息抜きをしつつ、また走り始める。

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普段の環境から離れて、いつもとは違う環境で考えごとをすると妙に悩みがほどけていく。北海道の大地をぼんやりと眺めていると、普段の些細な細かいことなど、本当にどうでもよくなってくる。今回の記事は旅行の記録みたいなものだ。誰かが読むことを想定しているわけでもないし、自転車の写真も一切出てこない。

プライベートな内容と、写真ばかりだ。取り留めもない内容なのだが、頭の整理と棚卸もかねている。この記事を読み進めても、読者が何かを得られることは無いだろうし、ドラマチックな文章展開もない。「~は、だ」という思考が言葉として形を変えてちらばり、それらが集まって文章をただ形成している。

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自転車以外の重要な事

自転車競技は家族のサポートありき。周りの先輩サイクリストを見ていると、そう思わずにはいられない。わが家の場合は、妻がレースを見るよりも走るほうが好きなので特殊かもしれない。そして、レース内容をかなり深く理解しているだけあって、走りや結果にごまかしが効かないのも手が抜けない理由だ。

「優勝以外は負け、最低でも表彰台」

厳しいが、ありがたくも思う。「松木さんの先頭集団からちぎれていたわね」と。わたしの結果は表彰台になんとか登ったものの、レース全体の内容としてどうであるかについてはご存知の通り赤点だ。

私はレース前日に弱気になってた。普段は弱音を口にしないようにしているが、弱音を口にすると次第に精神を侵食し、現実になってしまう事がある。常に口に出すことはポジティブなことを言い、そして文章にも反映するようにしている。しかし私も人間だから、ほんの少しだけ”そんな”を事をポロッと言ってしまうこともある。

妻は、「毎日練習してきたんだから行けると思うけど」と言う。

走る側と見る側とでは思考に大きな違いがある。当事者であるうちは、自分自身の思考を客観的にかつ正確にとらえることが苦手なようだ。最近ではメタ認識という言葉で自分の思考にラベルを付けて、客観的にとらえる術が紹介されている。思考を飼いならすためにはとても重要な考え方だと思う。

とはいえ、レース前は悪い癖が出るのだ。スタート前の選手リスト見て「上から数えて何番目か」という計算をしてしまう。いわゆる「走る前から順位を決める」という愚行だ。

同じカテゴリには山神の森本さん、井上さん、雑賀さん、兼松さん、おきなわ140km覇者の岩切さん、井上和郎さん、中尾さんら実績を持つメンバーばかり。年代別だが実際は1500名の混走で松木さん、高岡さん、田崎さん、紺野さんら日本トップアマ(一部プロ含む)が集結している状態だ。この時点で上から数えても圏外の可能性は高い。誰もが、自分でもそう思う。

しかし、スタートする前から不確実な物事を決めつけてしまうのは良い行いとは言い難い。それでも、「駄目であるための理由」を探していたように思う。自分でもハードだと思った2週間前から3日前のトレーニングの追い込み時期を思い出す。おかげで最終の土日は全く走ることができなかった。逆に走れなささが自信を無くす結果になったのだと自分で理解することができた。

ただ、それまでの練習では強い選手についていくことができたし、限界ギリギリの練習をコツコツやってきたから、あとは走るまでわからないんだよなぁ、と次第に割りきっていくことができた。割り切れたのは自分の思考を客観的にとらえられたからだと思う。さらに自信が無いと思った理由を整理することにした。

まず無機質な数値は非常に重要だ。テクノロジーは使ってナンボだ。弱気になった原因は数値にある。CTLの低さ、体重が思い通りに落ちなかったこと、直前の練習でまったく走れなかったことの3つが自信の無さの原因だと分析した。逆にとらえれば、これらをクリアできれば自信を上げることができるとも言いかえられる。

全てがうまく行ったらさらにリザルトは良かったのかと聞かれたら、実際はよくわからない。CLTはいつもの下限である130を満たすことができなかった。体重もベストの56.0kgまで落とせなかった。直前の練習では全く走れなかった。これでよいイメージが持てるかというと、そんな楽観的な想像はすることはできない。

ただ、悪い方向に考えすぎただけかもしれないが、当日は体も軽く、よくかかった。最後まであきらめずに地味な走りをして1つでも順位を上げようとどん欲に走った。やったことは自分のできる範囲で1つでも順位を上げる。ただそれだけだった。

SNSでおめでとうのDM来たけど、やはりチームのマツケンさんの総合優勝があるので、私のリザルトは見劣りしてしまう。ただ、いろんな人がこのジャージで表彰台登ったことを嬉しく思っていることを知った。

「人数多いけど、あんまり強くないよね」と言われたこともあったけど、これからは少しはチームへの見方が変わってくれる、、かもしれない。ただし、人がどう思おうと、何を言われようと、ブレずに目標に向かってやり続けることは改めて重要だと感じた。背伸びせず、おごらず、自分のできることの範囲で少しだけ努力するのがよさそうだ。

それでも人間は基本的に自分を中心に物事を考えてしまいがちだ。人がどうだとか、自分と思っている方向に進んでいかないとか、そう考えてしまう。ただ、人にも人の(その人を中心とした)考え方があって、自分にも自分の考え方が当然ある。だから、他人の期待に応えようとせず、自分の成し遂げたい事を主軸において、目標を立てて、逆算して、そこから今何を1番すべきなのか、ひたすら考えながら進むほうがいい。

ただ、初めからうまく行くわけではない。長い時間がかかるのだが、私のような凡人にはある意味近道だと思っている。私はこんな事を考えていたらしい。北海道を走りながら気づかされる。北海道で頭の整理ができたのは、雄大な自然も相まって携帯電話を意識的に遮断していた事も大きい。北海道では携帯の電源を切って妻に預けて、大自然を走った。

それだけ脳のリソースを消費せず、ノイズのような無用な情報が入ってこず、考えや悩みをほどきやすくなっていた。ニセコのレース後もチームに報告して、電源を切って、妻に預けて北海道を満喫した。テクノロジーとうまく向き合うと、自転車の取り組みも豊かにしてくれるし、家族との時間、はたまた人生も豊かにしてくれる。

携帯の画面を見ず、北海道の自然、妻、娘の顔を見て会話する。北海道まで来て携帯の囚人になる必要はない。SNSのイイネや拡散数などというものは、一過性のもので、後につながるような効果などない。そして、どんなにイイネを積み上げても人生は豊かにはならない。後から振り返って、「もっとイイネを獲得しておくべきだった」などど人生の終盤になって思うことも無いだろう。

今回、家族の時間が増えたのもよかった。

サラリーマンライダーは、家族とのバランスを取ることが最低限のたしなみだ。そう考えるのはチームの先輩がそうしていたからというのもあるのかもしれない。松木さんは自転車の事も多く教えてくれたけど、娘さんが生まれたときもレースに連れてきていたし、家族旅行もかねてバランスを上手く自転車と付き合っている。そういうバランスも勝手に自分で学んだのだと思う。

ただ、奥様方の多大な理解のもとに成り立っているので、勝手に自転車に乗るお父さんは偉そうなことを言ってはならない。正直、自転車に乗る事は世間一般的に見て遊びなのだ。だから今、子育て、家族旅行と「遊びの自転車レース」をうまくミックスできているのは、妻と子供の理解があるからなのだと本当に思わなくてはならない。

今回の北海道はたっぷりと観光できたのが良かった。ニセコ、吉田牧場、道の駅三ヶ所、海の駅、140kmのコース途中にあるニセコの神仙沼へのハイキング、羊蹄山の湧水公園、洞爺湖サミット、ノーザンホースパークで○億円の馬に乗ったりとレース時間以外はすべて観光に費やした。

唯一申し訳なかったのは、妻は私と同じスケジュールで動いていたため早朝から何時間も待っていてもらったことだ。ただ、レースをくまなく見るのが好きなようでスタートもいろんな選手を見ていたようだ。「高岡さんと雑賀さんはスタート前まで並ばずにあたりをグルグルアップしていて、あなたと違ってさすが余裕そうだったわ」と選手チェックも欠かさない(笑。

スタート直後はバルーンや撤収がソッコーで始まったらしく、映像や実況などがあれば良いなと言っていた。そのあとは来年の泊まりたいホテルめぐりをしたらしい。来年は李さんと同じところにしようかなぁ、と言っていたから来年もニセコに出場することは大丈夫そうだ。

金曜日から月曜日まで4日間北海道に居たわけだけど、もっと長い時間滞在していたような気がした。食べ物もおいしいし、景色もよい。ずっと住むにはちょっと不便だけど、1年に1回は訪れたい場所だ。というのも、北海道はのんびりしている。千歳空港からニセコに向かう途中、車の遅さに驚いた。関西から来たメンバーも同じことを言っていた。

関西は我先に、少しでも早くと少々せっかちかもしれない。ただ全てではないがと付け加えつつも、北海道ののんびりゆっくりはとても良かった。次第に私もそうなってしまい、最終日は「わ」ナンバーの車に追い越された。環境は、人の性格や、心の余裕にも影響を与えるのかもしれない。

北海道に到着した日、時間はたっぷりとあるのに到着を1分1秒急ぐ私と、最終日にのろのろと運転する自分は一体何が変わったのだろうか。おそらく考え方や、根本的な性格は変わっていない。ただ、少しの心の余裕ができただけだと思う。大自然を見て、感じて、開放される。

OSのデフラグのように、少しばかり煩雑になっていた脳の領域が整理整頓され、余裕が生まれたのだろう。そのような心の整理もできる北海道は、レースと観光をするのにも十分だ。次回は富良野に行ってみたいねと言う話になった。結構遠いけど、次は勝手がわかるからある程度は自由に行動できるはずだ。

帰りの飛行機から北海道の大自然を見下ろす。これほど、名残惜しく感じる旅はそれほど多くない。ただ、来年もまた必ずニセコの地に戻ってこようと思えるほど良い旅だった。今年ほどのリザルトを出せるのかは全くの未知数だけど、一つ一つやるべきことを確実にやっていれば、たまには良いことも巡ってくるものだ。

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