エベレストに人類が初登頂した際に使用した ブリンヤメッシュアンダーウェアとは

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自転車競技を始める前、10年間ほど雪山のガイドやスキーのインストラクターをしていた。雪山では身につけるウェアに一段と注意を払わねばならなかった。リフトが整備されたスキー場ならば遭難することはほとんど無いが、ハイクアップ(歩いて山の斜面を登山)してバックカントリーを攻めるとなると自分の身は自分で守るしかなかった。

ウェアにはRECCO(遭難救助システム:雪崩により雪中の人を捜索するビーコンのようなもの)を着け、もしもの時にすぐに発見できるように配慮していた。実は冬山よりも夏山で命を落とす人のほうが多いのだが、冬の雪山では低体温症で命を落とす場合がある。

一番厄介なのが汗冷えだ。身体を動かしている間は汗が流れるほど暑く感じられる。しかし、汗が乾くときに一気に熱を奪うため、急に寒さを感じるようになる。汗(水分)は空気に比べて25倍の熱伝導率を持っているため、肌やウェアに汗が残ったままだと身体の冷えにつながる。

市街地であれば汗冷えの実感がわかないかもしれないが、山の場合は少々異なっている。たとえば、標高が高い山で外気温が下がって強い風が吹くような状況で汗をかく場合と、平地で気温30℃の環境を比べると体温の奪われ方は大きく異なる。

自転車の場合を考えると、ヒルクライム(ハイクアップに相当)後に下山するときに汗冷えの影響を受ける。ただし、悪い方へ転ぶか、良い方へ転ぶかは身につけるインナー次第だ。適切なインナーウェアを選択すれば汗冷えや寒さへの対策を行うことができる。

当ブログではモンベルのジオライン、ミレーのドライナミック、ファイントラックのラッドラッシュの3つを推奨してきた。どれも自転車用ではないのだが、4つ目のインナーとして試したのが、今回紹介するブリンヤのスーパーサーモCベースレイヤーだ。

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メッシュベースレイヤ

Photo: brynje 1887 A HISTORY OF QUALITY OUTDOOR APPAREL

Photo: brynje 1887 A HISTORY OF QUALITY OUTDOOR APPAREL

メッシュベースレイヤといえば、ミレードライナミックが有名だ。しかし歴史を紐解けば100年以上前にブリンヤが開発したメッシュベースレイヤにたどり着く。ブリンヤはノルウェーのブランドだ。ブリンヤのメッシュベースレイヤは、有名な登山家アンディ・カークパトリックがUK Climbingに寄稿した「アンディ・カークパトリックによる冬の暖かさを保つための10のヒント」の中でも紹介されている。

合成繊維からウールまで、優れたベースレイヤーの数々が市場に出回っています。しかし、あなたが行うのはストップ&ゴーの繰り返しです。この活動に最適なベースレイヤーはメッシュ構造のブリンヤです。

この「超セクシーな下着」はポリプロピレンから作られており、水を吸収することはできませんが大きく開いたメッシュに紡がれているため、効果的に空気の層(メッシュは単に空気がとどまる居場所)を作っています。

これらは過去100年、最も困難かつ、最もエクストリームな冒険の数々で使用されてきました。単純に他のウェアよりもうまく機能します(そして、他の何よりも見た目が非常に悪い!)。安い買い物ではありませんが、メリノウールのトップスの下でうまく着用できます(ウールは汗を吸い上げるのに役立ち、メッシュは肌から守ります)。

ブリンヤは、あなたがより暖かく、よりドライな状態に、より幸せになることを保証します。

Just a moment...

ノルウェーのみならず世界のプロ登山家たちに親しまれている理由の一つとしてブリンヤがオフスポンサーの姿勢を保っているという背景がある。

「有名な日本の登山家にユニクロのヒートテックを供給して露出度を増やしたプロモーションを冬に大々的に行ったが実際にはアンダーウェアにミレーのドライナミックウェアを着ていた(早口)」

というオチ(あまりにも具体的かつ正確に書きすぎて消されるかもしれない!)とは異なり、世界の冒険家トップクライマー達は自らの命を守るためにブリンヤを選択している。

ヒートテックでエベレスト登頂 実はドライナミックも下に着ていた
ヒートテックでエベレスト登頂―――。世界で一番高い山と言われた時ヒマラヤ山脈の最高峰エベレストの名前が思い浮かぶ。大人から子供まで誰しもが知る有名な山である。そのエベレスト登頂の際に「ヒートテック」が使われたというのだ。参照元記事:「エベレストを登頂した南谷真鈴がヒートテックを選んだ理由。」この記事はユニクロオフィシャルが公開したとあって、たちまち話題をさらった。そして、この話題と合わせ当ブログの...

プロモーションが一切入っておらず、「プロが自腹で購入する」というアレである。ブリンヤの名を広めたは1953年5月29日だ。世界で最も標高が高いエベレスト(8,850メートル)に人類が初登頂した日である。

イギリス探検隊のメンバーでニュージーランド出身の登山家であるエドモンド・ヒラリーと、ネパール出身のシェルパであるテンジン・ノルゲイの両名が身につけていたのがブリンヤのメッシュアンダーウェア(当時は化学繊維ではなく綿)だった。

現代では、1921年にフランスで創業したブランドのミレードライナミックウェアが「メッシュアンダーウェア」の代名詞になっている。しかし、それよりもはるか昔1887年にブリンヤは当時の技術でメッシュアンダーウェアを制作している。

100年以上の歴史があるブリンヤのメッシュアンダーウェアは極寒の地で活動するCanadian Armed Forces(CAF:カナダ軍)やUnited States Armed Forces(米軍)での採用実績がある。

軍隊で採用されるようになった背景としては、ブリンヤが生まれたノルウェーの政府がメッシュベースレイヤーの研究を行っており、ソリッドニットよりも大幅に優れた性能を備えていることを決定的に示すデータを得ていたからだ。ノルウェー政府は何十年もの間、軍隊にブリンヤのメッシュアンダーウェアを供給した。

その後、米軍やカナダ軍の訓練(地球の極限の地域で活動)で実績を収めることになる。最高峰のエベレストから世界最強の米軍まで、ブリンヤのメッシュアンダーウェアが「見えない内部」で活躍していたのだ。

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奇跡の糸

ブリンヤのラインナップの中にはメリノウールを使用したメッシュアンダーウェアも
ある。メリノウールは靴下などのベースレイヤーの素材として非常に人気がある。理由として、メリノウールは繊維なのでかゆみがなく、濡れると暖かく臭いがしにくいという特徴がある。

しかし、1950年代に新しい「奇跡の糸」ポリプロピレンが開発された。それ以来ブリンヤのメッシュアンダーウェアのみならずミレーのドライナミックウェアもポリプロピレンを使用している。では、メリノウールメッシュよりも優れているポリプロピレンとは一体どのような素材なのだろうか。

ポリプロピレンの大きな特徴として、軽量、湿気管理、暖かさという3つの特徴がある。他の繊維と比べてポリプロピレンがどれほど優れているかデータから確認してみよう。

乾燥重量

  1. ポリプロピレン:9g/cm3
  2. ナイロン:14g/cm3
  3. ウール:32g/cm3
  4. ポリエステル:38g/cm3
  5. 綿:50g/cm3

乾燥重量吸湿率(%)

  1. ポリプロピレン:5%
  2. ポリエステル:40%
  3. ナイロン:450%
  4. 綿:800%
  5. ウール:1,600%

断熱能力(数値が小さいほど断熱性が高い)

  1. 空気:0
  2. ポリプロピレン:0
  3. ポリエステル:0
  4. ウール:3
  5. コットン:3

上記のデーターから、ポリプロピレンはナイロン、ポリエステル、綿、羊毛よりも軽く、乾燥していて暖かい繊維であることは明らかだ。このようにインナーウェアの素材としてポリプロピレンが適しているのは、熱伝導率が低く、体温を奪われにくい性質を持っているからだ。

また、ポリプロピレンは繊維としての水分保有率がほぼゼロに近い。そして繊維自体が保水しないため、汗をかいても繊維自体はドライであり続ける。

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なぜメッシュ構造なのか

ブリンヤがメッシュ構造を採用して100年以上愛されているのには理由がある。メッシュ構造は、繊維の周りに通気が生じて乾かす機能が向上し持続する効果がある。また、肌への接触面が少ないので、熱伝導率が低いという特徴もある。

メッシュの下着は、水分が毛細管現象によって液体として吸い上げられるだけでなく、生地を通って蒸気として移動することも可能にしている。メッシュインナー特有のドライ感の秘訣は、高さのあるメッシュ生地が影響している。ウェアは立体的で高さがあるため汗を吸い上げつつ、濡れたウェアの張り付きを防ぐ効果がある。

結果としてメッシュ構造自体が体温が奪われるのを防ぐ。 冬場は防風性の高いジャケットを着用すれば、デッドエアー(空気が滞留する場所)をためて保温効果が更に高まる。100年前は科学的な根拠がなかったかもしれないが、時代とともにメッシュアンダーウェアの優位性は確実に立証された。

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インプレッション

ブリンヤのメッシュアンダーウェアは「肌を乾かす」という事に特化している。粗悪なインナーであれば「汗をかく」→「肌が濡れる」→「冷える」という事態に陥るが、メッシュアンダーウェアは「汗をかく」→「肌が乾いたまま」→「冷えない」その結果、汗冷えを起こさないという仕組みだ。

ブリンヤのメッシュアンダーウェアは冬夏問わず使用することができる。夏でも冬でも、体にまとわりつく水分を毛細管現象によって速やかに吸い上げ蒸発させることが主な役割だ。

ブリンヤの効果が最も感じられるときは、強度が高い練習のあとで信号で停まったとき、カフェに立ち寄ったときだ。ブリンヤのスーパーサーモCシャツを着ていると、乾きが速くほぼずっとドライに感じられる。ただし、メッシュアンダーウェアの主な機能は空気を滞留させるためだけであるため、しっかりとしたアウターウェアを着用して空気を逃さないようにする必要がある。

ブリンヤがインナーウェアとして優れているところは、身につける際の不快感を低減しているところだ。肌に不快感を及ぼすタグ類まで配慮するこだわっており、背中の製品タグは外側に縫い付けられている。また、「BRYNJE」のロゴも外側に縫い付けられている。肌と接する部分はメッシュのみだ。

またデザインとプロデュースはノルウェーで行われているが、製造はノルウェーから南に位置するポーランドで行われている。ミレードライナミックをはじめ、多くのウェアブランドが製造拠点を中国に移行する中で、ブリンヤは東欧で生産を続けている。

製品の品質の良さは縫い目でわかる。丁寧に縫い作られた袖部分は耐久性にも優れており、長期間の連続使用を想定して作られている。というのも、山では水が貴重なため基本的にウェアを洗うことはない。何日も連続して同じウェアを使用する必要がある。

山で使用するウェアには耐久性も求められる。モンベルのジオラインを10年近く使用しているが脇腹付近が薄くなってそろそろ寿命を迎える。ブリンヤのウェアの耐久性はこれからテストしていくことになるが、アウトドアウェアに共通しているのは作りの良さと耐久性だ。

サイズ感としては、パールイズミのウェアでMを着ていればワンサイズ落としてSサイズを着用すればよいだろう。メッシュアンダーウェアの難点といえば、着替えるときに人目につくことだ。明らかにアミアミメッシュは不審者である。しかし、それは100年以上前から言われていることであり、世界最高峰の冒険家も同じことを述べている。

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まとめ:オールシーズン使える高機能インナーウエア

メッシュ式のアンダーウェアのメリットはメッシュの間に暖かい空気を留めることと、立体的な繊維の塊が毛細管現象によって汗を吸い上げて一気に蒸発させる仕組みだ。激しい活動をして大量の発汗をしたとしても、汗冷えを最小限に留める。

メッシュアンダーウェアに暖かさを求めることは本来の用途ではない。補助的な役割としてインナーを使用することが本来の目的に見合っている。そのためには、良いアウターウェアを使用することが前提だ。

また、ブリンヤのメッシュアンダーウェアは冬のみならず夏も使用できる。オールシーズン使用するように設計されているためオンシーズン、オフシーズン問わず通年活用できる。冬だけしか出番がないインナーウェアではないため、いつ購入しても良い。

ミレードライナミックウェア、モンベルジオライン、ファイントラックドライレイヤーを使ってきたが、これらのメジャーウェアをたどっていけば、ブリンヤが起源にあった。

この冬はブリンヤを試す絶好の機会だ。冬が終われば春から夏でも使える。山の上り下りを繰り返すヒルクライマーは通年を通して重宝するはずだ。もともと自転車用に開発されたインナーウェアではないが、過酷な山の環境で磨き上げられたブリンヤメッシュアンダーウェアは、自転車用途としても十分な性能を備えた間違いのない高機能ウェアである。


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