SantaCruz(サンタ・クルーズ)のバイクといえば我々ローディにはあまり馴染みのないメーカーかもしれない。それもそのはずメインの主力商品がオフロードバイクだからだ。オフロードバイクでは圧倒的な知名度を誇るSantaCruzだが、同社が手がけたディスクブレーキのマシンやはりツボを「抑えすぎて」いた。
このSantaCruzのStigmataはシクロクロスバイクなのだが、そのアッセンブルが一般的なロードバイクメーカのような「枠」にとらわれていない。むしろ「オフロードなら当然こう作るでしょ?」と言わんばかりのアッセンブルにやられた。色といい思いっきたシングルスピードのドライブトレインは流行を抑えている。
あのFOCUSもシクロクロスにおいてシングルスピードを取り入れる中、オフロードで培った技術をシクロクロスバイクに持ってくると、こうもスタイリッシュになるのかという印象だ。このマシンは一見シクロクロスバイクの顔をした「マウンテンバイクの規格」が盛り込まれたマシンだ。
その魅力的なスペックを見ていく。
ドライブトレインはシングル仕様へ
ドライブトレインはシングル構成だ。マウンテンバイクではフロントシングルが主流になってきている。マウンテンバイクの場合一般的な脚力ならフロント30〜32T、リアに11-42というスプロケを付ける場合がある。これはSRAMのXDという規格だが、シマノは11-40を提唱しているようだ。
このバイクも同様にSRAMのシングル仕様の「SRAM FORCE CX1」シリーズでアッセンブルしている。この上位モデルはSRAM REDのフロントダブル仕様だが、より魅力的なのはこちらのフロントシングル仕様だろう。マウンテンの流れをシクロクロスバイクに取り込んだアッセンブルが魅力的だ。
このフロントシングルだが、42Tの一枚仕様とスプロケは11-36の組み合わせである。私もシクロクロスでフロント42/36Tでリアをシマノのラインナップで一番大きい11−28使っている。ギア比は最大3.81で最小1.285である。このシングル仕様の最大3.81で最小は1.166である。
チェーンラインがよりきつくなり、駆動損失が気になるがそれよりも結果的にフロントダブルよりも軽いギアへの対応がなされている。この両社のコンポーネント展開はどのような設計思想から来ているのだろうか。
フロント一枚にする理由はいくつかある。
一つ目はフロントディレイラーのメカトラブルを避けるためにSRAMはフロントシングル化を推し進めている。一方別の理由としてシマノのフロント変速には勝てないSRAMの苦肉の策としてフロントシングル化を推し進めているという潮流もあるが、変速性能よりもオフロードの場合フロントのメカトラを避けたい要望のほうが多かったのだろう。
シマノXTR9000シリーズでもフロントシングルのクランクセットが発売されていることから、あながち間違っているアッセンブルではないようだ。シマノはオフロード(主にMTB)の世界において(シクロクロスは別だが)SRAMに押され気味だ。その一つの流れとしてフロントシングル化に習うシマノの姿が見える。
シマノはフロントシングル化に対抗してXTRの電動化により「シンクロシフト」を開発した。フロントの変速は全て電子制御で自動的に変わる機構だ。その機構は以前の記事「シマノ XTR Di2 インプレ 世界初フロントとリアが連動する電動変速システム」を参照されたい。
やはり「ある程度変速できれば軽量化でOK」のSRAMと「正確無比な変速性能」のSHIMANOそれぞれの向かうべきベクトルが異なる仕様は見ていて楽しいものである。このSantaCruzのシクロクロスバイクはシングル化でSRAM FORCE CX1を採用し軽量化、ルックス的にも非常に魅力的なアッセンブルといえる。
SRAM 油圧ディスクブレーキ
ブレーキは既に主流となりつつある油圧ディスクブレーキだ。この「SRAM Force Hydraulic Disc 」はディスクブレーキタイプやキャリパーブレーキタイプが有る。私も以前所有していたが非常に軽量で作りも上質だった。見た目はやはりシマノよりもSRAMだろうか。
SRAMはマウンテンバイクで培ったXシリーズでのノウハウが多く蓄えられている。その技術をロードやシクロクロスバイクにも技術を応用していることは間違いない。ややシマノの油圧システムよりもブラケットは大きいが見た目的な部分はSRAMが優っている。
正直な所制動力はSRAMよりもSHIMANOの方がガツンと効くブレーキだ。私はマウンテンバイクでマグラのMT8を使っているが、シマノのようにロックするようなブレーキではない。やはりブレーキでも制動力の技術はそれぞれ設計思想があるのだろう。
前後スルーアクスル仕様
やはりこの流れが来たかと感じるのが、スルーアクスル化だ。フロントはシャフト経15mm,リアは142mmのシャフト経12mmとマウンテンバイクで主流の規格を踏襲してきた。シクロクロスバイクは今後この流れが強くなって行くと予想されている。
2016年のリドレーのCXバイクもフロントとリアはスルーアクスルでシャフト経15mm,リアは142mmのシャフト経12mmを採用する。2015年モデルでいち早く対応してきたのはFOCUSのシクロクロスバイク。こちらも前後スルーアクスルを踏襲している
TREKのバイクBOONEも同じように一部スルーアクスル化してきていることから、シクロクロスバイクのディスクブレーキ仕様車において今後の主流はスルーアクスル化されて行くのだろう。
合わせてその辺のスルーアクスル化の話しは「ロードバイクに「スルーアクスル」の波が訪れようとしている」を参照して欲しい。
すこし控えめに見えるが、このENVEのM50はマウンテンバイク29er用のクリンチャーリムだ。そのリム重量はわずかに330gだ。ディスクブレーキの恩恵はリム強度を落として「軽量化」できるメリットが生まれる。リムブレーキの場合は熱や押さえ込みによる破損事例が多い。
関連記事1:「リムフックを排除したENVE M50はカーボンCLで重量330g!」
関連記事2:「「他社より6倍失敗例ある」レイノルズのカーボンクリンチャー開発者」
まとめ:Stigmataにシクロクロスの起源を見る
ここまで「フロントシングル」「スルーアクスル」「29erリム」「油圧ディスク」の全部入り最新の機材をぶち込んで、現時点で最高のアッセンブルとも思えるサンタクルーズの本マシンだが、最後はこの動画で締めたい。
これは、本モデルのプロモーションPVだがシクロクロスの起源を伺わせる内容に仕上がっている。
最新鋭のマシンに乗れど、サイクリストが求める競争の本質は変わることはない。また、単純なルール「早い者勝ち」も揺るがない事だ。だれが一番早く、だれが一着なのかサイクリストの興味は常に普遍だ。
最後にこの動画を見て、本質を気付かせてくれるサンタクルーズのバイクは魅力的だ。日本での発売は未だ不明だが待ち望んだディスクブレーキ仕様のバイクと言える。あとは値段だがその辺はまだ覚悟がいる値段だ。
このディスクブレーキ仕様の乱立する過渡期が過ぎてこなれて来た時が買い時かもしれない。しかしシャフト径が変わることでどれほどロードバイクが変わるかはいち早く試して見たいところである。
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