本記事は、以下の記事の続きです。
DTSWISS ARC 1100ををざっくりいうと↓
- ARC 50mmはRAPIDE CLXよりも空力良い(TOUR風洞実験)
- 62mm重すぎて使用用途限定的
- 一番の目玉はスポーク。DTSWISSが本気出した。
- 50mm,60mmクラスで最も空力性能が良い(SWISS SIDE)
- SWISS SIDE作成リム、180EXPハブ、ARC専用スポーク、SINCセラミックベアリングと全盛
- 太刀打ちできるホイールが無い。
唯一無二のリム、スポーク、ハブ
ホイールメーカーといえど、自社で製造できる部品は限られている。特にハブは外注するしかない。以下はホイールを扱うメーカーにおいて、メーカー:リム、スポーク、ハブの順番でまとめたホイール構成だ。
- ROVAL:ROVAL、DTSWISS、DTSWISS
- BONTRAGER:BONTRAGERL、DTSWISS、DTSWISS
- CADEX:CADEX、CADEX、CADEX
- Lightweight:Lightweight、Lightweight、DTSWISS
- Campagnolo:Campagnolo、SAPIM、Campagnolo
- SHIMANO:SHIMANO、SHIMANO、SHIMANO
- DTSWISS:DTSWISS、DTSWISS、DTSWISS
この中ですべて自社でまかなえているのはシマノ、CADEX、DTSWISSだ。他にもMAVICやフルクラム、ZIPPといったブランドがあるがスポークやハブはOEMに頼っている。厳密に言えば、DTSWISSやシマノもリムは台湾かどこかのOEMかもしれない。
しかし、DTSWISSがARCで成し遂げた重大なことは「スポーク」と「ハブ」を専用設計したことにある。
ARCに搭載するためだけに開発された新型スポークはほとんど話題に上がることはなかった。技術革新があまりみられないスポークという部品において、新製品を何年もリリースしていないDTSWISSが、「ドライブ側」と「ノンドライブ側」それぞれに専用品のスポークを開発したことは大きな出来事だった。
新たに開発された「DT aerolite II」と「DT aero comp II」は部品売りはおろか、他社ホイールに一切採用されていない。DTSWISSが自社のホイール専用として囲ったのは、性能差が拮抗しコモディティ化するホイール市場で少しでもアドバンテージを稼ぐためであろう。
DT aerolite IIおよびDT aero comp IIを用いることで回転中のDragは最大1.1ワット低減されることは先般の記事内で触れたとおりだ。エアロダイナミクスを限界まで高めるためにニップル部分は外部に露出しないインターナルニップルを採用した。これまでの定説としては、エクスターナルニップルの空気抵抗はそれほど大きくはないと言われてきた。
このような主張をしていたのは、ENVEやMAVICなのだが実際にSWISS SIDEが計測したところ、エクスターナルニップルはわずかながらも空気抵抗が生じることが明らかになっている。メンテナンス性には乏しいが、SWISS SIDEは最速のために1%のマージナルゲインを見過ごさなかった。
ホイールとしての完成度は非常に高い。それでも、新型ARC 1100の一番の進化のポイントはスポークだ(まじでバラ売りしてくれ・・・)。実物のホイールにおいても新型スポークに関して細かく見ていくことにした。
まず、DT aerolite IIとDT aero comp IIに触れてみると、恐ろしいほど薄いスポークだとすぐにわかる。新型スポークの開発において、使用する材料自体が見直された。展伸鍛錬工程の間により、材料をより圧縮できるため引張強度も大幅に高められた。それぞれのスポークの特徴は以下の通り。
- DT AEROLITE II:DT aerolite比較で幅が35 %ワイド化。23 %薄い。
- DT AERO COMP II:横剛性が向上。
極端な話、新型スポークを使用するためだけにARC 1100ホイールを使用したいと思えるほどだ。SAPIM CX-RAYが長らくスポーク界の頂点に君臨してきたが、DT AEROLITE IIの設計はDTSWISSの叡智と、現代の金属加工技術が注ぎ込まれた最高のスポークであるとすら思えてくる。
手元にあるCX-RAYとDTSWISSの新型スポークを触ると、「CX-RAYはなんて分厚いのだ・・・」と思うほどだ。実際にショップでARC1100を見たときは、スポークを触ってほしい。というよりも、スポークの薄さを体感するためだけにARC1100を見に行ってほしい。
とはいえスポークという部品は、リムとハブを結びつけるための役目を担っている。そのうえでDTSWISSのARCの設計が素晴らしいのは、1つのホイールとして完成したときに現れるスポークとスポークの接触交差にある。
接触交差
スポークが交差する部分の組み方は、接触する方法と非接触の方法の2通りがある。各社独自の設計思想に基づいて接触交差(いわゆる”あやとり”)する、しないが分かれていた。Lightweight、BONTRAGER、ENVE(CHRIS KING)、ROVAL(ROAD)、ZIPP、以前のMAVICといったメーカーは接触交差でホイールを組んでいる。
対して、ROVALのMTBやグラベル(TERRA)、現行のMAVICといったブランドは非接触でホイールを組んでいる。ホイール開発の際に接触と非接触両方試してみたが、実際のところ乗り味は全く変わらない。
ただし、組み上げる際にスポークテンションが高まっていく過程や、リム側スポーホールとハブ側スポークホール間において、スポークの折れが発生するかしないかの違いが生じる。また、非接触はスポークがやや緩みやすいが、接触交差はスポークが緩みにくいというメリットがある。
これまでDTSWISSのホイールに共通していたこととしては、スポークは必ず接触交差を採用していた。どのDTSWISSホイールにも共通していたが、リムとハブのスポークホールの位置の設計がバラバラだった(専用のハブではないため当然であるが)。
そのため、ハブ側のスポークホールとリムのスポークホール区間で、スポークが一直線になっておらず、スポークとスポークが強く接触しあっていた。ホイールを上から見るとスポークが湾曲した状態で張られていることがDTSWISSのホイールの特徴だった。
しかし、何の抵抗もなくまっすぐ張られることを理想とするスポークにとってみれば、無駄な抵抗がかかっていることにほかならない。
所変わって、LightweightやMAVICのULTIMATEのカーボンスポークも同じく接触交差かつ結線が施されているものの、スポークはハブとリムの間できれいな直線を描いている。肝心のARC 1100はどうだろうか。ARCシリーズは、スポークの接触交差も計算されていた。
交差部分はわずかに「触れるかふれないか」という微妙な触れ合いにとどめた絶妙な設計が施されていた。この「触れ合う程度」の接触交差を生み出す設計は、1つの芸術作品とすら感じた。当然ながらCADで図面を引けば、リムハイトとスポークホールアングル、オフセット量と、ハブ側スポークホールの設計をうまく考えればこの「触れ合う程度」が実現できる。
DTSWISSの接触交差が狂気じみているのは、ハブ側はDT180EXPを基準にしつつもリム側のオフセット量とスポークホールアングルを変更し、新型のスポークの厚みまでも計算に入れ接触交差を生み出したという点にある。
これまでのDTSWISSホイールには見られなかった作り込みようだ。そして、接触交差している部分のスポークは2重になっているがつまんでもたわむ隙間すらない。かと言ってスポークをニギニギしても擦れ合うわけでもない。このあたりは、ホイールを制作した人ならわかると思うが、狂気じみていると感じた。
接触に関して余談&笑い話なのだが、この接触部分の摩擦でエネルギー損失が生じるという事をいうサイクリストも居るのだが、そもそもスポークというものは引張にしか使用されていない。余計な心配だと言える。そして、DTSWISS ARCは接触交差部分に関していえば、擦れ合うことすらない。
前後別のリム設計
ホイールはリムとハブとスポークがそれぞれ組み合わさることによって、1つのホイールシステムとして完成する。単純に文章で書いてしまえばそれまでなのだが、ハブ設計、スポーク本数、リムハイト(ERD)、リムスポークホールオフセットの違いによって左右のスポークテンションやスポーク長が大きく変わる。
DTSWISSのARCのリムのスポークホールを確認していくと、フロントとリアで僅かに設計を変えていることがわかった。特にリアリムはスポークホールをオフセットさせている。オフセットさせることによりスポークテンションの左右差を是正することができる。
また、50mmと62mmではスポークホールアングル(通常は9~11°で設計)やオフセット量を変えている事がわかった。実際にDTSWISSがスポークホールの角度を何度で設定しているのかはわからないが、先程の章で述べた「接触交差」とのバランスを取るために、リムハイト別に設計を変えていた。
DTSWISS ARCが優れている理由としては、リム、ハブ、スポークという部品の品質は最高レベルに引き上げつつも、それらを「どのように組み合わせるのが最善なのか」という観点まで突き詰めて設計が行われた点にある。
すべての部品をアッセンブルし、1つの集合体として組み上げたときに「最も素材の味が引き出せる状態」になるように、それぞれの設計をDTSWISSは煮詰めていた。これは料理でも同じだ。1つ1つ最高の食材を使ったとしても、結果として「料理≒ホイール」が優れているとは限らない。
肝心なのは、食材の味を引き出す料理人の腕次第であり、煮る、焼く、切る、少しの隠し味をどう足すかが重要になってくる。ホイールの制作も同様で素材の味をどのようにして引き出すのかは、ビルダーや開発元の知恵と技術にかかっている。
唯一の欠点
DTSWISS ARCはどこから見ても、欠点や不足などがまったくなく完璧な様を示している。しかし、リム設計においてインターナルワイド(リム内幅)は1世代前の設計と言わざるをえない。最新のモデルに共通しているリム内幅は21mm~23mmだ。グラベルモデルになるとZIPP303FCのように25mm幅も出てきている。
リム内幅を広げることによる恩恵は、タイヤ内のエアボリュームにある。海外のRRBの実験によると、リム内幅が1mm増加した場合、0.3bar空気圧を下げてもヒステリシスロスは据え置きという結果が出ている。かつ乗り心地は良くなるのだから一石二鳥だ。
ただし、「リム内幅を広げる」ということは何を優先させるかという方針次第では良い面もあり、悪い面もあることも理解しておかねばならない。SWISS SIDEが「25mmタイヤで最適化した」という設計思想をもう一度読み解く必要がる。
20mm内幅にとりつけられた25mmタイヤ(GP5000)の実寸とリム外幅の関係は、エアロダイナミクスを考える際に切り離して考えることはできない。
AERO+コンセプトによって最適化されたリム形状は、空気の流れをより効果的に変える事を目的としている。リムで発生する空気の剥離抵抗や、リムから空気が離れる際に生じる乱流が最小限になるようリムシェイプが刷新された。
これらの抵抗は、リム単体で考えるものではなくタイヤの形状が大きな影響を及ぼすことが実験で明らかになっている。したがって、リム内幅を20mmにすることによるエアロダイナミクスへのメリットがエアボリュームが増える事によるメリットを凌ぐのならば「内幅20mmは正解」ということになる。
これはエアロダイナミクスと、ヒステリシスロスのトレードオフとして考えるべき問題だ。僅かなヒステリシスロス削減を目指すことよりも、25cタイヤを内幅20mmに取り付けた際の形状がエアロダイナミクス的に優れている事を優先させた。そう考えるほうが適切ではないだろうか。
最新のリムプロファイルといえど、何を求めるかでその設計は大きく変わる。BONTRAGERのAEOLUS RSLの内幅は23mmだ。ROVAL RAPIDEはリム幅35mmで内幅21mmだ。DTSWISSが導き出した20mmと、各社の設計思想が求めたものに対する答えは無数に存在している。
62mm インプレッション
- 平坦:50mmよりは回る。
- 上り:登りは重く感じる。広島の上りでも使うことをためらう。
- 下り:とても良く回り、スピードがどんどん上がっていく。
- 加速:鈍い。ゼロスタートは非常に重い。
- ステアリング:もっさりしているが、横風には煽られることは少ない。
62mmと比較したのは50mmだ。率直な感想を書くと、日本のロードレースやアマチュアのレースで62mm使用用途は限られると感じた。平坦で構成されたサーキットでのエンデューロ、タイムトライアルで使用するのが得策だろう。
特に上りは重く感じた。確かにエアロ効果が高いのかもしれないが、あえてアップダウンのコースで62mmを使用する必要はない。プロの速度域であれば62mmを活かせると思うが、例えば鈴鹿のようなサーキットでも50mmを選択するほうが良いと思う。
クリテリウムに使うにも、ゼロスタートや加減速が生じるレースに62mmをあえて投入する必要はないと感じた。確かにエアロダイナミクスは優れているが、総合的に考えると加減速が生じないレースかつ、平坦のコースという限定的な使用に限って本来の性能を引き出せるホイールだと感じた。
また、フロント50mmでリアホイールを62mmという組み合わせも試したがリアホイールに使用しても特別なにか変わるわけではなかった。むしろ重さが増すため50mmリムハイトを前後で使うことがよほど合理的な判断になると思う。
使用用途が限られてしまうものの、平坦のエンデューロや単独での高速走行を行う場合に限り優秀なホイールだと思う。加減速が生じるレースや、上り下りが次々と登場する広島、群馬、沖縄、ニセコといったレースには投入しようとは全く思わなかった。
少々エアロダイナミクスに振りすぎていて、62mmは通常使用することは難しいと感じたホイールだった。
50mm インプレッション
最も使用頻度が高くオールラウンドなARC 1100 50mmは62mmとは全くの別物だ。。相対比較のホイールはROVAL CLX 50とBONTRAGER RSL 51だ。それぞれ現行最新のリムプロファイルとプロのレースで使用されているベンチマークになるホイールである。
テストは同様にGP5000とラテックスチューブを入れて行った。
- 平坦:CLX 50と似ているが高速域での速度減衰がとても少ないと感じた。
- 上り:上り区間で重く感じることはない。50mmほどのリムのほうが慣性が働きよく登る印象すらある。
- 下り:CLX 50と似ているが高速域での伸びは優れていると感じた。
- 加速:CLX 50と似ており、違いがない。
- ステアリング:特筆すべき性能がステアリング面で横風にほとんど煽られることはない。
CLX50との比較が主だが、特筆すべき性能は2つある。「振動」と「ステアリング」だ。振動面に関していえば、タイヤを新品に変えて空気圧を下げたかのような錯覚がある。この振動の特性に関しては、タイヤの性能と空気圧が支配的であるがスポークが異なることによる性能差だと推察している。
いつも走るコースでテストしたからこそ、荒れた区間を走るときの振動の感じ方の違いはよく読み取れた。特にARC 1100 50の「いなし方」は、ハブ内部にダンパー存在するかのような感覚すら覚える。使い古された別の言い方をすると、路面の突き上げが少ないと感じた。
巡航面はROVAL CLX50やBONTRAGER RSL51よりも回ってくれる時間が長く感じる。特にローテーション中に休む時間がわずかに長く感じる事が多かった。体感上でのはなしであり、同一の気象条件ではないことを踏まえつつもよく回るホイールだと感じる事が多かった。
そのように感じた理由が、エアロ効果が高まったスポークなのかそれともSINCセラミックベアリングなのかは、はたまたSWISS SIDEが生み出したリムの効果なのかは定かではない。空力面ではARCが優れていると感じた。ARCのAERO+の設計にもある通り、1つ1つの改善が組み合わさった結果なのだろう。
重量面に関しては1500g近く重いホイールだ。CLX50やAEOLUS RSL 51よりも重い。しかしその重量は一切きにする必要はない。前後セット考えるとカタログ上の値で50g程度重いわけだが、その重量差を感じることはほぼないだろう。
上りも下りも平坦も、1本ですべてをまかなうのならば50mmを選択する。あえて62mmにする必要もなく、あえてリアに62mmをセットする必要もない。重量とエアロダイナミクスのバランスを考えると、いま最も戦闘力の高いホイールと言える。
BRIDGESTONEのRP9に標準搭載されているが、他のホイールに変更する必要はない。そのまま使い続けることが速さに対する最善のアプローチだ。重量とエアロダイナミクスを考慮すると50mmリムハイトで別のホイールに変更することは金の無駄、合理的な判断ではないとすら思える。
むしろ、既存のホイールを売ってARC 1100 50mmを使い続けるほうがよほど賢い。ARC 1100 50mmは高いパフォーマンスを備えているバランスの取れたホイールだと感じた。正直RP9の完成車を買わなかった事を後悔するほどだ。
コラム:バイクの特性を歪ませる50mmの高性能
以前から疑問に思っていた事があった。最近登場するハイエンドエアロロードバイクには決まってDTSWISSのホイールが付属しているということだ。一昔まえまでは考えられなかったが、CANYON、PINARELLO、Simplion、日本のBRIDGESTONEまでもがDTSWISSのホイールを標準搭載としている。
TREK、SPECIALIZED、GIANTといった自社でホイールブランドを持っていないメーカーはDTSWISSを標準搭載している。この傾向は単にDTSWISSが各メーカーに売り込んでいるとも考えられるが、実際はそうではない。50mmや60mmレンジで最もエアロ効果が見込めるホイールがDTSWISSのARCだからだ。
実際にドイツのTOUR紙が行った風洞実験では、DTSWISS ARC 1100の前後50mmはROVAL RAPIDE CLX(51mm/60mm)を凌ぐ空力性能を備えている事が明らかになった。さらにSWISS SIDEの風洞実験でも50mmや60mmクラス最速であることが判明している。
TOUR紙が行うコンプリートバイクの最速モデルを確認していくと、TOP3のバイクにはDTSWISSのARC1100 62mmが搭載されている。バイクメーカーは自社のバイクの空力性能を総合的に高めようとした場合、DTSWISSのARC 1100 62mmを選択することでエアロダイナミクスが向上することを知っているのだろう。
80mmクラスを使用すると重量が増すため、完成車に搭載されることはほとんど見られない。重量とエアロダイナミクスのトレードオフを考え、絶妙な位置に収まっているのがDTSWISS ARC 1100の62mmと推察している。
実際に完成車にDTSWISSのARC 1100が搭載されていた場合は「注意」が必要だ。バイクの特性を歪ませるほどの高い性能を備えている。実際にAEOLUS RSL 51とDTSWISS ARC 1100を単純に乗り比べてみたところ安定性や、ホイールの回転中の滑らかさに驚いた。
この高性能がゆえの歪みは、例えばBRIDGESTONEのRP9の完成車を買ったとして、「めちゃくちゃよく走る!」と感じたとしても、そう感じさせてくれる要素がDTSWISS ARC 1100の性能が原因かもしれないということだ。
単純に相対比較になるが、それほどDTSWISS ARC 1100は完成されている。ここまで細部をくまなく紹介したが、ハブとスポークのトップメーカーDTSWISSが本気を出して唯一無二のスポークとハブを作り、リム設計は世界最高峰のイネオスを支えるSWISS SIDEが開発したのだから当然といえば当然だ。
むしろ、これから各ホイールメーカーはDTSWISS ARC 1100 50mmを目指してミドルハイトのホイール開発をするのだろう。そう思えてくるほどの高い性能を備えていたのだ。
まとめ:完組ホイールの頂点へ
LightweightやMavic Cosmic Ultimateを省くと、鉄スポークを使用した完組ホイールにおいてクラス最高峰の性能を備えていた。考えられる最高の部品を用いて設計が行われていた。それは、TOUR紙やSWISS SIDEの実験結果にも現れている。
唯一無二の「リム」「スポーク」「ハブ」の組み合わせを、それぞれ限界まで突き詰めて組み合わせたホイールを超えられるホイールは今の所見当たらない。新しいDTAeroliteIIおよびDTAero Comp IIスポークの形状の変更により、回転抵抗が1.1ワット減少した。
Aerolightを使うROVALやBONTRAGERのホイールに対し、単純にスポークだけでも空気抵抗が優れている事が数値上明らかになっていることも大きい。オールラウンドに使用する場合は50mmでこれ一本あれば、他のホイールは不要なのではないか。
現状、50mmや60mmの領域でARC1100よりもエアロダイナミクスに優れたホイールが存在していない。
50mmに関してはROVAL RAPIDE CLXを凌ぐ空力性能を備えている事が明らかになっている。ただし、重量は70g程 ARC 1100 50mmのほうが重たいため重量を気にするライダーはどちらのホイールを使用するのが好ましいか悩むかもしれない。
それでも、ホイールとしてのパフォーマンスや性能面でのアドバンテージ、優れた空力性能を考慮するとARC 1100 50を選択しておけばほとんどのレースで活躍できるだろう。
62mmは上りで重たさを感じる。高速なコースかつアップダウンがあっても勢いで通り過ぎるようなコースであれば62mmが最速だろう。
結論として、50mmに関してはテストの過程で弱点は見られなかった。新しいARC1100 50mmは、コーナーから加速する場合でも、停止状態から加速する場合でも、平坦な地形での空力位置や横風の場合でも、上りでもあらゆる状況で優れていた。
いま他社の50mmのホイールをお持ちの方は、ARC 1100の50mmに変更することによって新しい速さを手に入られるはずだ。しかし、値段がネックだ。フロント161,700円+リア224,400円で386,100円と、購入しやすい価格とはいえない。
しかしこれらのネガティブな面を差し引いても、ARC 1100の性能や作り込みなど魅力的かつ優れたホイールだ。ホイール市場は刻々と変化しているが、DTSWISSのホイールが今後注目されてくることは間違いないだろう。
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