なぜ、ディスクブレーキ用のリムは、リムブレーキ用のリムよりも優れているのか。

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先般、「イネオスがリムブレーキを使う理由」を掲載したところ大きな反響があった。イネオスがリムブレーキを使い続けている理由として、ピナレロ・ドグマF12のディスクブレーキモデルが重いことや、実践環境におけるホイール交換の手間など様々な原因があげられていた。

イネオスがリムブレーキを使う理由
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しかし、2021年9月にイネオスはUCIプロシリーズレースのGPドゥナンでピナレロのドグマFディスクロードバイク走ることを発表した。世界最高峰のチームがディスクブレーキにシフトすることによって潮目は大きく変わろうとしている。

イネオスがディスクブレーキに完全移行へ!
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その背景には、ホイール交換、エアロダイナミクス、重量といった諸問題がクリアになりつつあることも影響しているようだ。昨今、各社のたゆまぬ開発によりリムブレーキシステムのバイクよりも、ディスクブレーキシステムを備えたバイクのほうが総合的な性能が勝るようになってきている。

今回の記事では、設計観点からリムブレーキ用の制限がなくなることによって、ディスクブレーキ用リムにどのようなメリットがもたらされるのかを開発で知り得た知見をふまえまとめた。

リムがブレーキシステムの一部

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ひと昔では考えられなかったが、プロやアマチュアのレース種目問わずディスクブレーキシステムが採用されるようになった。これまで主流だったリムブレーキシステムは、リム外周の側面をブレーキシステムの一部として使う古典的な構造だ。

ディスクブレーキから考えてみれば、ディスクローターの役割をリムが担っている。

リムブレーキ用のリムは「ブレーキシステム」と「タイヤをマウントする土台」の役割を「1つのリムが担う」という二足の草鞋を履くような厄介な仕組みを備えている。これは、外側から圧縮される力(ブレーキシステム)やリム内部から膨張する力(タイヤとチューブ)に耐えるだけの強度を備えていなければならないことも意味している。

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リムブレーキシステムは、キャリパーブレーキに取り付けられたゴム素材でリムそのものをはさみ込んで制動する。この際、リム自体に過度な摩擦熱が発生するとダメージを与えてしまう場合がある。よくよく考えてみれば、人間の乗り物で現在も使われ続けているとても原始的なシステムだ。

ディスクブレーキシステムはそれらの心配がない。リムはブレーキシステムの一部ではなくなり、タイヤをマウントしスポークのテンションに耐えるだけだ。リムブレーキのように摩擦熱によってリムが解けたり、ラテックスチューブが溶けてしまうことなど一切気にしなくてもよくなる。

リムの命は削れていく

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ブレーキパッドとリムの接触を良くするためには、リム側面のブレーキ面は平らか平行でなければならない。長い下り坂で使うシチュエーションを考慮すると、ブレーキによる摩擦熱の蓄積にも対応できるように、素材と構造を考慮してリム設計を行う必要がある。

そもそもリムブレーキ用のリムは、構造的にも、素材的にも、乗り越えねばならない非常に厳しい設計上の制限が存在している。

リムブレーキ用のリム開発で厄介なのは、リムブレーキによるリム表面の摩耗に対応できるように、「十分なリムの厚さ」を確保しておく必要があるということだ。ディスクブレーキの場合は、ブレーキパッドとディスクローターが摩耗することで効果を発揮する。

同じようにリムブレーキの場合も、リムやブレーキシューが摩耗することでブレーキの効果を発揮する。

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これまで販売店やメーカーは「リムは消耗品」ということを(アルミならなおさら)あえて言わなかった。そしてユーザーに気づかれないようにしておく必要があった。ブレーキシステムの一部として組み込まれたリムとはそもそも「削れることで性能を発揮する消耗品」だ。

これらの理由から、リムブレーキ用のリムは「ブレーキシステムの一部」として性能を発揮する必要があるため、過度に薄く作ることはできない。したがって、リムブレーキ用のリムは、カーボンの積層を増やしリムを頑丈にする必要があるため重量が増すのが常識だった。

ディスクブレーキと空力

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さかのぼること2016年、自転車競技の統括団体であるUCIは、ロードサイクリングにおいてディスクブレーキのトライアルを開始した。2年間の実証実験を経て2018年にディスクブレーキシステムは完全に認可された。当初から安全面や性能面で様々な問題が指摘されていたが、ディスクローターの存在が原因で空力性能が低下する事が懸念されていた。

しかし、近年リリースされた空力性能に特化したエアロロードバイクのほとんどが、ディスクブレーキシステムを標準にしている。スペシャライズド、トレック、キャノンデール、キャニオンの最新のエアロロードバイクはディスクブレーキシステムのみだ。

そして、DOGMA FやVENGEのように旧型のリムブレーキ式バイクよりも格段に空力性能が向上している。

これらのバイクはディスクブレーキを採用したことによって、従来のブレーキキャリパーをフォークやシートステーから隠すように配置にする必要がなくなった。そのため、ディスクブレーキシステムを採用したフレームも、ホイールと同じようにデザインの柔軟性が向上した。

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ディスクブレーキ用のブレーキキャリパーはフォークやフレームの後ろ(正面から隠れた位置)に配置されている。そのため、ディスクブレーキバイクを後ろから見ると非常にすっきりとしており、ブレーキ性能や操作性を損なうことなく空力性能を向上させることが可能になった。

リムブレーキタイプのエアロダイナミクス改善といえば、フォーク裏やBB下部にブレーキキャリパーを設置し正面から隠す設計が典型的だった。エアロダイナミクスに優れたディスクブレーキホイールの設計自体にも、それらと同様かそれ以上の利点がある。

先ほど記した通り、リムブレーキシステムではリムブレーキホイールセットの制動にリム面を使用する必要がある。リムブレーキ式におけるリムの最大幅は、リムがブレーキキャリパーの間に収める必要があった。そのため、およそ28mm以内にリム幅を制限する必要がある。

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さらにエアロダイナミクスを突き詰めていこうと考えた場合、ZIPP105%の法則やタイヤ幅を考慮して「リム幅は30mm以上」ということが現代のリムの最低条件になっている。AEOLUS RSLは31mm、ROVAL RAPIDEは35mmとワイド化は止まらない。

この時点で、リムブレーキ式のリムは、キャリパーブレーキやリムブレーキ用のフレーム設計(過去のモデルでも使えること)を考えると一切要件を満たせないことがわかる。

ここまでの目的や設計面での話をまとめると、リムブレーキ用のリムは制限が多いため、ディスクブレーキ用のリムよりも性能面で優れているとは言い難いことがわかる。

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まとめ:より自由な設計を

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設計観点でみれば、ディスクブレーキ用のリムはキャリパーが存在しないため、リム幅をとことん広げられるようになった。だからこそ、設計の自由度が高まり軽量かつ新しい形状をデザインできるようになった。

ディスクブレーキシステムは、これまでのリムブレーキ用のリム設計で生じていた制限を一切無視できる。世の中のディスクブレーキ用のリムは、空力性能の最適化やワイドタイヤに合わせるため、ROVAL RAPIDE のようなワイド化は各社も追従していくだろう。

設計面から見てもリムブレーキ用のリムは、リムシェイプの自由度が低く軽量化を実現できない。各社がしのぎを削る開発競争で最も重要な箇所にリムブレーキはついてこれなくなった。それにとって代わる存在が、ディスクブレーキ用のリムだ。

これからどこまでリム幅が広がるのか、どこまで軽くなるのかはわからない。

ただ、唯一わかっていることは、常に速さを求めているということだ。その行く末にリムブレーキの存在意義はなくなってしまう日がいつか来るかもしれないが、それでも技術開発と進歩が続くかぎりサイクリストをより速くしてくれるのだろう。

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