わずか2000円ちょっとの投資で、タイムトライアルを40秒も縮められるとしたら、あなたは投資するだろうか。例えば居酒屋で2,3杯飲めば消費してしまいそうな数千円という金額で「血の滲むような1秒」を得ることが出来るとしたら。
ヒルクライムで30秒縮める。TTで10秒縮める。トライアスロンで5分縮める。我々サイクリストは常に上を目指し、より早く、そしてより強くなろうとしている。ただ、自転車というスポーツはフィジカル面(体力的な)以外にも様々な要素を考慮してタイムを削らなくてはならない。
特にサイクリストが空気中を進む時、最も足かせになるのは空気抵抗だ。サイクリストという物体が空気中を進む抵抗のうち、およそ60%以上は空気抵抗によるものだ。だから各メーカーは「エアロフレーム」「エアロホイール」「エアロスーツ」「エアロポジション」と空力を稼ごうと躍起になっている。
それらの理由は、誰よりも早くゴールへ突入するために必要な要素に他ならない。
ただし、その空気抵抗削減には大幅な研究開発と、膨大な実験データーが必要だ。そこから生まれるエアロフレームやディープリムは安くても10万、いや20万はくだらない。エアロダイナミクスを追求すると切っても切れなくなる話題それは「コスト」だ。
今回は投資金額あたりのエアロダイナミクスが特に優れた機材を紹介したい。現在海外のワールドツアーやタイムトライアルでこぞって使われているシューズカバーである。「なんだシューズカバーかよ」と思わないでほしい。今回紹介するシューズカバーは今までと全く違うエアロダイナミクスに優れたシューズカバーなのだ。
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veloToze シューズカバー
今回紹介するのはveloTozeというシューズカバーだ。以前から確かに国内で販売していたが、代理店が変わり大幅に値下げされた。海外の販売価格やレートを見ても妥当な値付けをしている。たしか初めて日本に入ってきた時は4000円ぐらいしたと記憶しているが、現在の価格は¥2,750(税抜)だ。
実際に値下げされたことを知らないサイクリストも多いかもしれない。そしてveloTozeというシューズカバーがどのようなものなのか知らない人も多いと思うので、少し触れていきたい。
veloTozeはカリフォルニアで生まれたシューズカバーだ。シューズカバーと言えばパールイズミや他社メーカーから確かに販売されている。ただ、このveloTozeはすこし毛色が違う。本商品は一角のサイクリスト達の要望から生まれた。「本当にこんなのあったらほしい」という要望から生まれたのだ。
それらの要望はこうだ。「雨や寒さでもライディングを楽しみたい」「 足元が濡れることなく暖かい状態のままでライディングを終えたい」。スタートは誰しもが一度は思う小さな、しかしとても重要な事だった。
その後それらの要望を満たす為に、様々なシューズカバーを試し、自分たちが納得するシューズカバーをゼロから作りはじめた。そして彼らは全く新しいシューズカバーveloTozeを生み出すことに成功する。
このveloTozeの開発思想は、思わぬ副産物を生み出した。それは「防水性」である。水を通さないということは、すなわち風を全く通さない構造になっている。元々エアロダイナミクスを狙って作ったわけではないようだが、隙間なくピタッと吸い付く特性は、否が応でもエアロダイナミクスを向上させてくれる。
では、本当にシューズカバー等がエアロダイナミクスを向上させられるのだろうか。次の実験データーを元にいかにシューズカバーが費用対効果抜群なのかを確認していきたい。
40kmTTの実験結果
海外の老舗ニュースサイト「cyclingtips」に興味深いデーターが有る。「機材投資コストあたりどれ程タイムを縮められるか」というなんとも自転車屋潰しな話題だ。その中で特に費用対効果が際立っていたのが「シューズカバー」「エアロバー」「スキンスーツ」である。
ただし、ここで想定しているコストが「シューズカバー:5500円」「エアロバー:22000円」「スキンスーツ:30000円」という設定だった。今回のveloTozeはそれらよりも安い¥2,750(税抜)である。そう考えると費用対効果は突出している。
興味深い実験結果については勿体ぶらずに一気に見ていこう。なお40kmTTした際に対比し、何秒縮められたかを示している。
- ジャージ→スキンスーツ:-134秒:コスト2.5万
- ドロップバー→エアロバー:-122秒:コスト2.0万
- ヘルメット→エアロヘルメット:-68秒:コスト2.0万
- フロント3〜5バトン→ディープリム:-42秒:コスト10万
- 24スポーク→5本バトン:-23秒:コスト10万
- ノーマルフレーム→TTフレーム:-17秒:コスト30万
- シューズカバー着用:-30秒:コスト3000円
私がここで「TTフレームに30万突っ込むより3000円のシューズカバーを買うほうがタイム削れるし賢い」と書いたら明日には各サイクルショップに出入り禁止なるだろう。ただ私は、あなたと同じ末端の「一人の消費者」である。お金も無限にあるわけではないただのサラリーマンだ。話は戻り、私は今回のデーターからこう結論づけたい。
「投資金額と削減されるタイムは比例しない」という事だ。
以下は1秒を短縮する為にかかるコストである。
- スキンスーツ:186円
- エアロバー:163円
- エアロヘルメット:294円
- ディープホイール:2380円
- TTフレーム:17647円
- シューズカバー:100円
シューズカバーは「1秒100円」のセール中である。見てわかる通り、自然界とお金は全く関係ない。次にエアロバー、そしてスキンスーツと買いやすい商品が並ぶ。事実としてエアロフレームにお金を投資するのは一番最後の「嗜好品」ということになる。それらより、まずスキンスーツだったり、エアロバーを買うほうが懸命だといえよう。
実験結果は残酷な事実を突きつける一方で、我々サイクリストが陥りやすい思考バイアスを正しく補正する。そりゃお店は「TTやるならまずTTフレームでしょ!」と言うはずだが、私は投資に対するタイム短縮のリターンを考えるならば、シューズカバーやエアロバー、スキンスーツを先におすすめしたい。
確かに、エアロフレームで最適化されたポジションが一番空気抵抗を削減されるかもしれない。ただ、資金面が厳しいサイクリストがほとんどだ。それでも毎日努力して1秒を縮めたいと思っている。そんな中で手軽に、そして簡単に使えるのが「シューズカバー」である。
ポジションも何も気にすることなく簡単に使える代物という点も大きい。セッティングも不要だし、ポジション出しも不要だ。タイムだけ見ても5本フロントバトンホイールを買うのと同じ位タイムを削減できる(むしろ短縮タイムはシューズカバーの方が良い)。そう考えるだけでもシューズカバーはとても侮れるシロモノではないのだ。
もちろん各機材は様々な種類と価格設定が有る。それらについては今回議論の対象外としたい。概算の価格帯であるため、実際の購入検討段階においては、各人の使用する機材に照らし合わせて検討をする必要がある。
関連記事:「すね毛剃った → 空気抵抗7%削減へ! 風洞実験で判明」
veloToze インプレッション
さて、費用対効果抜群のシューズカバーといえど、実際に使ってみないことは話にならない。それらを試す絶好の機会と言えばやはりレースだ。今年私が出場する実業団のレースはタイムトライアルやクリテリウム、ロードレースという種目がある。
その中で1分1秒のしのぎを削る中、タイム短縮の為に選手は躍起になる。今回初戦のクリテリウムで試す時が来た。なお、レースの規定ではタイムトライアルを除きエアロ効果を狙ったシューズカバーは禁止の場合がある。レースの要項をよく読んで頂き、正しいレース装備で挑んでほしい。
この日は、寒く雨が降っていたためシューズカバーは許可されていた。veloTozeは元々雨天や、シューズを濡らさない事を目的として考えだされた為、雨対策としてももちろん使える。そのシームレスなラテックス製のシューズカバーは雨を弾き、シューズへの水の侵入を防いでくれる。
では前置きが長くなる前に早速使ってみて気づいたこと、はき心地等を確認していきたい。
早速、使い方を失敗するwww
まず初めにveloTozeを見て思った。「これどうやって履くんだろうか・・・」と。正直な所使い方がわからなかった。なぜなら足首の穴、クリートの穴、カカトの穴その「3つの穴」以外は開いていないのだ。まさに知恵の輪のようだ、と言ったほうが正しいかもしれない。
しかし、使い方がわかればものの1分、いや慣れれば30秒であっという間に履けるのだ。ただし、私は初め使った時に「説明書を読まず」に使ってしまった。そして失敗して貴重なレース前の時間を失ってしまったのだ。
ここからは私が「失敗」した履き方を声高らかにご紹介したい。けっして真似をしてはいけない。私が今から記載することは皆が同じ過ちをしないように、同じ轍を踏まないように書き記し伝えたい事だ。巷にあふれる多くのインプレッションのように、きらびやかな成功ばかりの記事は当ブログには似合わない。
泥臭く、失敗し、自らの愚かさを露呈することこそ、価値の有ることだと思っている。私は次のような失敗を犯した。
「シューズを履く」→「靴下のを履くようにvelotozeを足首部から上げていく」→「ラチェットに引っかかる」→「クリートの穴から上手くクリートが出ない」→「スマホで正しい使い方を確認する(ここで正しい使い方を知る)」→「レース出走ギリギリになる」→
「\(^o^)/」
ということが、全国のveloToze購入ユーザーに起こらないことを祈念して次からは正しい使い方をご覧に入れよう。
veloTozeの使い方
どうがをみればいっぱつだ。
ではveloTozeの使い方をご紹介したい。もしも「釣り」なタイトルを付けるとしたら「ダレでも30秒で出来る!veloTozeをすぐはける方法!」という週刊誌のタイトルの様な見出しをつけるだろう。しかし、本当に使い方を理解すれば、あっという間に使うことが可能になる。
動画と合わせてご一読いただきたい。
まず初めの準備は「シューズをはかない」という事を第一に考えて欲しい。STEP1は「靴下の上からveloTozeをはく」だ。普段使用している靴下の上からまずveloTozeをはいてみよう。そう、靴下を二枚はく感じだ。続いて次のステップへ移る。
STEP2は「クリート穴に足を通す」事だ。爪先前方、クリートを外に出すために空けられた穴から、足を出そう。そして、そのままくるぶし上までveloTozeを上げる感じだ。少し厄介に感じるかもしれない。しかし、慣れると何て事はない。
昔、靴紐を初めて結んだ少年時代のように、いつの間にか無意識に紐を結ぶかのごとく、慣れれば何て事のない動作なのだ。ではいよいよ次のステップへ。シューズを履いてみよう。
STEP3でやっとあなたは「シューズを履く」事になる。もしも、ここまででシューズを履いてしまっていたのならあなたは悪くない。私の文章がそこまであなたを文章の中に引き止められなかったからに違いない。とはいうももの、しっかりと手順を守ってほしい。
シューズを履いたあとの作業はいたって簡単だ。捲り上げたveloTozeをクリート穴からスルスルと下げていく。これがSTEP4だ。その時にイライラせずに丁寧に下ろして欲しい。例えば、スペシャライズドのBOAダイヤルに引っ掛けてそのままのひっぱってしまうと破損してしまう恐れがある。
従って、丁寧に余裕を持ってゴムのテンションが均等になるようにはいてほしい。爪先まで覆い被せたら、最後は各所をくまなく見て、無理なテンションがかかっていないか、カカトの部品に干渉していないかチェックをする。
ここまでの流れをもう一度おさらいしたい。
- STEP1: シューズを履く前にVelotozeをはく
- STEP2: velotozeのクリート穴からくるぶしまで上げる
- STEP3: シューズを履く
- STEP4: クリート穴からシューズを覆い被せる
文章で書くから厄介だが、やってみると何て事はない作業だ。ここまでまとめた内容は実際レース会場で忘れてしまうかもしれない。私も備忘録的な意味合いで記事化しているので、本記事をブクマするなりしていただけると幸いだ。
まるで皮膚「付けていない感」
「業界最薄0.03mm」と聞いて躍然たる男性諸君は何を連想するだろうか。実際に体への密着はとても重要な話題である。卑猥な話など毛頭するつもりはないが「皮膚のような感覚」をveloTozeは感じさせてくれる。おそらく履いた瞬間違和感を覚えるかもしれない。
ラテックスで作られたveloTozeはあまりにも密着度が高く、隙間が無い為、シューズ全体とさらに足首から上を覆い尽くす。そうすると爪先から足首まで得体の知れない一体感を感じるのだ。これは履いた人でないと理解知りえない一つの感覚だ。
靴下、シューズ、インソール、シューズカバー、独立したそれぞれがひと塊りになる不思議な感覚である。
雨天での恩恵
先ほど雨天での使用が良いと書いた。それはなぜだろうか。例えば雨天のレース、そう昨年の乗鞍ヒルクライムは雨だった。昨今のヒルクライムのレースは高速化、軽量化に拍車がかかりサンボルトの軽量ワンピースが投入されたりと話題に事足りない。
衣類の重量まで気にし始めたナーバスなサイクリスト達は身につける装備の重さまで測り始めている。そんな中彼らが測っている重量は「乾燥重量」という水分が含まれていない、本来あるべき素材の重量である。衣類や、シューズはその繊維の特性上、水を吸収しやすい。
水を含んだシャツで海やプールを泳いだ方なら理解できると思うが、あの衣類の重さたるや普段我々が見落としがちな「重量増」である。
そのサイクリスト達が躍起になって削る重量であるが、雨天時のシューズは次第に水を含み、重くなっていく。繊維が吸収できる閾値まで水を含み吸収していく。結果的には軽量なシューズも重くなりサイクリストにとって、まさに足かせとなる。特にシューズとあれば一回のレースで何度も繰り返し回転を行う。
ただ、veloTozeを使えば雨や水を通さないシームレスな構造が役に立つ。わずかばかりの重量増に代償を払えば、後々指数関数的に増える水分の重量増を防ぐことができる。合わせて水を弾き、エアロ効果を高められるとあれば、使わない手は無いだろう。
そして、レースが終わってからのメリットも付け加えたい。防水性に優れたveloTozeは水をある程度シャットアウトできるから、シューズのダメージを軽減してくれる。雨天時の水しぶきやヨゴレを代わりに受け止めてくれるからだ。
このように、冒頭でも記した本来の防水性の目的は大いに果たされている。
使用後の保管について
使用後のお手入れは少しコツが必要だ。実際に初めて使うとなにやら白い粉が付いている。決して怪しい粉では無い。これはベビーパウダーに近いシューズとシューズカバーの間で潤滑油の役割を担っている。ただ、一度使うと足から出る汗によってその機能は失われる。
次もしっかりと気持ちよく使うために正しい保管方法とメンテナンスが必要である。私はまだそれらを模索中ではあるが、一つの方法を考案したのでご紹介したい。過去に当ブログで紹介した「避妊具メーカーのオカモトがラテックスチューブを作った結果 SOYOラテックス」を覚えているだろうか。そう、あのうすうすラテックスの話である。あの粉をまぶす保管方法をそのまま流用した。
関連記事:「タイヤチューブを劣化させないメンテナンス方法 SOYOラテックス」
当ブログを見てラテックスチューブを購入した人はそのまま袋の中にveloTozeをぶち込めばよろしい。そしてシャカシャカとまぶして次回使うまで放置だ。ただ、ひとつ注意してほしいことがある。もしもあなたの足が非常に汗かきだった場合、シューズカバーの内側にはたくさんの水滴や白い粉が水分を吸収しゴム状になっているだろう。
それでは状態良く保存することは厳しい。そこでveloTozeをしっかりと裏返して丁寧に水拭きして乾かそう。その「少しの一手間」をしてから先ほどの白い粉が入った袋へ入れる。そして数回上下にシャカシャカとしておけば万事OKである。
もし万が一ラテックスチューブの白い粉が無い場合もある。そしてベビーパウダーを購入する事に抵抗のある人も中には居る。だが、そこは安心してほしい。私はベビーパウダーではなく、パナレーサーから発売しているタイヤパウダーを使っている。要領は同じで効果も同等であろう。
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もちろん通常の用途であるタイヤとチューブの固着防止にも使えるし、ラテックスチューブを保管しておくためにも使うことが出来る。そして、今回ご紹介しているveloTozeにも、もちろん使っている。一つのタイヤパウダーは様々な用途に使えるのも嬉しい。
次回使う際までの間一手間を加えるだけでとても長く使えるはずだ。そして長く使うということはすなわち費用対効果の恩恵を長く受け続けることが出来る。
シューレース式の救世主か
昨今のシューズで目新しいモノといえば編み上げ式のシューズだ。このタイプはベルトでもなく、BOAダイヤルでもなくサッカーやランニングシューズのように編み上げ式を採用している。このタイプは軽量に作れるばかりではなく、足全体を包み込むようにホールドする事が一つのウリだ。
ただし、問題も有る。ブラブラと自由に動く紐はサイクリストの気を散らせる一つの悩みだ。そんな編み上げ式シューズにとってveloTozeは一つの救世主になるかもしれない。確かにspecializedの編み上げ式シューズはシューズを押さえるカバーが付属している。
GiroのEmpireもシューレースをしまう場所がある。といっても完全には収まるわけではない。そこでveloTozeを使って完全にパッケージング化することも一つの手ではないかと私は思うのだ。これで気の散るシューレースに意識を向ける必要もなくなる。
シューレース関連のトラブルもほぼ皆無になる。
シューレースで思い出したが、このveloTozeをはいたままspecializedのBOAダイヤルの調整は可能だったのでこの場を借りてご報告したい。
カラーバリエーション
カラーバリエーションは嬉しい全7色だ。最近流行しているネオンカラーをもちろん備えている。私は定番の赤と緑を選択した。主要カラーが目立つ色で展開されているが、黒や白といった定番の色も備わっている。シーンに合わせて異なる色を互い違いに揃えるのもオシャレかもしれない。
素材の性質上なのか、青系が無いのが残念だ。今後要望が有れば生産されるかもしれない。とりあえず「早く見える赤」や「定番の白」等一つ買ってみて、ジャージに合う色を選択してみてはどうだろうか。
使用する上で注意したいこと
そう、膨らましてはいけない。
やはり海外のユーザーはどうしても膨らましてみたくなるようだ。いやいや、これはVelotozeが非常に伸縮性に優れた性能を示す貴重な「実験」とも捉えられるだろう。
使用する上で幾つか注意をしたい。このシューズカバーは確かに費用対効果が優れている。長く使えば使うほど、そのランニングコストは飛躍的に安くなっていくが、少しデリケートな作りでも有る。その理由として伸縮性の優れたラテックス製で作られているのだ。
私はツメが伸びた状態で使ってみたが破れる気配は無かった。製品としての一定の強度は備わっているように思える。ただし、はいた後に歩くことは避けたほうが良い。つま先側がコンクリートに擦れてしまい、小さな穴が空く可能性がある。実際に私はこの過ちを犯した。
なので、できればトゥカバーを付けてレースの移動の際には保護するか、もしくは乗車して移動すれば何ら問題はないだろう。そこまで神経質にならなくとも歩き方に問題がなければ、つま先側が破損する事は少ないかもしれない。
ただ、長く使ってほしい製品だからこそ大事に使いたい。決して私の踏んだ轍を踏むようなことは避けて頂きたい。
期待される種目
私はこのシューズカバーが活躍する種目は決してタイムトライアルの枠だけでは無いと考えている。どちらかと言うと、エンデューロやクリテリウム、ロードレース、そして近年高速化の一途をたどるヒルクライムとほぼ全てのレースに全方位的に使える。
もともとIAMのオフィシャルスポンサーであるveloTozeだが、もちろん選手はこのシューズカバーを使ってタイムトライアルに出走している。2016年の海外のプロツアーにおいてシューズカバーは、くるぶしまである「ハイカフ」タイプにシフトしてきている。
こちらはスパルタカス、ファビアン・カンチェラーラである。以前はローカットのシューズカバーを使用していたが、近年は無印(スポンサーの兼ね合いか?)のふくらはぎまで覆われたシューズカバーを使用している。1秒のしのぎを削るプロ選手だからこそ、空気抵抗は死活問題である。
続いて急成長を魅せるAru。こちらもふくらはぎまで覆われたシューズカバーを付けている。もちろんエアロダイナミクスを追求した結果であろうが、どのチームも空気抵抗の研究は盛んに行っている。結果的にシューズカバーの長さが伸びてきていることは近年のトレンドだろうか。
確かにオシャレの意味で長いソックスが現在でも流行っている。ただ、ことタイムトライアルに関しては空気抵抗削減を狙っているのだろう。
こちらはMovistar。こちらはさらにふくらはぎまで覆われているタイプ。もしかしたらロゴだけ変えたveloTozeだとしても何ら疑う事はない。
1%の積み重ねで勝利をもぎ取りに行く最強のTeamSKY。こちらのシューズカバーも非常に長いタイプを使用している。
関連記事:「凡人が才能のある人に勝つためにやるべき1%のこと」
プロ選手達は確かにタイムを削るために使用しているが、アマチュアサイクリストでももちろんそのエアロダイナミクスの恩恵を受けられるし、雨天時のレースにおいてその性能をいかんなく発揮してくれるだろう。
まとめ:費用対効果と機材
サラリーマンの少ないお小遣いでタイムを縮めたい、、、という要望に真っ先におすすめするとしたらシューズカバーだと言いたい。無限にあるわけではないお金を使い、賢くタイム削減を考えるならまずは3000円程の投資で効果があるveloTozeではないだろうか。
費用対効果を考えればTTフレームとは雲泥の差がある。もちろん私もTTフレームを2台所有しているのでTTフレームを否定するつもりはない(と言いつつ否定とも捉えかねない記事だ!)。シビアなレースやタイムトライアルに出たい、でもTTフレームには手が届かない。。
そしたら少しでもタイムを縮めるためにまずはエアロシューズカバーを選択してみても良いだろう。先ほど記載した通り、タイムトライアルに限らず、ヒルクライム、エンデューロ、クリテリウム、そしてロードレースと幅広くその空力の恩恵を得られるはずだ。
ここまで書いて私は少しの不安がある。もしも今回シューズカバーの費用対効果と空力特性(一部のTTバイクよりも空力特性が優れた)を知り猫も杓子もエアロシューズカバーをはいたら・・・。そしたら結局はライバル達とのアドバンテージが無くなり、結局タイム上はイーブンになるのでは・・・。
という余計な心配だ。
だから皆が使っていないうちにこれらの恩恵をいち早く受け、使用することがまず先かもしれない。少しの違いが0.01秒のタイムを分ける。レースに出たことの有るひとなら、いやがおうにでも感じる1秒の重みであろう。
「速さは金で買える」
確かにそうだが我々サイクリストは、より安く、より費用対効果が望まれる機材を選択すべきだ。決して売りたがる店の口車に乗せられて、高いお金を出して機材を買ってはいけない。よく吟味し、価格に見合った性能を備えているのか、自分で判断して確認して購入したい。
なお、代理店が深谷産業に変わったためシマノを扱うショップなら大抵Velotozeを購入できるはずだ。近くにショップがなければAmazonや楽天といったネットでも購入可能である。海外の販売価格ともほぼ変わらないので国内で買うほうが早くて安心だろう。
このエントリー費よりも安い、2000円台の投資であなたの1秒を縮められるとしたら。それは本当に投資しがいの有る機材といえる。そのリターンとしてライバルより先着できたのなら、この上ない喜びではないだろうか。今年のレースでveloTozeの出番が増えることは間違いない。
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