バイクのインプレッションは非常に難しい。実際に自分自身で乗ってみて「合う」「合わない」を直感的に感じるほうが良いのだろう。最近では各種メディアに評価が書かれているがやはり「インプレッションをする人」でそれぞれ評価が異なるのが面白い。
ある人は「硬い」と評価するが、あるひとは「柔らかい」と評価するかもしれない。それはライダーの脚質によって異なるし、インプレライダーが好んで乗っているマシンに「比べて」なのかは定かではない。ようするに評価はまちまちなのだ。
その興味深い内容の記事は、私も試乗した(むしろメインとして乗っている)あるメーカーのフラッグシップモデルの評価についてだ。各メディアでそれぞれ評価が全く異なっているのだ。それぞれの「インプレッション」から何が見えるのか探っていきたい。
インプレッションとは何か
インプレッションとは「印象」の事だ。バイクであればある物に接して自分が使い、感じた「印象」を指す。印象といういわば各個人に委ねられた「評価」だ。話は少しそれるが、たとえば人が人に対する「印象」も人によって異なる。理由は「評価する側」の育ってきた環境や、第一印象が強烈だったりする各個人の印象が異なるからだ。
たとえば、本記事を読んでいるあなたの印象を10人に聞いたら10人とも全く同じ印象(インプレッション)をするだろうか。恐らく5人は一致するかも知れないが全員一致はしないだろう。ある対象に接した時の印象(インプレッション)はやはりまちまちなのだ。
バイクの話に戻るが、これらの例が示す通り「インプレッション」をするのはやはり難しい。したがってバイクのインプレッションを見る際は少し引いた角度から見る必要がある。という前置きをして冒頭でも記載した「あるメーカーのフラッグシップモデル」のインプレッション内容について見て行きたい。
TIME SKYLON インプレッション
あるメーカーのフレームというのは私も愛するTIME社のSKYLONだ。今年装いも新たに発売されたモデルである。このモデルはTIME信者の期待、もしくは代理店のプロモーションが巧いのかメディアへの露出が高い。各種インターネットメディア上でも取り上げられている。
TIME SKYLONについてのインプレッションは3/5に公開されたSANSPO.COMの「CYCLIST」で松尾修作さんと米山一輝さんがインプレッションした記事と、サイスポのおなじみナカジさんがインプレッションした記事が存在している。
TIME信者の私がインプレッションした記事が当ブログ内にあるが、素人のイチ個人的な意見としてネットの隅にでも置いておこうと思う。話は戻り双方のライダーの表現が全く逆のことを言っているので「TIME信者」の私は興味深く読ませて頂いた。
まずは私も気になって記事化した「TIMEらしさ」は残っているのか?を各記事から確認したい。TIMEといえばラグという事が真っ先に思い出されるが、このSKYLONはチェーンステイ部分のラグを除きモノコックになった。その状態で「TIMEらしさ」は残っているのかということだ。
まずは「TIMEらしさ」について最新の「CYCLIST」側はこう書かれている。
ええ。見た目は変わりましたけど、でも乗るとタイムらしさ全開なんですよね!(松尾)
そうなんだよね。乗った感じが、もう“レーサー”で、固い、細い、速いみたいな印象。剛性は高かった。(米山)
http://cyclist.sanspo.com/172769 から引用
「タイムらしさ」を書いている。お二人とも「TIMEらしさ」があると語られている。ではサイスポのナカジさんの場合はどうだろうか。次のように表現している。
ただ、タイムらしいかどうかという点においては、戸惑う人が多いと思う。自分が思うしなりを生かして乗りこなすタイムの走りからすると、その印象が薄らいでいる。(ナカジ)
なるほど、ナカジ氏は「タイムらしさ」を「タイムらしいか」という評価で考えると「戸惑う」という表現を使っており、その印象が薄らいでいると語っている。面白いのはそれぞれで言っていることが異なるということだ。なぜこのようなことが起こるのだろうか。
おそらく各々のライダーが理解している「タイム」というマシンの性質をどこまで理解しているのかということだ。言ってしまえばそれぞれの「タイム」というフレームへの理解や受け取り方が異なっているということだ。冒頭でお伝えした「人が人に対する印象」と同様に10人居てもそれぞれで評価が異なる。
ではこれらのインプレッションを振り返り、私が乗った時の印象を振り返ってみる。
ここまで色々と書いたが一言で言うと、ZXRSとSKYLONは別物だ。似て非なる、全くコンセプトが違うもののように感じる。例えば、ブラインドテストをしたなら、私はSKYLONをTIMEのフレームと思わないだろう。
紙面にSKYLONのインプレが載る日がきたらもう一度見返してみたい。「TIMEの正当進化」と書かれていたら私はTIMEというフレームを間違えてとらえていたのだろう。そしてZXRSのTIMEらしさも感じ取れていなかったに違いない。
「TIME SKYLON インプレッション ZXRSから何が変わったのか 」
結構な量を書いたが、私はタイムらしさを感じない派だった。これらを踏まえてインプレッションをどう考えたら良いのかまとめに入る。
まとめ: インプレッションという性質を知る
ここまで、TIMEのフレームについて二つのインプレッションを参考に考えて見た。インプレッションとは人それぞれ違うもので言葉の表現に差が出てくる。各個人で受ける「印象」はまちまちだということだ。これらの点を踏まえ、私はインプレッションを見る際に気をつけたい点を二つにまとめた。
一つ目「絶対評価ではなく、相対評価」
人間は測定器ではない。ある物よりも硬い、あるものよりも乗りやすいと言ったように相対評価をする。従って絶対評価はできない。インプレッションはインプレッションをするライダーが今まで乗ってきたマシンや、脚力からはじき出された印象なのだ。
二つ目「自分に近いインプレライダーを見つける」
二つ目は自分の感覚に近いインプレッションのライダーを見つけることだ。私の場合は、ナカジさんはタイムの印象が近いので、自分の乗れないバイクの評価は参考にしようと思う。といったように。文章を読むことが好きな人はいろんなライターの文章を読めば良い。
一番重要なことを書き忘れていた。表現を恐れず、メーカーを恐れない「酷評」を書けるインプレライダーも見つけることだ。その点では歯に衣着せぬ物言いで過去にTREKのバイクで一悶着あった安井氏は機械工学を先行していたこともありインプレライダーとして好きだ。
文体や作文技術もしっかりしており、読みやすい文章を書く点も見習いたい。
メーカーから煙たがられるほどに本音を言えるくらいのライターの方が読みてとしては信頼出来る。どこの世界にメーカーとズブズブの良いことしか言わないライターが好まれるだろうか。消費者はそんなことは求めていない。ただ単純に「嘘偽りのない率直な感想」が聞きたいのだ。
ただ、ライターもお仕事なのでダイレクトには酷評できないだろう。その際は文章の裏を読まなくてはならない。面接で悪いことでも、良く伝わるものの言い回しのように。
自転車界隈のインプレッションとは、ショップやメーカーの思惑や戦略が入っていることが多い。いわば「バイアス」がかかった売るための湾曲した評価かもしれない。我々消費者が高いお金を出して選ぶ「たった一台」のマシンのためにも、一度インプレッションについて鵜呑みにせず文章の裏をよく読むことだ。
そこから紐解き、最高の一台に出会えたならこれ以上の喜びはないだろう。インプレッションという人が行う曖昧な評価は、書く側読む側で「印象」が異なるのである。
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