キャノンデール SYSTEMSIX HI-MOD インプレッション

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ざっくり言うと↓

  • 元CERVELOのデイモン・リナード氏の作品。
  • 重量に目をつぶればEVOからの乗り換えに最適。
  • VENGEとの空力差は体感できない。

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SYSTEMSIXについて書き残そうと思ったことは3つある。1つ目はエアロダイナミクススペシャリストのデイモン・リナード氏の作品であること。リナード氏は元Cerveloのエンジニアで数々の名バイクを生み出し、Cerveloの黄金期を支えた。2つ目はライバルとされるS-WORKS VENGEとの比較。

そして3つ目はキャノンデールユーザーが愛してやまないSUPERSIX EVOから(浮気をせずに)乗り換えてもよいバイクなのか。この3つだった。結論から言えば、リナード氏が求めた「世界最速」は開発時点では十分達成されていた。そして、EVOと決別するかのようなエアロダイナミクスの実験データは「軽量フレームメーカー」というイメージからの脱却も印象づけた。

誰もが気になっているS-WORKS VENGEとの比較では、同様のホイールを用いてそれぞれのバイクを乗り比べてみても、体感できるほどの明確な差は感じられなかった。

最後の3つ目は「EVOから乗り換えてよいのか」という疑問だ。キャノンデールユーザーはEVOやCAADをこよなく愛する。いわば信者的なライダーが多いのも同社の強みといえる。併せてSYSTEMSIXは買い替えとして適切なのかを記載した。過去に掲載したEVOと比較し、「もし私が買うなら」という観点で書いた。

軽量バイク一辺倒から「エアロロード」というあたらしい領域へと踏み出したキャノンデールのSYSTEMSIXに迫っていこう。

※)記事公開後、TOUR誌の実験において世界最速のエアロロードバイクはSYSTEMSIXという結果が報じられた。

TOUR誌の風洞実験で判明!「世界最速のエアロロード」はあの意外なバイクに・・・。
「最速のディスクエアロロード」がついに明らかになった。ドイツの機関紙TOUR Magazineで決まった。比較されたモデルは「S-WORKS VENGE」「Cannondale SYSTEMSIX」「TREK MADONE」「Cervelo S5」「RIDLEY Noah」の5モデルだ。
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デイモン・リナード

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photo:cyclist.com

「Damon Rinard」

エアロダイナミクスの話題を追いかけていると、決まってお目にかかる著名なエアロダイナミクスエンジニアである。Rinard氏の名前を知らずして、現代の「エアロロード」は語れない。リナード氏が現代のエアロロードを作り上げたといっても過言ではない。

デーモン・リナード氏は、元はCerveloのエアロダイナミクスエンジニアだった。現在もCerveloでエアロダイナミクスの研究に取り組んでいるのかと思っていたのだが、どうやら違うらしい。リナード氏はCerveloで世界最速のバイクを作り上げたのち、キャノンデールへ引き抜かれていた。

cervelo.com:Damon Rinard leaving Cervelo

tomdemerly.com:Cannondale, Damon Rinard, Andy Potts and the Missing Cervelo.

slowtwitch.com:On the move with Damon Rinard:

キャノンデールが社外のエンジニアを引き抜くのは今回が初めてではない。過去にSCOTTからカーボンの魔術師ピーター・デンク氏を引き抜いている。キャノンデールはエアロダイナミクスを追求するために、Cerveloからリナード氏を引き抜いていた。そう、SYSTEMSIXを生み出すために。

リナード氏が歩んできた「エアロロード(エアロを追求してきた道のり)」は実に華々しい。トレックのスピードコンセプトの開発に始まり、そしてCerveloで数々のエアロダイナミクス設計に携わった。リナード氏が携わった頃のトレックとサーベロのバイクは、2015年Lava誌の「Kona Bike Count」において1位と2位の座に輝いている。

リナード氏の歩んできた「エアロロード」そのものが「最速の道」だった。

「キャノンデールが世界最速だって?エアロとは無縁のブランドが?」SYSTEMSIXを初めて見た瞬間、誰もがそう思ったはずだ。私自身も「キャノンデールのエアロロード」を疑った。しかし、開発の全容が記されたSYSTEMSIXのホワイトペーパーでRinard氏の名前を見たとき、「世界最速」を目指したとしても何らおかしな話ではないと思った。

そして、最速への挑戦をCANNONDALEで成し遂げたのだと悟った。リナード氏は、自らが生み出した数々のエアロロードを超えるバイクをもう一度生み出したのである。

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エアロダイナミクス

SYSTEMSIXのエアロダイナミクスについては先般の記事で書き尽くした。まだ読んでいない方ぜひご一読いただきたい。先般の記事をふまえつつ、まずはSYSTEMSIXの実機を確認していく。そして、どのようにして優れたエアロダイナミクスを実現していったのかを探っていくことにした。

「低くじゃない、いかに細くできるかだ」

西薗良太氏が監修した書籍「世界最高のサイクリストたちのロードバイク・トレーニング:ツール・ド・フランスの科学」に書かれていた言葉だ。エアロダイナミクスを追求したポジションを煮詰めていくときに、ポジションを低くするのではなく、より細くすることを目指す。

この言葉をそのまま具現化したような構造をSYSTEMSIXは備えていた。

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SYSTEMSIXを正面から見ると薄っぺらい1枚イタのようだ。ただし、横から見ると当たり前だがフレームの形をしている。フレームを眺めていると、空気が前から後ろへと流れていく様が可視化されたように美しい造形が目を引く。

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ディスクロードの設計においてエアロダイナミクスの高さが増したのは、ブレーキの大幅な構造革命にあると言っていい。SYSTEMSIXのエアロダイナミクスを追求したデザインは、ヘッドチューブを抜けてシートステー部分にも及んでいる。

まるで飛行機の尾翼のような造形は、リムブレーキ式フレームでは実現できない形をしている(BB下ブレーキモデルはあるにせよ)。

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SYSTEMSIXのフレーム全体に言えることだが、どのフレーム部分にも涙型の後ろをスパッと切った「AirFoil」を採用している。シートポスト、ダウンチューブとありとあらゆるところにAirFoilの形状が見て取れる。一見すると単純な形状だが、どのような「比率」で構成するかで、エアロダイナミクスの性能が大きく変わってくる。

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実は、VENGEのローンチの際も「ある比率」がスクリーンに映し出されたが撮影は禁止だった。いくつものパターンを作り込み、最適解の「比率」を導き出していく。その結果の違いの積み重ねがエアロロードの速さの違いを生み出している。

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SYSTEMSIXにおいてAirFoil形状が最も確認できたのはダウンチューブだ。

ダウンチューブは直線的な造形ではなく凸のような形をしている。ホイール〜トップチューブと流れてきた空気ができるだけ変化しないように計算された配慮だ。それでいて、大きな力を受け止めねばならないダウンチューブの剛性を担保するために、BBに向かうほど太くなる設計がなされている。

ただ単に細くすればエアロダイナミクスは向上するはずだ。しかし、BB部分の剛性を考えるとそうも言ってられない。TREKのBB90のように「ギリギリまで幅広に」ということからもわかるとおり、エアロダイナミクスと剛性バランスはトレード・オフの関係にある。

SYSTEMSIXのフレームは「無数のAirFoil」の集合体だ。一つ一つの要素(AirFoil)がいくつも積み重なり、それぞれが連携する。その結果、最速クラスのフレームとして仕上げられていた。

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ハンドルステム

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「エアロダイナミクスの効果を最も改善できるのはハンドルまわり」

昨今のエアロロードのハンドルはどれもこれも似ている。エアロロードとしてデビューした初代Madoneのハンドルと、SYSTEMSIXのハンドルもとてもよく似ているが実物は全く違っていた。

SYSTEMSIXのためだけに開発されたコンポーネント(ハンドル、ステム、ホイール)はKNØTと名付けられた。ハンドルは一見すると一体型のように見る。しかし、角度も無段階で調節も可能だ。ステムとハンドルが接触する部分は「滑り台」のようになっていて、微妙な角度を調整できる。

また、KNØT以外のハンドルやステムも取り付けることが可能だ。ヘッドの小物を交換する必要があるが、縛りが多いエアロロードバイクにとってコクピットまわりの変更ができることは嬉しい。

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あたらしく開発されたKNØTステムは独特な形をしている。

エアロダイナミクスを向上するためには、できるだけ細くすることがマストだ。しかし、ステム部分は剛性も担保せねばならないため、横に広がった形をしている。ハンドルトップとステムは「ツライチ」になっていて空気の流れを乱すことはない。

エアロダイナミクスを考えて究極的な構造を考えるのならば、ステムのコラムもすっぱりとカットすることが望ましい。しかし、ポジションがしっかりと出るまではそのまま残しておいたほうがよい。

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ケーブル類はハンドル内部を通り、ステムの「クチ」から吸い込まれていく。

他のメーカーと同様に、ケーブル類はステムを介してヘッドチューブから取り込まる。ただし、MadoneやVENGEと比べると見た目はやや煩雑である。エアロダイナミクスを極限まで追求していくと避けられないのは、バイク調整のためのメンテナンスある。エアロダイナミクスとメンテナンス性の良さはトレードオフの関係にある。ハンドル角度や調整などを考えると、ある程度の作り込みの妥協は必要なのだろう。

ステムとハンドルまわりはメーカーの工夫がよくわかるところだが、SYSTEMSIXのハンドルまわりはもう一つ工夫があってもよさそうだと感じた。

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スピードリリーススルーアクスル

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フォークの作り込みも特徴的だ。もう少し突っ込んでいうと賛否両論があるフォーク設計だ。「スピードリリーススルーアクスル」は片側のエンドが切り欠かれている。開発したのはENVEだ。その影響からかMAVICでも採用されている。スピードリリーススルーアクスルの利点はホイール交換の早さだ。

スルーアクスルのシャフトは完全に抜かないとホイールの交換ができない。しかし、スピードリリーススルーアクスルはハブにシャフトを8割ほど差したままホイールを外すことができる。

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ただこの構造は賛否両論ある。というのもせっかくスルーアクスル化に伴ってハブへの圧力を均一にできたところを、あえて切込みを入れてしまったからだ。スピードリリーススルーアクスルは利点をあえて利便性で消し去ってしまった。「ナカガワエンドワッシャー」を使ってハブへの締め付けを均一化している人にとっては、「スルーアクスルなのになぜ?」と疑問に思うことだろう。

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エアロダイナミクスとメンテナンス性がトレード・オフの関係であったように、スルーアクスルも同じような問題を抱えているのだろう。どちらかといえば私はハブへの圧を一定にしたい。したがって、スピードリリーススルーアクスルの構造はあまり好んでいない。

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ただし、実際に使ってみるとハブへの圧の差などは感じなかったのがホンネだ。先日シクロクロスのレース中にパンクしてしまったが、スルーアクスルの交換に手間取ってしまった。レースを考えるとスピードリリーススルーアクスルの利便性は重宝される。1分1秒を争うレースであればあるほど、機材交換のロスは大きく響いてくる。

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KNØTホイール

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SYSTEMSIXと合わせて開発されたKNØTホイールはHED社の特許を使っている。23Cのタイヤを使用することでエアロダイナミクスや転がりが最適化されている。しかし、現在の機材を考えると23Cは細すぎる。時代はより転がり抵抗が小さな25Cタイヤが主流になってきているから、あえて23Cを使用することは少々時代遅れだ。

タイヤは好みが最も分かれる機材だ。KNØTホイールのリム内幅は21mm、外幅は32mmとトレンドを取り入れている。使用するタイヤは現実的に考えて25C以上が適当といえる。ちなみに、純正で取り付けられているヴィットリアの23CタイヤからGP5000の25Cタイヤに変更すると、さらに乗り味がよくなった。

純正のヴィットリアのRUBINO PRO 23Cは硬いタイヤだ。このタイヤのせいでさらにSYSTEMSIXが「硬いバイク」だと錯覚してしまう。GP5000に変更するか、MAVIC イクシオンのチューブレスタイヤに変更したほうが乗り味がよい。純正のタイヤは使わないほうがSYSTEMSIXの印象はよくなる。バイクの安定感も増すし、なにより走りが軽くなる。

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SYSTEMSIXが硬いと思った方は、真っ先にタイヤを替えるべきだ。なお、人間が感じる剛性のほとんどはタイヤが影響している。タイヤ空気圧ひとつで、フレームの剛性などスポイルしてしまう。そのあたりの話は別の記事で紹介している。

1杯のコーヒーで知った自転車機材のこと
先日いつものカフェでこんな話をしていた「車やバイクの雑誌に比べると、自転車雑誌はとても少ない」と。自動車やバイクのカテゴリは、市場と規模の大きさから様々な趣味趣向の雑誌が存在している。そして雑誌やメディアを支えるライター、評論家、専門家...

KNØTホイールのリムハイトは64mmだ。平地だけで使用するのならば64mmが活躍してくれる。しかし、汎用的に使用するのならば少々ディープすぎる。VENGEもおなじく完成車は64mmのCLX64が取り付けられているが、オールラウンドに使用することを考えると50mmが妥当だ。

平地だけを考えているのならば64mmでも問題はない。しかし、上り下り、普段のライドを快適に走りたいのならば50mmがよい選択だと感じる。次章からはインプレッションに移っていく。本来であればメーカー純正の組み合わせであるKNØTホイールを使用することが望ましい。

しかし、今回のインプレッションでは、できるだけ感覚差をなくすために使い慣れたホイールを用いてSYSTEMSIXを試すことにした。

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インプレッション(ホイール変更)

ROVAL CLX50を取り付けたSYSTEMSIXは、どこか居心地のが悪そうな雰囲気を醸し出していた。しかし、いざ乗ってみればメーカーが違うからと言って違和感などない。高速域の進みもVENGEと遜色はない。顕著に違うのは剛性面だ。ホイールとタイヤを統一しなければ判別できなかったが剛性面が全く違う。SYSTEMSIXはVENGEよりも剛性が高いバイクだ。

普段使っているROVALを使用して感じ得た「相対的な評価」から、SYSTEMSIXは明らかに剛性が高く硬いと感じるバイクだった。もう少し細かくいうと、純正のKNØTホイールとヴィットリアタイヤをつけるとさらに硬く感じる。剛性面の話は後ほど詳しく書くが、エアロダイナミクスの違いはどうだろうか。

もしも丸パイプのバイクからSYSTEMSIXに乗り換えていたら、「めちゃくちゃ速い!」と間違いなく思っていた。しかし、VENGEとの相対評価でとらえたSYSTEMSIXは、エアロダイナミクスの優位性の違いを明確に感じ取ることができない。両者のエアロダイナミクス性能は拮抗していることはホイールを変えてみても明らかだった。

完全体である「バイクシステム」という単位でとらえたとしても、違いがわからないという結果になる。インプレッション殺しともおもえる「極限の性能差」は、測定器(風洞実験室やCFD解析)の世界でしか違いがわからないということになる。剛性面の話を抜きにすると、エアロダイナミクス性能差は明確に表現することができない。VENGEとSYSTEMSIXはそれぞれ速いバイクには変わりないが、人間がそれらの差を体感できるレベルを超えている。

試しにKNØTホイールに変えてみる。タイヤはROVALに取り付けられているチューブレスタイヤに取り換えた。面白いのはここからだ。ホイールをROVAL50mmからKNØTの64mmに変更するとSYSTEMSIXの立ち振る舞いが途端に変わっていく。

エアロダイナミクスの空気抵抗の削減効果が最も期待できる機材は、ハンドル、ホイールというのもうなづける。

相性の問題だとおもうが、SYSTEMSIXにはKNØTホイール(タイヤはイクシオンUST)を使ったときのほうがよく走る。バイクシステムとして本来の性能が引き出された結果、印象の変化をもたらしたのかもしれない。純正のヴィットリアタイヤから交換していることも大きな理由だが、乗り味の変化はタイヤと、相性のいいKNØTホイールと相まってよい方向へと変化する。ここまでの相対評価をまとめると以下のようになる。

  • VENGE & ROVAL CLX50(基準)
  • SYSTEMSIX & ROVAL CLX50(足回りだけ変更→違いはわからない)
  • SYSTEMSIX & KNØT(純正足回り→よく走る)

ここで「よく走る」という表現をしたが、少々あやふやだ。具体的に文章として表現するならば「高速域の速度維持が非常にラク」と表現できる。単独で走ったので、先般の記事「【最終結論!】エアロロードと軽量バイクどちらが速いのか? エボ VS システムシックス」の逃げるシチュエーションを想定してほしい。高速巡航時の速度維持、ひいては速度の落ち込みの少なさはKNØTホイールのほうが秀でていると感じる。

【最終結論!】エアロロードと軽量バイクどちらが速いのか? エボ VS システムシックス
深い海の奥底で、宝物を発見したような気分だ。キャノンデールの新型エアロロードバイクSYSTEMSIXを調べていくうちに、興味深い開発ヒストリーを初めて知ることになった。そこにはSYSTEMSIXの技術情報だけにはとどまらず、速く走りたい...

ここで忘れてはいけないのは64mmのKNØTホイールと50mmのCLX50を比較(相対的に)していることだ。当然ディープになれば慣性も働き、エアロダイナミクスも向上する。差が生まれて当たり前の話である。ROVAL CLX64を使用した場合はどうなのか?という話が重要であるのは理解しているものの、手持ちにCLX64が無いため比較ができない。

以前の感覚が鈍っていなければ、おそらく非常に近しい乗り味になったはずだ。リムの設計は互いに似ているが、リム内径幅はCLXが20.7mmでKNØTが21mmである。同一空気圧であってもタイヤのエアボリュームはKNØTホイールのほうが多い。タイヤの転がりはKNØTホイールにアドバンテージがある。

ど平坦で最速を求めるならばもちろん64mmリムハイトが好きだ。オールラウンドに使おうとするのならば、重量面を考えても50mmホイールが好まれる。正直なところKNØTホイールはディープすぎる。CLX64もそうだが日本のレースで60mmオーバーのリムが活躍する機会はほとんどなさそうだ。

ロングレースのおきなわ210kmでもVENGEにCLX50を選択したライダーが多かった。何を求めるかは人それぞれ好みが違うが、初めの1本を選ぶのなら50mmリムを選択するのがいい。そしてリムブレーキ用リムを使いまわしていないブランドであることも重要なポイントだ。

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ステアリング

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最も気になっていたのはステアリングまわりだった。SYSTEMSIXのステアリングまわりの話をするときは、「構造面」と「操作面」を別の話題として捉えておく必要がある。「構造面」の話からすると、ハンドルが切れる角度に制限がある。

エアロを優先した結果、ヘッド部分の作りが特殊な形状になってしまっている。BMCのTTバイクやエアロロードの初代Madoneのようにハンドルを切れる角度に制限がある。ハンドルを最大まで切るとフォークとヘッド部分が干渉する。とは言っても、実際のライドに支障をきたすようなことはない。

しかし、輪行ユーザーは少しばかり不便な思いをすることも考えられる。エアロダイナミクスを考慮するならば、ステアリングまわりの構造はトレードオフなのだろう。構造面で気になるのはハンドルの可動域の量だったが、実際に走ってみるとハンドル可動域の4割も使っていないことがわかる。

ステアリングの操作面で話をすると、最近のキャノンデールバイクはジオメトリが美しい(実際のフレーム造形は別として)。2代目のエボからマトモなジオメトリ設計になった。トレール量も最適で小さなサイズであっても十分に確保されている。フォークオフセットとヘッド角は操作性に大きな影響を及ぼすが、SYSTEMSIXはどうだろうか。

ヘッド角とフォークオフセットからトレール量は決定される。ステアリングまわりや操作感に大きな影響を与える設計部分であるが、実際に走る際はバイク全長、ステム長、ハンドルリーチ、ハンドル幅と多くの要素が操作フィーリングを変えていく。今回使用したハンドル幅は400mm、ステムは90mm、ハンドルリーチは90mmだった。

まず感じたのは、タイヤ接地面よりもやや後方を操作している感覚だった。

ここからは、感覚的な話をするよ。

タイヤの接地面はもちろん一箇所だ。実際に操作すると接地面よりもややBBよりに接地面が移動している感覚だった。EVOを乗ったときもそうだった。まるでマウンテンバイクでいうところのヘッドが寝ている66.5°や67.5°のオールマウンテン系バイクの操作感のようだ。

SYSTEMSIXはバイク自体に安定感がある。VENGEの操作感覚がクロカンバイクのヘッド角69°や70°だとすると、SYSTEMSIXは67°や67.5°のような操作感だ。SYSTEMSIXのヘッド角度は実際には「立っている」ため、ハンドルまわりの設計やハンドルリーチの違いがこのような感覚の違いを生み出したと推測している。

この「謎の安定感」はダンシング時のリズムも取りやすい。VENGEはバイク全体を揺らして一体感を抱きながら操作できる。VENGEはフロントホイールが通ったラインからわずかに後輪の内輪差を感じながらコントロールできる(ような)バイクだった。対するSYSTEMSIXは、フロントの操作に対して後輪が追従してくる(ような)操作感覚だ。

フロントの挙動がすべてを決めていて、リア側の操作はフロントに支配されているような感覚だ。この操作感覚の違いは、たとえば砂のワダチをトレースする場合に顕著に感じられる。

SYSTEMSIXの操作感覚をすこしネガティブな表現で表すと、フロントタイヤのトレース位置でリアタイヤの動きも制限されてしまうような感覚だ。いわばリアのコントロールはSYSTEMSIXまかせでオートマのようだった。VENGEの場合はフロントタイヤのトレース位置が決まっても、リアタイヤの位置を自分で操作できる感覚だ。

ロードバイクで砂を走ることはないだろうが、操作感覚を言語化するとSYSYTEMSIXとVENGEは全く違う操作感覚を備えている。

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剛性

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SYSTEMSIXは硬い。誰が乗っても硬い。そう感じるはずだ。現行のEVOとよく似た硬さがある。人によっては「反応のよいバイク」という人もいるだろうし、軽いと表現する人もいる。もしくは、「脚が残らない」というネガティブな表現もできる。人が行うインプレッション(評価)は難しい。だから、切り口を複数もちいながら表現を変えることにしている。

そのためには機材をできるだけ客観的にとらえる必要がある。「剛性が高い」ということは、絶対評価なのか、相対評価なのか。そして、剛性が高く感じてしまう理由は、自分の脚力が無いからなのか。たとえばガチガチのトラックバイクを2000W近いパワーで踏み込む(彼らはMAVICコメットを破壊する!)トラック選手がロードに乗ると「やわらかい」というだろう。

このように整理していくと、機材は相対評価だ。私にとってSYSTEMSIXは硬い。ということはVENGEよりも硬いという表現が適切である。「何と比べて硬いか」という相対的な表現がインプレッションでは適切だ。私は初代EVOの乗り味が好きだから、正直に言うと現行のEVOの乗り味は好みではない。初代EVOのしなやかさが好きだった。

ただ現行のEVOをうまく扱えるライダーも多い。スプリンターのチームメイトは現行EVOを「走らす」ことができる。かかりがよく軽快な乗り心地と感じるのは現行のEVOだ。

瞬発系に富んだ選手は、短い時間で瞬発的な伸びを感じるSYSTEMSIXが気にいるはずだ。入力に対してすぐさま出力として5秒~10秒のダッシュ(クリテリウムの立ち上がり)に答えてくれる。VENGEの乗り味は対照的で2~3分の伸びがよかった。それぞれのバイクの特性は大きく違っていからバイクは面白い。エアロダイナミクスの違いは数値とタイムでしか表せないが、剛性に関してはそれぞれの特徴が際立っている。

そうなってくると走り方に合わせて機材選択をする必要が出てくる。「脚を残して最後の数分間仕掛ける」というパターンであればVENGEが合いそうだ。60分以内のクリテリウムで何発もアタックを繰り返し、消耗しつつも最後のスプリント一発にかけるのならばSYSTEMSIXがよさそうだ。

長距離をできるだけ疲労なく走り切りたいのならばVENGEのほうが秀でていると思う。VENGEはZXRSに似ていて、SYSTEMSIXは2代目のEVOのようなバイクである。ただし重量は別として。

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EVOと比較

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「クライミングバイクとしてSYSTEMSIXを使うか?」という問いにははっきりと「ノー」と答える。純粋なクライミングバイクとして考えると、VENGEもSYSTEMSIXも適任とは言えない。純粋なクライミングバイクに乗りたければEVOがこれからも現役だ。

ある一定の条件下においては。先般の記事「【最終結論!】エアロロードと軽量バイクどちらが速いのか? エボ VS システムシックス」では勾配、重量、パワーウェイトレシオからSYSTEMSIXが速い条件が示された。

CANNONDALE SUPER SIX EVO インプレッション 2世代目にあえて迫ろう。
軽量バイクが出揃った今だからこそ、”あえて”軽量バイクの代名詞エボに迫ろうと思う。そしてSUPER SIX EVO HI-MOD2世代目は一体何が変わり、一体何が新しいのだろうかという問に答えるために。

人間のあやふやな感情を抜きにすると、「超軽いバイク」よりも勾配、重量、パワーウェイトレシオを考慮して最適なエアロロードを選ぶほうが速く走れる。最も足かせになっているのは人間の思い込みだ。昨今のエアロロードと仲良く付き合うためには、はがし切れない固定概念や思い込みをいかに排除できるかだ。

富士ヒル、伊吹山ならエアロロードのほうが速そうではある。しかし、国内のメジャーヒルクライム(乗鞍など)でエアロロードが活躍することはまだ先だ。「食べ物の重さも気にするストイックなクライマーたち」が7kg台のバイクを使うことは精神的な面を考えてもデメリットのほうが大きい。

5kg台がザラのクライミングバイクなのだがから7kgはいくら速く走れるからと言っても使う人は少ないだろう。体重56kgと54kgで結構違う。「バイクシステム」としてとらえる時代なのだから、「サイクリストシステム」としてトータルの重量も考えねばならない。少々話が脱線したがEVOに戻そう。

EVOからの買い替えを考えるとしたら「いま乗っているEVOは何が不満なのか?」を自分に問いかけてほしい。もしも「エアロダイナミクス」と思えばSYSTEMSIXの乗り換えは成功するだろう。しかし、「重量」や「クライミング性能」であれば乗り換えないほうがいい。両方をかなえたいと思ったらとても悩ましい。その場合は2台体制がよい。

ロードレースならEVOではなく間違いなくSYSTEMSIXだ。EVOは軽くて走りやすいがロードレースやエンデューロを速く走ることを念頭に置けば、もはやEVOの時代は終わったといえる。

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Power2Max HollowGram SiSL2

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完成車には初めからパワーメーターが付属している。ただし、ロックを解除しなければ使用することができない。というよりも、そもそも完成車にパワーメーターが必要なのか?については議論が分かれるところだ。国内ではいぜんとしてパイオニアの人気度は高い。Cannondaleだからホログラムクランクを使いたいというニーズも確かにある。

チェーンリングはFSAだ。EVOのときも同じくFSAのチェーンリングが取り付けられていたが、変速は至って普通で、SRAMよりも優秀なのではないかと感じた。シマノチェーンリングのような「ヌルっ」とした変速ではないが、十分な変速性能を備えている。

ただ、実際の使用を考えるとシマノクランクにパイオニアペダリングモニターを取り付けたい。そう考えるとPower2MAX分のコストを減らして、完成車の価格を下げてほしいとも思う。SYSTEMSIXは完成車とフレームセットの展開があるが、次章ではそれぞれのメリット、デメリットを見ていこう。

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完成車

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完成車とフレームセットどちらを選ぶのかと問われれば、ハイエンドコンポを求めるならフレームセット、ミドルグレードコンポでよいならば完成車と明確に即答する。VENGEも同様だ。細部まで自分の好みのパーツでくみ上げるならば、ハイエンドのフレームセットがよい選択なのはSTEMSIXも同様である。

ハイエンドモデルの完成車で気になるアッセンブルはクランクセットとホイールだ。Power2Maxが取り付けられていてクランク長も選べない。チェーンリングはFSAだ。

ホイールを汎用的に使うことを考えるとややディープすぎる。ど平坦だけ走るのであれば64mmがよい。オールラウンドに使うならば50mmがよい。というのもディスクブレーキを想定したリムは、ブレーキトラックの強度をそこまで必要としないため薄く軽く作られている。50mmであってもリム重量430g~450gほどだ。

ただ60mmオーバーになるととたんに500g台に突入する。ENVEでも500g近いから、表面積を考えても致し方ない。ホイールを1本だけの運用を想定すると、ロードレースやオールラウンドで使うのならばやはり50mmだ。ヒルクライムにももちろん使えるし、振りも軽い。最も汎用的に使用できるのがディスクブレーキ専用リムの50mmだ。

ただ、リムブレーキ用で作られたホイールの場合は重量面を考えて35mm前後が使いやすい。「1本だけ選べ」と言われたらディスクブレーキの場合は50mmだ。ホイールと使用するコンポーネントを考えると自由度が高いのはやはりフレームセットである。ただ、何をそろえていいのかわからない場合は完成車を選択することが望ましい。

多くのサイクリストはディスクロード1台目だと思うから、完成車を選択してもよいだろう。

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重量

Systemsix Hi-mod Dura-ace Di2のz実重量(ペダルレス)は約7.78kg(56サイズ)だ。VENGEの7.19g(ROVAL CLX64)よりも590g重いと考えていい。KNØT64ホイールの重量は1564gだ。ROVAL CLX64の1548gその分を差し引いても600g近く軽いVENGEの軽さは際立っている。

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評価が分かれるヘッドチューブまわり

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エアロダイナミクスとメンテナンス性はトレード・オフの関係にある。エアロロードバイクに触れていくと痛感することだ。SYSTEMSIXで特徴的なのはヘッドチューブの作りだ。ハンドルを大きく切るとケーブル類が見てしまう。できれば何かしらの形でふさいでほしかった。おそらく、メンテナンス性を取ったのだろう。

ただ、どのような条件でも快適に乗れるディスクブレーキバイクの利点を最大限に活用としたとき、雨水がフレーム内部に入ることを嫌うローディーは一定数いるはずだ。SYSTEMSIXは全体として非常に高いレベルでまとまっているバイクだとは思うが、あえて残念な作り込みをあげるとするとヘッドチューブまわりである。

見た目的にも、構造的にも次のSYSTEMSIXで改良が望まれる部分だ。

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コラム:UCIのレギュレーションの中で

「エアロロードのコモデティ化」

ここまで書いたとおり、昨今のエアロロードの形はどれもこれも似ている。ウェブや雑誌で見る限りはそう感じてしまう。UCIのレギュレーションの中でエアロダイナミクスを追求していくわけだから進化の形は収束していくのだろう。最近のエアロロードがどれもこれも似ているのは、縛られたレギュレーションの範囲で最適解を追い求めた結果らしい。

しかし、実際にバイクを手に取ると作りこみは違うのだ。森を見れば「どれも似たり寄ったり」なのだが、木を見れば「細部は大きく違う」と理解できるのが現代のエアロディスクロードだである。もしも「エアロディスクロードなんて形が一緒で何も違わない」なんて書いている人(←お前書いてたやんけ)がいたら質問してあげてほしい。

「いま所有しているディスクロードは何ですか?」と。

おそらくディスクエアロロードを所有していないか、いまだ検討中なのだろう。私の友人でディスクロードを複数台所有している近藤氏は、前作のVENGE ViasやExpert、更にはSYSTEMSIX、新型VENGEと、様々なバイクに乗り継いでいる。それぞれのバイクの違いを明確に説明できるし、細かな操作感覚の違いもはっきりと語っていた。

ただ、どれが一番速いかの質問には明確な回答が得られていない。

SYSTEMSIXに限らず、最新のエアロディスクロードはどれもこれも最新の解析技術と、エアロダイナミクススペシャリストたちの手で生み出された現代の究極系と言っていい。「バイクシステム」として作り上げられた各社の完全体はエアロダイナミクス性能がとても拮抗している。

メディアで報じられているとおり、今のところエアロダイナミクスが優れているのはVENGEらしいが、しかし最新のディスクロードに乗ると顕著に差を感じられるほどではない、とはっきりと書いておく。限られたレギュレーションの中で最速を求めた戦いがエアロロード第1章だとすると、第2章は「軽量エアロロード」の戦いが待ち受けている。

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まとめ:SYSTEMSIXが向かう先

「SYSTEMSIXは速い」というあいまいな表現を、Cannondaleは無機質な数式と実験から明らかにした。数々の実験結果はEVOというバイクを過去のものにするには十分だった。しかし、同時にSYSTEMSIXが活躍する条件や、EVOが活躍する条件はユーザーがわかるように明確化された。

平坦路ではSYSTEMSIXが秀でている。しかし上りではパワーウェイトレシオと勾配の関係によってはEVOのほうが速い。同社は「科学」を持って双方のバイクの使い分けを提案したと言っていい。CannondaleはEVOを葬ることなどは考えていなかったのだとSYSYTEMSIXを通して理解した。

SYSTEMSIXとEVOそれぞれのバイクには得意不得意がある。Cannondaleは他社が明確に打ち出していないバイクの使い分けを、データをもって誰にでもわかるように示した。「エアロロードSYSTEMSIX」と「軽量バイク」の代名詞EVOとの棲み分けは十分になされた。

ただ、これから更に開発戦争が進めば、一つの答えにたどり着くことは容易に予想できる。「軽量エアロロード」の開発はこれから始まっていく。その戦いにEVOの軽量化技術と、エアロダイナミクスを突き詰めたSYSTEMSIXの技術が融合すれば、新しい時代の主導権はCannondaleが握れるかもしれない。

【最終結論!】エアロロードと軽量バイクどちらが速いのか? エボ VS システムシックス
深い海の奥底で、宝物を発見したような気分だ。キャノンデールの新型エアロロードバイクSYSTEMSIXを調べていくうちに、興味深い開発ヒストリーを初めて知ることになった。そこにはSYSTEMSIXの技術情報だけにはとどまらず、速く走りたい...

情報元1:CANNONDALE SYSTEMSIX white paper

情報元2:CANNONDALE SYSTEMSIX