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- リム重量403gと45mmリムにしては重い。
- リム内幅19mmで設計が古臭い。
- リム外幅28mmで設計が古臭い。
- それでも実測重量1270gで軽い。
- リムテープ不要、バルブホール無し、スポーク一体型。
2018年6月に新型Cosmic ULTIMATE USTが出る出ると噂されてから約5年。コロナ禍も挟まり、やっと市場に登場した。当初は3Kカーボンのデザインだったが、UD(ユニディレクショナル)カーボンのデザインに変更されている。
構造的には、過去のCOSMIC ULTIMATEやLightweightと変わらないR2R(Rim to Rim)の構造だ。カーボンスポークを採用したホイールの最高到達点であることには変わらないものの、今回の新型COSMIC ULTIMATEには目新しさを感じない。
2018年当初、1225gという重量で登場する予定だった。しかし、今回登場したモデルは30g増の1255gだった。肝心の実測重量といえば、後ほど詳しく触れるが1,270gジャストだ。MAVICによればリム重量は403gだという。
45mmで403gというのは決して「軽くない」リム重量だ。最新型のENVE SES3.4と4.5はリム幅32mmでリム内幅25mmでありながら、リムハイト39mmで370g、43mmで378g、51mmで411g、56mmで415gだ。
COSMIC ULTIMATEは構造は過去のモデルを踏襲しながらも、カーボンチューブレスクリンチャーホイールとして圧倒的な軽さを達成している。その軽さはメリットになるのか、それともマイナス要因になるのかはこの先のインプレッションで紐解いていきたい。
前編は、COSMIC ULTIMATEの構造面や気になる重量面からみていく。
重量
COSMIC ULTIMATEの前輪重量は583.5g(タグ含む)だ。
後輪重量は691.5g(タグ含む)だ。前後実測重量は1,270gだ。MAVICといえば、何年か前まではカタログ重量と実測重量の乖離がひどい「MAVIC商法」なんてワードも生まれるほどの重量誤差が定番だった。
しかし、新型COSMIC ULTIMATEはカタログ重量との誤差がわずか15gだった。製品としては合格点だと思う。この軽さは、主に「リム以外」のパーツによるものだ。リム重量は403gと軽いとは言えない。むしろ、新型ENVE SESと比べると45mmハイトのリムとしては重い部類だ。
それでも、部品点数や簡素化されたR2Rのスポークパターンによってトータルの重量は1270gと「超軽量」にしあがっている。
カーボンハブ
ハブは外皮がカーボンで中身は合金だ。合金をベースにカーボンを巻き付けており、軽量化が図られている。昔のLightweightやCOSMIC ULTIMATEは、フランジとカーボンスポークの間にわずかな隙間が存在していた。
新しいCosmic ULTIMATEにはこのわずかな「すきま」がなく、ハブフランジからカーボンスポークが生えたような洗練された構造に進化している。
カーボンスポーク
MAVIC COSMIC ULTIMATEはリム以外のスポークやハブシェルのほとんどがカーボン製で部品点数が少ない。そのため、リム重量が403gと”重くても”完成重量は1255gと最軽量クラスに仕上がっている。
ホイールはフランスのアヌシーにあるMAVICの工場でハンドメイドで組み立てられている。COSMIC ULTIMATEを構成するカーボン部品は71点から成り立っており、組み立てには8時間を要するという。スポークはリムに挿入されているように見えるが、MAVICのFore技術によって合金のインサートに接着する仕組みだ。
特殊なスポーク接続構造は、合金にカーボンスポークを挟み込んで成形する。タイヤベッドに穴を開ける必要がないため、チューブレスのセットアップが容易になっている。COSMIC ULTIMATEではリムテープが不要になった。
一見するとスポーク自体は前世代のCOSMIC ULTIMATEと違いが無いようにみえる。しかし、前世代の4倍の強度を持つ新しいR2R(Rim to Rim)UDカーボンスポークを採用している。ホイールを一体成型する最終工程では、スポークの間にハブを挟み込んで熱を加えて完成させるという。
R2R技術
R2R(Rim to Rim)技術は、スポークがリムの端からハブを介してもう一方のリムまで一直線に伸びている構造だ。そのため、見た目は「2本」に見えるスポークは実際は「1本」のスポークで構成されている。スポークは一方向性(UD)カーボンファイバーが使用されており、伸びることはない。
カーボンスポークを使った場合、Lightweightにも採用されているR2R構成が最上級の構造だ。CADEX、VORTEX、LUNといったブランドもカーボンスポークを使用しているが、交換式のカーボンスポークを使っているうちは、R2R構造は超えられない壁だ。
スポークはリムと一体化されている。そして、リムとリムの間を橋渡しするように1本のカーボンスポークが配置されている。ハブとの接続は一体成型のように見えるが、ハブフランジに接着されている構造だ。この接着はLightweightでも同じように行われている。
Lightweightで採用しているハブフランジとの接着よりも、Cosmic Ultimateのほうが一体成型感があり余計な隙間もなくシンプルだ。
古臭いリム設計
ロゴはレーザーエッチングを採用しており、デカールよりも数グラム軽量化できるという。
リム内幅は19mmで現代のリムとしては少々古臭い設計だ。25mm以上のタイヤを想定していることを考えると21mm幅の設計にしなかったのが悔やまれる。タイヤ空気圧は87psi(6bar)と最近のトレンドにそっている。リム外幅は28mmと最近のリムにしては細身だ。
昨今のリムは幅が30mm以上、内幅は21mm以上で重量は400gアンダーのリムが登場している。現代のリムから比べると、この古臭いリム設計が走りにどのような影響をおよぼすのか。
次回の後編は、COSMIC ULTIMATEのインプレッションを実際に行っていく。