ツールドフランス最下位の選手を題材にした書籍「敗者たちのツール・ド・フランス」に熱くなる。今月発売されたばかりの書籍だ。最下位でゴールした選手に価値はあるのか。このように表現すると「そんなのあるに決まってんだろ!」と憤慨する方もいるかもしれない。ただそんなことはわかっている。
私もレースを実際に走っているし、プロのレースを見ているところ完走する意味の重さも理解している。ただ、その意味や最下位でゴールした選手がどのような思いで、走り抜けたのかを記録したものは少ない。フルームや、コンタドール、ウィギンスは知っている。では最下位の選手は?
この煌びやかな世界とは対極に生きる選手の生き様とそれらをリアルに克明に綴った書籍を紹介したい。
敗者たちのツール・ド・フランス
この書籍を読んでいる時、ちょうど飲み会があった。その席でこんな話があった。「JETのレースで1位とっても、さらに上のJPTでは200人走っている。だから上から数えて201番目だ」と。国内の話だが、考え方はその通りだと言える。トップカテゴリで完走することは上から数えた自分の順位だ。
世界最高峰ともなるツールドフランスと比較することもおこがましいが、自転車レースとしてやってることは同じで、内容やレベルそれらを取り巻く環境だけが違う。完走する(たとえ最終走者でも)ということにはどんな意味があるのだろうか。
ツールドフランスを総合最下位でゴールした選手はランタンルージュ (Lanterne rouge)」=「赤ランプ」と呼ばれる。この意味は、貨物列車の最後尾に着けられた目印が赤いランタンだったことからだ。いわば、その選手の後ろには誰もいない。
ただ、全レースの総合最下位ということから、最終日まで残れなかった多くの選手がいる。脱落した「多くのリタイヤした選手」と「ツールドフランスを完走した」選手の「次元の狭間」と考えると感慨深いではないか。
読み物として非常に面白い内容だった。「完走」や「最下位の選手」にフィーチャーした数少ない書籍と言えるだろう。自転車レースを問わず、完走することの意味を教えてくれるはずだ。最下位の選手に価値はあるのか?
その真の意味を明確に説明できる人は少ない。そして、実際に体験した本人にしかわからない。その最下位の選手が実際に語った内容と共に、書籍「敗者たちのツール・ド・フランス」で理解を深めて欲しい。
ツールドフランスの最終日、今までは総合トップの選手にしか興味のなかった自分から、「最下位ゴールの選手」にも興味が向いている自分が今から想像できる。この書籍は最下位の価値を問うのと同時に、首の皮一枚で踏み続ける選手の生き様が垣間見れる良書だ。
著者:マックス・レオナルド
ライター。ルーラー、デイリー・テレグラフ各紙、ガーディアン、ラファなどのサイトに執筆している。
辰巳出版
売り上げランキング: 15,347