新型 DTSWISS スターラチェット2.0 EXPハブ 25年ぶりの新構造とは

この記事は約7分で読めます。
スポンサーリンク
ざっくり言うと↓

  • 部品数減で軽量化。
  • ベアリング間がワイド化で剛性15%増。
  • ラチェットのかみ合い時間短縮。
  • メンテナンス性がさらに簡素化。

aDTSwiss_240_Hub_Detail_Ratchet_EXP-1024x576

25年前にDT Swissは、独自のスターラチェットの特許を取得した。信頼性が高く、メンテナンスが容易な高性能ハブとして時代を渡り歩いてきた。しかし、その特許の有効期限が切れた今、DTSWISSは軽量化、高剛性、高精度、高耐久性、メンテナンスの容易さ、互換性の簡素化という装いを新たにスターラチェットEXPを生み出した。

まずは、軽量化の観点から確認していこう。新しいラチェットEXPはハブを構成する部品の数がとても少ない。DTSWISSはハブの内部構造を見直し再設計した。統合や構造の見直し(会社みたいやな)により、使用する個々の部品の数は13まで減った。この数の中にはフリーハブボディの2つの圧入ベアリングも含まれている。

2020-DT-Swiss-Ratchet-EXP-fewer-moving-parts

DTSWISSはどのような工夫で部品点数を減らしたのだろうか。まず、旧型ではラチェットを押し戻す2つのバネを採用してきたが、新型では最も内側のバネは不要になった。旧型は内側のラチェットとねじリングが別々の部品であったが、一体化にすることによってバネを必要としなくなった。

結果的に重量も減り、さらに内側のチェットは完全に固定されるため、ブレやガタのない配置に生まれ変わっている。

5_Reliable_2_-_1440w@2x

そして、内側のラチェットとネジ付きのリングが一本化されたことで、ベアリングを外側に約7mm広く配置することが可能になった。その結果、旧型のハブ構造と比較して剛性は15%増加した。また、ラチェットが速く噛み合うため、正確な接触が得られるように変化している。

2020-DT-Swiss-Ratchet-EXP-freehub-bodies-for-XD-XDR-Shimano-Road-Shimano-MTB-Shimano-Microspline-Campagnolo

DTSWISSの素晴らしいところはフリーを容易に変更できることだ。DT Swissのハブのコンセプトは、高いパフォーマンスと耐久性を提供することだが、使いやすさを犠牲にすることはない。主要なフリーハブボディの規格にも対応している。新しいハブはSRAM XD、SRAM XDR、SHIMANO 10/11S、SHIMANO MICRO SPLINE 12S、CAMPAGNOLOのフリーハブボディのいずれかに変換できる。

MTBコンポーネントは既に12速化しており、近々シマノのロード用コンポーネントは12速化すると噂されている。もしもロードのハブ規格がロード用のマイクロスプラインに変更されたとしても、DTSWISSのハブを使用していれば問題ないだろう。今は11速用のフリーを使い、ロードが12速化してもマイクロスプラインフリーに変更するだけだ。

大手ホイールメーカーが採用するハブメーカーで最もシェアが高いDTSWISSは、そういう意味でもシマノからのライセンスも受けやすい。また、シマノもDTSWISS無しでは12速化の普及は考えられないだろう。シマノのホイールが全く人気がない事も後押ししている。

EXP搭載の新しいハブにはすべて36Tのラチェットリングが標準装備されている。そして、54Tもアップグレードすることが可能だ。噛み合いポイントが増えた場合、長期的には歯が摩耗する場合があるようだ。耐久性はわずかに低下するが、かかりの良さとのトレードオフと考えねばならない。

スポンサーリンク

なぜ36Tなのか

aDTSwiss_240_Hub_Ratchet_Black-1024x1024

DTSWISSのスターラチェットの歯数は標準装備の36Tかオプションの54Tから選択することが可能だ。しかし、なぜ今回のラチェットEXPでは標準が36Tなのだろうか。旧モデルのスターラチェットは18T、24T、36T、54Tとラインナップしていた。36Tの場合は10°のかみ合角度を持っている。54Tになると6.67°になる。

dt-swiss-240-exp-backlash

この10°というのは、何を意味しているのか。この角度は踏み込んだ時の掛かりの早さに関係している。たとえば、コーナーの立ち上がりに間髪入れず(ロス無く)踏み込みたい場合は、54Tを選択したほうがよりクランクからの入力は速く行える。実際にマウンテンバイクやシクロクロスにおいて54Tは重宝されている。

DTSWISSはこの角度を非常に重要視している。DTSWISSが定義するところによればこの角度が意味することは、「クランクの力をホイールの加速に変換する前に、クランクが回転することのできる遊びの時間」と定義している。

さらに厳密に捉えると、クランク長、ギア比、噛み合い角度(10°や6.67°)の3つの要素の影響を受ける。クランク長と噛み合いの角度は「遊びの時間」に比例する。DTSWISSは様々な検証と信頼性を考慮した結果、最も最適化できるのが36Tという結論に達した。

私も実際に試したが、54Tは音が非常にうるさい。また掛かりの良さはたしかに良いのだが36Tに慣れてしまうと逆に54Tは違和感がある。そのためロードの使用用途であれば、DTSWISSの推奨する歯数36Tを使用したほうが良い。36Tが最も優れた効率と信頼性を持っているのは間違いがなさそうだ。

スポンサーリンク

ベアリングの距離

2020-DT-Swiss-Ratchet-EXP-hubs-wider-bearing-placement

マウンテンバイクのエンド幅が毎年広がっているのは、ただ単に規格を変更して消費者の買い替え需要を狙っているわけではない(と思いたい)。昨今のバイク機材に共通しているのは「より広く」というキーワードだ。理由の一つにワイドスタンスによる機材の高剛性化がある。

マウンテンバイクでは特に顕著だが、エンド幅は148mmのBOOST規格が主流になってきたし、エンド幅が広がることによってBOOST対応クランクも登場している。既存の規格を変えてまで幅を広げる理由は、純粋に高い剛性を求めた結果だ。

また、タイヤがワイド化していることはどのライダーも肌で感じていることだろう。ロードも23Cタイヤは見かけなくなり25Cや28Cが常用されるようになった。そしてリム幅もリム内幅もワイド化してきている。この流れはDTSWISSの新型ハブも同様だ。ラチェットEXPの構造で最も歓迎すべきは、部品点数を減らし、内側のラチェットとベアリングをほぼ一体化したことにある。

旧式のベアリングよりも外側にベアリングが配置されたことによって剛性が15%向上した。そしてベアリングにかかる負荷が減ったことによりベアリングの寿命も伸びるという恩恵も得られた。新しいラチェットEXPは軽量化、ワイドスタンスのベアリング配置で剛性向上と至れり尽くせりの設計なのである。

スポンサーリンク

まとめ:EXPハブが主流になるか

large_161062_20191115123347

およそ25年もの間、スターラチェットハブシステムは世界で最も名高いハブ技術の一つとしてその名を知られてきた。ロードやマウンテンバイク問わず一度は(知らず知らずのうちに)使ったことがあるハブシステムかもしれない。

信頼性が高く、構造的にも最適なデザインとされていたスターラチェットハブの構造は、DTSWISS25年の節目に大きく変わることになった。

DT Swissのスターラチェットハブシステムは、25年以上の長きにわたって信じられないほど使用され続けてきた。同社を象徴するデザインでもあり、「DT Swissといえばスターラチェット」というほど親しまれ使用されてきた。市場で最もよく知られており、最もライセンスされているフリーハブシステムであることは間違いない。

広く親しまれているスターラチェットの設計はとても単純で、2つのばね付きラチェット(または「クラッチ」)とプレートで構成されている。そして、メカニックに頼らなくとも簡単にメンテナンスできる。そのスターラチェットはEXPでさらに洗練され、部品点数は減り、メンテナンスもさらに容易になった。

DTSWISSは自社製品以外にも、Ligtweight、Roval、Bontrager、Giant CADEX、MAVIC、ZIPPなど、他の多くのホイールブランドのハブも製造している。新型のROVAL TERRAにもEXPハブが採用されたところをみると、新型ROVALにもEXPハブが搭載されることはほぼ確実だ。「軽量」「高剛性」という2つはメーカーには聞き捨てならないパワーワードである。

とはいえ、リリースから1年以上経過しているのにもかかわらず、日本市場ではあまり話題になっていない。これから次第に普及していくはずだが、これ以上改善の余地がないと思っていたDTSWISSのハブ構造が新しくなったことは素直に喜びたい。

実は今、手元に新型のスターラチェットEXPがある。実際にどのような乗り心地、構造、重量なのかは後日紹介する予定だ。

タイトルとURLをコピーしました