ローラー防振対策の決定版! 振動を72%除去するGROWTAC ブルカット3 インプレッション

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ローラーは最強のトレーニング器具であるいっぽうで、最悪の騒音発生機でもある。最近はダイレクトドライブ式の固定ローラーが登場したことによって、騒音や振動問題は解決したかのようにみえた。

しかし、住宅の構造が木造や軽量鉄骨といった場合はローラーの振動が近隣に響いてしまう場合がある。日本の「ウサギ小屋」と揶揄される住宅環境であればなおさらだ。

そんな状況下であっても、ローラーを用いて室内トレーニングにいそしむサイクリストは多い。以前は、ローラーなんてものを使用していれば「ガチ勢」だとか「引きこもり」などと言われていた。しかし、コロナ禍とZWIFTも後押しし、室内トレーニングはひとつの「スポーツ」に昇格した。

サイクリストのローラートレーニングへの偏見は減ってきたが、お隣さんは決してそうではなく近所迷惑や騒音トラブルがなくなったわけではない。お隣さんからしてみれば、「早朝や夜中に原因不明の騒音がする」という得体のしれないご迷惑をかけてしまっているかもしれないわけだ。

そんな問題に対して1つの解決策になるかもしれない製品がある。様々な防音・防振対策が世の中にはあるが、現代の世界情勢やインドアスポーツの助けになるであろう、驚異の防振パッド「ブルカット3」だ。本製品を実際に購入してインプレッションを行った。

振動を72%除去

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ブルカットを製造するのは「GROWTAC」だ。私が長年愛用している4本ローラーもGROWTACの製品である。純国産ブランド、そして同社の優れた開発力によって頭5~6個飛び出た特徴のある製品を展開している。

ローラーを主力商品として開発する一方で、防振パッドにも力を入れている。私がブルカットの初号機を購入したのは2012年だ。2回のアップデートが施され、現在はブルカット3が最新版だ。

GT-ROLLER Q1.1 インプレ 4本ローラーが導く室内トレーニングの未来
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ブルカットは防振パッドだ。振動を72%除去できるという。防振について補足しておくと、ブルカットは「騒音」ではなく「振動」をカットするためのパッドだ。ブルカットを理解する前に、「騒音」と「振動」は全く別々の事象として扱い、理解しておく必要がある。

「騒音」はチェーンとスプロケットが干渉する音や、ホイールが回ることで発生する音、そして荒い息づかいが主な原因だ。

「振動」はローラーやホイールが回転する事によって発生する。ホイールやタイヤは真円ではないため、中心から僅かなズレであっても高速に回転すると振動が発生する場合がある。

ブルカットは主に振動を減らす効果がある。では、一体どのようにして振動を減らしているのだろうか。GROWTACさんの当時の開発記から、ブルカットの優れた振動除去の秘密の一端を知ることができた。GROWTACの開発者さんも同じくサイクリストであり、ローラーの騒音問題を痛いほどよく理解していた。

ブルカットの開発

ブルカットメタル開発記録
(本記事は、代表の木村が会社設立前にブログとして更新していた記事です。記事作成日:2010/9/17) ローラー練習。。。ゆっくり乗っても暇だし、頑張ると強烈にしんどい。ついでに、暑いし。でも、走力を ...

グロータックの開発者さんは、ブルカットの開発にあたり次のような言葉を残している。

弱い私が言うのもなんなんですが、実走のみ、実走+ローラーを比較すると、確実にローラーをトレーニングに入れた方が効果があります。着替えや、練習場所までの移動などを考えると効率はいいですし。問題は音と振動。音は、扉を閉めてしまえば結構防げてしまうのですが、振動が問題です。家族からのクレーム、マンションなど集合住宅だと、いつ苦情が入るかドキドキです。精神的に不健康です。そこで、ローラーの防振をなんとかしたい!ということで、このプロジェクトがスタートしました。

的を射ているのは、「精神的に不健康」という言葉だ。的確な指摘であり、本来身体的な健康を目指すローラー台のトレーニングは別の要因を生み出している。ここで述べられているとおり、近隣住民や家族にローラーの騒音や振動が届いているのかいないのかわからない。

このような得体の知れない状況に対して、私達は不安を覚えてしまう。「うるさいかな、うるさくないかな、いつか苦情きそう・・・。」これではトレーニングどころではない。

何かしらの不満、不便、不安を解決することは新しい製品の種になる。食器洗い機、掃除機が生み出されたように、ローラーの騒音やライダーの不安を解決すべくブルカットは生み出された。しかし、どのような仕組みでブルカットは振動を減らすことに成功したのだろうか。

GROWTACが実施した実験と測定から、ブルカットの高い性能の秘密を探った。

3次元加速度センサー振動測定器を用いた解析

ブルカットメタル開発記録 Photo:GROWTAC

ブルカットメタル開発記録 Photo:GROWTAC

ブルカットメタル開発記録
(本記事は、代表の木村が会社設立前にブログとして更新していた記事です。記事作成日:2010/9/17) ローラー練習。。。ゆっくり乗っても暇だし、頑張ると強烈にしんどい。ついでに、暑いし。でも、走力を ...

ローラーから発生する振動を測定するために、GROWTACは「振動測定器」を独自に開発した。3次元加速度センサーの電圧をA/DコンバーターからUSB経由でPCに取り込む仕掛けだ。ローラーから発生する振動を高精度で取得するために、アルミケースに樹脂でモールドするというこだわりようである。

GROWTACは振動測定機で用いる専用の制御ソフトも独自に開発した。ログレートは40kHzで測定し、振動の方向はXYZ軸の3方向すべてに対して計測を行い解析が行われた。取得したデータは単なる数値の羅列であるため、取得したデーターの解析も独自に行われた。

振動が持つエネルギー値を確認していくことによって振動の特性が見えてくる。普段、私達の目には見えない「振動」を数値化することで、ローラーから発生する特有の振動を突き止めていった。

振動の発生源を解明する

ブルカットメタル開発記録 Photo:GROWTAC

ブルカットメタル開発記録 Photo:GROWTAC

ローラーから発生する振動の発生源の正体とはいったい何なのだろうか。GROWTACはローラーから発生する振動の発生源を突き詰めるために「タイヤ」まで開発した。実験で用いた測定用の専用タイヤは、半径方向に精度が高い(真円度が高い)形状を備えている。この特注タイヤの重量は900gにも及んだ。

真円度が高いタイヤを使用して明らかになったことは、リムの真円度が振動に影響をあたえるということだった。測定した振動データを解析していくとローラーから発生する振動の発生源が徐々に判明していった。振動の原因のひとつとして、「負荷ユニット自体」から発生する周波数の存在があった。

負荷ユニット以外にも、回転するホイールやタイヤの真円度といった複合的な要因によって振動が発生していることをGROWTACは突き止めた。ブルカットが生み出されるまでに、「振動の発生源を解明」→「発生源が生み出している周波数を突き止める」→「該当の周波数を抑える」というアプローチによって開発が進められていった。

防振素材 ゴムvsスポンジ

ブルカットメタル開発記録 Photo:GROWTAC

ブルカットメタル開発記録 Photo:GROWTAC

GROWTACは独自に取得した振動データを元に防振ゴムを作成した。この防振ゴムは、防振専門のメーカーに協力を依頼し作成したものを使用している。防振ゴムの面積と高さが違う凹凸によって、優れたバネ特性を生みだす防振素材だ。

ブルカットで使用する防振素材は様々なものがテストされた。ゴムの他にも独立セル構造のウレタンスポンジが試された。様々な防振素材をテストした結果、防振対策を考えるとゴム系かスポンジ系が優れていることが明らかになった。

どちらの素材も防振素材としては優越がつけがたい性能を発揮するが、ローラ専用の防振パッドとして評価をすると、スポンジ系の方がローラーから発生する周波数を打ち消す良い結果が得られた。

ゴム系の素材の特徴を生かして振動吸収性を高めていくと、どうしてもやわらかめの防振材になってしまう。剛性が高いことに対する逆数はやわらかいということだ。すなわち、剛性がなくなる。対して、独立セル構造のスポンジを使用した場合、ある程度の剛性が得られることがわかった。

フレームやホイールにおいて「剛性」は頻繁に登場する話題である。同じく、防振パッドであっても剛性が非常に重要だ。剛性がない(やわらかい)土台の上にローラーを設置すると、本体が大きく揺れてしまう。その振動がフレームに伝わってしまうことで、音や振動が大きくなってしまうことが判明した。

防振パッドには「高剛性」と「振動吸収性」という相反する性能の両立が必要ということがわかってきた。いわば、フレームで言うならば高剛性ながら振動吸収性にすぐれたバイクである。スペシャライズドの高剛性フレームのターマックでありながら、振動吸収性に優れたルーベの性能を両立することと同じ意味である。

ブルカットは、実験と測定、素材の特性を活かすことで水と油を混ぜるような防振性能を実現した。

余談だが、GROWTACは独自に開発した振動測定器を用いて他社製品の測定も行っている。日本のM社製トレーニングマットは、GROWTACのテスト方法において8%ほどの防振効果しか確認できなかった。ブルカットは72%である。

その威力は確かな実験と測定において優れた防振性能が備わっていることをGROWTACは結論づけた。

インプレッション

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究極の防振対策を考えると、家の構造自体を変えるか騒音問題にならない戸建てに引っ越すしかない。しかし、それらは現実的ではない。実際にマンションであれば隣の部屋と下の部屋への配慮が必要になってくる。

これまで実施していた防振対策としては、ヨガマットを敷いたりスノコや人工芝といった方法を用いていた。しかし、先の実験にもあるとおりローラーからの騒音は独特の音や振動を発生させるため、ヨガマットやスノコは効果がそれほど見込めなかった。

それに対して、ブルカット3はローラーの振動に対して効果を発揮する専用品だ。実際に使ってみた感想を先に述べておくと、床に響く共振するような振動は確実に抑えられている事が体感できた。

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今使用しているローラーは、GT-ROLLER Q1.1の4本ローラだ。8箇所のゴム脚にブルカット3を敷いて使用している。もともと振動が少ないローラーであるものの、実際にブルカット3を使用するとローラー自体の揺れや振動が小さくなることがわかる。

数値上でどれくらい、ということは明確には表現できないがブルカット3があるのとないのとではっきりとよくわかるのは、体に伝わってくる振動だ。床への振動も抑える効果があるが、ローラー中に感じる振動も小さくなることがよくわかる。

もともとローラー用には、コンチネンタルの室内専用タイヤを使用している。これまで最も効果があったと感じていたのは、室内専用タイヤを前後とも使用し始めたときだった。実走で使用するGP5000のクリンチャーに変更するととたんに振動と騒音が大きくなる。

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タイヤを専用品に変更する事の恩恵は大きいが、ブルカット3にすることによって同じくらいの振動が抑制されていることが感じ取れた。ブルカットは多層からなるパッドを採用している。実際に敷くと、ややクッションがあるような乗り心地に変化する。

別の言い方をすると、あまり沈まない(硬い)サスペンションのような働きをする。そのため、敷いていないときはもがいたときにダイレクトにローラーからの反発を受けるが、いざ敷いてみると重みを押さえつけてうまく跳ね返すような感覚を受けた。

このような大きな上下運動は体に感じるものの、小さな振動に関しても常にいなし続けているため、若干ふわふわ(とはいえ非常に安定した)感覚を受けたのではないかと推測している。私自身、ブルカット3と合わせてさらに下にソノーライズというマットを引いているがブルカット3単体を床に直置きでも十分に振動対策への効果を発揮するだろう。

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ネガティブな面も記載しておくと、初代ブルカットの表面は滑りやすくローラーがずれてしまうことがあった。しかし、ブルカット3はズレの対策が施されてアップデートされた。表面にザラザラした滑り止めがついているため、ほとんどずれることはなくなった。

また、夏になるとパッドとパッドがずれて歪んでしまうことがあったが、ブルカット3にはいまのところそのような傾向は見られない。ブルカット3は総じて満足の行く振動対策になる。ただ、騒音対策にはならないためバイクのギアチェンジの音やギアとスプロケットの干渉音までは抑えられない。

下の階に響くような「ウォンウォン」といった低周波のような音がすべて是正されるわけではないが、ブルカット3を敷くことによって確実に床への振動は減少すると感じた。

まとめ:実験で裏付けされた防振効果

ブルカットメタル開発記録 Photo:GROWTAC

ブルカットメタル開発記録 Photo:GROWTAC

私は効果がないと感じた機材や、自分に合わない機材はすぐに手放すか売ってしまう。自分に不利益をもたらす人間と付き合う時間が無駄であるように、機材もまた同じだ。ブルカットは初代から使用してすでに8年になる。

その性能と、「精神的な健康」をもたらすブルカットは手放せない存在になった。

ブルカットの効果はここまで述べたとおりだ。単純に振動を消すばかりではなく、ローラーの安定性も向上する。ブルカット自体に剛性があるため、じんわりとローラーのたわみを「いなして」くれる。もがいたときでもローラーがズレたりすることはほとんどない

これまで一般的なマンションの一室でローラーをしていた。早朝と深夜にローラーをするのだが、隣の部屋で寝ている妻と子供はローラーをしていることに全く気づいていない。むしろ、ZWIFTのオープニングの音楽のほうがうるさくて苦情が来るぐらいだ。また、Wahooの扇風機のほうが騒音レベルとしては高い。

ただ、ブルカットを導入するにあたりネックなのは価格である。私は、4本ローラーを使用しているため8箇所にブルカットを設置する必要がある。1セット2個入りで¥2,860(税込み)で4セット購入する必要がある。Amazonでは送料込みで¥3,300(税込み)だ。正直、性能面が優れていることはこの8年で十分理解している。

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それでも愚かなことに、価格に躊躇してしまった。

「たかが防振パッドに1万円だって?」そう思ったことを正直に記載しておく。しかし、その考えは今となっては間違いだったとはっきりと言える。8,000~10,000円の投資を躊躇することは愚かな行為だとはっきりと自分自身に言っておきたい。確かに「防振パッド」なんて代物に1万円近い出費は非常に痛いのだ。

ただ、ローラーを使用する度に周りを気にしてこれから何年も過ごす苦痛の時間を考えると、ブルカットはどう考えても投資しがいのあるコストパフォーマンスの高い機材である。

GROWTACの実験と測定データによって、ブルカットは確かな性能が証明されている。ブルカットは、既に防振対策を施している方、そうでない方であっても、ローラーの下に敷くことで快適なローラー生活を約束する優れた防振パッドだ。