CANYON AEROAD CFR インプレ完結編 世界最速と引き換えに失ったもの

4.5
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ざっくり言うと↓

  • 硬い。一枚板のようなバイク。
  • とにかく無駄な作りが一切ない。細部もグロメットが配置。
  • 世界最速と引き換えに、機材交換を楽しむ余地がほとんどない。

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世界最速のディスクロードバイクAEROAD CFRが悪いわけがない。CANYONの優れたバイク製造技術と、SWISS SIDEのエアロダイナミクス技術が融合したバイクだ。そして、世界最高峰のサイクリストのマチュー・ファンデルプールが操るスーパーバイクを誰が悪いと言えようか。

と、判断するのは少々軽率だ。

バイクとライダーの間には少なからず相性問題がある。そして、実際に使ってみると「最速バイク」や「最軽量バイク」であったとしても、自分に合うとは限らない。どのような機材であれ、バランスが大事だ。バイクが軽すぎてしまうと、逆に進まないと感じてしまう場合もある。

空力性能が高くても、垂直方向の剛性が高すぎてしまうと乗り心地は悪化してしまう。これまで何度もこのような経験をしてきた。

「マチュー・ファンデルプールが乗るから良いバイク」というのはプロモーションとしては成功している。そして、商材としては正しい方向に向かっている。ただ、プロは支給された機材で勝つのが仕事だ。それがどんなに自分に合わないバイクであっても、勝つのが仕事だ。強い選手はどんなバイクだって勝つだろう。

スーパーバイクというものは放っておけばどこかのメディアが良いことを書く。そして、あと付けするかのように絶賛する。

物事を見るときは別の角度が必要だ。スペック上でトップを走るスーパーバイクを「自分自身に」落とし込んだ場合を深く考えねばならない。本当に適したバイクであるかどうかを分けて考える必要がある。機材選びで重要なのは、スペックや数値ではわからない部分だ。使い方、用途、競技別で答えは大きく変わる。

私のようなアマチュアサイクリストが使ったとしても、AEROAD CFRの性能を十分に引き出せるのか。その、本質的な答えを知りたかった。

「どう考えても悪いワケがないバイク」と誰しもが思っている厄介なバイクを乗り込み、自分自身で答えを探り続けた。特殊な構造面、乗り味、実際のレースでどのような用途で使えるのか。多角的にCANYON AEROAD CFRを乗り込んだ結論をまとめた。

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「美しい」の一言

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開発や研究、はたまた文章やデザインを煮詰めていく際のアプローチは大きく分けて2つある。「1から100に発散する」方法と「100を1に収束する」方法だ。どちらであっても、結果として「何かしらのモノ」が出来上がる。しかし、製品の質や細部に違いが出てくる。

例えば文章を書く場合もおなじだ。1つの話題を膨らませて文章をつづっていく「1から100に発散する」方法がある。対して、膨大な情報集めをまず行い、少しづつ無駄を省き削ぎ落として文章をつづっていく「100を1に収束する」方法もある。

作文、随筆、小説は前者の「1から100に発散する」傾向になる場合が多い。対して、論文、レポート、報道などは後者の「100を1に収束する」傾向になる場合が多い。

ここまでの話と、「CANYON AEROAD CFR」がどのように関係しているのか。実物を見れば見るほど、乗れば乗るほど、「後者」だった。ありとあらゆる構造、奇抜なアイデアを無数に模索し、無駄なものを1つ1つ減らしていった。その結果がAEROAD CFRだった。そう思わずにはいられない。

まるで、大きな岩から1つの仏像を削りだしたかのようだった。

非常に申し訳ないが、AEROAD CFRの作り込みと、こだわりようはTARAMAC SL7やEmonda SLRとは一線を画する。BBが圧入式という悪しき構造を除き、非の打ち所がないバイクだった。重箱の隅をつつくような話だが、カタログに記載されていない「小さな作り込み部分」がよく考えられていた。

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  • スルーアクスルシャフトの突き出し量を考慮しフォークの厚みを変えている。
  • スルーアクスルの先端は純正のグロメットで隠されている。
  • ブレーキキャリパーの収納位置は前面から隠されている。
  • ブレーキキャリパーがフォークサイドとツライチになるように設計されている。
  • クイルステム方式によってハンドルのコラムが突出しない。

細かい話なのだが、AEROADはとにかく「出っ張り」がない。とにかく「ツライチ」だ。スルーアクスル周辺の作り込みはディスクロード化に伴って個人的に注目している部分だ。というのも、クイックリリース式から大きく変更された部分であるため、各社がどのように変化に対応したのか気になって仕方がない。

スルーアクスル周辺の作り込みは、アスクルシャフト周辺の構造を見ると違いがわかる。

自分が所有しているバイクをこき下ろすのもアレな話だが、TREKのEmondaのスルーアクスル周りはあまり見た目がよろしくない。Emondaの唯一の汚点はスルーアクスル周りの作り込みが甘いということだ。シャフトの出っ張り対策はおろか、フレームやフォークとの一体感のカケラすらない。おまけにシャフト頭がテーパーになっておらずフレーム側に負荷がかかってしまう。

TARMAC SL7のスルーアクスルまわりは十分な作り込みで満点に近い。シャフトの頭はテーパーになっておりフレームやフォークとツライチになる。HEXレンチで締め込むシャフトも軽量かつ洗練されている。先端はグロメットで隠れてはいないが、フレームとの一体感は抜群だ。

では、AEROAD CFRはどうだろうか。

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AEROAD CFRはさらに進んでおり、スルーアクスルシャフトの先端側の出っ張り部分や穴という穴を覆い隠すための専用のグロメット(ゴムキャップ)があらゆるところに付属している。シャフトの頭と先端部分ともに考え抜かれているため、シャフト自体の存在がバイクから消しされているため一体感が増している。

ロードバイクに限った話ではないが、良いと思える製品は細部まで手を抜かず一体感がある。

画竜点睛(がりょう-てんせい)の言葉のとおりだ。何かを完成するとき、最後に大事なところをひとつ加えることによって、仕上がりを優れたものにできる。もちろん、スルーアクスルがことわざの「龍の目玉」に相当するわけではなく、バイク全体の仕上がりをスルーアクスルが決めているわけではない。

しかし、AEROAD CFRはスルーアクスルの出っ張りにまでこだわり、ツライチかつありとあらゆる穴を塞いだ。このような、「どうでも良い」と思ってしまうような細部であるものの、CANYONは手を抜かずに作り込んだ。製品をどれだけ作り込み、考え抜いた結果、機能として搭載できるかは開発者の熱意に左右される。

「1%の積み重ね」ならぬ0.1%程度の違いしか生み出さないかもしれないが、世界最速を追求するためには出っ張りすら無駄(いや、ほんとうに無駄)だったのだろう。

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AEROAD CFRはある種の工業製品だ。余分な装飾を排して無駄のない形態・構造を追求した結果、自然にあらわれる美しさ。いわゆる、機能美を備えている。考えられるありとあらゆる機能を1つ1つ精査し、余計な部分を1つ1つ排除していった先に、AEROAD CFRの美しさがあった。

芸術などこれっぽっちも理解していない一人のサイクリストが「美しい」と感じたのだから、製品を魅力的にみせる企業努力は確実にサイクリストへ届いている。CANYONが意図せず生み出した機能美は感性にも影響を与えた。

ここまでは、実際に乗る前の話だ。目の前に静止しているAEROAD CFRを見て感じたことを表現しているにすぎない。問題は走らせてどうかだ。バイクは走らせて事生きる。速いか、遅いか、重いか、軽いか、自分に合うか、合わないかという相性問題を探る必要がある。人付き合いでも同じことだ。いくら見た目が美しくとも、相性が合わなければ長続きしない。

機能美が優れていても、同じことだ。

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剛性

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CANYON AEROAD CFRを語るとき、ひじょうに困ったことがあった。エアロダイナミクスだとか重量だとかハンドルだとか、そんな事よりもこのバイクが呆れるほど硬かった。この事実をどのように表現し、自分自身の中へ落とし込むべきか非常に悩んだ。とにかく硬い。かたすぎる。

バイクの剛性は、全てのパーツが組み合わさった状態で「バイクシステム剛性」を考える必要がある。バイクシステム剛性はタイヤと空気圧によって支配されている。柔軟性は剛性の逆数だ。これらの事実をふまえてみても、とにかく硬いバイクだとすぐにわかるほどだった。

バイクを評価する際は、いま使用しているバイクとの相対比較として判断している。ただ、AEROAD CFRの絶対的な剛性の話をすると、TOUR紙の剛性試験においてほぼ最上位に位置するほど剛性値が高いことがわかっている。「マチュー・ファンデルプールが全身全霊で踏み込んだとしても、1%もパワーを逃さず全てを推進力に変えられるバイクだ!」と説明されても、一切疑わない。

剛性という存在は非常に厄介だ。硬ければ硬いほど伝達効率が増して進むという単純な要素ではない。元サーベロのエンジニアデイモン・リナード氏がポッドキャストでも散々述べていた通り、BB付近がたわみ、変形が熱エネルギーに変換されたとしても、それらの損失はバイクの推進力にほとんど影響しない。

ある程度の剛性が備わっていれば、マチュー・ファンデルプールであろうと”人間が生み出した程度のパワー”であれば、ほとんどが伝達される。フリクションロスやヒステリシスロスはたまたインピーダンスロスや空気抵抗のほうが、生み出したパワーを消し去っている。

【なぜ?】タイヤ空気圧を上げ過ぎると、転がり抵抗が増す【実験結果あり】
はじめに 結論は「空気圧を上げすぎると抵抗が増してしまう」という事実だ。それ以上、それ以下でもない。 今回のタイヤ空気圧に関する記事が、どのように迎え入れられるかは正直わからない。何年か前に当ブログで紹介した「転がり抵抗を比較 23Cと25Cのタイヤは違うのか?」にも登場したローリングレジスタンスという考え方に、プラスアルファして「ローリングインピーダンス」という考え方が登場する。 少々難解ではあ...

では、フレーム剛性はどのような役割を担っているのだろうか。足あたりやライドフィール、継続的に脚へのダメージを与え続けるかといった、脚や身体への影響がある。

たとえば、いくら硬くても200km走ると後半に疲れてしまうようなフレームはライダーとの相性が悪い。一方で、短距離を短時間で高速域で走る場合を考えると、パワーのあるライダーにとっては剛性感がちょうどよい場合がある。このように性別、ライダーのパワー、脚質といったさまざまな要素によって、「フレームの剛性」という曖昧な存在はいかようにも変化する。

それらを十分にふまえたうえで、CANYON AEROAD CFRというバイクの剛性感についてさらに深掘りした。

硬いことは良いことか

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これまで乗ったバイクの中で、おそらく最も硬い。しかし、剛性は高ければ高いほど本当に良いのだろうか。長年さまざまなバイクと出会った結果、その答えを徐々に理解しつつある。

所有しているトラックバイクやロードバイクを含め、AEROAD CFRは特に硬質だった。純粋にフレームの違いを知るために、普段使用しているホイールと空気圧を用いてテストした。相対的に硬いフレームであるのは明らかだった。TOUR紙が実施した剛性試験で、TARMAC SL7やSL6をはるかにしのぐ剛性であったことも納得だ。

再三述べているが、この「硬さ」という表現は取りあつかいが難しい。SILCA研究所の解析で明らかになっているとおり、全てを総合的に考慮した「バイクシステム剛性」はタイヤと空気圧が支配的である。いくらフレームが硬くても、最も柔軟性があるタイヤと空気圧次第でバイクシステム剛性は簡単に変化してしまう。

それらをふまえ、1歩引き下がって考えてみても、AEROAD CFRは剛性の塊だ。世界最高峰のマチューのような選手の大容量のパワーを容易に受け止められることも理解できる。ただ、私のような一般的なライダーにとって、柔軟性がほぼ感じられないフレームというのは、プラスにもマイナスにもなりうる。

この狂ったような硬さは、バイクの反応性や加速感につながるのか。それとも、ライダー自身の負担になるのか。いま、持ち合わせている答えとしては、ライダーの扱い方次第だと感じた。

AEROAD CFRは純粋的なレースバイクだ。ただ1つの「速さ」を目的として設計されていることが嫌でも感じ取れた。より小さなパワーで、より速く巡航する。より大きなパワーで、一気に加速する。だからこそ厄介なのが、自分が思っている以上に高いパワーをかけてしまうことがしばしばあった。

「硬さの中にもほんのりとした心地よいしなり」といった、あらゆるライダーに都合のいい剛性の解釈はAEROAD CFRには皆無だ。「クリテリウムにも使えるが、ヒルクライムにも(以下略)」のような、意味不明な解釈も必要ない。このような、しばしば雑誌やメディアで登場するどちらにでも都合よく解釈できる表現など一切通用しない。

受け取り方によって、解釈の違いが起こる表現はAEROAD CFRにとって失礼だ。このバイクは、明確に最速を目指すためのありとあらゆる可能性が突き詰められている。それゆえ、走りの速さとかかりの良さから「調子が良い」と錯覚をしてしまったのだろう。しかし、かかりと反応の良さは扱い方を間違えてしまえば脚を削る可能性もある。

「かかる」の勘違い

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AEROAD CFRはとにかくよく走る。よく掛かる。よく登る。あまりにもよく掛かる(と感じるので)思わずダッシュをしたくなる。30秒のダッシュよりも、3~5分を高出力で踏み続けるような走り方と相性が良いと感じた。ルーラー系の選手は特に相性が良いのかもしれない。それゆえ、自分自身にかかる負担も大きいと感じてしまった。

フレームというのは不思議な存在で、パワーの出し入れに対してどのように振る舞うかは乗らねばわからない。更に厄介なのは、ホイールやタイヤとの相性でバイクシステム全体の性格も変わってしまう。AEROAD CFRにはROVAL CLX50を取り付けて走ったが、Emonda、VENGE、SL7とは全く異なる走り方をした。

各メディアの数値データーを知っているがゆえ、非合理的な判断をしてしまう認知バイアスに陥っていると当初は疑っていた。しかし、かかりがいい。回したら即座にバイクが前に進む感覚が得られる。だからこそ、自分自身が調子が良いと勘違いしてしまう。「今日は調子がよくかかりが良い」と錯覚して無駄なパワーをばらまきすぎる傾向に陥ってしまった。

正直に言うと、AEROAD CFRに見合う扱い方を短時間で見つけるのは難しいと感じた。私のような軽量ライダーよりも、さらにパワーのあるライダーのほうが性能を引き出せると思う。そして、レースやタイムアタックをする必要がなければ、AEROAD CFRは宝の持ち腐れになるとも感じた。

快適に走りたいのであれば、SPECIALIZEDのROUBAIXやTREKのドマーネといったバイクを選択するほうがよほど合理的だとおもう。見栄やかっこよさ憧れでAEROAD CFRを選択するのもよいと思う。ただ、AEROAD CFRにとってみれば純粋に速さやレースで勝つために使ってほしいと思っているはずだ。

AEROAD CFRに乗るライダーはある程度の能力を備えたライダーであってほしい。自動車でもF1は空力性能も高くエンジンの出力も高い。しかし、サーキットでドライビング・テクニックをそなえたライダーが走らせてこそ、マシンの性能を引き出せることと同じだ。

登り

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登るか登らないかと言われれば、重量相応の登り方をする。可もなく不可もなく普通に登る。ヒルクライムバイクかと言われれば、そうではない。登りで最も優れているバイクはTREKのEmonda SLRだと思う。独特の動きと反応性からくる優れた登坂性能は、Emondaに勝るバイクは今の所出会っていない。

とはいえ、パワーを入力したらAEROAD CFRも当然進みはする。ただし、硬質な感じをライダーに対して明確に伝えながら淡々と進む無機質な特徴がある。純粋な登り1本の用途ではなく、アップダウンを繰り返すロードレース向けには十分な登坂性能だった。とはいえ、AEROAD CFRの登りはそこまで尖った性能を感じなかった。

富士ヒルクライムのように高速域かつドラフティングがタイムに影響するレースや高速域のヒルクライムであればAEROAD CFRは良い選択だと思う。ただし、一枚板に乗っているような独特の動きをし、バイクの振りが少々重く感じるかもしれない。

エアロロードに共通している全般的な話としては、そもそもヒルクライム向けに作られているわけではないので、登り一発勝負のバイクとして使うことを検討しているのであれば、過度な期待は避けるべきだと思う。

振動吸収性

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意外に思われるかもしれないが、CANYON CFRを購入する理由を上げろと言われたら「振動吸収性能」だ。AEROAD CFRは空力性能ばかり注目されるが、振動吸収性能が優れている事に驚いた。この性能が何によってもたらされているのか。実は私もよくわかっていない。

シートポストの柔軟性なのか、それともハンドルのしなやかさがもたらした結果なのか。しかし、1つの要素が全てを決定するわけではない。複数の要素が複合的にからみあい、1つの「振動吸収性が良い」という結論を導き出しているはずだ。すなわち、どれが1つ欠けてもAEROAD CFRの異質な振動吸収性は成立しない。

AEROAD CFRはライダーに対して路面状況を良い意味でごまかすほど、無音に近く気味が悪いほどの滑らかさがある。

エアロロードという種類のバイクは、形状の都合で縦方向に突き上げを感じてしまう。AEROAD CFRは他社と同じようなエアロロードでありながら、それらの傾向がほとんどみられない。これら、ライダーを上下方向に揺さぶりにくいバイクに乗ると、妙な感覚におちいる。

AEROAD CFRに乗ると路面との距離が近づき、バイクの重心位置やポジションが低く感じるた。別の表現をすると、「空気圧が下がっているのでは?」と錯覚した。また別の表現をすると、路面の変化で縦方向の振動が発生していても、BBの位置が常に一定の位置に居続けるように感じた。

AEROAD CFRは数値的にも縦方向に硬く、柔軟性に乏しいバイクのはずだ。しかし、路面状況が激しく変わっても、サスペンションがあるかのようになめらかな動きをする。まるで、スキーのモーグル選手のように頭の位置が変わらないかのように動く。

ほんとうに、空気圧が下がっているのではないかとずっと疑っていたため、帰宅後に空気圧を計測した。しかし寸分狂わず、ダイヤルゲージはいつもどおりの空気圧を示していた。

この振動吸収性の根幹が何かを考えてみると、ダンパー方式を採用したシートポストと縦方向に柔らかいハンドルバーが影響しているのではないか、というのが現段階での結論だ。サドルは自分が普段使っているS-WORKS POWER ARCを流用しているため、サドルレールの違いによる振動吸収性の違いは考えられにくかった。

AEROAD CFRの振動吸収性がエアロロードの中でも特に高い。VENGEの縦にゆさぶられるような乗り味とは一線を画する。CANYONに言わせてみれば、ハンドルバーやダンパー付きシートポストのみならずバイクのトータル設計で振動吸収しているのだ、と言われればそれまでの話なのだが。

どのパーツが振動吸収性を生み出されているか、乗り終わった後も特定はできなかった。

エアロロードというジャンルが登場して以来、このカテゴリのバイクの宿命は「乗り心地の悪さ」だった。AEROAD CFRの登場ではっきりと時代が分かれたと言ってもいい。弛まぬ技術革新は、速さと合わせて、「エアロロードは乗り心地が悪い」という概念すらも変えた。

AEROAD CFRか、AEROAD CFR以外かだ。

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ハンドルバー CP0018

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可変ハンドルはこれまでにない仕組みを採用している。

賛否両論あるが、私はこの純正ハンドルに対して好印象を持った。というのも、ポジション作りやバイクのハンドリング性能を試すのにもってこいだった。さまざまなハンドル幅を試してわかったことがある。ハンドル幅の違いは、バイクの挙動に大きな影響を与えているということだった。

登りメインであれば幅広のハンドルにするとリズムが取りやすく、呼吸もしやすいことがわかった。集団内や、スプリントなどはハンドル幅が狭いほうがバイクの振りがしやすかった。

可変式と言うと、トリッキーなイメージを持つかもしれない。私自身がそうだった。気にしていたのは、ハンドルの緩みだった。トルクスネジはハンドル奥深くまでねじ込まれており、ライド中に緩んだりガタついたりすることは1度もなかった。

このハンドルの良いところは、握る部分に応じてハンドルの太さも変化している。エンド側は太く、ドロップの奥は細く作られているフレア構造を採用している。手の小さな私には嬉しい構造だった。対して、マチューファンデルプールのような大柄の選手であっても、バーテープの巻く量で十分調整が可能だと思う。

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海外のレビューを見ると「縦方向にたわむ」という内容を多く見かけた。しかし、ライド中には気にならなかった。上から下に押し付けると、確かにハンドルやステムがたわむのがわかる。しかし、スプリント中の捻る方向に対してはたわみにくく設計しているという。私程度がスプリントしたところで、びくともしない剛性感だ。

バートップはS-WORKS AERO FLY2のように翼のような形状ではなく、BONTRAGERのアイオロスRSLの形状に近い。使えるものなら、今使用しているバイクにCP0018を流用したいほどだ。CP0018は昨今世間を騒がせるトラブルがあったが、このハンドルを使うためにAEROAD CFRを使っても良いと思えるほどの出来である。

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ジオメトリー

ジオメトリー / Photo: CANYON

ジオメトリー / Photo: CANYON

ジオメトリに関しては昨今どのメーカーであってもおかしな設計はしなくなった。大手を選んでおけけば失敗はしない。それでも、スタックとリーチはサイズによって各社特色がある。AEROAD CFRのジオメトリの特徴としてはスタックがTARMACやVENGEよりも高い。EMONDAよりも低い。中庸なそつのないジオメトリだ。

TARMACやVENGEは数あるバイクの中でもスタックが低い。ライダーの頭の位置すらもエアロダイナミクスの一部として考慮しており、できるだけレーシーなポジションが取れるように調整しているという。

よりレーシーなポジションを作るのもよし、ややコンフォート寄りのポジションを作るのもよし。純粋なレースバイクのはずであるが、前作のモデルよりもややおとなしい万人受けするジオメトリを採用している。実際に乗ってもポジションを出しやすいと思う。参考までに筆者(169.5mm)でXSサイズがちょうどよかった。

コラムの調整は一番下に設定した。サドルとの落差は十分で、ライディング時も違和感がない。最近のバイクであれば小さなXSサイズであろうと、ジオメトリは煮詰められていることが実感できる。

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レース機材として

Canyon Aeroad CFR Alpecin Fenix / Photo: CANYON

Canyon Aeroad CFR Alpecin Fenix / Photo: CANYON

AEROAD CFRをレースに投入するとしたら、どのようなシチュエーションが適しているのだろうか。ライダーがマチュー・ファンデルプールほど強ければ、登りも、平坦も、タイムトライアルもこの1台で事足りるだろう。むしろ、極論を言ってしまえば強い選手はどんなバイクを使っても強い。

弘法筆を選ばず。それでおしまいだ。

しかし、1台しかバイクを所有できないライダーにとって、自分にベストなバイクを1つ探し当てることは楽しくもあり、悩ましい問題でもある。世の中には無数のバイクが存在し、他社製品よりも良く見せようと自社製品のプロモーションが渦巻いている。自分に適したバイクを見つけるためには「バイクガチャ」を何度も繰り返す必要がある。

AEROAD CFRは数値上最高の性能と、相反する価格を備えたバイクと言っても過言ではない。空力性能、重量面が全て高次元で融合している。実際に6.8kgの下限重量までは達していないものの、空力性能を加味すると、場合によっては6.8kgのバイクよりも峠のタイムが速い結果が出ている。

私の個人的な主観になってしまうが、1台しかバイクを所有できないライダーにとってCANYON AEROADはとても魅力的な機材だ。登らせても速く、平坦でも当然世界最速、そしてJBCFのようなTTバイクを必要としないショートタイムトライアルでも性能を十分発揮する。そのうえで、最も投入してみたいと思ったレースは以下だ。

  • ツール・ド・おきなわ210km
  • 100km以上のエンデューロ
  • 広島森林公園
  • 群馬CSC
  • JBCFレース通年

JBCFレース通年というのは、ロード、クリテリウム、ヒルクライムからショートタイムトライアルまでバイクを変えずにレース参戦する事を示している。年に1~2回しか開催しないタイムトライアルのために、わざわざTTバイクを用意しなくてもいい。それでいて、ほとんどのTTバイクよりも速い。そこそこの成績を出したい人に打って付けだ。

また、遠方で1日目TT、2日目クリテリウムのよう場合も運搬が楽であるため重宝するだろう。

しかし、汎用的に使える一方で用途を先鋭化した場合はどうか。まず、純粋なヒルクライムレースを外したのは重量ではなく、バイク自体の剛性の高さが気になったからだ。軽量ホイールを使ったとしても、バイク自体の剛性感の高さや、エアロロードバイク特有の振りの鈍さが気になった。

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純粋にクリテリウムならば、軽さや掛けたときの反応の良さはTARMAC SL7が優れていると感じた。

AEROAD CFRは淡々と一定の負荷をかけながら進むようなレースに適していると感じた。それでいて、空力性能の高さからエネルギー消費をできるだけ抑えつつ、最後の局面までライダーを運んでくれそうな期待を持てる。そして「最も空力性能が高い」という精神衛生上のメリットも多分にある。

ただ、かかりが良いので「脚がある」と勘違いしてしまう場合がある。レースにいきなり投入するのは避けたほうがいいと感じた。最低でも3ヶ月は機材仕様を統一して乗り込み、AEROAD特有の癖や脚あたりの特徴を覚えて飼いならしておく必要があると思う。

バイク自体の性能が高いがゆえ、本当にここまでの性能が必要なのかという疑問も残る。自動車で言うならば、プリウスやカローラといった大衆車が乗りやすい。しかし、NISSAN GT-R NISMO 4BA-R35型のように、自分の能力を明らかに超えている最大出力が600PSの馬力を備えた車が本当に必要なのか。

と、問われればイエスと言えない。

馬力はライダーに依存する(というツッコミはお断りする)が、AEROADで走るとしたら私よりもパワーがあってレースで上位に入るようなライダーが使ったほうが良いと率直に思う。

ただし、「マチュー・ファンデルプールにあこがれて」や「世界最速のバイクに乗りたい」という思いがあれば否定はしない。それはサイクリストの自由だし、ペダルを回せばバイクは進む。ただし、レース機材として真正面からAEROAD CFRを考えると2時間以内のレースなら良いと思うが、それ以上のレース時間を考えると自分が扱えるイメージがわかない。

一方で、さらに乗り込んでみるとバイクの扱い方や向き合い方が改善される場合もある。乗ってすぐに馴染むバイクが良いと感じる事もあれば、乗り込み挙動や癖を理解することで走るバイクにも変化する。VENGEをローンチの際に乗ったとき、正直鈍いと思った。しかし、乗り込めば乗り込むほど、タイヤやバイクの挙動が身体に叩き込まれることによって、バイクが走るようになった。

明らかに高いポテンシャルを備えているAEROADは、さらに乗り込まねば本当の性能を引き出すことができないのかもしれない。そういう意味では、より密接に関わりライダーとの関係を密接に高めることで、さらなる速さを手に入れられることを示唆している。

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パワーメーターとの相性

オフィシャルからアナウンスされている通り、4iiiiはチェーンステーに干渉して取り付けられてなかった。スペーサーを入れたとしてもクリアランス的に厳しい。また、パイオニアペダリングモニターも干渉するため使用できない。Stagesは試していないが、ギリギリ行けるか行けないか怪しい。

これらの事情から、シマノパワーメーターが標準搭載されている。精度や温度耐性に難があるとされているため、同社の一世代目のパワーメーターということもありあまり普及はしていない。そのため、QUARQやSRM、P2Mといったパワーメーターに変更することが良いかもしれない。

パワーメーターのブランドには好き嫌いがあるとおもうが、AEROAD CFRに取り付けるクランクはスパイダーベースであれば大抵のものが使用できると思う。

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まとめ:性能を引き出す楽しみを模索する世界最速のバイク

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最後に、AEROAD CFRの弱点やデメリットにも触れておかねばならない。まず、構成するパーツのほとんどが専用品(しかもハイエンド)で構成されている。他のバイクメーカーとは異なり、パーツをあれこれ変えて楽しむ余地はない。「世界最速のバイク」として存在するためには風洞実験で実証されたパーツを使用する必要がある。だから、納得しなければならない。

AEROAD CFRで変更が必要だと思ったパーツと言えば、ホイール(タイヤを含む)、サドル程度だ。それ以外のパーツは最高峰であるため、変更してもそれほど大きな違いを産まないと感じた。細かくチューニングする楽しみは減るが、素人が遠回りしないようにCANYONが配慮した「速い機材」で構成されている。

AEROAD CFRは、SWISS SIDEのエアロの専門家や多くの最速プロライダーと共同で開発され、確かに速くなっている。見るからに空気が流れるようなルックスと、ありとあらゆるパーツの統合性の高さに感銘を受けた。しかし、当初はこのバイクが正しい方向に向かっているのか懐疑的だった。

同時期にリリースされたスペシャライズドターマックSL7は、「エアロとクライミングバイクとの間」を狙ったバイクだった。当初、AEROAD CFRもその分野を突いたバイクなのかと正直うんざりしていた。

いまAEROAD CFRを振り返ってみると、CANYONが掲げた開発目標は私達が想像するよりももっと別の領域を目指していたことが明らかだ。エアロダイナミクスの改善、軽量化というわかりやすい改善だけではなく、インテグレーションといったケーブル、シフトワイヤー、ブレーキホースをすべてハンドルバーとフレームの内側にうまく配置し整備面も追求していた。

ジオメトリも乗りやすく改良された。一般的なライダーでも乗りこなせるような設計で、長時間サドルに乗っていても快適に過ごせるようになった。より幅広いライダーにフィットするように細部の設計を調整した功績は大きい。そして最後に、AEROAD CFRはバイクの見た目がいい。

それは小さなサイズであればなおさらだ。

AEROAD CFRのCFRは”CANYON Factory Racing”の略称だ。ディスクロードやエアロロードは AEROAD CFRの登場を境に「次世代レベル」に踏み込もうとしている。AEROAD CFRは完全なシステム統合に加えて、最先端の革新技術を盛り込みディスクロードバイクの頂点へ上り詰めた。

史上最速のパフォーマンスを備えたAEROAD CFRは、文字通りこれからのディスクロードのベンチマークになっていくのだろう。

世界最速のディスクロード CANYON AEROAD CFR 実験で明らかに
GSRウィンドトンネルを使った実験においてCANYON AEROAD CFRが世界最速のディスクロードバイクに躍り出た。これまで最速の座を譲らなかったデイモン・リナード氏の作品Cannondale SYSTEMSIXの記録をついに塗り替えた。 GSRウィンドトンネルを使用して行われたDISCロードの頂上決戦は、エアロダイナミクスと軽さのそれぞれで優れた性能を叩き出した「S-WORKS TARMAC...
CANYON AEROAD CFR インプレッション、マチューが操る世界最速のディスクロードバイク
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CFR - Canyon Factory Racing
ネクストレベルのエンジニアリングとデザイン、そしてトップアスリートたちとのコラボレーション。世界最速のバイク。
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