実世界で最速!ENVE SES 4.5 PRO ホイール空力性能の風洞実験結果

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SES 4.5 PROは、前モデルであるSES 4.5無印と比較して空力性能が進化している。加重平均抗力(WAD)を指標とし、低速域(32km/h)および高速域(48km/h)におけるヨー角別のドラッグや応答性を分析。ENVE製品内や競合製品との比較を通じて、空力性能と重量のトレードオフを検証し、パレートフロンティアの最適化モデルはSES 4.5 PROであることがわかった。

これは、時代に逆行する設計思想ではないのか。

ロードホイールはここ数年、内幅25mm超のワイドリムと30mmタイヤの組み合わせを「最適解」として突き進んできた。Roval Rapide CLX III、Zipp 454 NSW、Princeton Dual 5550、いずれも29~30mmタイヤとの協調設計を前提としている。

その流れに真っ向から逆らう形で登場したのが、ENVE SES 4.5 PROである。

内幅23.5mm、最適タイヤ幅27~28mm。ポガチャルの要望から生まれたこのホイールは、UAE Team Emirates-XRGとの2シーズンに及ぶ共同開発を経て、2025年ツール・ド・フランスのグランデパールに合わせて発表された。

ENVEが公開したAero Competitionデータ、32km/hおよび48km/hでの加重平均抗力チャート、ヨー角別ドラッグ曲線、空力対重量散布図から、SES 4.5 PROが既存のSES 4.5無印やSES 6.7、そして他社競合製品に対してどのような空力的優位性を持つのかを分析した。

テスト条件と評価指標

ENVEのAero Competitionデータは、以下の統一条件で測定されている。

テストバイクはENVE Melee、タイヤはENVE SESタイヤ、測定はドライブサイドスイープで実施。速度域は32km/h(アマチュアレーサーの巡航速度帯)と48km/h(エリートレーサーの巡航速度帯)の2条件が設定されている。

ヨー角は0°、5°、10°、15°の4点で測定され、それぞれの測定値に実走行中のヨー角出現頻度に基づく重み付けを施した加重平均が「Weighted Average Drag(WAD)」として算出される。

この加重平均抗力という指標は、ENVEが長年提唱してきた「Real-World Fast」哲学の数値的な表現である。実世界で風速計を用いたデータの解析によれば、実走行時間の大部分はヨー角12°未満の条件下にあり、15°以上の高ヨー角が持続する状況は稀であるという。

どちらが空力が良い?なぜDragに重み付けをすべきなのか。
「エアロダイナミクス」という言葉は自転車業界で流行語のように使われている。新製品が登場すれば、必ずと言っていいほどDragデータを掲載し、前作モデルと劇的な格差をこれでもかと見せつける。しかし、これらの数値は「どのように計算」され「どれだけ現実的なのか」まで説明されていることはとても少ない。2021年2月19日、筆者は自身で作成したホイールの性能を確かめるために風洞実験を実施した。風洞施設は、SU...

したがって、ゼロヨー角のみのドラッグ値やヨー角0~20°の単純平均では、実走行での空力効率を正確に反映できない。WADはこの問題を解消するために設計された指標であり、低ヨー角領域での効率に優れるホイールが正当に評価される構造になっている。

なお、チャート中の「27」「29」の表記はタイヤ幅を指す。SES 4.5 PROは27mmタイヤに最適化された設計であり、27mm装着時と29mm装着時の両条件でテストされている点が、このデータの分析上きわめて重要である。

SES 4.5無印からPROの進化

SES 4.5 PROは、2022年発売のSES 4.5と同じ非対称リムハイト設計(フロント浅め・リア深め)を継承しつつ、27~28mmタイヤに最適化するために全寸法を再設計したモデルである。

リムハイトはフロント49mm/リア55mm(無印は50/56mm)、内幅は23.5mm(無印は25mm)、外幅は30.8mm(無印は約32mm)へと絞り込まれた。ビード形状はフックレスから0.5mmの「ミニフック」へ変更され、最大空気圧は5.0 Barから6.9 Barへ引き上げられている。

重量面での進化は劇的である。

高弾性率カーボン積層体の採用によりリム単体で約50g(ペアで約100g)の軽量化を実現。さらに新開発のINNERDRIVE PROハブ(フロント87g、リア194g、ハブセット281g)は、従来のPremium INNERDRIVEから約60gの削減を達成した。

結果としてホイールセット重量は公称1,295gとなり、無印SES 4.5の約1,450gから155gもの軽量化を果たしている。スポークは前後とも24本のAlpina Ultralite Aero R5ステンレスブレードスポークを使用する。

スペック SES 4.5 PRO SES 4.5(無印) SES 6.7
リムハイト F/R 49 / 55mm 50 / 56mm 62 / 69mm
内幅 23.5mm 25mm 25mm
ホイールセット重量 1,295g 約1,450g 約1,500g
ビード形状 ミニフック(0.5mm) フックレス フックレス
最適タイヤ幅 27~28mm 29~30mm 29~30mm
最大空気圧 6.9bar 5.0bar 5.0bar
ハブ INNERDRIVE PRO INNERDRIVE Premium INNERDRIVE Premium
価格(税込参考) \649,990 約\450,000 約\470,000
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WAD:加重平均抗力

32km/h:低速域での空力

32km/hにおけるWADは、テスト対象12構成の空力序列を明確に可視化している。最も低いWADを記録したのはSES 4.5に27mmタイヤを組み合わせた構成で、約35.50Wを示した。

SES 4.5 PRO 27がこれに僅差で続き、約35.75Wを記録している。注目すべきは、この2構成が他のすべての組み合わせから明確に分離している点である。

3番手以降はHunt Sub50 Limitless UD Carbon Spoke 29(約36.15W)、SES 6.7 29(約36.20W)、Vision Metron 60 SL 29(約36.20W)と約0.4W以上のギャップを挟んで続く。

SES 4.5 PRO 29(29mmタイヤ装着時)は約36.40Wに位置し、29mmタイヤ同士の比較ではSES 4.5 29(約36.30W)とほぼ同等である。これは設計意図を裏付けるデータであり、SES 4.5 PROの真価は27mmタイヤとの組み合わせで発揮される。

29mmタイヤでは空力上の優位性が薄れ、無印SES 4.5やSES 6.7と同水準に留まる。

競合製品との比較では、Roval Rapide CLX II 29が約36.35W、Princeton Dual 5550/Tactic 29が約36.65W、Bontrager Aeolus RSL 51 29が約36.75Wと中位に分布する。

一方、Zipp 454 29は約37.50W、Scope Artech 4 29は約37.70Wと、上位グループから1W以上離れた位置にある。

特にScope Artech 4はカーボンスポーク採用で1,120gという超軽量を実現しているが、空力性能では最下位であり、重量特化型設計であることがデータから明白である。

48km/h:高速域での空力

48km/hでの測定結果は、32km/hと基本的に同じ序列を示しつつ、速度の三乗に比例してワット差が拡大する。SES 4.5 27が約117.5Wで首位、SES 4.5 PRO 27が約118.0Wで僅差の2位を維持している。

両者の差は約0.5Wであり、32km/h時の約0.25Wから微増しているが、依然として実走行上は無視できる水準にある。

高速域で注目すべきはSES 6.7 29の動きである。32km/hではSES 4.5 PRO 29と同程度であったSES 6.7 29は、48km/hでは約118.5Wへとポジションを上げ、より深いリムハイトの空力的恩恵が高速域で発現することを示している。

ただし、その差はSES 4.5 PRO 27に対してわずか0.5Wであり、155gの重量ペナルティとクロスウインド安定性の低下を考慮すれば、SES 4.5 PROのパッケージングがトータルで優位に立つ。

競合製品群の序列はさらに明確になる。

Vision Metron 60 SL 29とRoval Rapide CLX II 29が約119~119.5Wで中位に、Hunt Sub50 Limitless UD Carbon Spoke 29とPrinceton Dual 5550/Tactic 29が約120W前後、Bontrager Aeolus RSL 51 29が約121W、Zipp 454 29が約122.5W、Scope Artech 4 29が約123Wで推移する。

SES 4.5 PRO 27と最下位Scope Artech 4 29の差は約5Wに達し、高速域ではホイール間の空力差が無視できない規模になることをこのデータは示している。

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ヨー角別ドラッグ

32km/hでのヨー角応答

32km/hにおけるDrag vs Yaw Anglesチャートは、各ホイールの空力特性の「性格」を浮き彫りにする。0°ヨー角では全ホイールが35.5~37.0Wの狭い範囲に密集しており、無風正面からの空力差は比較的小さい。

SES 4.5 PRO 29は約36.5W、SES 4.5 29は約36.2W、SES 4.5 PRO 27は約35.8W、SES 4.5 27は約35.6Wと、ENVEの4構成はいずれも中位から上位に位置する。

5°ヨー角に移行すると、各製品の挙動に差異が現れ始める。

SES 4.5 PRO 27とSES 4.5 27は35.0~35.5W域へとドラッグが微減し、ヨー角の増加に伴って「セイル効果」横風がリムの翼形状に揚力的に作用し正味の抗力が減少する現象が発現し始めていることを示す。

一方、Scope Artech 4 29やRoval Rapide CLX II 29は37W前後に留まり、低リムハイトまたは非対称でないリム形状ではこの効果が得られにくいことがわかる。

10°および15°ヨー角では、ホイール間の分散が大きく拡大する。SES 4.5 27は10°で約34.0Wまで低下し、15°でも約39.0Wに留まる。SES 4.5 PRO 27も10°で約35.5W、15°で約38.5Wと良好な値を維持する。

対照的に、Roval Rapide CLX II 29は10°で約38.0W、15°で約40.7Wへと急上昇し、高ヨー角でのドラッグペナルティが顕著である。Scope Artech 4 29は15°で約40.7Wと最も高いドラッグを記録し、浅い45mmリムハイトではヨー角増加時の抗力増大を抑制できないことが明らかになっている。

48km/hでのヨー角応答

48km/hでは速度の上昇に伴いすべての値が約3.3倍にスケールアップするが、各ホイールの相対的な挙動パターンは32km/hと一貫している。

0°ヨー角ではSES 4.5 PRO 29が約120.5W、SES 4.5 29が約121.0W、SES 4.5 PRO 27が約118.0W、SES 4.5 27が約119.0Wを記録する。全ホイールが118~123Wの範囲に分布しており、静穏条件下での差は最大でも5W程度である。

高ヨー角領域で最も劇的な挙動を示すのは、やはり27mmタイヤ構成のENVEホイールである。SES 4.5 27は15°ヨー角で約117.0Wまでドラッグが低下し、0°時からほぼ変化しないか微減するという驚異的な特性を示す。

SES 4.5 PRO 27も15°で約116.0Wへと低下し、横風条件下での効率が極めて高いことを実証している。ENVEのSES設計哲学、フロントリムを浅く鈍頭に成形してクロスウインド安定性を確保し、リアリムを深いU字断面で空気の再付着を促す設計が、このヨー角応答に直接反映されている。

一方、Vision Metron 60 SL 29は15°で約110Wまで急降下する。60mmの深いリムが高ヨー角で強力なセイル効果を生んでいるが、これは加重平均には大きく寄与しない。

実走行でヨー角15°が持続する時間は全体のごく一部であり、WADの重み付けでは低ヨー角の効率がより重視されるからである。

Zipp 454 29のソートゥースプロファイルも15°で約117Wと良好な高ヨー角性能を示すが、0°での約122Wという高いベースラインドラッグが全体の平均を押し上げている。

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空力性能と重量のトレードオフ分析

Aero Competition散布図は、X軸にホイールセット重量(g)、Y軸にWADを配置したもので、ホイール選択における最も本質的なトレードオフを可視化している。左下に位置するほど「軽くて速い」──すなわち理想的な性能を意味する。

32km/hの散布図において、SES 4.5 PRO 27は約1,300g / 35.75Wの位置にプロットされ、チャート全体の左下領域を単独で占有している。同じ重量帯にあるのはSES 4.5 PRO 29のみで、約1,300g / 36.30Wにプロットされるが、WADで約0.55W劣後する。

ENVEはチャート上に緑色の十字線でSES 4.5 PROの座標を基準線として示しており、この基準を下回る(より軽量かつ低ドラッグな)製品が存在しないことを視覚的に訴求している。

SES 4.5 27(無印)は約1,430g / 35.40Wに位置し、WADではSES 4.5 PRO 27を僅かに上回る。しかし重量で約130g重く、散布図上では右下に位置する。ここに「同等の空力性能をより軽いパッケージで実現する」というSES 4.5 PROの存在意義が凝縮されている。

48km/hの散布図でもこの構造は維持される。SES 4.5 PRO 27は約1,300g / 117.5Wで左下の最適領域を占有し、SES 4.5 PRO 29も約1,300g / 119.5Wで重量面の優位性を維持する。

SES 6.7 29は約1,500g / 118.0W付近に位置し、48km/hでは空力性能でSES 4.5 PRO 27に肉薄するものの、200gの重量差が散布図上で明確なハンディキャップとなっている。

競合製品の分布を見ると、Hunt Sub50 Limitless UD Carbon Spoke 29は約1,380g / 120.5Wで中央やや左に位置する。カーボンスポーク採用による軽量性は評価できるが、空力性能ではSES 4.5 PROに明確に劣後する。

Scope Artech 4 29は約1,140g / 123.0Wという極端なプロットを示し、圧倒的な軽量性と最低クラスの空力性能を兼ね備える。ヒルクライム特化型としての性格は明白だが、本データにおける空力的競争力はない。

Roval Rapide CLX II 29は約1,430g / 119.8Wで中央に位置し、価格帯を考慮すれば優れたバランスだが、SES 4.5 PROのような突出したポイントは持たない。最新のCLX IIIは1300g弱でCLX IIと空力が同等であるため、SES 4.5 PROと良い勝負をするだろう。

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ENVE内部比較:SES 4.5 PRO vs 4.5 vs 6.7

ENVEの3モデルを横断的に比較すると、各モデルの設計思想の違いが空力データに明確に表れている。SES 4.5 PROの最大の武器は、27mmタイヤとの組み合わせにおける空力性能と重量のバランスである。

WADではSES 4.5無印(27mmタイヤ)にわずかに劣るものの、155gの軽量化というアドバンテージは、登坂や加速を含む実レース条件でのトータルパフォーマンスにおいて決定的な差を生む。

ENVEのエンジニアJake Pantoneが公言する「48km/hで1W未満の空力差」という数値は、本データと整合している。32km/hでの差はさらに小さく、約0.25Wに過ぎない。

SES 6.7は62/69mmというラインナップ中最深のリムハイトを持ち、48km/hでは29mmタイヤ装着の競合他社製品を上回る空力性能を示す。しかし、SES 4.5 PRO 27に対しては48km/hでも約0.5W劣後する。

リムハイトで13~14mm勝るにもかかわらず、27mmタイヤに最適化されたナローリムのSES 4.5 PROの方が低ドラッグであるという事実は、「リムの空力性能はリム単体ではなくリム+タイヤの統合システムで決まる」というENVEのSES設計思想の正当性を裏付けている。

加えて、SES 6.7の約1,500gという重量はSES 4.5 PROより205g重く、クロスウインドでの操縦安定性でも不利となる。

SES 4.5無印は、29~30mmタイヤとのワイドリム設計で荒れた路面や長距離でのコンフォート性に優れるオールラウンダーとしてのポジションを維持する。

27mmタイヤ装着時のWADではSES 4.5 PROをわずかに上回るが、これは幅広リムに細いタイヤを装着することでリム外幅がタイヤ幅を上回り、空力的に有利な「ワイドリム効果」が生じるためと考えられる。

ただし、25mm内幅リムに27mmタイヤという組み合わせはタイヤ形状の最適化が困難であり、実走行でのハンドリングや転がり抵抗の面では23.5mm内幅に27mmタイヤを装着するSES 4.5 PROの方が合理的である。

競合製品との比較

Aero Competitionデータに登場する競合8製品を、SES 4.5 PROの視点から評価する。なお、競合製品はすべて29mmタイヤでの測定値であり、SES 4.5 PROの27mm最適構成との比較では、タイヤ幅の違いが空力差の一因となっている点に留意が必要である。

Roval Rapide CLX IIは、51/60mmの非対称リムハイトとフック付きリムを備えるRovalのフラッグシップである。WADは32km/hで約36.35W、48km/hで約119.5Wと、29mmタイヤ装着の競合群では上位に位置する。

重量は約1,520gとSES 4.5 PROより225g重いが、価格はPROよりも安い。コストパフォーマンスを重視するレーサーにとっては有力な選択肢だが、空力性能と重量の両面でSES 4.5 PRO 27に対して明確に劣後する。

Vision Metron 60 SLは60mmのディープリムを前後対称で採用し、21mmの狭い内幅を持つ。ゼロヨー角でのドラッグは競合の中でも優秀であり、48km/hのヨー角曲線では15°で約110Wという全製品中最低値を記録する。

しかし、WADでは32km/hで約36.20W、48km/hで約119Wと、加重平均ではSES 4.5 PRO 27に約1.5W差をつけられる。ディープリムの高ヨー角性能がWADの重み付けでは十分に活かされないことを示す典型例である。

Hunt Sub50 Limitless UD Carbon Spokeは、UDカーボンスポーク採用による1,378gの軽量性が最大の特徴である。32km/hのWADでは約36.15Wと29mmタイヤ装着群の中ではトップクラスだが、48km/hでは約120Wとやや後退する。

なお、Hunt側の独自テストではSES 4.5 PROに対して30mmタイヤ条件で4.35Wの優位を主張しているが、これはSES 4.5 PROの設計外タイヤ幅(30mm)でのテストであり、本データとは条件が異なる点に注意が必要である。

Princeton Dual 5550/Tacticは、50~55mmの正弦波状リムプロファイルで境界層制御を試みるユニークな設計である。WADは32km/hで約36.65W、48km/hで約120.5Wと中位に位置し、革新的な形状が加重平均抗力の改善には必ずしも直結しないことを示唆している。

Bontrager Aeolus RSL 51は前後対称51mmの堅実な設計で、WADは32km/hで約36.75W、48km/hで約121W。Trek-Segafresoのプロトン用ホイールとしての実績は十分だが、空力データ上ではSES 4.5 PRO 27に対して32km/hで約1W、48km/hで約3Wの差がある。

Zipp 454 NSWは、ソートゥースプロファイルとHexFinディンプルによる境界層操作で高ヨー角性能に優れるが、WADでは32km/hで約37.50W、48km/hで約122.5Wと下位に沈む。

0°ヨー角でのベースラインドラッグの高さが加重平均を押し上げており、実走行条件でのトータル効率ではSES 4.5 PROに大きく劣後する。

Scope Artech 4は、3Dプリントのスカルマロイハブとカーボンスポークにより1,120gという圧倒的軽量を実現しているが、45mmの浅いリムハイトと空力最適化の不足により、WADは全製品中最低(最高ドラッグ)を記録している。

32km/hで約37.70W、48km/hで約123Wであり、SES 4.5 PRO 27との差は48km/hで5W以上に達する。純粋なヒルクライムホイールとしての価値は否定できないが、空力が問われるコースでの使用には適さない。

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データの整理と解釈ついて

本データはENVEが自社の測定条件・評価基準で作成したものであり、第三者による独立検証ではない点は認識しておく必要がある。特に以下の3点は分析上の重要な留意事項だ。

第一に、加重平均抗力の重み付け係数が非公開である。ヨー角ごとにどの程度の重みが配分されているかによってWADの順位は変動し得る。

どちらが空力が良い?なぜDragに重み付けをすべきなのか。
「エアロダイナミクス」という言葉は自転車業界で流行語のように使われている。新製品が登場すれば、必ずと言っていいほどDragデータを掲載し、前作モデルと劇的な格差をこれでもかと見せつける。しかし、これらの数値は「どのように計算」され「どれだけ現実的なのか」まで説明されていることはとても少ない。2021年2月19日、筆者は自身で作成したホイールの性能を確かめるために風洞実験を実施した。風洞施設は、SU...

低ヨー角に大きな重みを置けばSES 4.5 PROのような安定型ホイールに有利であり、高ヨー角の重みを増やせばVision Metron 60 SLのようなディープリムに有利になる。

第二に、テストタイヤの統一条件がENVE SESタイヤである点。各社ホイールにはそれぞれの推奨タイヤがあり、ENVEタイヤとの組み合わせが必ずしも各社ホイールの最適条件とは限らない。

ただし、タイヤを統一することで「リム単体の空力性能差」をより正確に抽出できるという利点もある。

第三に、SES 4.5 PROの27mmタイヤ構成と他社の29mmタイヤ構成を直接比較している点。タイヤ幅が2mm狭いことは、リム+タイヤの前面投影面積を減少させ、空力的に有利に作用する。

公正な比較のためには、すべてのホイールを同一タイヤ幅で測定したデータも必要だが、ENVEの立場は「各ホイールは設計意図に合ったタイヤ幅で評価されるべき」というものであり、それ自体はエンジニアリング的に合理的なアプローチである。

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まとめ:パレートフロンティアの征服

ENVEのAero Competitionデータが示す結論は明快だ。SES 4.5 PROは、27mmタイヤとの組み合わせにおいて、重量と加重平均抗力の二軸で定義されるパレートフロンティアの最適点を占有する。

1,295gという50mmクラスのスチールスポークホイールとしては例外的な軽量性を持ちながら、WADではSES 6.7やRoval Rapide CLX IIといったより深いリムの製品と同等以上の空力効率を実現している。

この成果の根底にあるのは、「ワイドリム+ワイドタイヤが常に最適」という業界の暗黙の前提に対するENVEの異論だ。レース条件の滑らかな路面で27~28mmタイヤを使用する限り、ナローリムの空力的優位性と軽量性はワイドリムのコンフォート性を上回る。

ポガチャルが2025年シーズンの25勝以上をこのホイールで記録したという実績は、この設計判断がプロトンの最高峰で検証されたことを意味する。

アマチュアレーサーにとっては、32km/hデータがより実践的な参考となる。

この速度域でもSES 4.5 PRO 27のWAD優位性は保たれており、重量差155g(対無印SES 4.5)、205g(対SES 6.7)のアドバンテージは、日本の山岳コースやアップダウンの多いレイアウトにおいて加速と登坂の両面で実感できる差となるだろう。

もちろん、SES 4.5 PROは万能ではない。

荒れた路面でのコンフォート性を重視するなら25mm内幅のSES 4.5無印が適切であり、純粋にフラットコースの高速巡航を求めるならSES 6.7のリムハイトが効く場面もある。

しかし、重量と空力と汎用性のバランスにおいて、SES 4.5 PROが現行ENVEラインナップ、そしてこのセグメントの競合製品群の中で最も完成度の高いパッケージであることを、本データは説得力をもって証明している。

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