温度変化に弱い、左右測定誤差大きい、シマノパワーメーター酷評

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やはり初物は地雷なのか。シマノパワーメーターのレビューが物議をかもしている。海外の大手メディアBikeradarでシマノパワーメーターのレビューが掲載された。その内容とは「頑丈だけど、左右測定差が大きい。」というパワーメーターとしての性能面はあまり芳しくない評価であった。

国内SNS界わいでもシマノパワーメーターを購入したユーザーが、「左右差が大き気がする」という報告が出ている。そして「もしも購入するとしたら」というBikeradarの結論に至っては、「新型Dura-Ace9100一式とマッチしたクランクが欲しい場合、かつ左右測定誤差を気にしない人」という、パワーメーターとして本末転倒な結論だった。

本来「パワーメーターとしてどうであるか」が重要だが、シマノという輪界で最も権威あるメーカーに対して多少なりとも配慮した評価なのだろう。やはり、初物は地雷なのか。Bikeradarの気になる評価から、シマノパワーメーターの真相を追う。

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左右測定誤差の問題

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テスト環境はハブ型パワーメーター(PowerTap)、ペダル型パワーメーター(ベクター3)とシマノパワーメーター(クランク型)を組み合わせており、かなり考えられている。そして、個体差が出ないように、用意されたシマノパワーメーターは2つだ。

結果だけ見れば、高精度がウリのPowerTapとの比較でも非常に良い測定結果を出している。しかし、シマノパワーメーターは左右差がとても大きい。

例えば、ローラーを使用した計測では、シマノパワーメーターは平均155ワット、ペダル型ベクター3で150ワット、PowerTapでは150ワットで5Wほどの誤差が発生している。そして右片足ペダリングを測定した結果は、シマノ145w、ベクター3右側で150w、PowerTapで150wと測定された。

個体差も十分に有り得ると考えられるため、Bikeradarのレビュアーはもう一つ別のシマノパワーメーターを用意し同様の実験を実施したが、結果は同じだった。要するに左右差はシマノパワーメーターの個体差ではなく、シマノパワーメーター「独特の個性」のようだ(回りくどい言い方だが……)。

で、海外メディアがすごいのはここからで、「シマノのプロマネにこの件聞いたった」という内容がオモロイ。で、しっかりと、シマノロードプロダクトマネージャーのデイブ・ローレンス氏もコメントをしているところが評価できる。

「まぁ、誤差は想定の範囲内だよね」と。

上記のように答えながらも、「左右測定差」について正直にコメントしている。「現段階では、なぜそのような測定誤差を引き起こしているのかはわからない」と。ここで少々立ち止まって冷静に考えてみよう。「どちらを信じるか」だ。パワーメーターは宗教とも言われているが、正に「何を正義とするか」の議論に持ち込まれる。

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「実は、シマノパワーメーターの測定値が高精度で、本当に左右の差が生じている。」

と解釈するのか、それとも―――

「こなれたPowerTapとVectorというパワーメーターが正しいに決まっている。シマノパワーメーターが左右差があるという解釈にしたい。」

のどちらでも文章は作れるし、記事を作れる。そして大手メディアというバックボーンの元、情報操作だってお手の物だ。もしもPowerTapやベクターから、多大なBLOG活動献金を頂いていたのならば、私は後者の正義を振りかざし、記事のアプローチをするだろう。ただ、そもそも「測定器と測定器を比べること自体、もう飽きてきた。」という気持ちを抑えながら。

本来であれば、ドイツの機関紙Tour Magazineのように「測定器を校正するような精度の高い測定器」を用いて、測定する等の方法が最も信ぴょう性があるのだが……、新型シマノパワーメーターという魅力的な機材だからもう少し見ていこう。

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温度変化に弱い

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どうやら、シマノパワーメーターは温度変化に弱い。朝のいてつくような寒い環境で計測した時の値と、太陽が出て気温が上昇した後では、測定に誤差が発生する。実際に人間は敏感なもので、初期型のPower2Maxにも体感できるほど、温度変化による測定誤差が顕著に見られた。

対して優秀なのがパイオニアペダリングモニターで、温度変化耐性はかなり優秀だ。冬場3シーズン目だが、というよりもゼロ点校正時に+-1Nほどしか狂っていない(ペダリングモニター動作温度–10℃から50℃)。なお、気温変化にも追従して補正がかかるからペダリングモニターは地味にすごい。

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まとめ:結果をどう解釈するか

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実際にBikeradarの内容を冷静に読み取ると、2つの思考のアプローチができる。「買いたい人にとって都合の良い」書き方と「買いたくない人にとって都合の良い」書き方の2つだ。まずは前者、「買いたい人」のバイアスを刺激するような内容で、以下にまとめを書いてみよう。

パワーメーターとしての測定精度は高い。そしてシマノパワーメーターという安心感、いままで、フレームクリアランスの問題で取り付けられなかったサイクリストにとって、うってつけのパワーメーターである。また、既存のクランクにセンサーが内蔵されるというコンポーネントメーカー自身の強み、そして堅ろう性と防水面も魅力的だ。

確かに、左右測定誤差は大きいものの、最終的にデーターとしてデバイスに残る情報は正確だし、そもそも左右差はあまり気にしないのならば、今回のシマノパワーメーターの「特性」を気にすることもない。ただ、温度変化には気をつけなくてはならないが、室内ローラーや、気温が安定した時期の使用を考えれば、全く使えないわけではないだろう。

なにより自転車界の巨人、シマノが生み出した初のパワーメーターという点も注目度が高い。

と、「購入を検討している人」、「シマノパワーメーターを良く思いたい」、そして「購入を後押ししてほしい」場合は、このようなまとめになるのだろう。では、「買わなくて良い」、「ペダモニあるし」という人向けにまとめるとどうだろう。

パワーメーターとしての測定精度は確かに高い。そしてシマノパワーメーターという安心感、いままで、フレームクリアランスの問題で取り付けられなかったサイクリストにとって、うってつけのパワーメーターである。そして、既存のクランクに内蔵された堅ろう性と防水面も魅力的だ。ただ、許容できないのは左右の測定誤差が大きいことだ。

最終的にデーターとしてデバイスに残る情報は正確という”あいまいな動作”は、測定器として性能部分で疑問が残る。シマノパワーメーターの構造は、クランクシャフト内で左右のセンサーがつながれており、測定結果は左右で計測された値を一つにまとめて送信する。

もしかしたら、双方のセンサーで取得した値の処理部分、ソフトウェア上のバグがまだ残っているのでは?とも考えられるが、先程のプロマネの話の「現段階では、なぜそのような測定誤差を引き起こしているのかはわからない」の通り、真相は不明だ。そもそも左右差を気にしないのであれば問題はない。

ただ、左右の測定機能を潔くシマノが撤廃して、パワー測定データー(非常に高いとされる)だけ計測するタイプで発売していたら……、Bikeradarの星もあと1つは増えていただろう(弱点をそもそも知ることができないのだから)。

ただ、左右差の問題は、「左右バランスを改善したい」という場合に有効であるが、「正確な測定結果を得たい」というだけであれば、シマノパワーメーターはとても良いデバイスだ。しかし問題は全天候型、通年を通してトレーニングを行うサイクリストが使用する場合である。

「どんな気象条件でも正確な情報を逐次計測できる」という観点を無視できないようであれば、温度変化問題に対して決して目をつぶることはできない。冬場のトレーニング、朝寒い部屋の中でローラートレーニング、気温差が激しく、標高差が顕著なヒルクライム、その中で「確からしいデーター」を取得したいのならば、精神衛生上疑いながらシマノパワーメーターを使用することは避けたほうが良いだろう。

なにより我々ユーザーが注意しなくてはならないのは、「自転車界の巨人、シマノが生み出したから大丈夫」と安易に安心せず、「どのような条件下でも指標となる正確なデーターを測定器として取得できるか」の1点を見なければならない。初のパワーメーターという「初物は地雷」はシマノに限らずパイオニア、P2M、Quarqでも経験している。

現段階でクランク型パワーメーターのベストバイは、温度変化に強く、第3世代で一層安定したパイオニアペダリングモニターであることには変わらない。シマノパワーメーターの出現で、その立ち位置が危ぶまれたが、第3世代に至るまでの開発と度重なるアップデートは、現在の安定したペダリングモニターの礎を築いている。たしかにシマノパワーメーターの初物で飛びつきたい気持ちはわかるが、まだ時期尚早、使うことはない。

「買いたい人」と「買いたくない人」双方のサイクリストへ向けて、背中を押す文章のまとめを2つ用意した。買いたい人は前者を読めば良いし、買いたくない人は後者を読めばいい。あ、私がどちらのバイアスに引っ張られているかって?その点は、明言を避けたい。ただ、今回のbikeradar.comの記事は、購入を検討している人にとって、一つの指標となるはずだ。

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