シクロクロスでおすすめのチューブレスタイヤ3選

「シクロクロスでチューブレスタイヤを使っている。」

これまで、自信を持ってそう言えなかった。シクロクロスで活躍する海外のトップ選手たちといえば、ほぼチューブラータイヤを使用している。国内のトップシクロクロッサー達も同様だ。チューブラータイヤの使用率は非常に高い。

そんな状況の中でシクロクロスを少しかじった程度の私が、「シクロクロスのおすすめのタイヤ」としてチューブレスタイヤの記事を書いてしまうと、箸が転んでも炎上してしまう今のネット時代、意味もなく風当たりがつよくなることは十分わかってはいる。

私がシクロクロスを初めたときの悩みといえば、「シクロクロスはチューブラータイヤを使わないといけないの?」ということだった。慣例的、伝統的にチューブラータイヤ一択なのだと思いこんでいた。

しかし、当時C4で走り始めたばかりの私にとってみれば、チューブラータイヤなんてものは無用の長物だった。

シクロクロスは競技といえど特に楽しい自転車競技だ。トップ選手達ばかりの楽しみではない。そして、シクロクロスを楽しむためには必ずしも高価なチューブラータイヤが必要というわけではない。まず始めるためには、無理してチューブラータイヤを使うよりも、チューブレスタイヤでお手軽に始めるのが良いと思っている。

ではC1ではチューブレスタイヤは使われていないのか。1つの例ではあるが、C1でも斎藤選手や村田選手といった強豪選手達がチューブレスタイヤを使って成績を残している。海外ではアンソニー・クラーク選手(SquidSquad)が長らくIRCのタイヤを愛用している。

結局、「速い選手は何を使っても速い」ということはシクロクロスでも同じようだ。いかにうまくタイヤを扱えるか。タイヤのノブパターンや、空気圧の調整がトップ選手たちの勝敗をわけるかもしれない。

しかし、1万円以上の値段が付けられたA.Dugastやチャレンジのチューブラータイヤを私が明日から使ったとしても、次の週末のレースで突然表彰台に上がれるという簡単な話でもない。

この記事を書くまでに試したチューブレスタイヤと言えば、IRC、MICHELIN、VITTORIA、SPECIALIZED、Challenge、PIRELLI、Panaracer、MAXXIS、ドネリー、といったタイヤメーカーをテストした。チューブラータイヤはDugast、FMB、Challenge、SPECIALIZED、TUFO、MICHELINと試した。

手に入るものは全て自分で使ってみないと気がすまない。その上で今回は、私基準であるがおすすめできるシクロクロス用のチューブレスタイヤを紹介していく。

本来であれば、砂、芝、泥、スピードコース、オールラウンドというように、さまざまな条件の違いによってタイヤのノブパターンを使い分けることが望ましい。しかし、シクロクロスのタイヤ選択はとても奥深く、趣味や趣向が介入してくる。

そのため、条件を単純に絞って「まずはこのチューブレスタイヤから始める」という1つのテーマに絞って内容をまとめることに徹した。

今回の記事の対象はシクロクロスを始める方や、C4~C2ライダーを対象にしている。C1ライダーの方はA.DugastだったりFMBだったりChallengeだったり好きなのを使うのがいいと思う。

念の為書いておくが、登場するタイヤメーカーとの利害関係やアンバサダーの関係は無い(だから悪い点も書いている)。

ここから紹介していくタイヤよりも良いモノは当然存在するし、チューブラーとチューブレスの良し悪しの議論(シクロクロッサーは嬉々として語ってくれる)も確かに魅力的な話ではある。

今回は「チューブレス vs チューブラー」や「コンディションとトレッドパターン」の話は別の話題として切り離し議論しない。記事は単純に、「使ってみておすすめしたいチューブレスタイヤ」だ。

シンプルかつ、ただ1つのテーマに絞って記事をまとめた。

IRC SERAC CX

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まずは定番のIRC SERAC CXだ。さまざまなタイヤを試してきたが。「高TPI」「しなやかさ」「33mmに収まる」「タイヤ精度」のバランスが最も高かったのがIRCのSERAC CXのノーマルだった。

IRCはロードやMTBで培ったチューブレス技術をシクロクロスタイヤにも取り入れており、ノブの高さや配置もよく考えられている。

SERACはTPI(Thread Per Inch)が特に高い。TPIが高いほどしなやかになる。TPIはタイヤのケーシング(繊維)の量を表しており、数値はケーシングが「1インチあたり何本存在しているか」を表している。TPIが高ければそのぶん繊維の数が多く織り込まれている。

TPIが実際の走行に与える影響はとても大きい。TPIが高くなるほどしなやかになり、軽量になっていく。そして転がり抵抗も小さくなる。しかし、その分タイヤの価格は高くなるが、耐久性は逆に低下していく。

IRCのSERACのTPIは182だ。MAXXISはTPI 127、そのほかのメーカーはTPI 60~100台だ。

SERAC CXはオールラウンドに使用できるタイヤで、シクロクロス用チューブレスタイヤの決定版と言っていいと思う。複数のホイールが用意できない場合はSERAC CXを前後にセッティングしておけば大抵のレースに対応できるはずだ。ドライ、泥、芝と幅広く対応してくれる。

IRC SERACのノーマルモデルに共通していることとしては、しなやかすぎる事が逆に悪さをする事がある。空気圧とライダーの体重しだいでは腰砕けになってしまう事があり、コーナーリング中に一気に滑ってしまう事がある(テクニック不足も否定できないがw)。

IRC SERACのレビューで、「チューブラーのような乗り心地」という宣伝文句も散見されるが、FMBやA.Dugastのようなしなやかさを加硫タイヤに期待しないほうがいい。そもそもチューブラーとSERACのような加硫タイヤとは質も構造も全く違うため、乗り心地なんてものは別ものだ。

居酒屋で「とりあえず生」、という方はシクロクロスでも「とりあえずSERAC CX」で良いと思う。

SERACにはしなやかさを追求した「ノーマルSERAC」と、低圧かつ対パンク性能を高めた「X-GUARD」の2種類のラインナップがある。X-GUARDが搭載されていないノーマルタイプは素材が少ない分、しなやかで柔らかい。

気になることとしては、SERAC CXはすでに在庫限りの販売で廃盤になり新しいシクロクロスタイヤがIRCリリースされるとのもっぱらのウワサだ。結構SNSでリークしている人もいる。

IRC SERACCX TUBELESS 700×32c 19048J
IRC(アイアールシー)
5つ星のうち4.7
¥7,260

VITTORIA TERRENO MIX G2

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次におすすめなのがVITTORIA TERRENO MIX G2だ。シクロクロスタイヤの伝統的なノブパターンを備えたオールラウンドタイヤだ。ChallengeのGrifoや、DugastのTyphoon、FMBのSLALOMと似たノブパターンで人気がある。

VITTORIA TERRENO MIXで注意しなければならいのは、G1は色々と問題があるタイヤだった。サイドケーシングが弱い、BRRの転がり試験で抵抗大、シーラントお漏らし、空気抜けまくる、タイヤ精度が悪い、というのがG1だ。買うならG2を選ぼう。

最近ではシクロクロス会場にVITTORIAのブースが出ており、目にする機会も多くなった。実際に使っていたが、サイドはSERACのほうが柔らかい。走りはTERRENO MIX G2のほうが軽く感じられた。もともと転がり抵抗試験でもGrifoのようなノブパターンは抵抗値が低く出ることがわかっている。

TERRENO MIXのノブパターンは、縦方向から潰した場合に最も性能が発揮される。cyclocrossmagazine.comの表現を借りれば、「ノブの模様が地面に対してきれいに転写されるように圧をかけるタイヤ」だ。

海外のレビューにもあるとおりで、サイドノブを引っ掛けるようなロードバイク的なタイヤの扱いよりも、縦方向に潰すことによって本来の性能が引き出せる(できるかどうかは別問題として)。

タイヤの性能を引き出すためにはノブのパターンも意識しろ、という少々難易度の高い考えのもと使う必要があるタイヤかと思えてくる。しかし、うまく縦方向に潰せない私が使ってもグリップするし、よく転がるし、細かいことは気にしなくてもいいかもしれない。

VITTORIA TERRENO MIXはG2にバージョンアップしてからとても良いタイヤになった。サイドノブが際立つIRCのSERAC CXと、縦方向の圧で活きるVITTORIA TERRENO MIXはそれぞれシクロクロスおいて双璧をなすチューブレスタイヤだ。

Panaracer ALBIT

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シクロクロス用のチューブレスタイヤで「安い、軽い、使いやすい」の3拍子揃っているのがPanaracer ALBITだ。Panaracer ALBITは最近関西シクロクロスでの使用率が急激に高まっているチューブレスタイヤだ。

Panaracerのアンバサダーのコッシー選手や、すくみず選手が実際に使って好成績を収めていることも影響していると思う。アンバサダー嫌いの私も、走れるアンバサダーは好きだし応援したい。実際にPanaracerの新型バルブ(タイヤインサートに対応した)やALBITも彼らの影響を受けて実際に購入した。

(※補足:最近よく見かけるようになったアンバサダーで、マジで痛いのは「製品よりもアンバサダー自身が前に出すぎている絵面が多い」場合だ。先程のPanaracerアンバサダーのお二人にはそういった傾向が無く、走りで製品を語る正統派といえる。)

話は脱線したが、ALBITの性能面には3つの特徴がある。1つ目は転がり抵抗が小さいこと、2つ目は耐パンク性、3つ目は軽量性だ。

ALBITにはアドバンスドエクストラアルファコードが施されている。柔軟性に優れた0.14mm径の超軽量極細コードから構成されており、転がり抵抗の軽減に寄与している。高密度に織り込むことによって、チューブレスタイヤの中でも特に軽い330gを達成している。

また、耐久性面も考慮されておりZSGコンパウンドを使用してサイドカットに強いタイヤに仕上がっている。ZSGコンパウンドは、高反発弾性の天然ゴムが用いられており摩耗しにくく、耐久性も高いコンパウンドだ。

ALBITのノブのセンター側には縦方向と、SERAC CXよりも鈍角で抵抗が大きいノブの2種類が組み合わさっている。両サイドには、やや大きめのノブが等間隔で配置されている。SERACと比べてノブの間隔は広いことが特徴だ。

メーカーの説明によれば、ノブの間隔が広い理由は泥ハケ性能をねらっているという。オールラウンドに使えるノブパターンである一方で、ドライコンディションからマッドコンディションまで使うことが想定されている。

ALBITはオールコンディションという立ち位置ながら、プラスαとして泥への対処も考慮されている。あれこれタイヤを変えたくない人はALBIT1本でも事足りるかもしれない。軽さを優先するのならば、330gという軽量なチューブレスタイヤはそれほど多くないためレースでアドバンテージになるだろう。

また、価格が5500円という破格がお財布に優しい。

コラム1:チューブレスは手軽に交換が「できない」

チューブレスタイヤのメリットで「現場ですぐさまタイヤを交換できる」という事をしばしば聞くことがある。ただ、実際にやってみると全くおすすめできるものではない。SERAC CXやその他のタイヤでも共通していることとして、チューブレスタイヤを取り付けた直後は空気の抜けが激しい。

合わせて野外ではタイヤにゴミや砂がつくことがある。わずかな隙間から空気は漏れる。シーラントを入れることである程度は空気の漏れは収まるかもしれない。しかし、せめて48時間(2日間)はタイヤの空気の抜けが落ち着くまでそのままにしておきたい。

言葉でいうほど、カタログやショップで言われているほど、シクロクロス会場の「気温が低く、作業は芝か土の上という現場」において、選手自身がチューブレスタイヤの交換を簡単にできるとはまったく思えない。

レース直前の土壇場で、冷たい手で、駐車場で、タイヤ交換。ホンマにおすすめできん。

それでも、チューブラータイヤの場合はそもそもタイヤ交換は無理なので、チューブレスタイヤの1つのメリットだ。

また、チューブラーの場合はホイールも複数本必要になる。チューブレスの場合は1本で事足りる(交換の手間はあるにせよ)。それぞれメリットデメリットがあるが、パンク等を考えても補修して使えるチューブレスタイヤの利便性はよい。

コラム2:空気圧調整

8度のイギリスCXチャンピオンに輝いたヘレンワインマンのコーチが、体重から空気圧を算出する公式を公開している。とてもためになるのはチューブレスとチューブラー双方の算出式を公開している点だ。

(´-`).。oO(身に着ける装備やバイク重量が加味されてないのが気になるものの・・・。)

PSIの場合は以下の計算式を用いて、走り出す際の基準となる空気圧を設定している。

  • チューブラー:(体重(kg) * 0.22) + 5 = 基準空気圧 (PSI)
  • チューブレス:(体重(kg) * 0.22) + 10 = 基準空気圧 (PSI)

barの場合は以下の計算式を用いて、走り出す際の基準となる空気圧を設定している。

  • チューブラー:((体重(kg) * 0.22) + 5) * 0.07 = 基準空気圧 (bar)
  • チューブレス:((体重(kg) * 0.22) + 10) * 0.07 = 基準空気圧 (bar)

たとえば60kgの体重でチューブレスタイヤを使用するのであれば、基準空気圧は1.62barになる。この空気圧を基準にして、空気圧を「下げていく調整」をする。ワインマンのコーチ曰く、「試走を7割のスピードで走り1度だけリム打ちするぎりぎりまで下げる」のがポイントだという。

あげることはなく、下げていく。というのがポイントだ。だからといってド平坦のハイグリップ&イージーコースならば、高めの空気圧に設定するという引き出しも当然必要になってくる。

アンソニー・クラーク選手(SquidSquad)が日本のレースにおいて、高めに空気圧を設定した際(IRC SERAC)は60.8kgで前1.68 bar / 後1.75barだった。上記の方程式で算出した値と非常に近しい空気圧の設定が行われている。

タイヤの空気圧を下げることによって得られる恩恵としては、インピーダンスロスが減少することにある。

インピーダンスロスについて簡単に触れておくと、空気圧が高すぎると地面からの突き上げをモロに受けてバイクが上下にゆさぶられる。上に持ち上げられることと合わせて、わずかな落下を繰り返すことになる。

物体が上下に揺さぶられる量が大きければ大きいほど、エネルギー損失も大きくなる。

インピーダンスロスと名付けたのはSILCA LABだ。元サーヴェロのエンジニアでもあるデイモン・リナード氏もインピーダンスロスについて言及している。「ゲージめいいっぱいの空気圧まで上げるのは、愚か者のすることだ」と。

問題は「上下にバイクが移動」することにある。本来前に進むための力は、バイクを上に持ち上げる力として使われる。そして、バイクが宙に浮いている間はどれだけパワーを加えても推進力に変わることはない。いわば無駄に走り続けるハムスターと一緒だ。

違う角度からみれば、バイクが上に移動している間は、わずかながら減速している。

これまでタイヤの空気圧は高ければ高いほどCrrが低下するということがひろく知られていた。しかし、それらの結果は「実験環境のドラム測定器の上」の話であって、実際のデコボコした道の場合はまったく違う抵抗の特性を見せる。

詳しくは以下に紹介した記事を読んでいただきたい。空気圧をあげていくと、あるポイント(ティッピング・ポイント)からだんだんと転がり抵抗が増していく。

【なぜ?】タイヤ空気圧を上げ過ぎると、転がり抵抗が増す【実験結果あり】
...

路面状況、ライダーの体重、ライダーのテクニック、タイヤ性能、タイヤ空気圧とさまざまな要因が複雑に絡み合うのがインピーダンスロスだ。それゆえタイヤチューニングも無限にあり、自分自身にあったチューニングがかならず必要になってくる。

誰得情報でたいへん恐縮な話だが、私は1.58barからはじめている。1.58barを基準にどんどん下げていく。ロードバイクに乗りなれたライダーがシクロクロスにスイッチしたときにやりがちなことは、「空気がいっぱい入っている方が速い」と勘違いすることだ。私がそうだった。

試走の際に低圧ゲージを持って調整しながら走るか、ワンプッシュでどれくらい空気が抜けるか事前に確認するなどして調整を繰り返そう。今でもマジでよくわからず、夜も眠れないのだけど、タイヤが跳ねないような走りやすい空気圧を体感的に求めて調整している。

cxmagazine.comの「伝統的な設定」でも、タイヤをサスペンションのように使えるような低い空気圧設定で、中速度の試走で「1回だけ軽いリム打ちをするまで下げ続ける」ことが昔ながらの空気圧調整方法らしい。

地面からはじかれるような空気圧ではなく、タイヤがサスペンションの役目を果たしてくれるような空気圧に設定することを、海外のシクロクロス教室では推奨しているようだ。ちなみに小坂光選手は、ポッドキャストで1.8barから始めていくと語っていた。そして初めからグリップの良いタイヤを使わないこともポイントとしてあげていた。

シクロクロスの空気圧は、体重、バイク重量、使用タイヤ、タイヤ幅、仕様リム内径幅、コース条件とすべてが綿密に絡み合い、最適解が異なる。シクロクロスのタイヤ最適解を見つけるのも1つの楽しみだと割り切って、自分に合った空気圧を見つけなければならない。

自転車乗りにとって、それだけでもシクロクロスをやる価値がある。

なお、空気圧の測定はPanaracerの第2世代デジタルタイヤゲージがいい。

コラム3:それでもチューブラータイヤか

個人的な意見だが、はじめから無理にチューブラータイヤを使用しなくてもいいとおもう。チューブレスタイヤで慣れてきてから、A.Dugast、FMB、challengeをこれから使う楽しみを今後にとっておくのもいい。

問題なのは「チューブラーじゃなきゃダメ、チューブレスじゃなきゃダメ」という固定概念、考え方、シクロクロス文化的なバイアス自体が問題なのではないかと思うようになった。

2021年11月に発売されたChallengeのHTLR(Grifo、シケイン、Limus、Baby Limus)がシクロクロスタイヤのゲームチェンジャーになる可能性がある。ロードシーンでチューブラータイヤが無くなってきたように、近い将来シクロクロスシーンでもパラダイムシフトが起こるかもしれない。

ChallengeがハンドメイドチューブレスCXタイヤHTLRを4種類発表!
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事実として、FMBもSLALOMやSUPER MUDのTLRをテストしている。次第に潮目は変わりつつある。米国の選手がチューブレスタイヤを使っている事をしばしば見かけるようになった。リム側のレギュレーションやタイヤレギュレーションはこれから模索されていくだろう。

シクロクロスを楽しみ方、タイヤチョイスは無限にある。タイヤ選択の楽しみは、いつまでたっても逃げないどころか、終わりが無い。

コラム4:チューブレスとチューブラーどちらが速い?

今までさまざまな選手達からアドバイスを頂いてきたのだが、悩んでいた私に刺さった言葉がある。「タイヤの性格を理解できばチューブラーでも、チューブレスでも、どちらでも速く走れますよ。」

この言葉を言っているのはプロ選手だ。弘法筆を選ばず、という言葉は理解している。

ただ、「どちらが良いのか」と悩んでいた私にとって、考え方を改めさせてくれる金言だった。速く走れるのならば、チューブラーでもチューブレスでもクリンチャーでもいい。まず、練習からレースまで同じタイヤを使って「タイヤの性格を知って慣れる」ことだと言う。

タイヤチョイスはたしかにレースの勝敗を分けるかもしれない。しかし、タイヤの性格を知り、自分自身のテクニックや、得意不得意と相談しながらタイヤを選ぶ事が先だ。自分自身という枠に閉じて考えてみると、チューブレスかチューブラーかどうかは速さを決める要素としては小さいのかもしれない。

もう少しだけ深く考えてみるとさまざまなことが見えてくる。メーカーによってタイヤの操作感覚はおおきく異なるし、同じ空気圧でもタイヤのつぶれ方に違いがある。チューブラータイヤのほうが、滑り出すまでの感覚をつかみやすいという特徴がある。

更に細かいことを言えば、チューブラーとチューブレスタイヤの直径は異なる。エアボリュームもサイドケーシングも異なる。タイヤを小さなサスペンションだとして考えると、沈み込む量が大きい(エアボリュームが多い)FMBやA.Dugastを使うほうが低圧で使えることも明らかだ。

海外の老舗シクロクロスサイトのcxmagazine.comでも触れられていたが、「練習からレースまで同じ(種類とブランドの)タイヤを使う」ということは、タイヤのクセを知り、タイヤに慣れるということに他ならない。

一方でホビーでシクロクロスを楽しもうとしているライダーにとってみれば、前後で3万円近い高級チューブラータイヤを練習でガシガシ使うことは現実的ではない。

このような考えを元にしていくと、タイヤ以外の性能面も考慮する必要がある。自分にマッチするタイヤはチューブラーなのかもしれないし、チューブレスであるかもしれない。答えは無数にあるという考え方に収束していく。

タイヤの性格の数だけ、自分に合うタイヤあるはずだ。何シーズンがタイヤと過ごしていくうちに自分に合うタイヤが見えてくるのだと思う。

用途別のおすすめチューブレスタイヤ

オールラウンドモデルを3つ紹介した。おまけで泥や砂のコンディションに適したタイヤをIRCのSERACから2つ追加で紹介する。

泥:IRC SERAC MUD

ヌタヌタの泥と相性がいいのはSERAC MUDだ。シチュエーションとしてはやわらかい路面に適している。横方向に伸びたノブパターンは、路面を包むようにとらえる。SERAC CXに対してノブが0.5mm高く設定されている

やわらかい路面でも十分な推進力が得られる。背の高いノブは、泥をよくはき出し、疲れてザツに踏んだとしても地面をキャッチしやすい。SERAC MUDとSERAC CXの重量差はほとんど無い。雨の日のレースや、泥、水が浮いた芝などSERAC MUDを用意しておくと安心できる。

MUDといえど使えるシチュエーションは幅広い。ドライの場合はSERAC CXを使用するが、フロントタイヤをMUDにするとよく噛みついてくれて安心できる。雨天の日や、リアが滑りやすいコース、深い泥といった路面状況においてはMUDを選択したい。

関西CXの桂川、大野ダム、湿った日吉、雨のマキノと「毎年雨が多い」というシチュエーションで使えるタイヤだ。最小限に機材を抑えるのならば、ホイール前後セット+フロント+1でフロントにSERAC MUDを取り付けるのが良いと思う。

高速&ハイグリップ:IRC SERAC EDGE

実は最も気に入っているタイヤがEDGEだ。

転がりが特に軽い。チャレンジのシケインと比較されることが多いが、サイドノブは小さめで、どちらかと言えばchallenge DUNEやA.DugastのPipisqualloが競合製品だ。ホイールを2セット用意できるのならば、1セットはEDGEを準備しておきたい。

シクロクロスレースの序盤では平たん基調のスピードコースが多いためEDGEが活躍する。茨城の小貝川のようなスピードコースであればchallenge DUNEやシケイン、IRC EDGEのようなパターンが活躍してくれると思う。

砂系のタイヤは面で押さえればグリップするが、コーナーリング中の食いつきは甘くなってしまう。私のようにテクニックが無いうちは少々不安だ。スリップダウンしてしまう可能性があるので、SANDを使うようなシチュエーションであってもEDGEが活躍するパターンは多いと思う。

関西CXのマイアミのようなコースでもEDGEが活躍する可能性が高い。

練習する際にも、SERAC EDGEを使用している。トレイルに入る時も、砂の8の字練習のときもEDGEだ。理由はタイヤの面を使ってコーナーリングを習得しつつも、ある程度のサイドグリップはほしいからだ(いまだによくわからないのだけど)。

空気圧は基準の1.58barよりも高めの1.65barから徐々に減らしている。SANDやEDGEは面で地面をとらえる重要性や滑る感覚を教えてくれる。レースで使う場合はコースが限られてしまうが、練習はたいていEDGEだ。

IRC SERAC X-GUARD

X-GUARDは耐パンク性を高めるためにラインナップに追加された。より低圧で使用できるし、ダンピング効果も高い。尖った石が点在するコース、根っこなどをよけきれる自信がない場合は、X-GUARDを選択するほうが無難だと思う。

耐パンク性と引き換えになるのは、ノーマルモデルに備わっているなやかさであることは忘れてはいけない。

シクロクロスを始めたての頃は、転がり抵抗を追求するよりも、とにかくパンクやメカトラを少なくして、できるだけレースを走る時間を増やしたほうがよいと思っている。対パンクと転がり抵抗はトレードオフの関係になるが、パンクしてしまってレースを降りてしまっては機会損失になってしまう。

そのためには、対パンク性に優れたタイヤを選択するというのも1つの作戦だと思う。ノーマルと比べてみればしなやかさや、重量面は多少犠牲にはなってしまうが、それでもメカトラをできるだけ減らして走り続けられることを考えたほうがいい(初めのうちは)。

X-GUARDは1.28barまでは落とせることを確認している(57kg想定、メーカー非推奨なので注意)。1.3barでも優しく走ればリム打ちをしないのだが、その際はリム内幅21mm以上のフックレスリムが好ましいと思う。

おすすめのシーラント

イギリスのメディアmbr(MOUNTAIN BIKE RIDER)で2020のベストマウンテンバイクシーラントに輝いた「Muc-Off チューブレスシーラント」を使っている。ケチらず1リッターあったほうがいい。

評価された点としては、

  • シーラントは厚め、均一に広がる
  • 2.75mmも5mmも瞬時にシール
  • 他社はサイドカットは一時的なシールにとどまったが、Muc-Offは1時間後に空気の再充填ができた
  • 特に、サイドカットにおいて他社に優位性
  • 最高なものを選ぶなら現在このシーラント

Muc-Off No Puncture Hassleの特徴は以下の通り。

  • ラテックスベース
  • アンモニアフリー
  • CO2インフレーター対応
  • 6mmの穴まで埋める
  • 非腐食性で水洗いが簡単
  • ブラックライトで、漏れをチェックできる
  • 最長6ヶ月以上 ※35℃以上の仕様の場合は、補充が必要
  • 用途:ロード、シクロクロス、エンデューロ、ダウンヒル
  • 対応温度:-20℃~50℃
  • 対応空気圧:15~120psi
  • 最先端の分子が穴や切れ目を一瞬で埋めて、 高度なラテックスが強力なシールをを生成

まとめ:シクロクロスのタイヤはドロ沼へ・・・

ロードタイヤ選びは本当に簡単だ。超簡単。Crrの測定もやりつくされ、耐久試験によって摩耗具合もメーカーが提示している。さらにタイヤのトレッドパターンや幅の違い、リムとの組み合わせによる空力性能の違いのデーターも公開されている。

単純に速く走るだけならCrrが小さいタイヤを選ぶだけでいい。確かにインピーダンスロスなどの話題もあるが、ロードタイヤはシクロクロスに比べると、ほとんど悩むことはない(GP5000買っとけばいい)。

しかしシクロクロスはそうはいかない。路面コンディションは朝や昼でも違うし、速い選手はどんなタイヤだって上手に走れる(つまるところはココ)。速い選手は高級タイヤのA.Dugastを使おうがクリンチャーを使おうが速い。

まさに「弘法筆を選ばず」だ。しかし、それはテクニックが機材をおぎなう話であって、実際はタイヤ選択と空気圧で走りは変わる。だからこそタイヤは何だってよいわけではない。シクロクロッサーにとって、タイヤ選択と空気圧は自身の走りとリンクしている。

だからこそ悩みがあり、楽しいのだと思っている。シクロクロスをやっていると、チューブラータイヤに対する「よくわからないあこがれ」が生まれることも理解できる。しかし、シクロクロスを楽しんだり、初めるためにはチューブレスタイヤが適任だと考えている。

これからシクロクロスを始める方やタイヤ選びに悩んでいる方にとって、今回の記事がシクロクロスを走るためのタイヤ選びの1つの材料になれば幸いだ。当然ながら、ここに書いたチューブレスタイヤの内容が全てではないし、今このときも私自身が悩んでいるということを付け加えておく。

記事を書いた思いとしては、シクロクロスをやり始めたあの頃の自分にもわかるように、記事として、文字として、ことばとして、言語化したかった。

シクロクロスを走るために、今シーズンもさまざまな悩みや不安を抱えている。それでも、気のおけない仲間たちとタイヤをニギニギしながら、いつ鳴るのかわからない号砲を待っている時間が、待ち遠しいのだ。

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