TARMAC SL7 インプレッション 機材投資として悩みの多い1台

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TARMAC SL6が急に走らなくなった人がいるらしい。SL7が登場したことによってだ。一つだけ言わせてもらうと、TARMAC SL6 DISCはディスクロードとして1から設計し驚異的な軽さを達成したスーパーバイクだ。グランツールで幾度となく勝利し、海外メディアは「最高のディスクロードバイクのひとつ」と評価している。そして、VENGEと同じくらいよく見かけるディスクロードバイクだ。

私自身もTARMAC SL6のリムブレーキ式とディスクブレーキ式を所有していた。しかし、乗り味(進ませ方)が自分のスタイルに合わずに手放してしまった。VENGEとTARMACは乗り味が全く異なる。VENGEは踏んでいる時間に遊びやタイムラグがあっても進んでくれる。TARMACの場合は、蒸気機関車のように常に燃料を投入し続けるようにするとよく走る。それぞれのフレームの間には走らせるためのアプローチが異なる。

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それらは、「良しあし」の問題ではなく「好き嫌い」であって好みの問題だ。さらに厳密に言えば、ライダーとの相性である。ほとんど変わらないジオメトリながら乗り味が全く異なっている。スチールやチタンフレームを使うと感じる脚あたりの違いのように、VENGEもTARMACも進ませ方や、脚あたりの特徴が異なっている。

したがって、VENGEが良いか、TARMACが良いかという議論をした場合、何に観点を置くかで答えが変わってくる。重量、空力性能、乗り心地、それとも見た目やメンテナンス性?すべてが独立した要素であり、当然すべてがパーフェクトな自転車はまれだ。それでも、TARMAC SL7で成し遂げたかったのは、高い次元でさまざまなバランスが取れたバイクを生み出したかったのだろう。

平坦よし、登りよし、下りも、普段のメンテナンス性も。バイクの性能観点に限って話をすると重さや、空力性能といった性能面に目が行きやすい。また、市場の流れも考慮しプロモーションを行う必要がある。スペシャライズドは他社製品と一線を画する必要があった。エアロロードでも軽量バイクでもなく、1つですべてをまかなえるスーパーバイクを登場させた。

出来上がったバイクはバランスが取れたオールラウンドバイクのTARMACだった。それ以上でも、それ以下でもないと思う。

SL7の登場によって、悩みのタネが増えたのはVENGEとSL6のユーザーだ。それぞれの所有者たちは、新しいTARMAC SL7に興味が増してきている。VENGEユーザーは軽さを。SL6ユーザーはエアロダイナミクスを。私は、TARMACの新旧両方に乗り、VENGEやさらにはライバルメーカーのEmondaやMADONEも乗った。

その経験から最強との呼び声高いTARMAC SL7が本当に優れているのかを知りたくなった。

SL7のインプレッション最後を飾る後半は、実際にTARMAC SL7に乗ってテストを行った。そして、SL6、VENGE、Emonda、MADONEと比べて何が違うのかだけでなく、実際のライディングにどのような影響を及ぼすのかを探っていく。そして、所有すべきバイクなのか結論を出した。

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相対評価をするために

「フレームだけ」を評価するためにはどうしたら良いのだろう。しかし、人間は測定器ではないため絶対的な評価を下すことはできない。絶対的な評価を行うことは不可能だが、ある対象とある対象を比較することによって相対的な評価を下すことはできる。「機材は相対評価だ」それぞれの比較対象の「引き算」が私が下す機材の評価である。

TARMAC SL7のインプレッションで必要だったのはVENGEだ。問題は、基準となるVENGEが優れており、性能が高いという点にある。たとえば、エアロダイナミクスの観点で比較をすると「TARMAC SL7はVENGEよりも空力が悪い」という話になる。もしくは、重量で話をするのならば、「TARMAC SL7のほうがVENGEより軽い」という単純な結論になる。

重い、軽い、速い、遅いといった絶対的な部分は比較的表現がしやすい。しかし、乗り心地の部分に関してはさまざまなコースを走らなければ見えてこないものがある。最も粒度の高いインプレッションができるのはレースだ。自身を限界まで追い込んで、限界速度まで追い込める。路面状況も良いから対向車を気にせずにインを攻められる。

また「剛性」というあやふやな部分に関しての理解も必要だ。バイクが組み上がったあとは、フレーム単体の剛性という一部だけを切り出して、「うーん、TARMACのフレームは剛性高いですねぇ」というようにフレーム単体の評価”だけ”をすることは不可能だ。というのも、人間が感じる「バイクシステム剛性」というのは剛性が最も低いタイヤとチューブが支配的であるためだ。

よって、TARMAC SL7に組み替える前にVENGEの最後の乗り込みを行い空気圧を記録した。今回のインプレッションはVENGEで使用していたコンポーネントをまるごとTARMAC SL7に移し替える。唯一の違いとしては、S-WORKSクランクアームとDURAACEクランクアームの違いがある。チェーンリングはIT化しているため同じものを使用した。

相対比較を行うために初期条件をできるだけ小さくする。そうすることによって、TARMAC SL7というフレームの特徴を際立たせることが可能になる。非常に手間のかかる流れではあるものの、「TARMAC SL7」というフレームに対する相対評価の粒度も増す。

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TARMAC SL7の構成

  • フレーム:TARMAC SL7 52サイズ
  • ホイール:ROVAL CLX50
  • リムテープ:DTSWISS
  • チューブ:SOYO LATEX
  • タイヤ:GP5000 25C
  • ハンドル:AEROFLY 2 380mm
  • ステム:TARMAC ステム 90mm
  • マウント:TARMAC ステム純正
  • コンポーネント:DURAACE R9100 Di2
  • BB:DURA-ACE R9100
  • サドル:S-WORKS POWER 143mm
  • ペダル:DURA-ACE R9100
  • 重量測定1:FEEDBACKデジタルスケール:6820g
  • 重量測定2:ノーブランドデジタルスケール:6835g

主要な構成は至って普通である。VENGEで使用していた軽量なセラミックスピードBBやS-WORKSクランク、チタンボルト一式、S-WORKS SLステムといった軽量化パーツは用していない。普通に組み上げてこの重量は非常に軽いと思う。

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優れた操作性

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低速でよく感じ取れたのはTARMAC SL7の優れた操作性だ。シクロクロスの練習場所に行って、まずはパイロンを置いて旋回する。VENGEでもよくやっていた遊びだ。トレール量の違いはバイクのコントロール性能に多大な影響を及ぼす。はずなのだが、非常に似通ったバイクでもまったく異なる挙動を見せる場合がある。

少々話は脱線するが、スペシャライズドのCRUXとTREKのBOONEはトレール量が非常に近いものの挙動やバイクの動かし方、動きが全く異なっている。CRUXはヘッドチューブ寄りに旋回の中心がある。対してBOONEはBB寄りに旋回の中心がある。これらの特徴の違いはクローズドコースを走る際の走りに影響する。

前者のCRUXはわりと直線的なコースを得意とし、スピードを落とさずに大きく旋回する。対してBOONEは、こまごまとした小さな旋回を得意とする特徴がある。そのような特徴をふまえた上で、TARMAC SL7は(VENGEの操作性と比べると)細かい旋回をする特徴がある。群馬CSCのヘアピン、舞洲クリテリウムのようなタイトなコーナーを速く駆け抜けようとするならTARMAC SL7のような旋回性能が生きてくる。

フレームを変更しただけで、なぜこのような違いが生まれるのか。この点について考えていくとフレーム以外にもフォークの設計が大きく影響していそうだ。TARMAC SL7であまり語られることはないフォークについて補足すると、サイズごとに形状の違うフォークを設計している。TARMAC SL6 DISCでも同じようにサイズごとに形状の違うフォークが採用された。

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VENGEも同じようにライダーファースト・エンジニアードの設計思想の元、フォークの開発がされたがそもそものフォーク重量が、VENGEはカタログ重量385gでTARMAC SL7は316gだった。見るからにエアロ形状を追求したVENGEの重いフォークとは異なり、超軽量の部類に属するSL7のフォークでは振り回しも異なるのは当然の結果だ。

フォーク以外にも操作性に大きな影響を与えているのは、ライダーファースト・エンジニアードの設計思想が根底にあるからだろう。この設計思想は、マクラーレンと提携したことから生まれた。

スペシャライズドのエンジニアは、日本人が乗るような小さなフレームと、海外の人が乗るような大きいフレームとの間には明確な走行特性の違いが生じることに気がついた。たとえば、小さいフレームは平坦路で硬く感じ、コーナーでアンダーステアの傾向になる。しかし、大きいフレームはその逆に感じる。

このように、「TARMAC」という1つのモデルであってもフレームサイズの違いで走行性能に差が生じる。スペシャライズドの開発では、この差を修正するためにフレームにはどのような力が加わるのか測定機器を用いて測定している。そして、実際に走りながらフォーク、ステム、サドル等に伝わる力を測定しバイクごとにさまざまな特性データを蓄積したと言う。

これらの膨大な測定データを元に、フレームのチューニングは行われている。本来は、各フレームサイズのパフォーマンスを均一化させるべく特定の目標を設定されるが、SL7はプロ選手が乗った際のフィーリングも重要視していると言う。

TARMAC SL7はVENGEよりも操作しやすい。簡単な言葉で片付けてしまうと、SL7は「ハンドリングがクイック」だ。この一言の評価を丁寧に文字として広げていくと、ここまで記した内容にたどり着く。

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ターマック

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アスファルト舗装のようなきれいに均した路面のことをターマックと呼ぶ。たいてい、ターマック (TARMAC) はタールをしみ込ませてロードローラーで踏み固めた舗装路面をさす。TARMAC SL7は、まさにターマックを走るためのバイクだと感じた。というのも、振動吸収性能なんてものは微塵も考えられていない。

純粋に速く走るために、入力のすべてをフレームで受け止め、跳ね返しホイールに転化する。踏み込んだ入力は、ただ単純に推進力となる。純粋なレース用途、速く走るためだけに余計な部分は切り捨て去られたのだと感じた。同一空気圧に設定しても、路面からの突き上げはVENGEよりもSL7のほうがダイレクトに受ける。

振動吸収性能はフォークの設計と重量や形状が大きく影響を及ぼすが、TARMAC SL7のようなフォークは表面積も小さくかつ細身であり、非常に軽いためどっしりと安定した感じは受けない。このようなフォークの機材特性が、「突き上げる」という乾いた感覚に変換された理由だ。

振動吸収性能は期待しないほうが良い。それよりも、28Cの太いタイヤを使用して乗り心地を向上させたほうが賢い。バイクシステム全体の剛性に対して支配的であるタイヤとチューブ、そして空気圧を突き詰めるのならば、TARMACの右に出る者はもはや存在しないのではないかと思うほどだ。

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エアロダイナミクス性能

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エアロダイナミクス、いわゆる空気力学性能はどうか。

次の一文で片付いてしまうのだが、「VENGEとの違いはわからない」というのが結論だ。この傾向は、低速時はもちろん、速度を上げてもわからない。「VENGEよりもSL6よりも速く進む」というのは新しいバイクを手にしたことによってライダーの感情や気分が高まった結果の高揚感によるものだろう。

新車に乗り換えたときの喜びは重要だ。それはそれで大切にしたい感情であるが、それでも冷静な判断をすると、VENGEとSL7との間には体感できるほどの差はない。6.8kgの重量が近いVENGEと比較してもSL7が遅いとも感じず、速いとも感じなかった。結論としてはなんともつまらないが、事実だ。

UCIの限られた設計規則を守ろうとすると、ほとんどのバイクが似たような形状になる。それでも、各社は「何らかの違い」を表現せねばならない。今回のインプレッションでVENGEとSL7のエアロダイナミクス性能の違いがほとんどわからなかった(さらに正確に言うと全くわからない)のは、もともとの空力性能がよいハンドルや、ステムによるものだろう。

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VENGEのローンチや海外メディアの実験結果にもあるとおり、フレーム単体でみるとエアロダイナミクス性能向上は限界に近づいてきている。その上で、各社のアドバンテージ何か?という部分で差別化を図る必要がある。SL7は軽さや整備性であり、EmondaはPROJECT ONEのカラーや価格といった面が強調された。

逆の見方をすると、エアロダイナミクス性能に関する相対評価としてはむしろSL7は優れている。VENGEと比べて違いがわからないのであれば(数値上の違いはあるにせよ)、より軽量なフレームであるSL7を使用するほうが懸命だ。確かにVENGEを6.8kgにすることは可能だが、フルチタンボルト、S-WORKSクランク、セラミックスピードBB、軽量ステム、サイコンのマウントはステムにゴム固定・・・。

と、ありとあらゆる軽量化を施す必要がある。

その点、ある程度のエアロダイナミクス性能を備えてVENGEよりもおよそ200g近く軽量なTARMAC SL7は優秀であると言わざるを得ない。ROVAL CLX50にDURA-ACEのコンポーネントを取り付けて、TARMACステムとサイコンマウント、AERO FLY2を取り付けた「何も手の混んでない状態」で6820gだ。

そして、VENGEと比べて性能の違いを感じられないという事実は、VENGEに慣れてしまった今だからこそ感じる事実だということも忘れてはならない。VENGEに初めて乗った日のことを覚えている。下りでスピードが出すぎて怖い。という経験をした。あの速さに麻痺して、いつか「これが普通なんだ」と思うようになった。

だからこそ、VENGEとは別のバイクに乗るライダーがいたとしたら、相対的にTARMAC SL7に速さを感じる可能性は十分に考えられる。ただ、今回の記事のように相対評価の基準がVENGEとなると「SL7はVENGEよりも遅いか変わらない」という評価に必然的になってしまうのだ。中編のタイトル、「VENGEよりも遅く、SL6よりも重いバイク」の意味がここにある。

TARMAC SL7 VENGEよりも遅くSL6よりも重いバイクの意味
本記事は「TARMAC SL7 インプレッション 前編 〜VENGEの時代は終わる〜」の続きです。まだ読まれていない方は、こちらを先にお読みください。 世の中にはさまざまなロードバイクが存在している。その中でも「TARMAC」は常...

もしも、VENGE以外からのバイクで乗り換える可能性があるのならば、TARMAC SL7は非常に良い選択肢になる。

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インプレッション

「TARMAC SL7はガチガチだ」

というレビューが国内外で散見された。私はこの評価とは真逆の印象を受けた。重量剛性比を極限まで高めたSL4の丸太のような硬さは微塵もなく、SL6 DISCのように常に石炭を投入し続けなければ進まない機関車ような特徴も感じなかった。TARMAC SL7から受ける「バイクシステム剛性感」はSL6よりもVENGEに近い。

TARMACというよりもVENGE。

正直かつ率直な印象を書くと、「あなたの乗っているバイクはVENGE」と言われても疑わない乗り心地だ。ではなぜTARMAC SL7は硬いと評されてしまったのだろう。実は海外のレビューにあるような「TARMAC SL7の硬さ」を再現するのは簡単だ。Rapide CLXのホイールに変えるだけでいい。

Rapide CLXというホイールは非常にクセのあるホイールで、リム重量がとんでもなく重く、鈍く、もっさりとしたホイールだ。Rapide CLXをVENGEに取り付けるとバイクの挙動が面白いほど変わる(CLX50に戻そうとすぐに思った)。

事実だけ書くと、Rapide CLXを取り付けるとVENGEの横方向の動きがかなり制限される印象を受けた。ダンシングや横に振りにくくなってリズムが狂う。そして、踏み出したときの鈍さも相まって、VENGEが硬くなったような錯覚に陥ってしまう。

「Rapide CLXは下りのブレーキが遅れるほど速い」というが、Rapide CLXはフロントタイヤのグリップがあまり感じられなくなる。結果的にアンダーステアとなってしまうような動きが気になった。そして、通常のCLX50とは違うライントレースのイメージになってしまった結果、ブレーキが遅くなる。

逆のメリットとしては、Rapide CLXは直線的な走りを得意とする。左右に揺れない分、レールを走るかのように突き進んでくれる。ただ、ダンシングや上り区間、バイクを振りながらリズムを取って走らせるようなシチュエーションには向いていない。RapideCLXのリム重量は相当重い。ホイール重量が数値上軽いのは、スポーク本数が少ないことと、新型のDTSWISS EXPが軽いためだ。

2020年になって突然各ホイールメーカーの新型ホイールが軽くなったことに気づいただろうか。ボントレガー、ROVAL、FFWD、過去にはCADEXとどのメーカーもハブ内部の部品点数が減り超軽量化したDTSWISS EXPを使用している。リムなんてものは突然軽くなったりしない。ハブが構造上軽くなり、スポーク本数を減らしたことによってRapide CLX は「見せかけの重量減」をしただけだ。

ここからは推測だが、TARMAC SL7の剛性はSL6よりも若干マイルドになっているのではないか。実際にはVENGE自体のフレーム剛性が変化しているわけではない。ホイールを変更したことによって、バイクの振りも進み方の特徴も変わった印象を受けただけだ。私はCLX50からRapideに変更したため「ホイールの癖が強すぎる」と感じた。

しかし、TARMAC SL7とのトータルパッケージでRapide CLXが取り付けられていた場合、「TARMAC SL7のバイクシステム剛性は高い」と感じて何らおかしくないと思った。その際に誤解してはいけないのは、フレーム剛性”だけ”を感じているのではなく、バイクシステム全体の剛性感を感じているのだと正確に理解する必要がある。

その原因の一つとして、VENGEにRapide CLXを取り付けたときに感じた嫌な剛性感が「TARMACは硬い」という間違えた評価としてすり替わったのではないか。硬さの原因はフレームだけの問題では無いと思う。TARMAC SL7はRapide CLXと合わせたトータルパッケージで販売されている。バイクの味付け自体もRapide CLXに合わせている可能性があるものの、ライダーが剛性を感じる要素としてはフレームはそれほど力を持っていない。

Rapide CLXかCLX50どちらが良いか聞かれたら、CLX50を使うと即答する。最近のプロツアーのレースを見ていてもCLX50の使用率が高いのはなにか理由があるのか。選手は好きな機材を使えるというから、ホイール選択が気になっている。

低速

低速域でSL7を走らせたところで何も違いがわからなかった。SL7はVENGEと言われてみても何ら疑うことはない。低速域のような場合は、バイクへの負荷もかかりにくくバイクへの反応も非常に淡白だ。特段、漕ぎ出しで軽いといった印象は無い。

低速で走らせているうちは、VENGEだろうがSL7だろうが大した違いは無い。理由として、低速域は空気抵抗が小さいからだ。それよりも割合としては、タイヤのヒステリシスロスやチェーンのフリクションロスのほうが大きなウェイトをしめる。

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Figure 1は横軸が速度、タテ軸がパワーを示している。速度(km/h)が増せば必要なパワー(グレーの線)も比例して増加することが読み取れる。グレーの線は必要なパワーの総量だ。グリーンのAEROは空気抵抗、レッドは転がり抵抗やベアリング抵抗である。速度が増せば空気抵抗(AERO)が支配的になる。駆動抵抗よりも、転がり抵抗よりも、空気抵抗(AERO)の割合が増えていくからだ。

中速

中速域でVENGEとの顕著な違いがあったのはローテーション中だ。気分や気のせい体調の影響もあるが、VENGEと比べると集団内で脚を休めている時間が短く感じる。VENGEならスーッと進む感じを受けるが、SL7は減速していくスピードが早く感じられた。

エアロダイナミクス性能なんてそれほど大きな違いを生み出さないだろうと思っていたから、これは驚きだった。長丁場のレースで、集団内に息を潜めて次の一発に備えるようなレース展開の場合はVENGEのほうが秀でている。

特に平坦域を走るエンデューロや、昨今のホビーレースのように次第に勝手に人が減っていくような展開にもSL7よりはVENGEのほうが活躍しそうだ。SL7自体のオールラウンド性能は登り区間や、アップダウンに富んだコースであれば生きてくる。

しかし純粋に平坦を走り、ローテーション中に脚をできるだけ使わないことを考えるとVENGEが有利だという印象だった。

高速

高速域は、何を優先にするかでSL7の特徴を良しとするかそうでないかが変わってくる。というのも、脚が残っている状態で最後のスプリントに持ち込んだ場合はSL7が良い印象だった。と言うのもの、どんどんスピードが上がっていく。加速していく際の入力タイミングはやはりSL7が素晴らしい。

というのも、同じ加速の仕方でもVENGEの場合は階段を2段飛ばしするようなイメージが有る。SL7の場合は階段を1段1段着実に入力をしていき、それでも加速するスピードはVENGEに勝る印象がある。おそらくスプリンター系のライダーはSL7の反応性の良さが活かせると思う。

あまり差が感じられないのが、トップスピードがからの伸びだ。おそらく速度域が上がれば上がるほど、ライダーが締める空気抵抗(およそ80%)の割合が増えていくのだろう。SL7のほうが全開でもがいたときの脚あたりが良かった。

そう考えると、クリテリウムの立ち上がりや、登りでアタックがかかりセレクションがかかるあの嫌な展開のときもVENGEよりはSL7の特徴のほうが好みであった。

下りが最高。

「SL7のほうが下りが速い」

たしか武井さんのお店のForzaさんの方が書いていたような気がする。ホンマかいな、と思っていたがこれはVENGEやSL6から乗り換えたライダー全員が思ったのではないだろうか。海外のレビューでもこの点を大きく指摘しており、あながち嘘じゃないなと思ったSL7の特徴だ。

SL7で一番楽しい特徴は何なのかと言うと、下りのコントロールが非常に楽しい。スキーヤーであれば、カービングスキーが登場したときのことを覚えているだろうか。あの感覚と同様のレールの上を走るような安定感がある。

「下りまじで速いし楽しい。」

下りが苦手なライダーも、タイヤと地面との接触が明瞭になるSL7は有利に働くはずだ。とにかく下りはSL7のほうがいい。それはエアロダイナミクス云々よりも、単純に狙ったコーナーを思い通りに攻められるということにつきる。

VENGEのようにタイヤと路面の接点があやふやでぼやけている感じはほとんど感じない。SL7は明確に地面とタイヤとの間の情報をライダーに伝えてくれる。「これくらいのスピードでこれくらい倒せばこれくらい曲がっていく」という感覚が体と頭に明確に再現できるのだ。

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デメリット:脚質に合わない場合がある

機材は相対比較だ。VENGEと比べてSL7のメリット・デメリットを上げてきた。そのうえで自分自身の能力、走り方、回し方、レースで勝つためのアプローチに照らし合わせるとどうだろう。エアロダイナミクスや重量という部分も大事なのだが、私の場合はもう少し違うことを重要視している。

というのも、昨今のホビーレースやE1のレースというのはサバイバル系で「知らぬ間に人が減っていった」というような展開が多い。また、最後の1発の登りで勝負が決まるようなレースがとても多い。「脚残して最後の勝負所まで残ってゴール入った順」のようなレース展開が多いのだ。

そのような場合に、できるだけ脚や体へのダメージをへらすことが重要になってくる。もちろんライダーのエアロダイナミクスが最も重要なのだが、私は「雑に踏んでも進んでくれるバイク」がアマチュアには有利に働くと思っている。VENGEやZXRS、新型Emondaがそうだったように。

あのバイクは脚が残せるというよりも、雑にふんで多少怠慢があってもバイク側で吸収してくれるドリームバイクだ。対して、SL7はと言うと明らかに丁寧に細かく繊細なタッチで回さないと進んでくれない。

たとえば、「SL7子」さんと、「VENGE子」さんという女性がいたとしよう。

「SL7子」さんとうまく付き合うためには、誕生日、1か月記念日、はたまた二人が初めて食事をしたレストランまでしっかり覚えておく必要がある。誕生日の0:00には「誕生日おめでとう」というLINEも決して忘れてはならない。ただ、きっちりするところをきっちりしておけば「ラストの勝負所」までたどり着けるのだ(意味深)。

VENGE子さんはどうだろう。彼女とうまく付き合うためには、ある程度の距離感を保っているといい。お互いを独立した一人の人間として、1つの芯を持っていればいい。誕生日はできれば忘れてほしくはないが、「オヤスミzzz」のLINEなんて不要だ。

多少失言や、気に触ることがあってもお互いがお互いに「遊び」があるからそれなりの付き合いができる。大ざっぱな性格で逆に「こまけぇこたあいいんだよ!」というのがVENGE子さんである。そんなこんなでVENGE子さんも同様に「ラストの勝負所」までたどり着ける。

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Emondaはそこに、思わず触って通報されてしまうようなエロさが加わる(これ以上は自粛)

という、よくわからない?比喩でSL7とVENGEを表現した。私の場合はリザルトがすべてだ。その際に確かに重量やエアロダイナミクスは”ソコソコ必要”であるものの、できるだけ省エネで最終局面まで粘りに粘って残るスタイルであることを自覚している。

ZWIFTのEMUでも最終集団に残れるが、スプリント勝負になるとやはり負けてしまう。そういう脚質だということを自分自身でも理解している。逆に4〜5時間走って最後が登りのようなシチュエーションだとFTP以上の負荷でも走れるから逆に勝負できる。

という脚質とフレームの相性を勘案すると私が選ぶべきフレームはTARMAC SL7ではなくVENGEだ。そして、Emondaである。このように書いているが、私の場合はであって、読者は一つの参考情報とし扱うのが良いだろう。

要するに、脚質は千差万別であるように、TARMAC SL7のようなバイクが合う人がいれば、そうでないひとがいるように合う合わないがあるのだ。だから、自分が何を求めるかでフレームを変えるといい。私の場合は、走るレースを考えるとVENGEかEmondaがあっている。

それでも「自分がSL7に合っているのか」という疑問を持つ人がいるだろう。そのような悩みを持っている方に「VENGEもSL7も両方買えばいいんですよ」とか「VENGEから乗り換えましょう」というようなことは到底言えない。ではどうしたらよいか。

「最新の機材がほしいか」「レースで勝ちたいか」「楽しく走りたいか」など何を重要とするかで変わるはずだ。そのうえで以下に私が思い浮かんだSL7とVENGEを選択する基準をまとめた。

  • 走りの楽しさ:VENGE
  • 所有する喜び:VENGE
  • 雑に踏んでも進む:VENGE
  • 繊細に踏んで進ませる:SL7
  • 下りを安心して攻める:SL7
  • 1台で何でもこなしたい:VENGE
  • 実業団E1~ホビーレース:VENGE
  • 脚を残したい:VENGE
  • 長距離を楽に移動したい:VENGE
  • クリテリウムでドンパチやりたい:SL7
  • 切れの良いアタックを繰り返したい:SL7
  • 新しい機材を使いたい:SL7
  • 合理的な機材投資をしたい:VENGE
  • エアロダイナミクスを追求したい:VENGE
  • 軽いバイクがほしい:SL7
  • ローテさぼりたい:VENGE
  • 速いバイクに乗っているというプラシーボ効果がほしい:VENGE

個人の感想である。走っている間にバイク交換できたら良いのだが。

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コラム:ラウンドアバウト

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TARMAC SL7のプロモーションや開発思想を眺めていると、海外のレースで見かける「ラウンドアバウト(環状交差点)」のようだ。一見すると、一つの塊となって突き進む集団はラウンドアバウトに差し掛かると美しく分裂していく。誰に指示されたわけでもなく、左に行くか、右に行くかは状況しだいだ。それでも、本能的に自分の進むべき道を知っているかのように進んでいく。

ラウンドアバウトを通過したあと、2つの流れは何事もなかったかのようにまた1つになる。

スペシャライズドのロード製品ラインアップがTARMACだけだった時代、同社のロードバイクの代名詞は当然ながらTARMACだった。ある日VENGEが登場し、「オールラウンドバイク」と「エアロロードバイク」の2つに別れた。当時は方向性に明確な違いがあるように見えた。

乗り味や、操作性はお世辞にも良いとは言えない特殊なエアロ形状のVENGE。エアロ形状は考慮していないが、汎用性に富んだTARMAC。はじめは明確な設計思想の違いがあったにせよ、弱点を補い続け、足りないものを足し続けた時間はラウンドアバウトを避けて進む集団のようだった。

次第に両者の間には、明確な違いを見出すことができなくなる。エアロロードは軽量化し、オールラウンドバイクはエアロ化する。技術革新が当たり前のスペシャライズドの先進的な開発は、次第に両者の色を薄めていった。その先の行く末に、共存の道を歩むのか、それともVENGEを消して1本化するのか。

バイクメーカーが最もやらないことをスペシャライズドはやってのけた。超人気で入手困難になるほどだったVENGEに突きつけられたのは、「革新を、さもなくば死を」という同社の社是である。VENGEを残すか、TARMACを残すか。「両方残したほうがラインナップも増えるし、売上も上がる」と考えがちだがそうではなかった。

中編のタイトルで「VENGEに死が与えられた」と記したが、あれは間違いだ。TARMAC SL7はTARMACでありVENGEだ。モデル名はTARMACであるものの、SL7の後ろを走ればSL7なのかVENGEなのかすぐに判断することは難しい。走りの部分、ジオメトリの部分もそうだ。VENGEの面影も何処と無く残すのがSL7だった。

革新の中で、VENGEがなくなることなど誰が予想しただろう。それはTARMACとVENGEがラウンドアバウトに入り込んだときにすでに決められていたのかもしれない。もともと1つだったTARMACが2つにわかれ、あらゆる技術革新の波にさらされ、1つにまた戻っていく。VENGEが無くなることは、TARMAC SL7という究極のバイクを生み出すために必然だった。

VENGEはロックスターが若くして神の元へ向かうかのように、旅立ったのだ。

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まとめ:合理的な機材投資、とは言えないフレーム

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フレーム価格60万超えは一昔のTIMEフレームである。それだけ研究開発費用が加算でいるのだろう。また、複数プロチームへのプロモーション費用もえらいことになっていそうだ。フレームの価格には、様々な人件費、プロモーション費用、開発費用が乗ってくる。

性能は当然良いと言えるものの、60万円強のフレームという価格は果たして合理的な機材投資として適正なのかという私はYESとは言えない。初任給の3倍近い価格設定かつ、ライバルのEmondaのフレームセット価格が39.4万円であるため、どうしても消費者としてはコスト面を比較してしまうのだ。

Emondaであれば、新型のアイオロスハンドルやCeramicスピードT47BBを取り付けても10万円以上のお釣りが来るのだ。お金に余裕のある人はSL7を無条件で買えばいい。しかし、SL7は機材投資コストと性能面のアドバンテージを考えてみても、合理的な機材投資であるとは言いにくい。

TARMACは好きだが、60万円という気軽に購入できない代物になってしまった。

忖度なく書くが、VENGEからSL7に乗り換える必要はあるのか、ないのか。私の個人的な意見としては「無かった」というのが結論である。それは性能面もそうだし、自分の脚質に合う合わないもある。

そしてフレーム載せ替えによる追加コストを勘案しても合理的な判断とは言えない。もしも、今手元にはSL7とVENGEどちらも所有していなかった場合はどうだろう。1台選ぶとしたら私はVENGEだ。

また別の思考実験をしてみよう。もしもSL7しかない世界に突如として「SL7の空力を凌ぐニューモデルVENGE」が登場した場合だ。私は間違いなく「SL7からニューモデルのVENGE」に乗り換える。だって、SL7よりも速いから。そして、自分の脚質にも合うのだから(乗り比べないとわからないが)。

速くなるための機材投資として、SL7からVENGEに載せ替える意味はこの場合は大きい。明らかな数値上の優位性や多少重いなりにも速くて脚あたりが良いバイクだからだ。確かにニューモデルが登場した場合は、注目を集める。ただ、冷静に価格や性能、自分に合う合わないを考えていくとSL7を選択することはないだろう。

1か月前にスペシャライズドのロードバイクならどれにするかと聞かれたら、間違いなくVENGEを選ぶだろう。TARMAC SL7は素晴らしいバイクだが、VENGEほどよいとは思えなかった。VENGEと元サヤしたい。いま思っている心の声を吐露すれば、そんな言葉が出てくる。

なぜなら、SL7のような下りのコントロール優位性は無いものの、走りや数値上の速さはVENGEだ。それはSL7でなくともVENGEで達成できる。あまり気の利いたことが今回のインプレッションでは書けないが、高いオールラウンド性能を備えたSL7であっても何を重要視するか、そして機材投資として適切なのか意見は分かれる。

多角的かつ、総合的に判断した場合はVENGEというだけだ。どちらも持っていない場合は、自分自身が何を優先とするのかで話は大きく違ってくるだろう。これからSL7を購入するライダーにとって今回の記事は「1つの意見」としてとらえてほしい。

良いこと、気の利いたことは各雑誌、メディア、ショップ店員、インフルエンサー、強豪選手たちが書いてくれるだろう。それでも、私は、自分自身が稼いだお金で悩み抜いて1台を買う人たちだからこそ、逆にデメリットを知ってほしいと思う。今の世の中そのようなデメリットを「否定だ」「誹謗中傷だ」とすり替えた解釈に変換されてしまう恐れもある。

ただ、今回の記事で常に一貫しているのは「このような側面や一面が存在している」ということであり、SL7をこき下ろすためではない(その必要もない)。そもそも論だが、私自身が良い点よりも、他の人がどう感じたのか正直な印象を常に知りたいと思っている。

デメリットやメリットを知った上でそれでもSL7が良い、VENGEが良いと思うのならばそれはまた別の意味で彼らの背中を押せたことにもなろう。だからこそ、今回の記事は否定ではなく、肯定するための反証材料にもなるようにした。

TARMAC SL7は史上最強のオールラウンドバイクだ。性能や機材投資として最適かどうか冷静に判断しSL7というバイクを乗るかどうかの最後の判断は、ライダーひとりひとりの中に存在している。

TARMAC SL7 VENGEよりも遅くSL6よりも重いバイクの意味
本記事は「TARMAC SL7 インプレッション 前編 〜VENGEの時代は終わる〜」の続きです。まだ読まれていない方は、こちらを先にお読みください。 世の中にはさまざまなロードバイクが存在している。その中でも「TARMAC」は常...
TARMAC SL7 インプレッション 前編 〜VENGEの時代は終わる〜
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