が最悪で本当に止まらなかったのは別の記事でも書いている。ではBORAクリンチャーは雨天で使うとどうだったのか。
実際「カーボンホイールを使っている事」を忘れていた。
どういうことかというと、雨が降ったり止んだりする気象条件の中で、山岳を登ったり長い下りを下ったりしていた。実際に走り終わってチームメイトからブレーキの効きを聞かれた時に「あ、そういや」と思う程に気に止めていなかった。要するに普通にブレーキが効いていたので気にすらしていなかったのだ。
思い返すと、下りの山道は豪雨で道が川のようになっている部分もあった。リムは濡れたり乾いたりを繰り返していたと思うが、特段イレギュラーなブレーキの効きはなかった。下りでブレーキが効かずに怖い思いもすることもなかったから、やはりリムとシューの相性は良いのだろう。
ただ、レース域のスピードとなると制動距離はアルミリムには勝てない。そういう意味では雨天のレースの際は、フロントにアルミリムを使う保険を持っておいても良いかもしれない。
関連記事1:「GOKISOホイールインプレッション 究極の回転体の真実」
関連記事2:「今こそカーボンクリンチャーの闇の部分について語ろう」
本当に「特徴のない」ホイール
結構悪条件で乗り込んでみて率直に思うことが有る。本当に特徴の無いホイールだ。これは逆に捉えると、私は良いホイールと言えるのではないかと思う。とにかく癖がなくてハンドルを切っても予想外な動きもしないし、かと言って風が強くてもハンドルが取られることもなかった。
風がとても強ければ35mmと言えど振られることも有るだろうが、本当に気にならない絶妙なリムハイトと言える。GOKISOのカーボンクリンチャーのように出だしが重い感じもなく、平坦の巡航から、登りまでオーランドに使うなら50mmよりも35mmだろう。国内のレースなら、50mmは重量の観点からも必要ないんじゃないかと思う。
ブレーキ性能も非常に(カーボンにしては)高いし、雨天での使用も問題ない。リム表面の加工も非常に綺麗だ。技術が進んだのかは定かでないが、ハイペロンクリンチャーと比べるとリムブレーキ面の厚みが「薄く」なっている。明らかに何年も前のハイペロンクリンチャーよりも技術が進んだことは間違いない。
BORA クリンチャーの仕様
BORAクリンチャーで驚いたことは他にも有る。カンパニョーロのホイールの製品品質が向上したことだ。自転車機材の「カタログ仕様」の重量はイカさまに近い。ただ今回のBORAクリンチャーの実測重量を確認してみると差はほとんど無かった。
BORA クリンチャー 重量
カタログ重量:1406 g(F600g / R805g)
実測重量:1407g (F596g / R811g)
誤差1gという「イタリア製品らしからぬ」仕上がりになっている。なおカタログ重量値は以下のとおり。
- ボーラウルトラ35クリンチャー:1370 g(F575g / R785g)
- ボーラウルトラ35チューブラー:1160 g(F480g / R690g)
- ボーラワン35クリンチャー:1406 g(F600g / R805g)
- ボーラワン35チューブラー:1215 g(F505g / R710g)
- ボーラウルトラ50クリンチャー:1435 g(F630g / R805g)
- ボーラウルトラ50チューブラー:1215 g(F520g / R695g)
- ボーラワン50クリンチャー:1485 g(F575g / R785g)
- ボーラワン50チューブラー:1265 g(F545g / R720g)
上記のようにチューブラーとの差はおよそ200gほど有るが、スポークやハブが一緒なので全てリム重量に起因している。
BORA クリンチャーのリム設計
BORA クリンチャーは、ハイペロン時代とは異なり新たにリム設計しなおした。この新設計のクリンチャーリムで改善された点は「3Diamant技術」を使用している事。前作のハイペロン時代とは異なり、雨天のウェットとドライ両方の条件下で制動性能が向上している。
3Diamant技術を用いたリムの制動性能は、シャマルといったハイエンドアルミホイールのような性能を実現しているらしい。
リム幅も24.2mmを採用しているわけだが、カーボンクリンチャーという構造上、ブレーキ面の耐熱対策は死活問題だ。チューブラーとくらべて構造上非常に弱い。この辺の話は、「他社より6倍失敗例あるレイノルズのカーボンクリンチャー開発者」で記している。
カンパニョーロのカーボンの加工技術は、ディレイラーといったコンポーネントでふんだんに用いられている事もあり、ある程度の成形技術は有るといえるだろう。
バルブ重量を考慮したバランス設計
ホイール全体のバランスは、回転性能に大きな影響を及ぼす。その為、バランサーとして重りを付けたりするわけだ。ただ、カンパニョーロの場合は「ダイナミックバランス」という機構を取り入れている。アルミとカーボンの場合とでは構造が異なっているが、
カーボンホイールの場合は、バルブの対向側のリムの積層と編み方を変えている。この重量差でリムが常にバランスよく回転するようになっている。小さな所にも抜かりがないBORAのカーボンリムなのだ。
まとめ:カーボンクリンチャーの一つの到達地点
様々なカーボンクリンチャーを使ってきたが、ここに来てBORA クリンチャーは非常に上手くまとまったホイールという印象だ。カーボンクリンチャーをお勧めするならGOKISOよりもBORAクリンチャーを勧めるだろう。ROVALのCLX40とも迷うがリム重量を気にするのなら間違いないくCLX40だ。
カンパニョーロからハイペロン以来のカーボンクリンチャーが出た事はことは、いくらか時代と技術が追いついてきたという印象を受けた。クリンチャーホイールは実践的に使え、タイヤの交換も楽であり、パンクしてもチューブラーのように一発アウトにならない点も大きい。
そして決戦用を常に練習用としても使えるアドバンテージがある。
ただ、いまだに「カーボンクリンチャー」は過渡期であり今後も様々な技術が投入されていくだろう。ブレーキ面の温度変化に寄る破損等もまだ課題にあるし、発展途上の機材であることは間違いない。また、カーボンリムならチューブラーの方が良いという人もまだ多い。
しかし、クリンチャーの利点やタイヤ自体の転がり抵抗の少なさといったメリットを知れば、これからより普及していく機材と言えるだろう。
BORA クリンチャーはカンパニョーロにとって「昔から作ってたけど、今まさに波が来てる」事を察知した「古くて新しい」製品なのではないか。コンポーネントは元より、ホイールメーカーとしてもメジャーなカンパニョーロが作るフルカーボンクリンチャーは、他社に先駆けて円熟期を迎えようとしている。